大学は職業教育の場という位置づけにするべきであり教養課程は必要ない。(1)

  『大前研一 世界の潮流  2020~21』 大前研一  プレジデント社 2020/5/29 



 <「人間の営みの底流に流れるものは何か」> <新型コロナウイルス> ・2020年が幕を開けてまもなく中国の武漢で発生した新型コロナウイルスは、想像を超えるスピードで世界全体に波及し、ついに世界保健機関が「パンデミック」宣言を出す事態にまで拡大した。 ・世界規模で人的交流やサプライチェーンが途絶えたことによって、世界の政治経済が被った影響は計り知れない。しかも相手はウイルスであり、現時点で収束の目途は立っていない。まさに【VUCA】(Volatility変動、Uncertainty不確実、Complexity複雑、Ambiguity曖昧)の時代を象徴する出来事である。 ・21世紀に入り、世界の変化のスピードは一段と速くなっている。  1年前まで常識であったことが、今年はもう通用しないというようなことが、あらゆる分野で起こっている。だから、過去の成功体験がそのまま通用するとは思わないほうがいい。とくに経営者やビジネスパーソンは、常に四方八方にアンテナを張り巡らせて、現在の状況を正確に把握し、それらの情報を踏まえて最適解を考えるべきだ。 ・一方で、コロナウイルス問題までは株式市場は決して悪くなかった。アメリカではダウ平均株価もナスダック指数もS&P500も史上最高値を更新し、日本でも2020年1月には日経平均株価が2万4000円台まで上昇した。なぜ株価だけが実体経済と乖離した動きをしていたのかといえば、実はこれにもきちんとした理由がある。簡単にいえば行き場のない緩和マネーが、株式市場に流れ込んできていたのだ。これはバブルであり、企業の実態価値を反映していないので、どこかで修正が入ると心得ていたほうがよいだろう。 <本書のサマリー> 【世界経済の動向】――「日本化=低欲望化」する世界 ●米中対立をはじめとする地政学的緊張の高まりから世界経済が同時減速する中で、欧米経済は長期停滞が続く「ジャパニフィケーション(日本化)」に陥っている ●景気対策のための金利引き下げと金融緩和により、欧米の中央銀行も緩和から抜け出せない「日本銀行化」が進行している ●世界の上場企業の業績が悪化する中で、緩和マネーが株式市場に流入して株価が史上最高値を更新、実体経済から見ると株価が上昇する理由がなく危ない 【世界情勢の動向】――分断される世界 ●「自国第一主義」と「ポピュリズム(大衆迎合主義)」の台頭による衆愚政治の拡大により、世界の不確実性が増している ●英国はEU離脱推進派である保守党が大勝し、EU分断、英国分断のリスクが高まった 【21世紀の世界のあるべき姿】――「分断」から「連帯」へ ●ベルリンの壁崩壊、冷戦終結後30年にわたり連帯や協調を模索してきた時代から、世界はバラバラになる方向へ進んでいるが、いま、改めて国民国家を超越し、地球規模の問題を解決する仕組みを模索することが必要となる。 【日本の動向】――劣等感の塊になってしまった日本 ●21世紀初頭の日本の20年間を総括すると「劣等感の塊になってしまった」という印象が強いが、その認識・危機感が日本人は薄い ●今後、日本の経済的な地位が低下することを前提に、隣に大国が存在するクオリティ国家(=1/10国家)を参考にする ●「国家の衰退」から脱するために、地方や企業はそれぞれ世界の繁栄とつながって国内外から富を呼び込む方法を模索すべき 【2020年、日本はどうすればよいか?】 ●「あらゆる面で人材不足」であることが日本最大の問題であり、21世紀に世界で活躍できる人材を早急に育成するべき ●熾烈な人材競争を繰り広げている世界に伍していくには、外国人選手が大活躍したラグビー杯日本代表のように、能力のある外国人を日本の社会に適応・融合させて「ワンチーム」にするという発想が、必要になる <日本の動向――劣等感の塊になってしまった日本> <偉大な首相として国民に記憶される人の共通点> ・安倍首相はあまりにもいろいろなことを行おうとしすぎたのだと思う。  偉大な首相として国民に記憶されている人に共通しているのは、首相在任中は重要な問題をひとつに絞り、一点集中でそれに取り組んで、後生に語り継がれるような結果を残しているということだ。  池田隼人は所得倍増計画、田中角栄は日本列島改造論、中曽根康弘は三公社の民営化、小泉純一郎は郵政民営化と、みなシングルイシューである。  ところが安倍首相の場合、毎年のように中心となる政策がころころ変わるのだ。 <安倍政権の「残念な政策」ワースト五> 【第1位 アベノミクス】 ●“3本の矢”で「名目成長率3%」を目標に掲げ、それに合わせて日本銀行の黒田東彦総裁が「2年で2%」を物価目標にして異次元金融緩和 ●“アベクロバズーカ”は不発に終わり、今後は後遺症に苦しむ ・マネタリーベースをジャブジャブにしても、金利をゼロにしても、低欲望社会の日本においては、誰もお金を借りてくれないし使ってくれない。  これから日本経済は、アベノミクスの後遺症で苦しむことになるだろう。 【第2位 外交政策】 ●「戦後レジームからの脱却」を唱えるも手の平返し ●アメリカ従属、北朝鮮拉致被害者、ロシア北方領土、中国一帯一路、韓国との関係、などすべて空振り ・安倍首相は、北朝鮮拉致被害者に関しても「私の政権で拉致問題を解決する」と豪語しておきながら、何の進展もない。安倍氏はトランプ氏が金正恩氏に会うたびに、「この話(拉致問題)もしておいてほしい」と伝言を頼み、まったく他人任せなのだ。  北方領土問題も、27回もプーチン大統領と会談を重ねながら、当初の四島返還から二島にトーンダウン、さらにロシア側の機嫌を損ねないため「北方領土」という言葉も使わないなど、解決に向かうどころかさらに後退している。  中国に対しては、中国の広域経済圏構想である「一帯一路」に協力の姿勢をみせているが、大いに問題がある。というのも一帯一路の本質は、前に述べたように中国の新植民地政策で、日本はアメリカや台湾との関係が近いため、中国に媚を売る必要などないのだ。  韓国との関係は、ご存じのように悪化の一途をたどっている。  このように安倍首相が手掛けた外交は、すべて「空振り」に終わっているのである。 【第3位 働き方改革】 ●全国一律に規定できるものではない ●重箱の隅をつつくマイクロ・マネジメントの最たるもの ・「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の取得義務化」「同一労働同一賃金」など安倍政権の打ち出す施策はことごとくポイントがはずれている。働き方や業種や仕事の内容、あるいは個人の事情などで異なるのが当然で、それを政府が一律に規定するのは無理がある。箸の上げ下げまで政府に決められたら、働きにくくなるだけだ。 【第4位 地方創生/ふるさと納税】 ●これくらいおかしな政策はない。日本国憲法第8章で法律の範囲でしか自治権を与えられていない地方が創生できるわけがない ●返礼品競争と化したふるさと納税は“さもしくてセコイ”日本人を生むだけ ・だが、税金の配分は本来、政治家と役人が責任をもって行うべきもので、その配分はきわめて厳正になされなければならないのである。それなのにどこに納税するかを国民に決めさせるというのは、まさに政治と行政の怠慢以外の何ものでもない。 ・しかも、納税先の自治体は生まれ育ったふるさとに限らず、全国どこの自治体でもいいとした。そのため、少しでも税金がほしい自治体は牛肉、コメ、家電といった返礼品を競い合い、国民もそれらを目当てに納税先を決めるというありさまで、何が目的であったのかがわからなくなっている。結局、日本人のさもしさとせこさが露呈しただけで、こんな意味のない制度は即刻廃止し、地方に必要なお金が回る新たな仕組みをつくるべきだ。 【第5位 マイナンバー】 ●事実上ほぼ利用する機会がなく税金を無駄遣いしている  政府はこれを国民IDにしたいようだが、早くあきらめるべきだ。行政府のさじ加減で、「ここは富士通の仕事、ここはNECの仕事」として発注をして、できたものをひとつに統合することは不可能である。 ・本気で行うのであればゼロからシステムを構築するしかないが、いずれにしても税金の無駄遣いだ。 <劣等感の塊になった日本> ・20世紀最後の20年間、日本は高度経済成長で得た経済力のおかげで、この世の春を謳歌することができた。  世界第2位の経済大国となり好景気に沸く東京は、山手線の内側の土地の値段を合計するとアメリカ全土が買えるほど地価が高騰していた。グローバル企業の時価総額においても、トップ10の中に日本企業が8社も連ねていたのである。  しかし、21世紀に入り日本は一気に輝きを失っていく。 ・この20年で日本は劣等感の塊になってしまった。 <日本は確実に静かな死を迎えようとしている> ・日本経済が凋落した原因のひとつに少子高齢化がある。出生率は現在1.42%と改善の兆しは、まったくみえない。高齢化率は何と28.4%だ。 ・日本の治安ランキングは、世界第6位。世界60都市の安全度ランキングにおいても、東京が1位、大阪が3位なので、社会はきわめて穏やかだといえる。 ・また、日本では、労働者の賃金が上昇しないことが、物価の低迷につながっている。現在日本の物価が他国に比べてどれくらい低いか。たとえば、100円均一ショップのダイソーの商品は、中国では153円、バンコクでは214円で売られているのである。 ・ただ、いくら国民が我慢して耐え忍んでいても、国力は確実に低下していく。国家財政をみると、国と地方の長期債務残高は1122兆円もあり、債務残高の対GDPは198%にも達し、先進国では断トツの1位だ。  日本は確実に静かなる死を迎えようとしているのだ。それなのに国民にはその危機意識がない。外の国からはさぞ美しく静かに衰退しているようにみえているはずだ。 <円の価値を高めて、資産の購買力を上げよ> ・いまの日本は個人金融資産の大きい成熟国のため、為替は円高に振れたほうが好ましい。そのほうが購買力は上がり生活が楽になるからだ。  ところが新聞も株式市場も、円安を喜ぶ傾向にある。日本人はそろいもそろって、貿易立国のころの意識のままなのだ。 ・日本は、1800兆円もの個人金融資産を有していることを忘れてはならない。ビッグマックで日本とアメリカの購買力を比べてみよう。  2019年7月の時点では、マクドナルドの販売するビッグマックの価格は、アメリカが5.74ドル、日本が390円だ。  日米のビッグマックは同一価格であるとすると、為替レートは次のようになる。 1ドル=67.94円  ところが、実際の為替レートでは、1ドルが110円前後と円の価値が安く見積もられているのである。しかし、ビッグマック指数で日本人の個人金融資産1800兆円を換算すると、約3000兆円になるのだ。これはものすごい購買力で、一人ひとりが現在の倍近く海外からモノを買えることになる。 ・繰り返すが、日本は資産リッチな成熟国なので、円の価値を高めて資産の購買力を上げたほうが国民は幸せになることができる。そのためには貿易立国のころの円高恐怖症を払拭しなければならないのだが、この考えを浸透させるのは相当大変だ。 ・輸出には円安が望ましい(貿易時代の天動説)が、現地生産が進み円安の恩恵が減少している。 ・国の競争力は為替で決まるが、金融緩和による過剰供給で円安が続いているため、日本の競争力は低下している。 <4000年の歴史をもつ中国経済の底力> ・ここからは隣国中国とこれからどのようにつきあっていくべきかを考えてみたい。  4000年にも及ぶ中国の歴史のうち、紀元後の2000年間をみると、中国の経済規模は、ほとんどの時代において世界最大だった。  ただし、1800年代後半から100年間だけは、規模が縮小している。欧米列強の侵略によって国土が蹂躙され、国力が低下したのが理由だ。 ・1989年当時、中国のGDPは日本の九州と同じくらいだったが、いまでは日本の約2.5倍になっている。  この事実は、日本人としてはおもしろくないかもしれないが、過去2000年間の大半において、中国のGDPは日本の10倍なのである。  こういう長期的な歴史認識を、日本人はもたなければならない。 <クオリティ国家を目指せ> ・では日本は中国の10分の1の国としてどうすればいいのか。私の考えは、隣の中国を徹底的に利用するクォリティ国家を目指せというものである。  世界をみると、大国の近くで大国の経済規模を利用して栄えているクオリティ国家はいくつもみつけることができる。  カナダにとってアメリカはほぼ10倍の経済規模だが、カナダ人はそれを不満には感じていない。彼らの頭にあるのは、アメリカをどう利用するかだけだ。 ・なお、中国はいずれ崩壊するであろうといわれて久しいが、依然として崩壊の可能性は残っている。  私自身も以前、中国画6つに分裂するシナリオを描いたことがある。ただ、そうなると、中国の市長や地方の書記は一人ひとりが非常に優秀で、経済観念も経営力ももっているので、中国は分裂すると逆にいまよりも強くなる可能性も高くなる。  日本としては、仮に中国が崩壊してもスタンスはいまと同じでいいだろう。そうなったときは、日本は隣にEUが出現したと思い、冷徹にビジネスを遂行すればいいだけである。 <「21世紀における新しい繁栄の方程式」> <税金頼みの国は疲弊するだけ> ●安倍政権における政治家と役人の劣化が進行 ●“税金は取れるところから取る”という安倍政権のやり方は時代遅れ ●自分たちの納める税金で繁栄しようとすると、その地域の企業や店舗は次第に疲弊していく <地方や企業ごとに世界の繁栄とつながって生き残る> <新しい繁栄の方程式 都市国家(イタリアモデル)> ●イタリア国民は国や政府の問題を考えるのは時間の無駄だと割り切って期待することをあきらめている ●多くの地方や企業が世界と直接つながって、国外から富を呼び込んでいる <メガリージョン メガシティ> ●人口1000万人以上の21世紀型エコシステム:(例)米国のシリコンバレー/ベイエリア、中国の深圳 ●国家という単位に縛られることなく、自分たちの繁栄を築きあげてきた <日本はどうすればいいのか?> <2020年における日本最大の問題> ・2020年、日本最大の問題は何か。答えははっきりしている。「人」の問題だ。   日本はあらゆる面で、優れた人材が不足している。まず質の不足である。科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Math)のSTEMやAIといった先端分野だけでなく、経営面でもグローバル企業をマネージできる人材が圧倒的に少ない。世界で活躍できるコミュニケーション力や構想力をもったビジネスパーソンも育っていない。その結果、日本の労働生産性は、G7で最下位だ。 <答えがない時代の教育のあり方> ・質の不足を改善するためには、教育そのものを変えなければならない。 ・それなのに日本は、欧米の国々に追いつけ追い越せで、大量生産に適した人材を一所懸命社会に送り出している。これでは、明治期や戦後の復興期と同じことを繰り返すだけで、21世紀に必要とされる人材を輩出することなど不可能だ。 <クオリティ国家の教育システム> ・日本の教育システムの問題点は、本当にたくさんある。  まず、すべての人にとってSTEM教育が必要なのに、高校で文科系を選択した人は、その機会がなくなってしまう。   ・世界をみるとクオリティ国家と呼ばれる国は、すでに教育を現代に適応するものに変えている。たとえば、フィンランドは1990年代初頭に、それまでの「教える教育」から「教えない教育・考える教育」への転換を図った。 <これからの日本の教育システムの方向性> 【高等教育】 ●大学は職業教育の場という位置づけにするべきであり教養課程は必要ない ●企業人に、世界最優先の内容を講義してもらう ●社会に出てから10年おきに学び直す「リカレント教育」を実施する 【大学入試】 ●大学入学共通テストは入試にために行うが、それは廃止 ●大学入試は大学側が作成し行う。科目を絞ってもよい。しかし高校終了試験でプロフィールを見て、それも参考にしながらテストする ●面接は必ず行う。21世紀の能力は面接でないと測れないものが多い 【高校修了試験】 ●高校を修了する際に文科省がすべての教科でテストを行う。選択ではない ●バランスのある学習を奨励するために、またどのような教科でどのくらいの成績を収めたかをテストする ●教育の責任をもつ文科省が卒業時に行う 【義務教育】 ●義務教育は高校まで伸ばし、社会人を教育するカリキュラムをもっと充実しなくてはならない ●中高一貫教育の場合、授業自体は5年で終わるから1年浮く。その1年を有効に活用して、途上国で生活してみたり、介護ボランティアをやってみたり、単なるアルバイトではなくインターンで企業社会、海外生活などを体験してみる ●第二言語は英語、第三言語はプログラミングと心得てカリキュラムを組み直すべき <外国人労働者に頼るしかない> ・生産年齢人口の不足に対しても、日本は早急に取り組まなくてはならない。なぜなら、生産年齢人口は毎年50万~100万ずつ減少し、2040年には2019年よりも1400万人も減り、6000万人程度なることがほぼ確実だからだ。  1400万人は2019年の総人口の11%、同生産年齢人口の19%に匹敵する。これだけの人口が減れば、高齢者の雇用を拡大してもとうてい足りない。そうなると、当然外国人労働者に頼らざるを得なくなる。 ・政府の目標は現実をまったく反映していないうえに、つくった制度もまったくよい結果に結びついていない。150万人が必要なのに、219人しか日本に来ていないとは、いったいどのような政策を行っているのか。役人は卓上プランを作るだけでなく、仕事に対しての結果で評価されなくては、このような微温湯的アプローチはなくならないだろう。 <「ワンチーム」という発想> ・日本政府があまりに無能かつ無策なので、外国人労働者の受け入れを増やし、彼らを戦力にするための秘策を紹介したいと思う。参考になるのは、2019年秋に日本中が大熱狂したラグビーワールドカップに出場した、日本代表チームだ。  桜のジャージを身にまとった選手たちは、31人中15人が外国の出身だった。でも違和感はなく、みな優勝という目標を共有し、「ワンチーム」として戦っていた。  外国人を受け入れ戦力化するには、このワンチームという発想こそが重要なのである。  そのためには、まず外国人に、日本語、日本の文化、習慣、法律、社会常識などを理解してもらわなければならない。具体的には、彼らに対して2年間無償で義務教育を提供するのだ。幸い、いまは学校も先生も余っているので、うまく利用すればいい。2年間の義務教育を修了した人には、アメリカのグリーンカードに相当する永住権を与え、きちんと身分を保証したうえで就労してもらうのである。 <外国人労働者が活躍できるための仕組み> ・現在、外国人労働者の受け入れ窓口は出入国在留管理庁が行っているが、就労(雇用)に対しては厚生労働省の所管となっている。  しかし、世界中で労働力の流動化が進み、優秀な人材を奪いあっているときに、これでは中途半端な対応しかできず、後手に回ってしまう。  具体的には、政府内に人材省または人材企画庁をつくるのだ。 ・香港やシンガポールでは、母親に代わる女性が家事や育児を行ってくれるナニーという制度が非常に普及している。とくにフィリピン人の女性はナニーとしてのスキルが高く、各国で引く手あまたの状態にある。  日本でもナニーが普及すれば、女性の社会進出がさらに進むのは間違いない。 ・人材省または、人材企画庁ができたら、真っ先にこのナニーの受け入れに手をつける。これが私の提案である。 <新型コロナウイルス> ・日本にとって今回の新型コロナウイルスの蔓延は、単なる天災といってはいけないと思う。どんな不測の事態が起ころうと、国民の生命と財産を守るべき政府が、その責務を十分に果たしていないがゆえにこうなってしまったという人災の面が大いにあるからだ、  致命的だったのは、初動の遅れである。  本来であれば、中国の武漢で未知のウイルス感染が広がっていることがわかった時点で、日本政府は中国人旅行者の入国を禁止すべきだったのに、おそらく4月に予定されていた習近平中国国家主席の国賓来日を意識して、それを行わなかった。その結果、新型ウイルスの侵入を水際で食い止めることができず、感染者が日本全国に広まってしまったのである。 ・私の経営する実務家教育や大学・大学院は、もともと20年前から全てサイバーで行っているので、全く影響を受けていない。 ・コロナ危機を奇貨とし、企業も個人も、いつでもサイバー受講、在宅勤務に対応できる体制を整えておくことが大切である。 『コロナショック後を生き残る日本と世界のシナリオ』 塚口直史  すばる舎  2020/7/6 <「未来はあるパターンを持って訪れる」> ・「未来は予測できる」と言うと眉唾に聞こえるかもしれません。しかし「未来はあるパターンを持って訪れる」と言うといかがでしょうか? ・年齢を重ねれば、パターン化された形で到来する現象を数多く経験されているでしょうし、歴史に造詣の深い方なら「未来はあるパターンを持って訪れる」ということを、古今東西、歴史上の出来事に垣間見るはずです。 ・わが国は国際貿易に依存している無資源国であり、国際社会が激変の度合いを増している以上、国にとっても、企業にとっても、個々人にとっても、「変化に合わせて対応でないこと」や「動かないこと」がリスクなるのです。 <コロナショックと世界の行方> <現代世界に不可逆的変化をもたらした「コロナショック」> <コロナショックが世界経済に与えた影響> ・今回のコロナショックで、世界は瞬時に、不可逆的に大きく変わりました。 ・中国・武漢に端を発する感染症がもたらした社会の激変は、「感染爆発が収束しても、世界が完全に元どおりになることはない」と指摘しています。  アメリカのジョンズ・ホプキンズ大の調べによれば、新型ウイルスの感染爆発が中国・武漢から欧米に到達、トランプ大統領が国家非常事態を宣言してから1か月(米東部時間4月15日時点)の間に、感染者数は世界で200万人を超え、13万人以上が亡くなったと報じられています。  防疫のため緊急策として取られた、ニューヨークやロンドン、ミラノなど、世界の主要金融センターを含む都市封鎖(ロックダウン)により、たった1か月の間にアメリカでは失業率が10%以上も上昇、大惨事になりました。 ・IMFは、2021年、世界全体の経済成長率は+5.8%に回復するという見通しは示しているものの「感染爆発の再発がない」ということを前提にしている点に注意すべきでしょう。 <自由意思による自律か、国家による統制か> ・経済が急激に疲弊していくと、各国各自はどんな手段を使っても生き残ろうとするため、残されたパイの熾烈な奪い合いになり、国際社会の緊迫度が急上昇することは歴史が示しています。 <危機的状況下では「国家エゴ」が強まり、モラルハザードが起きやすい> ・歴史を振り返った時、天変地異や飢餓で生命の危機に瀕した人々は、たいていの場合、大部分の生き残りをかけて、ある程度の犠牲を払いながら、大きな価値観の革新的変化(パラダイムシフト)を迫られています。  個々人が生命の危機に直面して大きく価値観を変える時、必然的に社会もまた、大きく変容を遂げることになります。 <▼今後予想されるシナリオ・ストーリー> □感染危機や経済危機に瀕した社会ではまず、ドラッグの蔓延が社会問題化することになろう。 □歴史を振り返る時、そうした致命的な社会不安を抑制するため、度を越えた財政拡大の発動とガス抜きとしての国境紛争の拡大を用いて、お茶を濁す政府対応が散見される。 □この場合、地政学リスクが上昇し、国際関係の再編問題が急浮上する。日本は米中間紛争がもたらす極東アジアでの緊迫度の高まりに注意すべき。 注目度の高い順に言えば「アメリカによるサプライチェーン再編に伴う、中国からアメリカおよび同盟国への工場移転」が挙げられる。 また、中国への半導体基幹部品の禁輸など、アメリカの対中経済制裁や同盟国への協力が求められる可能性に留意すべき。 <国難を救う思考と行動> <「鳥羽伏見の戦い」に注目する理由> <▼今後予想されるシナリオ・ストーリー> □今回のコロナショックで国内外において多数の失業、失職、閉店、企業倒産が相次いだ。命と大事な財産や収入へのリスクを感じる時、日本国内でも動乱は起き得る。 □もし、動乱が起きるとすれば、現政権下、激しく変化する時流に合わせない戦後日本の政治体制自体に、さまざまな矛盾が露呈することが端緒になるだろう。 次に、新勢力に期待が集まるのと同時に、シルバー民主主義に支えられた政党政治そのものへの不信が、壮年以下の男女双方から噴出する可能性が濃厚。 自衛隊など全く異なる組織への信認が高くなる可能性も。その際、政治の機能不全が顕著になる中、外国も巻き込んだ内乱の可能性も否定できない。 □動乱に至らなかった場合、国民の我慢の限界まで政治が機能不全に陥る。一歩二歩遅れで動くことになるが、それでは選択できるオプションがますます限定的になって手遅れになる。 □今後の世界で、特に国家経営が破綻しそうな国、地域として、米ドルを多く抱える国々は打撃を受けやすくなるだろう。 バラマキのための財政拡大で米国内の社会不安を抑制し、対外的にドルの世界通貨の地位を守るために、米ドル安は避けられないだろう。 それはドル負債を抱える新興国が、「ドル高、新興国通貨安」の市況下で債務返済を諦めるような事態を防ぎ、世界におけるドル債権・債務体制の継続を目的とした事実上の債務カットを行うため。 反対に、ドル債権を多く持つ日本などの債権国は打撃を受けやすくなる。 したがって、外貨準備の通貨分散は必須。個人も同様。債務カットは債務者に迫られて行うのではなく、債権者として戦略的に、能動的に行うべきである。 <社会の激変期と日本の選択> <昭和維新の失敗と敗戦に学ぶ、日本の潜在的リスクであるエネルギーと地政学> <▼今後予想されるシナリオ・ストーリー> □日本は非常に脆弱なエネルギー政策しか取れないのが現状だがAC(アフターコロナ)の世界では、省エネの推進であり、代替エネルギー開発が強化されよう。国民の危機感を背景として原子力発電の再開は急ピッチで進む可能性がある。また、ロシアとのエネルギーを通じた関係強化も日本外交の新機軸として目立つ動きとなりそうだ。 □日本が「敗戦」への道を進まないために何をすべきか。どのような動きやプロパガンダに注意すべきかを考えた時、限られた軍事リソースを効果的に使用するための施策が欠かせない。すなわち、シーレーン防衛ラインの縮小と仮想敵を絞り込むこと、欧米との軍事同盟の強化が考えられよう。 また、平時、戦時を問わず、仮想敵からのさまざまな工作戦の常態化が想定されるため、国民国家形成の基盤である愛国教育は欠かせなくなる。 □国土、シーレーン防衛について、国民は何を知り、いかに行動すべきか➡ 今までは当たり前のように思えていたエネルギーやその輸送に欠かせない安全保障だが、実は莫大な費用が掛かる(タダではない)ということを認識した上で、一人一人が国際政治に敏感になり、選挙にも関心を持って、激流を先読みでき、即応可能な政治体制と政治家を選択することに尽きる。 <「超限戦」という見えない戦争の時代> <コロナショックはグローバリズムをどう変質させるか> <現代アメリカに復活する「モンロー主義」> ・トランプ政権下のアメリカは、経済政策を大きく保護主義に転換しようとしているのが特徴です。2016年のトランプ大統領の誕生以来、「グローバル化」から「脱グローバル化」へ、アメリカ政治の地殻変動が世界を揺さぶり続けています。 <グローバリゼーションパラドックスとアメリカの選択> ・ところが、コロナショックが起き、死の恐怖と失職の絶望を体験しているのがアメリカ国民であり、世界の人々です。  今般の「中国・武漢発ウィルス感染」というトラウマからグローバル化を忌諱して、「民主主義+ナショナリズム」の胎動を体感しており、戦慄せざるを得ません。  コロナショックが収まったとしても、全米で発生している大量の失業者間で、空前の職の奪い合いを考えれば、アメリカ人のトラウマは早々に落ち着くものではないと見ています。黄禍論に代表される差別主義が蔓延する可能性すら出てきています。 <エスカレートする米中覇権争いとグローバリズムに代わる世界秩序の模索> ・米中覇権争いの激化を予感させるのが、失業者のガス抜きとしても対中攻勢です。  新型コロナウイルスの発生源である中国を叩くことは、米国有権者に訴求しやすく、アメリカの政権担当者には魅力的な選択肢です。  トランプ政権としては、半導体など最新兵器システムの生産に不可欠な最先端部品のサプライチェーンから中国を外し、生産基盤を北米へ移転することは国民総意を受けた政策として実行していくに違いありません。 ・ポスト・コロナショックの世界では、米中間の覇権争いを軸とした新旧の国際秩序のせめぎ合いを眼前にすることになるでしょう。 <EUを離脱したイギリスの選択と背景> ・アメリカのみならず、排外主義の高まりは欧州でも見られます。2019年に行われたブレグジットを決定づけた、イギリス総選挙の結果も同様です。筆者には大変意外に思えるものでした。  貧富の格差が影響する中で、職にありつけない若者を中心とする労働者階級が労働党により多く流れると見ていたからです。 ・おぼろげに見えてくる将来の世界の動きは、筆者が今まで考えていた穏健なグローバル化を選択していこうという歩みながらも、保護主義の色をやや濃くしていることを考慮しています。そうは言っても、国際分業と自由貿易によるグローバル化路線は、付加価値を大きく生む唯一の道でもあり、生活水準の維持を考えた時、どの国にとっても極端に抑え込むことができない流れだと思います。  したがって、やはりメインシナリオでは、保護主義という民意を反映しつつ、グローバル化のペースを従来に比べ、緩慢・漸進的に進む方向に動くというのが、今後の世界の趨勢になると見てよいと考えます。 <国家主権と国際経済支配を実現しようとする中国> <2.26事件の既視感を覚える、現在の中国> ・筆者が既視感を覚えるのが、現代の中国と戦前昭和の日本です。  「背伸びせずに身の丈に応じて行動せよ」と中国に詰め寄るアメリカに苦慮する中国の姿は、英米にその頭を抑えられた戦前日本の姿とダブって仕方がありません。 <コロナショック以降の世界と中国> ・2020年に生起したコロナショックで世界経済が収縮する中、防疫の観点から国境を閉鎖、かつ、自国産業や雇用を守るため、安価な中国製品の輸入を抑制する国際社会の姿が明瞭になってくると、単に中国が苦境に陥るだけに留まりません。  国際分業体制に齟齬が起きて生産性が大きく悪化し、スタグフレーション構造(インフレ下の景気後退)に世界経済が転換していくことが容易に想像できます。 <中国の内情> ・言い換えれば、権力闘争は既に終結、習近平主席の強力な指導が本会議で承認されたことを暗に表し、習近平指導下の国策とその遂行方針が決定されたと考えて間違いないと見られています。  であるならば、この強権を維持するため、彼が国造りに向けたビジョンを明確に持っていなければならないはずであり、「それは何であるか」という点に注視すべきです。 

日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ

コンタクティとチャネラーの情報を集めています。 森羅万象も!UFOは、人類の歴史が始まって以来、最も重要な現象といわれます。

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