少し長いスパンで見ると、すべての言語はネイティブ翻訳される時代が来ます。母国語一つあればその他の言語はいらない時代が来ます。(1)

(2022/3/26)

『百年後の日本人』

苫米地英人  角川春樹事務所   2018/9/13

<100年後にはこう変わる 日本を巡る国際情勢>

<激変する国際関係。大きく変わる世界を概観したとき、新しい視野が開けてくる。>

<100年後の国際情勢>

・本書で語るのは、今から100年後の世界です。そのとき、日本がどうなっているか考えたことはあるでしょうか。「100年後なんて生きてないよ」。果たしてそうでしょうか。現在、医療技術は加速度的に進歩し、人工知能など科学も驚愕の進化を遂げています。それらがさらに加速度を増して発展していけば、いずれ人間は永遠の命を手に入れることになる……。

 これは決して夢物語ではなく、100年後の世界なら実現しているかもしれないと私は思っています。

 100年後は2018年を生きるあなたたちと無関係ではなく、今ある経済や政治の形が大きく関わっている時代です。

・私が考えるのは、100年後に日本という国はもうないだろうということです。ただし、「今のような形では」と付け加えておきます。アメリカも中国もありません。どういうことか、まずはアメリカを例にして説明してみましょう。

「アメリカの首都はどこか?」と聞かれ、ワシントンではなく、ニューヨークと答えてしまう人が少なからずいるのではないでしょうか。しかし、あながち間違いだとは言い切れません。

・ニューヨークのように国の中核をなす、真に富んでいる地域(それは州だったり、市であったりしますが)は、100年を待たず、おそらくは50年以内に独立しているだろうと私は考えています。そのときアメリカ合衆国は、今のアメリカ合衆国のままであるといえるでしょうか。日本も同じことがいえるはずです。そして、そのとき日本人はどうなっているのでしょうか。

<人口=国力という見方が変わるとき>

・100年後、日本という国はない。この大胆な真意を理解していただくために、まずこれからの世界の動向に目を向けてみましょう。

・しかしこれからは、人口は「コスト」となり、売上高にはまわりません。製造はAIとロボットが行ないます。

 つまり仕事がないということですから、販売能力は激減し、企業の売り上げはどんどん下がっています。さらには生活するための収入を稼げない人たちが出てくることになります。

・当然、人口が多い国は厳しくなっていきます。

 一か国の理想的な人数としては数百万人ぐらいではないかと私は考えています。多くても3~4千万人ぐらいで、それを超えた国は、全部「費用」となって国庫に負担となってのしかかることになるわけです。

 そのため、人口の多い国は分裂という道を歩むことになります。

・中国は上海国と北京国に分かれ、アメリカもニューヨーク国、テキサス国、カリフォルニア国などに分裂、今挙げた国は、おそらく成功するでしょう。

 しかし、それ以外の分裂した国は、国としての機能を維持できるかといえば不明だと言わざるを得ません。

 現在の人口大国でもあるインドあたりも分裂はするでしょうが、もともと貧富の差が激しいハンディを持った国ですから、社会的費用が生産を上回り、1つの国として残るのは難しいと見ています。

・もちろん、人口の少ない国はそのまま国を維持できる可能性があります。例えばカナダ。そのカギは、移民政策を変えるなどして、人口流入をいかに止めるかにあるでしょう。国土が広く、人口が少ない国は、人口増加や流入を抑えることで、今後の活路も見出していくのではないかと考えます。

<分裂する中国>

・ここからが本題です。人口問題による経済の在り方が、今後どのようにして大国の分裂に関係していくのか。世界一の人口を誇る中国で説明します。

 中国のGDPは世界第2位であり、その権勢はアジアのみならず、世界に多大なる影響を及ぼしながら広がっています。

 しかし、中国が力を及ぼし続けることはないでしょう。おそらく数十年以内に、複数の国(あるいは地域)に分裂することになります。

 はっきりと分断するだろうと考えられるのが、北京と上海です。二つの都市が分かれる理由は、それぞれの都市の性質を見ればわかることです。

 もともとこの二つの都市には大きな差がありました。

 北京は政治の中心として早くから発展する一方で、かつての上海は周囲は野原が広がるような田舎の古い町並みを残すところでした。

・こうして中国を代表する二大都市が生まれたわけですが、両者を比べた場合、上海という街が持つ性質、人々の思想や発想は、北京のそれとは異なり、相容れないものです。

 今でもまったくの異質なもの同士なのですから、この二都市は何かあれば、絶対に割れると考えています。

 端緒となるのは、独裁的な政治体制です。

 習近平氏への権力集中が終わる頃、分断の予兆が訪れるだろうと私は予測しています。

 絶対的な権力を握り、国内を統治するのは、氏が最後になるでしょう。

・しかしその統一国家も、間もなく終焉を迎えることになるでしょう。

そして分断を迎えるとき、中国はもう共産主義ではなくなっているでしょう。

 現在掲げている「共産主義」こそが、分断を招く要因なのです。 とはいえ、ここで言う「共産主義」は私たちが常識的に理解するものとは別ものです。

 中国の共産主義は、資本主義に対する一つの対立軸として台頭しただけであり、本当の意味での共産主義ではないからです。正しくは、中国とは「共産党一党支配の先進国」だと言うべきでしょう。

そしてその実態は、共産主義とは真逆の、「国家資本主義」という特殊な資本主義なのです。しかも、「国家資本主義」(または「独裁資本主義」)は、資本主義の一つの理想的な姿だと言わざるを得ません。なぜなら、文字通りに国家が資本を支配できるから。

・そういう意味では、中国は日本より先に「独裁資本主義」という形で本物の資本主義を手に入れたといえるわけです。

 アメリカも実質的には似たようなものです。アメリカで「金融資本主義」と呼ばれるものと、中国の「国家資本主義」は大差ありません。銀行が牛耳るか、政府が牛耳るか。その違いだけだからです。

・通常の資本主義では国は伸びない。私はそう考えます。

<日本が世界経済のリーダーになる>

・トランプ大統領が「アメリカファースト」政策を打ち出したことで、アメリカは世界のリーダーの座を降りました。リーダーは決して自分をファーストとは言わないからです。

 アメリカがリーダーを降りたことで世界にも変化が訪れています。

 これからの自由主義経済のリーダーは日本が担うということです。GDPで言えば中国のほうが遥かに大きいのですが、非共産国の中では、圧倒的に日本は強く、EUも、ドイツもイギリスといった単独の国で見れば、そのGDPは日本の比ではありません。

・また、その頃には、中国や日本に多くの資産家が暮らすようになり、アメリカにいる資産家はだいぶ少なくなっているはずです。

 もちろん、ニューヨーク国あたりには世界一を争うような資産家がいるとは思いますが、GDPで見たら世界でNO.1の都市はやはり東京です。都市単位で見ると現在でも既に東京のほうが上なのです。

 とはいえ、それも今だけの話で、いずれは北京に抜かれ、将来的には1位が北京、2位が東京、3位が上海、4位が大阪でニューヨークが5位ぐらいの感じではないでしょうか。

 ただはっきりしているのは、資産家のほとんどは中国人か日本人になるだろうということです。そうなれば、世界中の人たちが中国語と日本語を学ぶようになるのではないでしょうか。

 これからの100年間を考えたとき、日本はもう一度台頭する時期が来る。そう私は考えます。

<仮想通貨の本当の意味>

・経済を通して世界の変動を見る上で、仮想通貨は切り離すことができません。すでにキャッシュレスは始まっていますが、その浸透にも拍車がかかるのは明白です。

 それに伴う私たちの暮らしの変化については後述しますが、ここでは日本と中国の関係性をデジタル通貨の存在から話してみたいと思います。

 中国では現在ビットコインの取引が禁止されており、三大取引所といわれるところもすべて閉鎖されています。

 その結果、日本であることが起こりました。資金決済法の改正です。

 ビットコインを代表する仮想通貨が一般的な貨幣と同等の価値を持つとされ、政府によって「通貨」として認められることになったのです。施行されたのは2017年4月です。

 しかし、その前年の春頃までは、政府のトップ連中は「ビットコイン? あんなものは金じゃない」と言っていました。

 ところが、手のひら返しで次の年には資金決済法を改正し、仮想通貨の取引所を公認しました。

<資本主義化する日本>

・日本の国会がすでに買収されたものならば、その未来が辿る道は明らかです。民主主義から資本主義(部分的だとしても)に変わっていくでしょう。それも、10年か20年ほどで。

 2017年2月10日に、安倍首相がトランプ大統領と最初の会談をした日に、外資グローバル種子企業に圧倒的に有利な種子法廃止が閣議決定され、4月に強行採決されたのもその例です。

 ご存知の通り、日本は資本主義国ではありませんし、憲法のどこにもその言葉はないのです。

 しかし、与党が、「資本主義と書け」と言い始めるときも案外近いのかもしれません。金で買われた国会は、すべてが資本家の言いなりなのですから。

<科学によって変化するライフスタイル>

<宇宙と深海へと進む人類。格差がもたらすライフスタイルの変化と日本人。>

<超科学が及ぼす生活への影響>

・経済単位が国ではなくなり、日本と中国からそれぞれ独立した「東京国」と「北京国」が連邦制を敷いているかもしれない100年後。その東京国は、どこにあるでしょうか。

 私は宇宙空間の可能性もあると思っています。それくらい、今後の世界は、科学の進化を切り離して考えることはできません。この章で語るのは、これから起こりうる科学の変化と、それにともなう私たちの生活の変容です。

<十数年以内には始まる宇宙旅行>

・前節からもわかるように、宇宙は想像以上に身近なものとなっています。普通に遊びに行くだけなら、民間の航空事業会社がすでに始めていますが、現状では採算が取れていません。

 往復するだけで5千万円、月に行くなら数億円が必要なので、グーグルやフェイスブックの創業者のような資産家しか乗れないのです。

しかし、その採算性も変わっていきます。

 十数年以内には、豪華客船を利用する感覚で宇宙旅行を楽しめるようになるでしょう。

・これは夢物語ではなく、企業が宇宙へと移動する時代はやってきます。なんといっても太陽エネルギーがたっぷりありますから、ソーラー発電なんて利用し放題です。

 地球の一定の人たちも居住空間を宇宙空間へと移しますし、その次の段階として、月も移住先として挙がってくるでしょう。

 宇宙空間で何が大変かといえば、水の確保です。火星の地下は水がたっぷりありそうですから、当面は火星本社という会社が増えるでしょう。

 しかし、そうこうしている間にはワープエンジンも完成しています。今度は、「火星より地球型の惑星のほうがいいわね」となる。

 その頃には見つかっているはずの、地球型惑星への移住も始まるでしょう。

<誰もが遺伝子書き換えの時代へ>

・地球型惑星での暮らしもかなり現実的になってきたのではないでしょうか。先ほど、酸素濃度の話をしましたが、実はヒトが暮らすための地球型惑星に必要なのは水や酸素だけではありません。命に関わる重大な課題があります。

 例えば、宇宙線について考えてみましょう。通常の光線でも大気が薄い空間での紫外線は致命的です。

 それがどれほど強いかは容易に想像でき、私たちの身体などひとたまりもないはずです。宇宙服を着て宇宙飛行士が船外活動をするのも、そのためです。しかし、宇宙服を着なくてもいい時代がやってきます。

 環境に適応するような、「遺伝子書き換え」をすればいいのです。

<ヒトの寿命はどうなる>

・科学の悪化は、ヒトの生き方も左右します。その基本となるのは遺伝子操作と知能操作です。

 遺伝子操作に関しては、地球外への移住の話で説明したとおりですが、知能操作はどこまで行われるのか。

 その答えは人間の寿命と深く関わってきます。人間の身体の寿命はだいたい120年ぐらいです。

 人間の細胞は遺伝子操作にアポトーシス(自死)がプログラムされているものであり、いわば「自然死」です。自然死とは、言い方を変えれば、「一定回数、細胞が増殖したら終わり」ということ。

 しかし、これ自体は書き換えることができる問題です。

<遺伝子書き換えの次なるステージ>

・ここで再び遺伝子書き換えについて考えてみましょう。おそらく20~30年以内には、身体の書き換えは病気治療のためならOKとなるのではないかと見ています。

 同時に、軍人などの危険な仕事を担う人限定で、特定機能を特化するという場合も許可されます。本格的な遺伝子書き換えはおそらく、このあたりから始まっていくでしょう。

<人類の電脳化>

・遺伝子の書き換えは、鼻を高くしたり、足を長くするなどの身体の表面的なこと以外にも及んでいきます。何を食べ物として生きていくかを選ぶこともできるようになり、例えば、「私は明日から草食動物になる」であっても問題ありません。

 脳と体に書き換えをすればいいだけです。つまり、いったん認められた遺伝子書き換えに、タブーはないのです。

 脳すら書き換えるようになると、さらに世界は変わります。まず、ヒトのIQは無限に上がることになります。

<意識の遍在化>

・あらゆる情報をリアルタイムで共有できるようになるとはどういうことか。自分で考えて思考を導き出したつもりでも、実際は、どこかにアクセスした結果かもしれないということです。

 東大の教授から直接歴史学の抗議を聞いていようと、グーグルで検索していようと、その判別がつかないだろうと思います。

<遺伝子書き換えが招く人類滅亡の危機>

・先ほど「死すら憧れになる」と言いましたが、遺伝子書き換えによって人の寿命を自在に延ばせるようになれば、当然ですが寿命という概念はなくなります。しかし、それは手放しで喜べるのでしょうか。

<飛躍を遂げる新たな日本人の姿とは>

<これからの日本は豊かになる。圧倒的な存在感の根拠は。>

<お金が法律を作る時代>

・もし仮に単純に寿命が2倍に伸びたとしても、経済的に成功する人たちは何歳くらいで資産を手にするでしょうか。

 例えばビル・ゲイツのような人材がいたとして、おそらくそうした人たちは大学生ぐらい、20歳ぐらいから成功するでしょう。

 一方で、40歳や50歳、100歳で資産家になる人もいるかもしれませんし、当然失敗する人も出てきます。成功する人というのは、さらに100年間それを重ねています。

<人工知能のインフラ化で世界は変わる>

・こうなると、「仕事」の定義も変わってきます。ほとんどの人たちは人工知能のメンテナンスが仕事になると言っても過言ではありません。

 人工知能のために生きることになります。人工知能といってもピンと来ないかもしれませんが、アメリカでは中流階級の家庭でも車が家族に1台あるように、アレクサやグーグル・ホームが一家に何台もある時代が来つつあります。

・人工知能は将来、簡単に言うとアンドロイドになって見栄えも人間と変わらなくなりますが、アンドロイドたちは中流階級に奉仕するために存在していることになります。

 中産階級が使うアンドロイドたちは半端じゃない数になるわけで、誰かのメンテナンスが必要になりますよね。それがほとんどの人の仕事になるのです。

 そして、こうした構造になると、大多数の人々は地下に住む時代がやってきます。現在は技術的な問題で高層マンションを建てて上に伸ばしていますが、将来は地下に伸ばしていくことになります。

 地上の安全な所に住むのは、一部の高級官僚や大企業のトップになるでしょう。

・では、地下の生活はどうなっていくか。これは、今とまったく変わらないでしょう。なぜかというと、太陽は人工太陽だし、ビルの壁はディスプレイで、絶えずホログラムで景色が映し出されている世界だからです。

 だから住んでいる場所は地下だけれども、見ているものは今とまったく変わらないのです。

 地下には都市があって、それも三重四重層になっている。しかも値段が微妙で最下層は高いけれど、地上付近も高いとか、そんな感じです。

・今の技術だと地下水やら地殻変動でなかなか難しいですが、100年も経てばその辺のリスクは解決されているでしょう。

 断層地震が来たらという心配はありますが、今湾岸地区の埋め立て地に住んでいる人たちだって同じことですよね。

 ただ一握りの富裕層は、当然、地上の最上層に住むでしょう。

<地下市民と地上市民>

・地下に住む人たちの生活はどうなるでしょうか。

 娯楽などはほとんど今と変わらなく供給されると思います。ただ、今でいうVRにあたる立体視できるゴーグルを24時間しているような生活嗜好になっているはずですが。100年後のVRはリアルとバーチャルが全くないですから。

<「日本人」という概念>

・宇宙時代がやってくると、言語も好きな言葉を選んで喋れる時代が来ます。翻訳も脳の中で勝手にしてくれる時代です。ですが、先ほど述べたようにネイティブな言語は文化としてまだ残るでしょう。

 しかし、それを取り巻く環境は大いに変わるわけで、今では考えられませんが、民間企業が今でいう国連に加盟できて国家として扱われるような時代が来ます。

 税金はその国(企業)の間で重役同士が決めるような世界が来ます。税金なんて勝手に分割されてネットで引き落とされるだけになるでしょう。人々が国家に所属する時代ではなくなるのです。だから国籍というものはアイデンティティとしてのみ残ることになるでしょう。

<日本に法的な「階級制度」はなかった>

・日本人は豊かになるのか貧しくなるのかという前に、「日本人」の定義が大きく変わります。

 多くの人が思っている「日本人」の意味がです。まず法的に完璧な階級制度が導入されるでしょう。

 国民で言うと明治から大正期のように、一定額を納税した人とそうでない人で実質的な権利が変わってきます。

 おそらくどちらも憲法的な意味での「日本人」というところは変わらないのですが、実質は権利が全然違います。

・では100年後はどうなるか。簡単に言うと身分の差はお金で決まる時代が来ると言えます。お金で決めるときには、おそらく「日本」の最上位層の多くはもう「日本人」ではない可能性もあります。

・これから次世代の企業ができたときに、本当の富裕層はもう日本人ではないのです。潜在的な身分制度が完成していて、彼らは「日本人」として日本の国籍も堂々と買えるでしょう。

 すでに他の国ではこうしたシステムは存在しており、移民でも一定の金額を銀行の預金に入れれば事実上その国の人として扱ってもらえるわけです。スイスやモナコなどがそうですよね。

・では参政権や選挙権がどうなるかという疑問がわくと思いますが、そんなものはもう関係ないのです。なぜなら彼らは投票なんかしないでも政治家を直接動かせるのですから。

 日本で仮想通貨が流行り資金決済法が改正されカジノ法案が成立し種子法が廃止されたのは、全部一部の中国人とごく一部のアメリカ人が動かした結果です。

 選挙なんか必要ないのです。しかも、ありとあらゆる権利において日本人と同じものを持っている。場合によっては日本人よりも優遇されています。

 こうなると、日本人が豊かになるのではなく、日本という国が豊かになる一方で日本人が相対的に貧しくなっていくのです。

 前述したように、日本国内に豊かな人で純粋な日本人はほとんどいなくなる時代が間もなく来ます。

<日本人としての教養とは>

・ではそんな時代に生きる日本人が「個人として身に着けるべき技術や教養」とはなんでしょうか。これも前述したように、まず言語は一切関係なくなります。

 ちょっと面白い話をしましょう。今、カッコいい英語を書きたかったらどうすればいいかをご存知でしょうか?

 日本語で文章を書いてグーグルで翻訳して英語にし、それをネイティブチェックすれば完璧な本物の英語ができます。

 もう英語の文章なんて書く必要がないのです。日本語で書いてグーグルに流したほうがいい。それぐらいグーグル翻訳の精度は上がっています。

・つまり、今ですらそのような状態ですから、100年後は、おそらく日本のネイティブ言語は日本語じゃなくなっている可能性が極めて高いといえるのです。

 それに、100年後の日本は、中国の州になっている可能性だってあるわけです。先に述べた、「東京国」「北京国」の連邦制のことですね。「東京国」は「北京国」に入らないと思いますが、北海道や九州などの地方はそうとは限りません。

 地理的にも中国のいくつかの新国家と連邦制を組むと予測できますから、言語だって中国語が標準語になっている可能性が高いですよね。

 こうなると、日本語はおそらく東京や大阪など一部の「地方」が維持する、いわば「方言」のような扱いになると思われます。

 中国と組むと、中国は漢民族の文化の浸透度が高いので、現在のチベットでチベット語を喋れないチベット人がいっぱい生まれているように、もしかすると九州や北海道の人は日本語が喋れなくなる可能性だってあるわけです。

・それをどう見るかは別として、日本語を喋っている地域は東京や大阪ぐらいになるでしょう。

 その他の地域は自分で連邦制を組んだ国と結びつきますが、おそらく圧倒的に多いのは英語になるでしょう。

 なぜか。この時代になれば、もう物理的距離は問題ではなく、情報空間で好きな国と契約が結べるようになるからです。多くの契約を結んでいる国は英語を使っているでしょうね。ヨーロッパだって英語が勝ちます。

・では日本語はどうなるか。「日本」という国の中で日本語を使う人が3~4千万人ぐらいでしょう。もうちょっと行くかもしれない。なぜなら、人口は商業都市に集中し、そこの経済圏でだけで生活が成り立つからです。

 今だって東京には1千3百万人いるわけで、そこに千葉や神奈川の通勤圏を含めて約3千万人の「東京国」になります。

 関西でも近畿を中心とした「大阪国」に2千万人いると考えると、そのときの人口次第ではありますが、この2つの経済圏だけで結構な数にはなります。

・これまで日本社会を支えていた徒弟制度がなくなる一方で、特殊な技能があれば上流階級に入れる可能性だって出てきます。

 未来において評価されるのは時代に関係なく特殊な技能で、それはテクノロジーとしての技術ではなく、才能としての技能といえます。

 だから未来の日本人は、技能で生き残る人が出てくる可能性があるのです。「技術」と「技能」は明確に違います。

・未来の時計は光格子技術などによって300億年に1秒ぐらいしか狂わなくなるでしょう。

 ところが、未来においては300億年に1秒ぐらいしか狂わない時計よりも、1日に2秒も狂うような機械式時計のほうが値段が高くなるはずです。なぜならそれが「技能」だから。

 技術は人工知能のほうに行ってしまうけれども、そうではない「技能」のほうが重宝されるシーンが絶対出てくる。日本人は「技能」に生きるほうが向いている民族です。

・日本で今かろうじて生き残っている「技能」の一部が細々と、しかし支援を受けながら生き残っていくのです。「技術」で日本が生き残っていくことはもう無理です。

 300億年に1秒しか狂わない光格子時計の試作品を日本人が作っても、それを腕時計に入れるベンチャーはもう日本発ではありません。

 こうなると「日本人」というアイデンティティそのものに意味がなくなり、単なる経済的な強みだけが維持されていきます。

<「日本文化に根差した」技能と経済>

・「レンティア型国家」という言葉をご存知でしょうか。

 レンティア型国家とはUAEやサウジアラビアのような産油国みたいな所のことで、超過利益を意味する「レント」に由来します。

 イギリスの学者が言い出したことですが、要するに、自国民の労働に依存しない、自然資源だけで成り立っている国のことです。

 そういう国家では独裁体制が成り立ち、政府が国民に忠誠を誓わせる代わりに国民を食わせる体制になります。

 おそらく、100年後にはレンティアとして生き残ってる国はほとんどないでしょう。しかし、日本は今後レンティア型になっていくのです。日本には資源はないけれど、レンティア化します。

 今の日本では日銀が発行した「円」が外国企業や投資家に流れ、彼らが日本企業を買収しているわけですが、日本の「技術」を持っているところはみんな外国人に買収されてしまう。

 しかし、「技能」は個人につくものだから買収のしようがないのです。「技術」と「技能」の最大の違いです。

 ここが日本の生き残る道で、「日本文化に根差した技能」だけはどこにも持っていけないのです。

・最後になりますが、未来の子供たちに託す言葉があるとするならば、それは簡単で、世界のエリートを目指さないのであれば、「英語をやらなくてはいい」ということです。

 少し長いスパンで見ると、すべての言語はネイティブ翻訳される時代が来ます。母国語一つあればその他の言語はいらない時代が来ます。

 その頃には既に東大が世界ランキング50位そこそこなのが、日本の大学は今より更にランキングが下がることが予想されますから、日本人としてではなく、国際人としてもう一つ上の層を目指すため、日本以外の大学に行かないといけない。

 そのときにはアメリカか中国かロシアの大学しかありません。世界のエリートを目指すならば、英、中、露の言語のどれかを学ぶ必要がありますが、日本の大学を出て日本の社会に出ていくなら日本語以外の言語は必要ありません。

<100年後の世界と日本>

<日本がもう一度台頭する可能性>

・ここまで、さまざまな視点と観点で日本、世界の未来を語ってきました。少々、びっくりするような話もしましたが、「日本人」が生き残っていく前向きなファクターもたくさんあったと思います。

 日本がもう一度、世界で台頭するのも夢ではないのです。

 しかしそれは、今我々が捉えている「日本」ではなくて、しいて言えば「東京国」とでも称するような経済圏の話と思ってください。

「東京国」「大阪国」などの経済圏のどこかが、「日本」という名前を継ぐかもしれません。それは今までの「日本」という一つの国ではなく、いわば「日本連邦」とでもいうような形です。このような形で残る可能性はゼロではありません。

 しかし、そのような状況で中心となるのはやはり「東京国」以外ないと思います。

 大阪も悪くはありませんが、いくら頑張っても東京と大阪の経済力の格差は10倍どころではありません。

・UAEの大統領が、国家予算の8割を支出するアブダビから選出されることが決まっているように、企業法人税を含む歳入の8割は東京から出ていますから、総理大臣だって東京から出すのが筋という世界になります。

 現状は、日本独特の世襲制度で山口県民が総理大臣になるわけですが、すべては経済が決める世界になるのです。

 これは、先にも述べた「票を金で買うこと」を堂々と認めることになるわけですが、日本もスイスのように直接民主主義に変わっていく時代が来る可能性はあります。

 その時が、真の意味で「日本が台頭する」世界に近づくといえるのではないでしょうか。

<「技能」は「資源」である>

・レンティア型国家の特徴は、政府が国民の税収に頼らずに国家を運営していくことです。

 UAEのような産油国は、石油を輸出して国民を食わせているわけですが、100年後にレンティア型として生き残っている国はほとんどないでしょう。

 なぜなら、資源に限りがあるからです。ロシアみたいにその気になればレンティア型にできる資源を持っている国は残っていますが、GDP比で言えばさほどではなく、UAEのGDPが日本の四国ぐらいだと考えると、やはりレンティア型国家は滅んでいくといえるでしょう。

・しかし、私は、日本は「技能」を資源としたレンティア型国家として残っていくと予言しました。

 経済がすべてである100年後の世界ですら、日本古来の「技能」はだれにも買えないもので、そこに「国」「日本人」としての立脚点を見出すべきだという主張です。

 これをもっと砕いて説明すると、日本の人口の多くが外国人になっていく中で、「日本人」という国籍を持っていることが一つの特権になっていきます。

 実際にはアジアの中の特権にすぎないのですが、凄く特殊な地位を100年間にわたって維持できるわけです。

・中国が将来、あれだけの人口でいわゆる民主主義をストレートに成り立たせることはまず不可能で、建前は民主主義ですが、五つくらいの実質独裁主義国家に分裂していくでしょう。

 ところが、日本はそうではない。なぜか。「技能」に根差したカルチャーが維持されているからです。

 あくまでカルチャー上、はですが、アジアの中では日本が一番住みやすい国であることが維持されていくわけです。

 今、日本人になりたくてしょうがないのは中国人だとよく私が言うのは、こうした背景があるからです。

 ここに、100年後の日本人の優位性が見えてくるわけです。

・翻って、日本はどうでしょうか。

 日本には欧米ほどではないにせよ、国の面積が十分にありますし、もともとの日本人の人口が1億人を超えています。

 当分はそれで維持できますが、少子化と仕掛けられた人口削減などで、100年後には日本人の人口は3千万人ぐらいに減ってると思われます。

 ところが、日本に住んでいる人は3億人ぐらいになっているわけです。だから今の感覚で言うとUAEと似てるんですよね。

 元々のUAE人って10%ぐらいであとはみんな移民ですから。

・しかし、そう変わっていくのが将来の日本であると仮定した場合、ハイテクは全滅しています。生き残る会社はいっぱいあるでしょうけど、全部中国かアメリカ資本に買われているでしょう。

 これは、今の日本の金融経済政策のツケです。

 日銀は円を発行して外国人投資家に渡して、その円で彼らが日本企業を買収しているわけですから。ある意味、歴史に残る戦犯ですよね。

 しかも、この政策はしばらく続きます。仮に総理大臣が変わっても、このシステムは変わりません。

 今の外資に完全にコントロールされている日本政府なら。どの外資にコントロールされてるかが違うだけです。

・外国人が優遇される今の日本のシステムでは当然、日本の「技術」は買収されてしまいますが、「技能」は個人につくものだから買収のしようがないのです。

 繰り返しになりますが、100年後の世界は経済がすべてです。

 しかも、資源が枯渇して、産油国が衰退していく中、資源を持たない日本はどうあるべきかを語ってきました。

 かなりショッキングな話もしてきましたが、実際に世界はもうそこまで来ています。すべてが経済で回っていくのは仕方ないにしても、金で買うことのできないものが必ずあるのです。

 しかも、それを未来における「資源」として、きちんと経済の中に組み込んでいくことだってできるのです。

・ブロードウェイのミュージカルが、英語もわからないような観光客向けの出し物レベルに衰退したように、京都の祇園が歌舞伎町にあるロボットレストランのようなものになってしまう危険だってあります。

 歴史的な付加価値があるのに、時の大資本がつぎこまれて、ただのエンターテイメントになってしまう危険性です。

 だからこそ、唯一無二の価値観と経済的価値観を併せ持ったものとして生き残らないといけない。

「日本人」というアイデンティティそのものの意味がなくなってしまうからです。しかし、日本には誇るべきものがまだたくさんあります。

 そこにどう気が付き、どう活かしていくか。

 100年後の世界は誰にもわかりませんが、何が生き残っていくものなのかはおそらく答えが見えているのではないかと思います。

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