ドンバスをファルージャのような瓦礫の山にしてしまうのをプーチンが黙って見ていることはないだろう。プーチンは責任ある指導者なら誰もがすることをするだろう。それがすなわち戦争ということなのである。(1)
(2022/5/11)
『世界の黒い霧』
ジョン・コールマン博士の21世紀陰謀史
ジョン・コールマン博士 成甲書房 2017/3/16
<狙われるロシア、悪魔化されるプーチン>
<ウラジミール・プーチン、その血統と前半生>
・ウラジミール・プーチンがロシアの首相に任命されたとき、その経歴はほとんど知られていなかった。この元ソ連情報部員は1990年代初めに政界に入り、すさまじい勢いで権力の階段を昇っていった。
・プーチンは、小柄であったが、格闘技の教室に通っていたおかげで、喧嘩に負けることはなかった。16歳の頃にはサンボ(柔道とレスリングを融合させたロシアの格闘技)で国内トップにランクされるまでになった。
10代の頃には、のちに有名となる野心の片鱗を示すようになり、名門の第281高校へと進学した。この高校はロシア国内で唯一、科学教育に力を入れていて、本人も興味をもっていたのだが、まもなくリベラルアーツと生物学へと関心が移っていった。プーチンはハンドボール部に所属し、学校のラジオ局でも活動して、ビートルズなど欧米のロックバンドの曲を流していた。10代の頃にスパイ映画に魅了されて、ソ連国家保安委員会(KGB)で働きたいと考えるようになった。
<KGBからクレムリン、そして大統領への道>
・プーチンは1975年にレニングラード大学の法学部を卒業したが、卒業後は法律分野には進まず、100人のクラスメートからただ1名だけ選ばれて、KGBに就職した。与えられた仕事は、KGBのために情報収集にあたる外国人をリクルートすることだった。
<プーチンと「プーチンの7人の友」>
・プーチンは、サンクトペテルブルクのオゼログループのなかで、そしてソ連のノーメンクラツーラ(国家行政の要職を占有している面々)としても、二重のアウトサイダーだった。家族は知識層とはまったく無縁だった。KGBの「ゴールデンボーイ」でもなかった。
・このアウトサイダーという要素が、プーチンが仲間を認めるポイントなのだろう。彼の腹心の大半は、このアウトサイダーというカテゴリーに当てはまる。とりわけ「シロヴィキ」と呼ばれる人々――KGB・FSBのインサイダーや安全保障関係の有力大臣――とは非常に曖昧な関係を保っている。彼らは「友人」ではない。
<東独ドレスデンで培った信念「忠誠心は国家へ」>
・政治任用官としてFSB長官を務めたごく短い期間を除けば、プーチンはこうした機構の中央機関で働いたことはまったくなかったし、服務期間中にKGBの最高ランクに昇ることもなかった。KGBでの正式の職務は常に周縁的なもので、赴任地もレニングラードやドレスデンだった。1970年代に、当時のユーリ・アンドロポフKGB議長によって入った若手世代であり、いわばアウトサイダーによる実戦歩兵部隊だったのである。
・プーチンは、東ドイツの崩壊は「不可避」とみた。「本当に残念だった」のは、ベルリンの壁をはじめとするすべてが崩れ落ちたときに「ソ連がヨーロッパでの地位を失ってしまったことだった。もちろん頭では、壁や遮水壁に基づく地位が永遠に続くはずがないと理解していた。しかしわたしは、代わりに何か違うものが現れることを願っていたのだ。しかし、違うものは何も提案されなかった。それが何より辛かった」。
<断末魔の祖国、その惨状を目にした衝撃>
・1980年代後半のソ連は、政治的な混乱とともに、知的・文化的醸成と想像力の時代だった。帰国したプーチンとその家族はそうした時代の精神を評価できず、断末魔の国へ戻ってきたという意識しか持てなかった。そこでは「すべてが、警察関係も含めて、腐敗した状態だった」。
プーチンの妻リュドミナ・プーチンが目にしたのは「長い行列と配給券――クーポンと何もないままの商品棚」だった。東ドイツでは商品が手に入ったのと対照的に、ロシアでのリュドミナは「商店街を歩くことさえ恐ろしかった。多くの人と違い、わたしは最も安い品を求めてあちこち探し回り、行列で待つことができなかった。ただ、いちばん近い店に直行し、最も必要な品物だけを購入して家へ帰った。印象は最悪だった」。
<ロシア的DNAの欠損と巻き起こる新潮流>
・旧ソ連、すなわちゴルバチョフのソヴィエト連邦についてのウラジミール・プーチンの見方は、全般に暗い。レニングラードへ戻ってくるとすぐに、国家もソヴィエト体制も断崖絶壁から深い谷間へと転落してしまった。当時述べているように、このことは「KGBに就職したての頃に抱いていたすべての理想、すべての目標が崩壊してしまった」ということを意味していた。こうした状況によって「わたしの人生は引き裂かれてしまった」。そして、ソ連の崩壊による人格的分裂に追い打ちをかけたのが――プーチンの見方では――エリツィンが大統領を務めた1990年代ロシアの見苦しいばかりの混乱だった。
<軍事力と経済の立て直しを誓うプーチン>
・プーチン大統領は、外国流の民主主義をロシアに強制しようとする試みについて、怒りを込めて拒絶し、外国による干渉から自国のアイデンティティーを守ることを誓った。
・政府系が多数を占める議会を通過したある法律は、外国から資金提供を受けて政治活動を行っている非政府組織に「外国エージェント」としての登録を義務づけている。該当するグループからは、それは脅しであり、組織の信用を破壊する動きだ非難されている。
・ロシア当局は、2015年の資本流出は最大で650億ドルと予測している。
・ウクライナについては、飢餓と医療不足に苦しむウクライナ市民のために、すでに食料と医薬品の大規模輸送を命じているとプーチン大統領は語った。さらに、ロシアは誰の指図も受けないとも発言している。
<全面戦争も辞さない欧米メディアの中傷キャンペーン>
・私たち人類には戦争の覚悟があるだろうか――核戦争の可能性も含めて――合衆国とヨーロッパ、そしてロシアを巻き込んだ大きな戦争を戦う覚悟が………。
・世界第二位の巨大核兵器保有国であるロシアを不安定化するという政策は、驚くほど非情なものだ。各国の軍事力が東ヨーロッパと黒海周辺の全域で警戒態勢にあり、ウクライナ軍とロシア軍が国境沿いで砲火を交えている状況が生まれた今、計算違いの起こる可能性は日増しに高まっている。
短期的な結果がどうあれ、アメリカとヨーロッパの帝国主義列強が追及しているアジェンダの長期的な意味合いは、情け容赦なく戦争へと向かっていき、破滅的な結果をもたらすことになる。一般市民が直面する最大の危険は、そうした決定が陰で行われようとしていること、そして人民大衆が、世界人類の直面するリスクにほとんど気づいていないことになる。
・戦争に向けたこの動きを止めるものは、政治意識に目覚めた一般市民による介入をおいて外にはない。「核戦争などありえない。現代の各国政府は1914年当時の列強とは違うから破滅的なリスクは冒さない」と考える者がいるなら、それは幻想だ。
<「うちの夫は吸血鬼」の秘められた私生活>
・二人の結婚生活がいつ頃から綻び始めたのか、正確なところはわからないが、あらゆる方面から考えて、性格の不一致によるもののようだ。
<美貌オリンピック体操選手とのスキャンダル>
<ロシアを世界の指導者にするという野心>
<プーチンの決然とした警告「ロシアに手を出すな!」>
・グレーのセーターとブルージーンズというカジュアルな服装で親クレムリン派の青年キャンプに出席したプーチン大統領は、核兵器を保有しているロシア国軍はいかなる侵略にも対処する用意があると述べたうえで、こう言い切った――諸外国は「わが国に干渉しないに越したことはない」。
この集会でプーチンは、ロシアによる2014年3月のクリミア併合は、大半がロシア語を話す人びとをウクライナ政府の暴力から救うために不可欠のものだったと語った。また、東部ウクライナで親ロシアの分離独立派が4月に反乱を起こしたことも、キエフが交渉を拒否した結果だとした。ウクライナと欧米諸国は、すでに万単位の死者を出した今回の紛争で、ロシアが兵士と武器を送って分離独立派を支援していると非難していた。ロシアはこれを否定した。
・プーチンは、ウクライナ軍の東部地域での作戦を、第ニ次世界大戦でのナチス軍によるレニングラード包囲になぞらえた。
「小さな村も大きな都市も取り囲んだウクライナ軍は、インフラの破壊を目的に、住宅地を直接攻撃している。………第ニ次世界大戦での出来事が思い起こされて、わたしは悲しい。あのときはドイツ軍がわが国の都市を取り囲んだ」
<再び姿を見せたプーチンと正体不明のロシアの支配者>
・「ロシア大統領はロシア北部および西部にいる4万近い兵士に、即時対応訓練の一環として、全面警戒態勢をとるように命じた」
・事態は次のようなものと考えられる。すなわち、プーチンはクーデターに直面していたのだ。そして今、彼は見えない権力に従っている。いずれにせよこのクーデターは収束した。恐ろしいのは、その時点で、正体不明のロシアの支配者が大きく方針転換することだ。ここへきてプーチンが可動化したことで、この恐怖はにわかに現実のものとなってきている。
・さらに、もし内部抗争がロシア政権内に存在しないと考えるなら、何らかの説明がなければならない。反体制派ボリス・ネムツォフの暗殺は、ロシアに今もきわめて深刻な内部分裂が存在していることを示している。
<なぜワシントンはプーチンに照準を定めているのか>
・ワシントンは、天然ガスからの収入を大幅に削減することで、モスクワを経済的に弱体化させたがっている。それによって、ロシアが国や国益を守る能力を侵食してしまおうというのである。アメリカは、ヨーロッパとアジアが経済的に一体化することを望んでいない。事実上のEU―ロシア同盟は、アメリカの世界覇権にとって直接の脅威となる。
ウクライナにおけるアメリカの挑発は、ワシントンの「アジアへの旋回」戦略と切り離しては理解不可能だ。これは中東からアジアへと焦点を移すという、より広範な戦略計画なのだ。
いわゆる「リバランス政策」は、実際には、アメリカの覇権主義的な野心に沿うかたちで中国の成長をコントロールするための青写真なのである。
・では、中国のコントロールとウクライナの紛争の、いったい何が関係してくるのだろうか。答えは「すべて」だ。
ワシントンは、地域支配をめざす自国の計画にとって、ロシアの脅威が大きくなるとみている。問題は、中央アジアを横切ってヨーロッパに至る石油・天然ガスパイプラインのネットワークが拡大すれば、モスクワがどんどん強大化するということだ。だからこそワシントンは、ロシアに攻撃を仕掛ける足場としてウクライナを利用しようとしているのだ。
ヨーロッパと経済的に一体化することでロシアが強大化したら、アメリカの覇権にとって大きな脅威になるからである。ワシントンはロシアが弱体化して、中央アジアにおけるアメリカのプレゼンスに異を唱えないこと、死活的に重要なエネルギー資源の支配計画に異を唱えてこないこと、それを望んでいるのだ。
現在のところ、ロシアは西および中央ヨーロッパの天然ガスの約40パーセントを供給しており、そのうちの60パーセントがウクライナを通っている。
・アメリカ株式会社のこれからの問題は、EU諸国の国民をどう納得させるかだ。もしアメリカの計画が成功すれば、ヨーロッパは今までの倍額の暖房費を払って家を暖めることになるのだが、それが実際には自分たちの利益になると、何とかして納得させなければならない。この妙技を成功させるために、アメリカはあらゆる手段を使ってプーチンを対決の場面に引きずり出そうとしている。プーチンは邪悪な侵略者でありヨーロッパの安全保障に対する脅威だとして、メディアが非難できるようにするためだ。
プーチンを悪魔化できれば、ロシアからEUへの天然ガスの流れを止めるのに必要な理由が提供されることになる。これが成功すれば、ロシアの経済はさらに弱体化するうえ、NATOには、ロシアの西側防衛ライン沿いに戦前基地を確立する新たな機会がもたらされるだろう。
人びとが天然ガス価格で目を剥くことになろうが、最悪の場合は寒さで凍え死のうが、ワシントンには何の違いもない。大切なのは、次の時代の世界で最も有望かつ繁栄する市場へ「旋回」することだ。天然ガスによる収入を絶ってモスクワを叩きつぶし、ロシアが自身の国や国益を守る能力を侵食してしまうことだ。大切なのは世界覇権であり、世界支配だ。本当に意味があるのはこれなのだ。誰もがそのことをわかっている。
ウクライナの日々の出来事を追いながら、それを全体像から切り離されているかのように見るのはばかげている。すべては同じ、吐き気のするような戦略の一環なのだ。
・すべてはアジアへの、そして帝国の未来への旋回なのだ。だからCIAとアメリカ国務省は、ウクライナでクーデターを起こしてヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領を追放し、オバマの命令に従うだけの間抜けを後釜に据えた。だからこそ、詐欺師のアルセニー・ヤツェニュク首相は二度にわたる「反テロ」鎮圧を命じ、キエフの軍事政権に反対する東ウクライナの非武装活動家たちを弾圧したのである。
同じ理由でオバマ政権は、プーチンが建設的な対話に加わって、現在の危機への平和的な解決を見つけるのを避けていた。オバマの望みは、何とかクレムリンを長期的な内戦に引きずり込んでロシアを弱体化させること。プーチンの信用を失墜させ、ロシアの世論をアメリカとNATO寄りにシフトさせることだった。目標を明確に達成しつつある方針から、ワシントンがわざわざ外れるだろうか。そんなことは絶対にない。
・プーチンは、ウクライナでロシア民族が殺されるようなことがあれば対応すると、繰り返し表明している。これこそが、超えてはならない一線だ。ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相も先週、「ロシアの今日」のソフィー・シュワルナゼ記者によるインタビューで同じ主旨のことを繰り返していた。普段は物腰の柔らかいラヴロフだが、このときばかりは、ヤツェニュクによるウクライナ市民への攻撃を「犯罪」だとして非難し、かつ「ロシア市民への攻撃はロシア連邦への攻撃である」と警告している。
この発言のあとには、ロシア軍がウクライナ国境近くに移動したという不吉な報道があった。これは、市民への暴力を止めるためにモスクワが介入の準備をしていることを示している。
・もうわかっただろう。オバマの挑発によって、最終的にはプーチンも紛争の場面に引きずり出されることになりそうだ。しかし現実は、オバマの考えるように進むだろうか。はたしてプーチンは、ワシントンのシナリオ通りに動くだろうか。ウクライナ東部に部隊を残しておけば、アメリカの資金提供を受けた民兵ゲリラやネオナチの標的にされてしまう。それとも、何か奥の手があるのだろうか。たとえばキエフを急襲して軍事政府を除去し、あとは国際平和維持軍を要請して暴力を鎮圧させ、すばやく国境を越えて安全地帯へ帰るといったことも考えられる。
どのような戦略が採られるにせよ、それほど長くはかからないだろう。もしヤツェニュクの軍がスラヴャンスクを攻撃したら、プーチンは最精鋭の戦車部隊を送り込むに違いない。そうなったら、まったく新しいゲームが始まることになる。
<ワンワールド政府のウクライナ介入は世界大戦の号砲>
<ワンワールド政府はなぜロシア転覆を策すのか>
・今ウクライナで何が起こっているかを知りたい――。
よろしい、この機密情報報告は、いかにして1000名のアメリカ人「オブザーバー」が訓練されたうえでウクライナに送り込まれ、新しい大統領を決める選挙の監視に当たったかを明らかにするものだ。この報告は、これが4100万ドルもの費用をかけた、主権国家ウクライナの内政への恥知らずの介入作戦であったことを物語っている。
・一般には、キエフの街路を練り歩いた大規模デモは、いわゆる「選挙不正」への怒りに燃えた大衆が自然発生的に路上へ溢れ出したということになっている。もし読者がそう信じているなら、本章の情報が真実への橋渡しとなるだろう。
すべては、ロシアの分裂とプーチン大統領の信用失墜を狙ったものだった。
・ここでは、いわゆる「ニュース」はすべて嘘っぱちだという前提からスタートしなければならない。アメリカ国民は与えられた「ニュース」をそのまま信じ込むよう、タヴィストックの人間関係研究所によって条件付けされているからだ(この条件付けのプロセスは1945年に始まり、今日なお継続している)。タヴィストック研究所はわたしが長年研究してきたように、外交問題評議会(CFR)およびロックフェラーの系列に属する機関であり、CIAとも協力関係にある。傘下に多くの研究所、財団を持ち、アメリカ全体での資産規模は実質で600~700億ドルに達する。表向きは、人間官僚、心理学等の研究所であるが、実質的にはロックフェラーと彼に追従する英米支配階級のための国際諜報機関である。
・そもそも、なぜアメリカ政府はこれほどまでにウクライナにこだわるのだろう。かつてスターリンがウクライナで大量虐殺を繰り広げたときでさえ、アメリカ政府は指一本動かさず、ウクライナ国民を見殺しにしたではないか。
今のアメリカ国民は、ウクライナ選挙での「腐敗」が一般のアメリカ人にとって究極の重要問題だと信じるよう、条件付けられている。なぜアメリカ国民が、はるか彼方の国の出来事に関心をもたねばならないのか――答えは、マスメディアによってそれが重要だと条件付けられてきたからだ。
・ウクライナからの「ニュース」が突如として、イラクで負傷し死んでいくアメリカ兵よりも大切になった。もちろん、ドルの崩壊やわが国の金融破綻についてのニュースよりも、だ。政府と呼ばれる政治家の一団は、ニュースという単語の真っ当な意味を知らないのだろう。
アメリカが干渉というかたちで行ってきたことは、不道徳であり、不穏当であり、間違っている。わたしにとっての「腐敗」とは、建国の父たちが正しいアメリカの基礎として定めたものを、連邦議会がことごとく変えてしまったことを意味している。アメリカがウクライナで行った言語道断の内政干渉は、アメリカがいかに腐敗し、病んでいるかを示す新たな一例にすぎない。
・ウクライナで起こったさまざまな事態は、アメリカが世界をワンワールド政府の闇へ導こうとしている道筋を示している。アメリカがウクライナに盛んに干渉しているのは、ロシア政府を転覆させたいからだ。
では、なぜアメリカはロシアを転覆させたいのか――この答えもきわめてシンプルだ。ロシアがスターリンの時代から、新世界秩序「クラブ」への加入を頑なに拒んできたからだ。アメリカが資金を出し、訓練をし、装備も与えているグループは、民衆扇動のスキルがあって、そのために十分な給料をもらっている。
・これからウクライナでは、長い懐柔の期間が続くだろう。その時期のロシアは、脅しと甘言に交互にさらされるだろうし、場合によっては経済制裁という「銃弾なき戦争」も経験することになるかもしれない。ロシア政府には、ウクライナへの「干渉」を理由に、ありとあらゆる非難が浴びせかけられた。「プーチン大統領は、ウクライナ国民が自由を渇望していることを十分にわかっていたはずだ」と。
・アメリカとイギリスは、ウクライナを西半球の陣営に取り込みたいと切望している。しかしこの「半球」とは要するに「支配」ということであって、彼らの本当の狙いは、ウクライナとロシアを戦わせることだ。そうしてロシアを弱体化させておいて、ワンワールド政府=新世界秩序の力で転覆してしまうというのである。
<新世界秩序という捕食動物の次なる獲物>
・今のウクライナから見えてくるのは、肉食動物が次の獲物を狙って歩き回っている姿だ。それは1991年、イラク軍が秘匿する「大量破壊兵器」とフセイン元大統領の好戦的な姿勢への恐怖を煽ることで、本当の意図を隠していたのとぴったりと重なるのである。
・イスラム諸国は、新世界秩序(MWO)が捕食動物であることを昔から知っていて、アメリカの血に飢えた行動をいつも非難してきた。証明は誰の目にも明らかだ。共産勢力に対する「防衛組織」だったはずのNATOは、1990年代のバルカン半島で突如として恐るべき捕食動物に変身した。そして今回も、この捕食動物による同じような介入が、4100万ドルの機密資金を費やして行われた。捕食動物どもは二つの力を改変して、人(=政治)と宗教を支配する。建国の父たちはそのことをわかっていた。だからこそ、政治の世界で食べていこうとする者を軽蔑し、そうした連中を「ならず者以下」だと呼んでいた。もし建国の父たちが現代に生きていてくれたなら、どれほど豊かな風景が広がっていたことだろう。今の政界は「政治家」を自称する職業的なならず者で溢れている。
アメリカの政界は2004年ごろには堕落の極みに達していて、露骨な物質主義という野蛮へと変貌してしまった。今の政治家どもは貪欲な守銭奴以外の何ものでもなく、いわゆる「ロビイスト」が――賄賂名人とでも呼んだ方が適切だろうが――ワシントンと50州の州都に群がっている。そうでなければアメリカがここまで腐敗しているはずがない。しかもその腐敗は今もなお、捉えがたいほど少しずつ政界を侵蝕している。
・もう一つの支配勢力は宗教である。今の合衆国には「キリスト教原理主義」を自称する運動体がある。基礎となっているのはジョン・ネルソン・ダービーという人物の教えだ。
・原理主義者というからには、本来を神を畏れる真摯なキリスト教徒のはずだが、いつの間にか実に巧みに操作されて、“ある外国”の利益を擁護することを第一目的とするようになってしまった。彼らの指導者は、イラクでの戦争は「正義の戦争」だと言っていた。秘密裡、隠密裡に現在進められているロシアへの攻撃についても同様だ。まったく同じ論法でロシアとの戦争も「正義の戦争」だと宣言されるだろう。その理由は、かの国は(彼らの見方では)黙示録に記された「悪い国」だからである。
しかし、イラク戦争の理由をすべて検証し、純粋に歴史的な評価から考えてみれば、そこには「正義」の欠片も見出すことはできない。
<ウクライナ首都キエフでの「第二の真珠湾」>
・もし国際的なテニスプレーヤーかハリウッド女優、スーパーモデルだったら、ユリヤ・ティモシェンコの顔は何千という雑誌の表紙や特集記事ですっかりお馴染みになっていただろう。しかし、わずか数年のうちに億万長者となり、ヨーロッパ最大の国の一つで副首相にまでなった女性にしては、ティモシェンコはつい最近までまったく無名だった。
・ユシチェンコの顔は謎の病による痕跡に被われて――敵陣営によるダイオキシン中毒と噂されている――賢明さと不屈さ、そして弱さを併せ持っているように見えた。
・事の真偽は別としても、多くのウクライナ国民が貧困と飢餓に向かおうとしているときに個人で巨万の富を築いたティモシェンコは、1990年代末になって人気を失っていった。
<キエフの混乱の陰にあったアメリカ主導の世論誘導>
・ウェブサイトやステッカーに見られるキャッチコピーやスローガンは、腐敗した体制に広がる恐怖を払拭しようとしていた。ウクライナの青年運動「ポラ」の民主主義ゲリラはすでに名高い勝利を得た――キエフでの危険な対立がどのような結果を迎えるにせよ、だ。
政治に関しては伝統的に受け身のはずのウクライナ人が、若い民主主義活動家に動員されて大きく動いた。もう後戻りすることはないだろう。しかし、オレンジ色で飾り立てた「栗の実革命」はたしかにウクライナで起こったが、そのキャンペーンは何から何までアメリカ製だった。
・アメリカ政府が資金を出して組織し、アメリカの顧問団や世論調査専門家、外交官、さらにはアメリカの二大政党やNGOまで動員するこの手法は、最初は2000年にセルビアのべオグラードで使われて、当時のスロボダン・ミロシェヴィッチ大統領を選挙によって打倒した。
・ベオグラード、トリビシ、そしてこんどはキエフでも、当局は当初、権力にしがみつこうとしていた。そこで作戦としては、冷静さを失わないが決然とした市民による、不服従の大規模デモを組織することになった。あくまで平和的に、しかし体制側が暴力的な抑圧を考える程度には挑発的に、である。
もしキエフの出来事で、他国の国民を支援して選挙で勝利させ、反民主主義的な体制から権力を奪うというアメリカの戦略の正しさが証明されれば、確実に、旧ソ連社会のどこでも、このやり方が繰り返されることになる。注目される場所は、東ヨーロッパのモルドヴァ共和国と、中央アジアの先生諸国家だろう。
<ウクライナをめぐるアメリカの偽善>
・ブッシュ大統領は当時、「ウクライナで選挙が行われるのなら、それはいかなる外国からの影響も受けないものであるべきだ」と語った。なんと皮肉なセリフだろう。
大統領を二期も務めた人物の発言に賛成しないわけではないが、これと違った命令を受けたアメリカの政府機関がいったいどれほどあったことだろう。
・ブッシュ大統領が、もし本当にこの選挙が外国からの干渉無しに行われることを願っていたのなら、アメリカが野党候補の金庫に莫大な資金を注ぎ込んでいたのは、いったい何だというのだ。
もしロシアが、アメリカの大統領選挙で民主党の金庫に数百万ドルを注ぎ込んでいたら、どうなるだろう。別に問題はないと言える者がいるだろうか。アメリカはどちらの候補者も支持するべきではなかった。
・たとえばウクライナの「政策研究国際センター」というNGOを見てみよう。この組織はPAUCIを通じてアメリカ政府から資金援助を受けていた。
・しかしもちろん、最悪のプロパガンダマシーンであるFOXニュースの解説は「これを結びつけてアメリカによる干渉を意味することはできない」というものだった。
・しかし連邦議会は瀕死の状態にあった。ブッシュ政権の自動追認マシーンとなり果てて、本来なら憂慮しているはずなのに、そんな素振りも見えなかった。国民の大多数は薬漬けのゾンビ状態で、他国の存亡よりもバスケットボールの勝敗を気にして、目をあいたまま眠っていたのだ。
しかし、ひとつだけ明確なことがある。アメリカによるウクライナへの内政干渉のあまりのひどさに、ロシア軍指導部とプーチン大統領の周辺が大きな怒りを抱いていたという事実だ。まるでアメリカは、公然とプーチン大統領に恥をかかせたがっていたように思える。
・もし連邦議会が何もしないのなら、そこから引き出される結論はただひとつ――合衆国はすでにワンワールド政府=新世界秩序の位階組織が運営する勢力に完全に握られているということだ。ジョージ・オーウェルは正しかった。恐れるべきはロシアではなく、城門の内側の連中なのである。
<プーチン顧問の示唆に富む世界認識>
・ウクライナで起こったことを理解したければ、経済学者であり、プーチンの友人で大統領顧問でもあるセルゲイ・グラジェフの書いたものを読む必要がある。グラジェフは、世界経済の構造変化とアジアへのシフトが、権力にしがみついていたい一心のアメリカの政治家の必死の試みを加速させているのだと説明している。そしてその手段は、ヨーロッパでの戦争を画策することだ。
<●世界経済の構造的な変化は、往々にして、大規模な経済危機と戦争が先駆けとなる>
・現在の世界は、一連の重大な危機が重なり合った中を歩んでいる。最も深刻なものはテクノロジーの危機で、これには経済発展の波長の変化が伴っている。私たちは、経済がその構造を変えつつある時期を生きている。過去30年にわたって経済成長の原動力となってきた基本構造はすでに力を出し尽くした。今は、新しいテクノロジーシステムに移行する必要がある。しかし不幸なことに、この種の移行はつねに戦争を通じてやってくる。
<●プーチンは新たな世界経済(ニューグローバルエコノミー)への移行を容易にするために自由貿易圏を推進している>
・新しいシステムは本質的に人道的なもので、それゆえ戦争を回避することができる。なぜなら、この波長での経済成長の最大の牽引役は人道的なテクノロジーだからだ。これには、バイオテクノロジーを基礎とする医療・製薬業界も含まれる。ナノテクノロジーを基礎とする通信技術もこれに含まれるだろう(ナノテクノロジーは今まさにブレークスルーを起こしつつある)。さらには認知テクノロジーも、人知の新たな総体を定義するものとして関係してくるだろう。もし、プーチン大統領が一貫して推進しようとしているような、開発のための相互プログラムで合意ができれば、リスボンからウラジオストックに至る特恵貿易体制を伴ったユーラシア全体の全面的開発圏が生まれることになる。
<●ワシントンは、覇権を維持する最善の道はヨーロッパでの戦争だと考えている>
・しかしアメリカは、これまで通りの道を選択した。彼らは自分たちの世界支配を維持するために、ヨーロッパで新たな戦争を引き起こそうとしている。彼らは、ヨーロッパとロシア(旧ソ連)で500万人を殺した第ニ次世界大戦を「善い戦争」とまで呼んでいる。
・隆盛する中国などのアジア諸国との競争に直面しつつ、自分たちの指導的地位を維持するために、アメリカはヨーロッパで戦争を始めようとしている。彼らはヨーロッパを弱体化させ、ロシアを解体して、ユーラシア大陸全体を従属させようとしているのだ。狙いは、プーチン大統領が提唱しているような、リスボンからウラジオストックに至る発展圏の代わりに、この地域で混沌とした戦闘を始めること、そうしてヨーロッパを戦争に巻き込み、ヨーロッパ各首都の価値を落とし、自分たちの公的債務を帳消しにすることだ。
・すでに莫大な債務を背負って崩壊しつつあるアメリカは、これでヨーロッパとロシアへの借金を帳消しにしつつ、ヨーロッパとロシアの経済空間を従属させて、広大なヨーロッパ大陸の資源に対する支配を確立しようというのである。彼らは、これが自らの覇権を維持し、中国を倒す唯一の道だと信じ込んでいる。
不幸なことに、今展開されているアメリカの地政学は19世紀のものと酷似している。彼らは大英帝国の地政学的闘争という視点から考えている。すなわち、「分割して統治せよ」である。ある国を別の国と対立させ、紛争に巻き込み、世界大戦を始める――残念ながらアメリカは、この古臭いイギリス流の政策を継続することで自分たちの懸案を解決しようとしている。ロシアはこの政策の犠牲に選ばれた。一方のウクライナ国民は、この戦争の絶好の武器であり、使い捨ての兵士となる。
<●ウクライナ・ナチスの軍事政権はアメリカの政策の道具>
・ウクライナは、その経済と政治において主権国家ではなくなっている。連合協定で、ウクライナはEUのジュニアパートナーだと明記されているのだ。ウクライナはEUと共通の防衛・外交方針に従わなければならない。EUの指導下で、地域紛争の決議に参加する義務がある。つまり、ポロシェンコはウクライナをEUの植民地にし、弾避けとして対ロシア戦争に引きこみ、そこからヨーロッパでの戦争に火をつけようとしていたのである。連合協定の目的は、地域紛争を解決するなかで、ヨーロッパ諸国がウクライナを支配することにあった。アメリカの政策の目標は、可能な限りの犠牲者を生み出すことだった。
・ウクライナ・ナチスの軍事政権はこの方針の道具となっていた。情け無用の虐殺を実行し、都市部への空爆を繰り返して一般市民や婦女子を殺害した。彼らは故郷を離れざるを得なかった。すべてはロシアを挑発し、ヨーロッパ全体を戦争に引き込むためだ。それがポロシェンコに与えられた使命だったのだ。だからポロシェンコは、あらゆる和平交渉を拒絶し、すべての平和条約を妨害したのである。彼は、紛争をエスカレートさせないようにというワシントンの声明を、すべて逆の意味に解釈していた。国際レベルで和平に向けた話し合いがあるたびに、また新たな暴力が吹き荒れるのだ。
相手はナチ国家であることを理解しなければならない。彼らは断固としてロシアと戦争する構えで、すでに全国民を対象とした徴兵制を宣言している。18歳から55歳の男性すべてが兵役の対象だ。拒否した者には15年の懲役が待っている。このナチ犯罪権力は、ウクライナの国民すべてを犯罪者にしてしまう。
<●ワシントンは自分たちの利益のためにヨーロッパを戦争に突き落とそうとしている>
・わたしの計算では、アメリカから強要された対ロシア経済制裁によるヨーロッパ経済の損失は1兆ユーロにのぼる。莫大な金額だ。ドイツの損失は約2000億ユーロになる。バルト諸国の友邦の被害が最も大きいだろう。エストニアの損失はGDPを上回ってしまったし、ラトヴィアもGDPの半分を失った。しかし、それでも経済制裁は止まらない。ヨーロッパの政治家は、自分が何をしているかと疑問に思うことすらないままに、アメリカに追随した。彼らは、ナチズムを呼び起こして戦争を挑発することで自らを苦しめている。ロシアとウクライナが、アメリカの扇動する今回の戦争の犠牲者だということはすでに述べた。しかしその点ではヨーロッパも同様だ。この戦争がヨーロッパの高福祉をターゲットにしたものであり、ヨーロッパの不安定化を狙ったものだからである。アメリカは、ヨーロッパの資本と頭脳が引き続きアメリカへ流入することを期待している。だからこそ、ヨーロッパ全土を戦場にしようとしているのだ。そんなアメリカにヨーロッパの指導者が追随しているのは、まったく奇妙なことだ。
<●ドイツは今も占領国である>
・このまま手をこまねいていても、ヨーロッパの指導者が独自の方針を打ち出すと期待することはできない。同じヨーロッパでも、アメリカの命令に縛られない、新しい世代の指導者と手を組む必要がある。
今の政治家は、すべて自国の利益に反して行動している。理由としては、ヨーロッパの成長の原動力であるドイツが今も占領国だという点が最も大きい。アメリカ軍は今もドイツに駐留し、アンゲラ・メルケルを含む歴代のドイツ連邦首相はアメリカへの従属を誓約して、アメリカの政策の後追いばかりしてきた。この世代のヨーロッパの政治家には、アメリカによる占領という軛(くびき)を投げ捨てる覚悟ができていないのである。
<●再びナチズムが勃興する>
・もうソヴィエト連邦は存在していないのに、ヨーロッパの政治家はいまだにワシントンの後追いに熱をあげ、NATO拡大して新たな領土を支配下に入れようとしている。東ヨーロッパ諸国のEU加盟にはすでに「アレルギー」があるというのに、である。
ヨーロッパの「連合」はすでに綻んでいるのだが、だからといって旧ソ連領への侵略的な拡大が止む気配はない。わたしは、新しい世代はもう少し功利的ではないかと希望を抱いている。直近のヨーロッパ議会の選挙を見ると、誰もがこの親米反露プロパガンダに――ヨーロッパ大衆を襲う一貫した嘘の波に――騙されているわけではないことがわかる。
・このところは、ヨーロッパ議会の選挙があるたびに、各国の既存政党が勢力を失っていっている。われわれがもっと真実を語っていけば、さらに大きな反応があるだろう。なにしろウクライナで起こったことは、ナチズムの再来なのだ。ヨーロッパは、第ニ次世界大戦の教訓から、ファシズム復活の兆候を感じ取っている。
私たちは、彼らがウクライナ・ナチズムのなかに見ている、この歴史的な記憶を呼び覚まさなければならない。今キエフで権力を握っているのは、ステパーン・バンデーラやロマン・スヘヴィチといったナチ協力者を信奉している連中なのだ。この真実を広げていくことで、ヨーロッパを戦争の脅威から救い出さねばならない。
以上がプーチン大統領の顧問である経済学者、セルゲイ・グライエフの論文の抄出である。この英明な人物の筆に、現在のヨーロッパの抱える問題が見事に描き出されている。
<マリウポリの攻撃は反政府勢力によるものだった>
・モスクワを真正面から非難していたオバマ大統領は、アメリカはヨーロッパの友好諸国と協力して「ロシアにさらに圧力を加える」と述べた。
EUのフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表はこれを受け、EU加盟国の外相がブリュッセルで「臨時」会合を行い、ウクライナ問題について討議した、国連安全保障理事会もウクライナ問題で会合を開いている。
・鉄道の要衝であるデバリツェヴォの支配権をめぐる戦闘も激化していた。デバリツェヴォは政府側が抑えているが、西へ約50キロの位置にあるドネツィク市(ドネツィク州最大の工業都市)は分離独立派が支配していた。ウクライナ軍のアンドリー・リシェンコ報道官は、「反政府軍の砲撃によって、明確な数は不明だが多くの民間人が死亡し、住居60棟が被害を受けた」と語った。市内の2万5000人は電気も暖房もない状態だったということだ。
ウクライナ国民に訴えたい。母親たち、父親たちに、姉妹や祖父母たちに訴えたい。あなたの息子や兄弟を、この無意味で非情な殺戮の場所へ送り込むのは止めてほしい。ウクライナ政府の利害はあなたがたの利害とは違っている。
お願いだから正気に戻ってほしい。ドンバスの野にウクライナ人の血を吸わせる必要はない。この戦いにそんな価値はない。
――アレクサンドル・ザハルチェンコ(ドネツィク人民共和国首相)
<ウクライナ東部は第二のファルージャになるか>
・ワシントンは、自らの戦略目的達成のためにウクライナでの戦争を必要としている。この点はいくら強調しても足りない。アメリカは、NATOを使ってロシアを西部国境まで押し戻したがっている。アジアまで陸の陸の橋を架け、アメリカ軍の基地を大陸全体に広げていきたいのだ。
・アメリカは、ロシアからヨーロッパまで続くパイプラインの回廊を支配することでモスクワを監視し、これからも天然ガスをドルで支配しようとしている。ロシアを弱体化・不安定化させることで体制を変更し、分裂させ、最終的には海外から支配しようとしている。
・これこそが、ウクライナ東部での憎悪がエスカレートした原因であり、これからの激化する理由だ。アメリカの連邦議会が、ロシアのエネルギー部門への経済制裁を強化しつつ、ウクライナ軍に破壊的な支援を送る法案を承認したのも、これが理由だった。
・核兵器が使われる可能性も排除できないが、だからといって、それが近い将来に向けたアメリカの計画に影響することはないだろう。プーチンがドンバスを守るために核戦争を始めるとはだれも考えない。ということは、結局のところ、核兵器の抑止力は失われているということだ。
・そして、彼らは立ち止まらない。だから、ウクライナでの戦闘はこれからも激化していく。
・オバマ政権は、ウクライナ軍およびNATOの支援を受けたキエフ政権を支持するファシスト民兵組織への直接の武器供与に動こうとしている。これは、ウクライナ東部の親ロシア分離独立派に対する攻勢が失敗したことを受けたものだ。
・何が起こっていたのか、そして起こっているのか、わかってもらえただろうか。すでに賽は投げられているのだ。ロシアとの戦争はある。それが政治的エスタブリッシュメントの望みだからだ。もう単純なことだ。これまでも、ウクライナの煮えたぎった大釜にプーチンを誘い込もうとして失敗してきたが、こんどの暴力の急増――春の大攻勢――はうまくいくはずだ。アメリカの兵器とアメリカの後方支援で武装した代理人どもがドンバスをファルージャのような瓦礫の山にしてしまうのを、プーチンが黙って見ていることはないだろう。プーチンは、責任ある指導者なら誰もがすることをするだろう。それがすなわち、戦争ということなのである。
<非対称戦争の一環としての石油価格の下落>
・忘れてはならないことだが、ロシア経済は経済制裁によってすでに大きな損害を受けている。原油価格も操作され、ルーブルに対して憎悪に満ちた攻撃が繰り返されている。
・金融戦争、非対称戦争、第四世代戦争、宇宙戦争、情報戦争、核戦争、レーザー戦争、化学戦争、生物戦争――アメリカは伝統的な通常兵器の範囲を超えて、その武器庫を拡張してきた。目的はもちろん、ソヴィエト連邦が崩壊した1991年後の世界秩序を保ち、全面的な支配を維持することだ。モスクワを先頭とする多極的な世界秩序の出現は、継続的な支配をめざすワシントンの計画にとって、唯一最大の脅威となっている。
この二つの相争う世界観が最初に大規模にぶつかるのは、ウクライナ東部でのことになるだろう。神よ、われらを救い給え。
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