カール・マルクスやフリードリヒ・エンゲルスはイルミナティのメンバーであり、彼らが提唱した共産主義はイルミナティの思想を具体化したものという説が存在する。(4)

<静岡県>

<羽衣伝説>

・富士山頂から約45キロ離れた静岡市清水区の三保半島には、沿岸約5キロにわたり松林が続く。この松林は「三保松原(みほのまつばら)」と呼ばれる。

・松原の中央付近にある「羽衣の松」が、有名な「羽衣伝説」の舞台である。

・この羽衣伝説は15世紀頃に成立した世阿弥の謡曲『羽衣』によって有名になった。日本各地に広く残る羽衣伝説では、羽衣を奪われた天女が人間の男と結婚するが、数年後に隠されていた羽衣を見つけて天に帰っていく説話となっている。

 羽衣の松から近い松林にある御穂(みほ)神社には、羽衣の錦の布切れの一部が社宝として保存されているという。

<愛知県>

<日本の神になった楊貴妃>

・中国の唐の国随一の美女と謳われた楊貴妃は、皇帝・玄宗にこよなく愛されて権勢を誇った女性だ。のちに国政が乱れ、楊貴妃は責任を負わされて処刑されたとも自害したとも伝えられるが、実は処刑される前に日本に逃れたという伝説がある。

 『蘇我物語』によると、楊貴妃は唐で反乱が起きるとすぐに玄宗とともに海を渡り、尾張国(現代の愛知県)に流れ着いた。そこで地元の人々に迎えられ、楊貴妃は熱田明神になったという。玄宗は八剣(やつるぎ)明神になったという説もある。

<三重県>

<だんだらぼっちとわらじ祭り>

・志摩市大王町に伝わる民話。波切の大王崎の沖に浮かぶ大王島には、だんだらぼっちという一つ目の大男が住んでいた。男がひとまたぎすれば重みで岩が海底に沈んでしまうほどだったという。

<滋賀県>

<伊吹弥三郎(やさぶろう)の伝説>

・滋賀県の最高峰・伊吹山に伝わる民話。昔、伊吹山に住む弥三郎という怪力の大男がいた。伊吹山と隣にある七尾山を天秤で担いだとの伝説が残るほどの大男だった。

 武士だった弥三郎は戦に負けて伊吹山に逃げてきていたが、その後、何度、敵の襲撃を受けても、刀でも矢でも倒すことはできなかった。

・また、弥三郎は平安京を襲った鬼・酒呑童子の父だったという説もある。

<京都府>

<金星からきた鞍馬寺の魔王尊>

・796年に建てられた鞍馬山の鞍馬寺で祀られているのが、千手観音、毘沙門天、護法魔王尊の三尊だ。

・「鞍馬」の名前の由来には諸説あり、鞍馬寺の奥の院の魔王殿に祀られている魔王尊の古い伝説もそのひとつだ。650万年前、護法魔王尊(サナト・クマラ)が金星から降臨し、鞍馬寺の大杉に依りついたという。この「クマラ」にちなんで「鞍馬」とつけられたという説があるのだ。

 魔王尊は、地球では大地の霊王として悪魔を調伏し、遠い未来では人類を破滅から救ったのちに水星へと誘うという。

 光明心殿に祀られている魔王尊像は、長い髭と背中に生えた羽根が特徴であり、見た目は天狗のイメージにそっくりである。魔王尊は大天狗・僧正坊を含む鞍馬山の天狗たちを指揮していたそうだ。また、魔王尊は本尊である毘沙門天の夜の姿である。その見た目は永遠に16歳のままで歳をとらないとも言われている。

<天狗に育てられた義経>

・鞍馬寺の僧兵は勇猛なことで有名であり、平安末期には牛若丸(のちの源義経)が7歳頃から16歳頃まで修行に励んだと言われている。そして、鞍馬寺は日本中の天狗が集結する地だと言われている。鞍馬山の僧正ヶ谷には大天狗や烏天狗が棲んでおり、鞍馬の天狗は兵法と武術にすぐれ、牛若丸に剣術の秘伝を教えたという。

<大阪府>

<姫路城の長壁(おさかべ)姫>

・日本で初の世界文化遺産となったことでも有名な姫路城の天守閣には、長壁姫という女の妖怪が棲むという。その姿は緋色の袴と十二単を着た美しい姫とも、白髪の老婆とも言われる。身長が3メートルに伸びる、数多の化物を従えている、天井を床にして逆さに歩いて現れるなどの特徴が伝わっている。

<奈良県>

<大峰山(おおみねさん)の大天狗>

・大峰山は、役小角(えんのおづぬ)が開いた修験道発祥の地とされている。今も修行の場は女人禁制となっている山だ。ここには八大天狗のひとり、大峰山前鬼坊が棲むという。役小角の住者だった前鬼が、小角の死後、大峰山を守る天狗になったと言われている。

<和歌山県>

<西行(さいぎょう)の作った人造人間>

・平安時代から鎌倉時代の僧であり歌人としても有名な西行にまつわる伝説。ちなみに西行は大百足(おおむかで)退治で有名な藤原秀郷(俵藤太)の末裔でもある。

『撰集抄(せんじゅうしょう)』巻五には、西行が反魂の術を使って人造人間を作ろうとしたという話が載る。

 23歳で出家後、西行は各地を旅したのちに高野山に住むことにした。ある日、人恋しさが募った西行は、聞いた反魂の術に習い、野原で人骨を拾い集め、人の形に並べて特別な薬を塗るなどをして人造人間を作った。しかし肌の色は悪く、声もきたないそれは、人の姿ではあったものの、心を持たぬ人間ではない何かだった。

 がっかりした西行はこの人造人間を人が来ない山奥に捨ててしまう。失敗してしまった理由を知りたかった西行は、ある日都を訪れたついでに、人造人間の作り方を教わった徳大寺左大臣の邸宅に出向く。

 理由を尋ねると、西行の作り方の一部に間違いがあったことを指摘される。詳しい秘術を改めて教えてもらったが、再び人造人間を作ろうとはしなかったそうだ。

<鳥取県>

<孝霊(こうれい)天皇の鬼退治>

・日本最古の鬼伝説と言われる第七代孝霊天皇の話。

 昔、溝口(現在の伯耆(ほうき)町)の鬼住山(きずみやま)に、大牛蟹(おおうしかに)と乙牛蟹(おとうしかに)という兄弟の鬼が棲んでいた。悪さをする兄弟鬼に里の人々が困っていたところ、巡幸中の孝霊天皇がこの地を訪れた。それから、そこで鬼を退治した。

<島根県>

<一寸法師とスクナビコナノカミ>

・『御伽草子』に載る「一寸法師」は有名な昔話のひとつだ。一寸とは約3.03センチの長さで、一寸法師という小さな男が、針の刀を携えてお椀の船で旅に出る。そして鬼を退治し、打出の小槌(こづち)で大きくなるというのがあらすじだ。

 この一寸法師に代表される小さい男の伝説は、神話に登場する小さき神、スクナビコナノカミにルーツがあるとする説がある。

 スクナビコナは、オオクニヌシノミコトとともに出雲を造った神である。『古事記』によると高天原の女神カミムスビノカミの指の股から生まれたという。スクナビコナは芋の実を割った船に乗り、蛾のような生き物の皮でできた服を着て、御大(みほ)(現在の美保)の岬の沖からやってきた。オオクニヌシはスクナビコナとともに国造りをせよと命じられたが、その途中でスクナビコナは海の彼方にあるという常世(とこよ)の国に行ってしまったという。

<岡山県>

<猿神(さるがみ)退治>

・津山市の中山(なかやま)神社はキビツヒコノミコト(吉備津彦命)を祭神とし、古くは「ちゅうさん」と呼ばれた神社。境内にある猿神社にまつわる伝説。

・猿神社では、この伝説に登場する「中山の猿」の霊を猿田彦神として祀っている。生贄(いけにえ)を求める猿神を、犬を連れた旅人が退治する話は全国に分布しており、詳しくは山形県の大入道を退治しためっけ犬、長野県の光前寺の早太郎伝説の項目を参照。

<広島県>

<幻の類人猿ヒバゴン>

・比婆(ひば)郡(現在の庄原市)で目撃されているUMAの伝説。比婆の地名にちなんで「ヒバゴン」と命名された。

 ゴリラのような体つきの類人猿で、身長は約1.6メートル、体重は約80キロ、頭の形は逆三角形、二足歩行をするという。1970年代に比婆山の麓で多く目撃され、ヒバゴンのものと思われる足跡も発見されている。

・正体不明のまま現在に至っているものの、庄原市ではマスコットキャラクター化されており、ヒバゴンのイラストが描かれたバスや着ぐるみが作られるなど、今も地元で愛されている。

 また、近隣でも福山市山野町では毛むくじゃらの怪物「ヤマゴン」、御調(みつぎ)郡久井町(現在の三原市)では約2メートルの大男「クイゴン」が目撃されている。

<徳島県>

<阿波の狸合戦>

・阿波国(現在の徳島県)に伝わる狸伝説でも有名なのが、江戸時代末期に起きたという「阿波の狸合戦」だ。後年、これを題材にした講談や映画が人気を博し、近年ではスタジオジブリ制作のアニメ『平成狸合戦ぽんぽこ』のモチーフにもされている。

<香川県>

<心優しき大天狗の相模坊(さがみぼう)>

・白峯には、日本八大天狗のひとり、相模坊が棲んでいると伝わる。元は相模国(現在の神奈川県)の相模大山で修行した行者だったことから、その名が付いたという。のちに白峯に入山し修験者たちを統括していた相模坊は、白峯寺で白峯大権現として祀られている。ちなみに相模坊の後任として相模大山にやってきたのは、大山伯耆坊(おおやまほうきぼう)だ。

<狸の総大将・太三郎狸(たさぶろうたぬき)>

・四国には狸にまつわる伝説が多い。第84番礼所の屋島寺(やしまじ)は、祭神が狸である。蓑山(みのやま)大明神として祀られている狸の名は太三郎狸。四国の狸の総大将で、日本三大狸の一匹だ。屋島は源平合戦の舞台となった地だが、屋島寺の住職が代替わりすると、幻術を用いて庭で源平合戦の再現を見せて教えたという。

 また、四国の狸が争った阿波狸合戦を仲裁した、道に迷った弘法大師を山頂の屋島寺まで案内した。日露戦争に参加してロシア軍を翻弄したといった伝説も伝わっている。

<根香寺(ねごろじ)の牛鬼>

・頭が牛で体は鬼という牛鬼は、西日本を中心に伝わる妖怪だ。四国各地にも牛鬼伝説は数多く伝わっているが、特に有名なのが第82番所の根香寺である。青峰山に建つこの寺には、牛鬼の角が寺宝として保管されている。

<化け狸の総大将・隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)>

・かつて、松山には808匹もの化け狸がいたという。その総帥と伝わるのが隠神刑部である。

<福岡県>

<田主丸(たぬしまる)の河童伝説>

・九州一の河川・筑後川が東西に横切る久留米市の田主丸町は、多くの河童伝説が残っていることで知られている。

 壇ノ浦の戦いに敗れた平家の一族が筑後川の支流に入水し、河童となったという「巨瀬(こせ)の河童」。大将である巨瀬入道は平清盛の化身とされている。中国大陸から仲間を率いてやってきた「九千坊(くせんぼう)」という河童の頭目もいる。

<英彦山(ひこさん)の天狗伝説>

・西国一の修験道の霊山と称えられる英彦山は、古くから山伏の修行の場として信仰を集めてきた。江戸時代には「彦山三千八百坊」(彦山とは現在の英彦山のこと)と呼ばれ、三千人の衆徒を抱え、八百の坊舎があったという。この山に棲むのが八大天狗のひとり「彦山豊前坊(ひこさんぶぜんぼう)」である。英彦山には九州天狗の大元締めともいわれる豊前坊をはじめとする、天狗にまつわる伝説が多く残る。

<佐賀県>

<河童のミイラとひょうすべ>

・伊万里市にある松浦一(まつうらいち)酒造には、河童のミイラが現存している。

・佐賀県では河童は「カワソ」「カワッソ」などとも呼ばれ、伝説も多い。人間に化けた河童が「相撲をとろう」と言ってくるといった話が伝わっている。また、「ひょうすべ」という妖怪の伝説もあり、ひょうすべは「兵主部」と書く。

<予言する妖怪・神社姫>

・佐賀に伝わる妖怪の伝説。江戸時代の文献によると、1819年、肥前国(現在の佐賀県と長崎県)の海岸に不思議な生き物「神社姫」が現れたという。体長は約6メートル、人の顔に長い髪、日本の角を持っており、人魚とも言われている。神社姫は発見者に対して疫病のコレラを予言し、自らの写絵を見れば助かると言ったそうだ。

<長崎県>

<壱岐の鬼伝説>

・壱岐で語り継がれている鬼の伝説がある。昔、壱岐は鬼がたくさん棲んでいて島民たちを困らせていた。そこで、豊後国(ぶんごのくに)(現在の大分県)から百合若大臣(ゆりわかだいじん)という武者が鬼退治に現れた。百合若大臣は鬼たちを斬り倒し、残るは大将の悪毒王(あくどくおう)だけとなった。死闘の末に百合若大臣は悪毒王の首をはねる。

<対馬島左近(つしまのしまさこん)と河童伝説>

・対馬生まれとの説がある、戦国武将の島左近にまつわる河童伝説がある。

<日田の河童伝説>

・日田市には三隈川、大山川、玖珠川、花月川など河川が多く、河童が棲んでいると言われていた。「川太郎」「カワゾー」などの名前で地元に親しまれ、河童にまつわる伝説がたくさん残っている。

<宮崎県>

<海幸彦山幸彦の伝説>

・日南海岸を舞台とする、古代日本の伝説。『古事記』『日本書紀』に載る。

 地上に降り立ったニニギノミコトとコノハナノサクヤヒメとの間には、三人の子どもが生まれた。そのうち、兄の海幸彦は漁師、弟の山幸彦は猟師として暮らしていた。

<鹿児島県>

<戸田観音の河童ガラッパ>

・河童の伝説は全国にある。水の神の零落した姿だと言われており、地方によっていろいろな呼び名があるが、鹿児島県では、河童のことを「ガラッパ」「ガラッパどん(どんは殿という意味)」と呼ぶ。ガラッパは全身を鱗に覆われ、背中には甲羅がなく、中国の妖怪・水虎に似ているらしい。

<ヤマトタケルの熊襲(くまそ)征伐>

・古代日本の伝説。熊襲は、古代の南九州に住んでいた人々を指す。

・こうして西国一強い熊襲兄弟を倒したことから、強者の称号である「タケル」の名をもらったオウスは、以後は「ヤマトタケルノミコト(日本武尊・倭建命)と呼ばれるようになった。

<沖縄県>

<悪戯(いたずら)好きなキジムナー>

・沖縄県を代表する精霊・妖怪で、キジムン、セーヤ、ミチバタともいう。ガジュマルやウスクなどの古い木に宿り、夜になると姿を現す。ボサボサ頭で赤い顔をした子どものような姿とされる。寝ている人を押さえつけたり、木のうろに閉じ込めたりといった悪戯を好むが、親しくなると山仕事や漁を手伝ってくれる。

<神様の住む土地・御嶽(うたき)>

・御嶽は神様がいる聖域のこと。琉球の神話によれば、創世神アマミキヨによって作られた聖域のうち七つの御嶽が、「琉球開闢七御嶽」として語り継がれている。

<神の世界ニライカナイ>

・琉球王国の神話。女性神である創生神アマミキヨと男性神のシネリキヨが、ともに地上に舞い降りてきて、国造りを行ったという。『古事記』でいうイザナギノミコトとイザナミノミコトに当たるこの二神が住んでいたとされる場所が、「ニライカナイ」という海の彼方の理想郷だ。

<古宇利島(こうりじま)の始祖伝説>

・沖縄本島北部にある屋我地島(やがじしま)の北に位置する古宇利島には、沖縄版「アダムとイヴ」のような言い伝えが残されている。

<ぶながやを一晩中待つ行事>

・ぶながやは、ガジュマルなどの老木に棲む妖怪。沖縄県を代表する妖怪・キジムナーと同一視されることもあるが、優しい心の持ち主で人に危害は加えない。

・北部の国頭郡の大宜味村では、旧暦8月頃には丘の上などに小屋を建て、ぶながやを夜通し観察する「アラミ」という行事が、戦後まで続いていた。

<股をくぐるマジムン>

・マジムンは沖縄のお化けの総称で、「魔のもの」という意味。決まった形はなく、人間や動植物、器物など様々なものに化ける。

<柳田國男>

「一つの伝説が日本国じゅう、そこにもここにも散らばっていて、皆自分のところではほんとうにあったことのように思っているというのは、まったく不思議なまたおもしろいことで、何かこれにはかくれた理由があるのですが、それがじつはまだ明らかになっておらぬのです」

 これは、柳田國男が『日本の伝説』の中で述べている言葉です。

『世界現代怪異事典』

朝里樹    笠間書院  2020/6/22

・世界には、怪異や妖怪、妖精、怪物などと呼ばれる、不思議なものたちが跋扈しています。それらは人々の間で語られ、記録され、創作され、その国々の文化や宗教、娯楽などに多大な影響を与えてきました。そしてそれは、21世紀を迎えた現代でも変わりません。本書は、主に20世紀以降の時代を舞台に語られた、現時点では常識から外れていたり、明確にその実在が証明されていない存在や現象を集めた事典です。

<ピー・カープセン>

・タイに伝わる怪異。名前は土地の境の精霊を意味するとされ、大気中に存在し、山沿いや森の端、洞窟、水中、木の上などを自在に行き来するという。

<ピー・カモート>

・タイで語られる怪異。鬼火と訳されるピーで、大きな光の輪として現れる。夜中、水のあるところで揺らめいているとされ、近づくと消えて背後に現れるなどして旅人を惑わすが、それ以上の危害を加えることはないという。

<ピー・クマントーン>

・タイに伝わる怪異。子どもの姿をした精霊で、母親が胎内に子どもを宿したまま亡くなった際、その子どもがなるとされる。この精霊を招くことができると家や仕事を災難から守り、繁栄・繁盛させてくれると考えられている。

<ピー・ゴーンゴーイ>

・タイで語られる怪異。一本足のピーとされ、森林に出現する。どこに行くにも片足で跳んでいくといい、シューシューという声を出す。眠っている人間を見つけると足の親指のところから血を吸うとされる。

<ピー・サオ・トック・ナムマン>

・タイに伝わる怪異。樹液の滴る樹木に宿るとされている精霊で、この精霊がいる木を木材にして建造物を造ると祟られると言われている。

<ピー・ターイホーン>

・タイに伝わる怪異。変死者がピートなったものとされ、普通のピーが人を脅かしたり化かしたりするのがせいぜいなのに対し、人間の首の骨を直接折るほどの力を持つという。

<ピー・トゥアイゲーウ>

・タイに伝わる怪異。降霊術の一種で、辺りを漂う霊を呼び出し、質問に答えてもらう儀式とされる。

・高田胤臣著『亜細亜熱帯怪談』にある。同書でも指摘されているように日本のこっくりさんに類似した占いだが、西洋の降霊術が由来とされるこっくりさんと異なり、ピー・トゥアイゲーウは中国の扶箕(ふき)が元になっているという説があるようだ。

<ピー・ハー>

・タイに伝わる怪異。同国において妖怪や精霊などの総称であるピーの一種で、コレラをもたらすピーであるとされる。

<ピー・バーン・ピー・ルアン>

・タイに伝わる怪異。家の守り神とされる存在で、木に宿っていた精霊が、その木が材木となった後もそのまま宿り続けているとこの精霊に変化するという。

<ピー・バンパブルット>

・タイで語られる怪異。祖霊を意味する名前で、死んだ人間はピーとなり、どこへ行くともなく身内の家をさまよう。これがピー・バンパブルットだという。

<ピー・ブーム・バーン>

・タイに伝わる怪異。村落を守護する存在で、タイの人々は土地の開発や耕作の開始、収穫などの重要行事が行われる際、供え物を奉るための供養塔を建てる。そしてこれに棲むとされるピーやテワダーに加護を祈るが、こういった存在は土地を領知する存在として認識され、ピー・プーム・バーンと称されるのだという。

<ピー・プーム・ムアン>

・タイに伝わる怪異。国の守護神とされる存在で、国家や都市の守護者として祀られる。また、特に首都の守護者として語られる場合は、「プラ・プーム・ムアン・ルアン」と呼ばれるとされる。

<ピー・プラチャムクロープクルア>

・タイに伝えられる怪異。「身内霊」などと呼ばれる存在で、祖先の霊であるピー・バンパブルットたちが子々孫々からなる村を守る霊の一群となったものを指し、タイの北西地方に伝えられているという。

<ピー・プローン>

・タイに伝わる怪異。タイ北西地方で語られるピーで、夜中になるとゆらりゆらりと光を放ちながら現れ、好んで人肉や汚物を食うという。また人に乗り移る能力を持ち、ピー・プローンに唾液を吐きかけられた人間はピー・プローンになってしまうとされる。

<ピー・ペート>

・タイで語られる怪異。いわゆる餓鬼のことで、何種類もいるが、なかでも有名なのは針ほどの小さな口しか持たないピー・ペートであるという。

 このピー・ペートはその小さな口のために血や膿しか食すことができず、痩せている。背は高く、首は2メートルもの長さがあり、細長い舌を口から出して「キーキー、ヒューヒュー」と甲高い鳴き声を上げるという。

・餓鬼は仏教において語られる、六道のうち餓鬼道に落ちた亡者の成れの果てで、『正法念処経』などにおいては何十種類もの餓鬼が記されている。

<ピー・ポープ>

・タイで伝えられる怪異。「肝食らいのピー」と訳される通り、人の肝を食らう妖怪とされる。見た目は人間と変わらないが、人が誰かを呪うと、その人間の体内に入り込み、棲み着く。そこでその人間が食べた物を食らいながら、最終的には肝臓や腎臓などの臓器をことごとく食べてしまう。またピー・ポープに取り憑かれた人間は虚ろな目をして人を真っ直ぐ見なくなるため、すぐに分かる。

<ピー・ポーンカーン>

・タイで語られる怪異。猿の姿をしたピーで、尻尾が短く、常に上唇をめくり上げ、歯を見せているという。普段は動物たちが塩を舐める場所に生えている大木の上に棲んでいるが、眠っている人間を見つけると忍び寄って血を吸うのだとされる。

<ピー・ラン・グルオン>

・タイで語られる怪異。タイ南部で伝えられていたという妖怪で、一見人と変わらない姿をしているが、背中ががらんどうとなっている。そのため臓物がすべて見え、さらに体内には虫がうようよと這っている。

 このように気味が悪い姿をしたピーであるが、人に大きな危害は加えないという。

<プーケットの亡霊>

・タイで目撃される怪異。タイ南部にあるビーチリゾート、プーケットにおいて目撃される亡霊で、津波の犠牲者たちであるとされる。2004年12月26日に発生したスマトラ沖地震による大津波がプーケットに押し寄せ、5000人以上が犠牲となった。それ以来、死んだことに気付かずビーチで遊ぶ観光客の白人たちの声が聞こえる、亡くなった友人が目の前に現れた、といった怪談が囁かれるようになったという。

 高田胤臣著『亜細亜熱帯怪談』にある。日本でも東日本大震災の後、津波の被災地で度々亡霊が目撃されるというということがあった。多数の死者が発生した現場では、地域にかかわらず怪談が語られるのだろう。

<ブラックレディー>

・フィリピンで語られる怪異。その名の通り黒い女性の姿をした怪異で、セブ島でよく目撃されるという。基本的に悪霊、もしくは魔女だと考えられているという。

<プレート>

・タイで語られる怪異。プレートとはすなわち餓鬼のことで、背が異様に高く、あばら骨が浮き出るほどの痩身で、首は長く、肌はどす黒い。口は針のように細く、食べ物を食べることも言葉を発することもできない。

<ペッブリー通りガス爆発事故の幽霊>

・タイで目撃される怪異。1990年にバンコクのペッブリー通りで発生した交通事故に起因する怪異譚で、この事故で犠牲になった人々の霊が、道行く人々を下から引っ張るのだという。

<ホテル〇の亡霊>

・タイで語られる怪異。バンコクの歓楽街、ナナにあるという「ホテル〇」は心霊スポットとしても有名で、何度も幽霊が目撃されている。

<ホワイトレディー>

・フィリピンで語られる怪異。同国全土に出現する幽霊で、白いドレスを着た髪の長い女だという。それ以外の姿は地域によって異なり、顔のパーツがないのっぺらぼうのようだったり、鋭い眼光で睨みつけてきたりする。その正体に関しても様々な説があり、殺された女の幽霊である、交通事故の犠牲者である、などとされる。

<マナナンガル>

・フィリピンのシキホル島に伝わる魔女。昼間は女性の姿をしているが、夜になると正体を現し、上半身を下半身から切り離して蝙蝠のような翼を生やし、飛び回るという。人間の赤子の血を好み、長い舌でその血を吸ってしまうと言われている。

<真夜中の軍歌>

・台湾で語られる怪異。ある小学校では、夜の12時になるとすべての明かりを消すがそうすると四方から日本の軍歌が流れ、深夜2時になると聞こえなくなる。そのためこの時間学校に近づく者はいないという。

<ミゲー>

・ブータンで語られる怪異。いわゆる雪男で、体の大きさは人間の倍以上あり、全身が毛で覆われているという。またその体からはひどい悪臭がするとされる。

 ブータンには怪我をして尼僧に助けられたミゲーの話や、山でミゲーと遭遇した男が、ミゲーがタバコを吸う様子を真似し始めたため、火縄銃を吸わせて弾を発射し、退治した話などが残る。また現在でもひどい吹雪の日には、ミゲーが里に下りてくると信じられているという。

<ミルゴラ>

・ブータンで語られる怪異。ヒマラヤの深い森に棲む人間によく似た生き物だが、手は長く、体は毛に覆われているとされる。昼に森で人々が作業をすると夜になってから出現し、昼間人間が行っていたことをそっくり真似するという。

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