現に毎年ずっと100兆円ペースで国債を発行しているから、今や円の通貨力は50年前の水準にまで低下している。つまり通貨価値が下がった分だけ国力が低下しているわけです。(1)

(2022/10/23)

『無思考国家』

だからニホンは滅び行く国になった

秋嶋 亮  白馬社  2022/5/23

<すなわち、一切は事実と学識によって確証されるのだ>

・なお、本書は「極めてしつこいこと」を特徴としている。

 つまりグローバリズム(多国籍企業支配)、与野党談合、財政破綻、コロナ禍、改憲、原発事故などの論件について、分析の枠組みを取っ替え引っ替えしながら、徹底的に検証を繰り返すという構成であり、これにより「何がこの国の本当の問題であるか」を読者の脳に深く刻むことが狙いなのである。

 また可能な限り多くの概念を語彙化するように努めたが、このような言語論的回転のスタンスは、電脳界隈で席巻する「定型句の中の議論」への宣戦布告であることを申し添えておきたい。

・これはつまり一連のパンデミックが人為的な現象であることを仄めかす表記であり、「それに気付いたところでオマエたちは手も足も出せまい」という嘲りの表象であり、「プロビデンスの目(ドル紙幣や多国籍企業の商標などに意匠された支配勢力のシンボル)」の如き権力の刻印なのである。

・やはり巨大疫病禍は多国間に跨るファーモクラシー(薬品企業独裁)の謀略であり、改憲案に秘められた緊急事態条項もまた越境的な資本によって図られているのだ。

 それにしても、日本が実弾的な攻撃ではなく、仮想的な謂(いい)によって壊れつつあることに愕然とするのだが、むしろコロナ騒動というチ―プフェイク(安手の偽情報)によって、国民国家があっけなく消滅する脆弱さが現代の特性なのだろう。

 

<日本の暗黒化が止まらない>

<知性が武装解除されていることに気付いていない>

・要するに自公政権は外資の減税の穴埋めのために国民に増税し、福祉、医療、年金、教育などの予算を切り捨てる目論見なのです。この不条理はまさにJ・ガルトゥングの言う「帝国主義の構造理論」さながらです。「帝国主義の構造理論」とは、宗主国の資本が支配地域の民衆を搾取するという学説です。

――(聞き手:白馬社編集部)外資の支配によって、日本は子ども食堂という飢餓救済所が、6000ヵ所も設立されるほど貧しくなっています。それなのにコロナの混乱に乗じ、さらに国富が奪われるわけだ。

秋嶋 :経済を再生する最低限の原資すら残らないでしょうね。今や日本の国会は「利益集団自由主義」の営みと化している、と言っても過言ではありません。「利益集団自由主義」とは、政治を操る企業や資本が好き勝手に法律を変えたり作ったりするという意味です。

・「帝国主義」は資本の過剰を外交的な手段で解消する運動。「グローバリズム」は帝国主義の再領域化と定義されます。そして現代の帝国主義者であるグローバリストは規制の解除(外交圧力)によって我々を支配しているわけです。おっしゃる通り「グローバリズム」とは現代の「帝国主義」です。

<監視警察国家への移行が急務である理由>

――緊急事態宣言が繰り返し発令されていましたが、戒厳令的な措置は改憲の前振りだったのでしょうね。

秋嶋 :国民を恐怖とヒステリー状態に沈め、「もはや既存の憲法の枠組みでコロナ禍に対処できない。緊急事態条項を盛り込んだ新たな憲法を制定すべきだ」という合意を促していた、と考えられます。

<ナチス宣伝省化した記者クラブ>

――そもそも数ヶ月にわたる減収に耐えうる体力を持つのは一部の大手に限られます。休業要請は中小チェーンや個人事業者に対する事実上の廃業勧告だったのでしょう。コロナ禍の2年間における倒産廃業件数は過去最高を記録しましたが、今後も緊急事態宣言が続くようであれば恐慌は確実です。

秋嶋 :この状況で移民が解禁されたわけですから、失業問題もかつてないほど深刻になるでしょう。

<国民を服従させる「監視環境」とは>

――自分が子どもだった頃を想うとよく分かります。小中高合わせて12年間もみっちり調教されるわけだから、自分のアタマで考えることなんて出来なくなりますよね。

秋嶋 :哲学者のミシェル・フーコーによると、中世に行われていた残虐な公開処刑が近代以降廃止されたのは、学校、病院、軍隊、刑務所などの「監禁環境」が完成し、国民の内面を操作できるようになったからだそうです。「全制的施設」という言葉もありますが、同じような意味です。いずれにしろ、このような社会装置によって、人間の内面を操作する統治が完成しているわけです。

<「死を欲望する社会」という意味>

――それにしても、かつて無いほど暗い世相ですね。

秋嶋 :日本は「デストルドー社会」と化しています。

――これまた難しい言葉ですね。説明をお願いします。

秋嶋 :「デストルドー」とはフロイトの精神分析用語で“死を欲望する”と訳されます。要するに、国が公衆衛生や福祉の向上に努めることを放棄し、棄民などの残酷な行為に及ぶという意味です。

<現実が抹消され疑似現実が置き換えられる>

――そうやって国民は改憲を当然のこととして受け入れ、そのまま専制国家に突き進むわけだ。

秋嶋 :その通りです。憲法改正は最悪の形でパブリック・アジェンダ(国民的議題)化するのです。

<政党や政治家を聖化してはならない>

――野党の支持者にとって、野党が与党と通じているという主張は到底受け入れ難いでしょうね。

秋嶋 :小著で幾度も述べましたが、日本の政治体制は典型的な「ヘゲモニー政党制」です。「シンクレティック・ポリティクス」や「アノクラシー」という言葉もありますが、いずれも同じ意味です。要するに与野党は形式的に対立しているだけなのです。

<知られざるナチスとワクチンとの関係>

――さらにマスコミが「反ワクチン派は不見識で非科学的な連中だ」という印象操作を繰り返し、彼らを援護していますからね。

秋嶋 :それによって「感情ヒューリスティックス」が形成されているわけです。「感情ヒューリスティックス」とは、ワクチンに反対する者をバカだと決めつけるような感覚的な認識の枠組みという意味です。こうして「治験を終えていないワクチンを子どもに摂取させるな!」という真っ当な意見が圧殺されているわけです。

<直視すべき過去と現在と未来>

<政府は言論弾圧を宣言した>

――コロナワクチンの集団接種が始まった頃、医師と地方議員から成る450人が中止を求め国に嘆願書を提出していましたが、これがきちんと報道されていれば、これほどの被害は出なかったでしょうね。

秋嶋 :新聞テレビは宣伝機関になっていますからね。政府に不都合なことは報道しません。

<国家は破綻しないが国民は破滅する>

――国債の償還のために国民負担率は過去最大となり、実に所得の半分近くが巻き上げられているのに、それでも「国債を刷れ!」と言っているわけだ。たしかにこの恐慌状態では国民におカネを配らなくてはいけない。しかし、その財源は今の予算に埋もれているわけで、国債で調達するなんて馬鹿げていますよ。

秋嶋 :国債償還費はすでに国税の半分近くになっています。つまり国民が納めた国税の約半分が国債という借金の返済に使われているわけです。しかしこれはあくまで一般会計の話であって、特別会計における償還費はすでに国税額を超えています。昨年度の特別会計における国債償還費は99.7兆円です。つまり国税170%のカネが国債の元本と利息の支払いに充てられている。そのため潜在的国民負担率は60%を超えているのです。はっきり言いますが、日本は世界最悪の重税国になるでしょう。

――MMTの信者は「通貨発行権のある国は財政破綻はしない」と言っていますが。

秋嶋 :通貨発行権を持つ国でもガンガン財政破綻していますよ。ブラジルやアルゼンチンなどのラテン諸国がいい例です。財政破綻をすると悲惨ですよ。社会保障は真っ先に削られるし、税金はメチャクチャ高くなります。医療や教育などのサービスも劣化します。

――いずれ日本は財政破綻するのでしょうか?

秋嶋 :国は破綻しません。なぜなら国は国債の発行高を金融資産に拮抗させるからです。この意味が分かりますか?いざとなったら、国は徴税権をかざして償還のため国民の資産を奪う、ということです。

――国は破綻しないけど国民が破滅するわけだ。

秋嶋 :国は国債の発行と取引を仕切るだけで、国自体に借金はないですからね。借金を負うのはあくまで国民です。ちなみに「国債は国民の資産である!」というキャッチは戦時中に大政翼賛会が考案したものです。それが今、民主政治のスローガンのように叫ばれているわけです。

――そもそも金融機関が国債を買うのは、元本利息を国民が納税で払ってくれるからですよね。おっしゃる通り、それは徴税権によって保証されている。

秋嶋 :その通りです。結局、四半世紀に及ぶ消費不況も国債が大きな要因です。国民は莫大な償還費のため所得の半分近くを徴収され、使えるおカネが激減している。だから個人消費が滞って不況になっているわけです。アダム・スミスの「国家にとって最大の脅威は国債である」という言葉は、この状況を示唆しているのです。

<これを「忘却による支配」と言う>

――東京五輪は遠い昔の出来事になってしまいましたが、今想えば、あれは日本という国がどれほどイカれた国であるかを世界に知らしめるイベントでしたね。

秋嶋 :エンブレムが盗作であることが騒がれ、式典の作曲者が障害者を虐待していたことが報じられ、招致に9億円の裏金が支払われたことが暴露され、組織委員に1人当たり35万円もの日当が支払われていることが指摘され、公正な立場であるべき新聞社とテレビ局がスポンサー契約していることが批判されていましたからね。

<ヒトラーユーゲントが靖国神社に参拝した黒歴史>

――それにしても、コロナの発生以来、世界的にファシズムが復古しているように思います。

秋嶋 :戦後ずっと反ファシズムを国是としてきたドイツでも、コロナ禍を機に「感染症予防法改正案」が制定されました。これは防疫を名目に人身の自由や、集会・結社の自由を制限する法律です。結局ドイツも日本も国家という概念で容易く全体主義化される「非真正な社会」なのです。その意味において、コロナ禍の現代は民族の基質が露わとなる次元なのかもしれません。

<貧困問題は外交問題である>

――先進国の中で日本だけが20年以上もマイナス成長で、タイやブラジルよりも貧しくなったと言われていますが。

秋嶋 :それなのに、御用マスコミが「自民党の政策が功を奏し経済は絶好調だ」みたいなことをずっと報道していたわけですよ。今や韓国の平均所得の方が日本より上ですからね。

――日本の貧困化の原因は色々あると思いますが、主に何だと思われますか?

秋嶋 :第一に派遣法の改悪ですね。これによって大企業の内部留保と投資家の配当は倍になりましたが、勤労者の40%近くが使い捨ての低賃金労働者になりました。第二に国債の償還に伴う国民負担率の増大です。これによって国民の可処分所得が年を追うごとに減っています。もちろん他にも色々ありますが、この二つが貧困の主な要因です。

――しかし、その一方でボロ儲けしている人々がいます。

秋嶋 :世界は本質として、誰かの損失が誰かの利益になる「ゼロサム構造」です。投資家たちは、勤労者の非正規化や、公営企業やインフラの民営化や、諸々の規制緩和や、配当政策の強化などにより、この僅か20余年の間で、実に200兆円を超える利益を得ています。

――そんなにですか?

秋嶋 :そもそも日本の派遣社員のピンハネだけで年間30兆円を超えるわけですよ。彼らがどれほど桁違いに儲けているかということです。

――やはり世界を動かしているのは、政治ではなく金融なわけだ。

秋嶋 :この状況的な枠組みを「黄金の拘束服」と言います。「黄金の拘束服」とは支配勢力が政治家をカネで篭絡して、都合のいい制度や法律を作らせる仕組みという意味です。その結果として、日本はずっと不況が続いているわけです。

――失業中でも、日雇い仕事や、アルバイトをするだけで除外されますからね。ハローワークに通わなくなった人たちも除外されている。だから実際の失業率は公表のざっと4培から5倍、いやもっと多いかもしれない。

秋嶋 :EUの算定基準だと政府発表の10倍という指摘もあります。いずれにしろ、政府も経済団体も移民政策を強化して安く使える外国人をドンドン入国させたいわけです。だから「こんなに失業率が高いのに、移民を受け入れるなんてふざけるな!」という世論を警戒しているわけです。

――だからマスコミには失業率を低く報道させるわけだ。

秋嶋 :支配層は正規雇用のパイをさらに減らし、労働者を安く使い捨てにして儲ける単発請負型経済を推進しています。膨大な失業者を生むコロナ禍と移民の解禁は、まさにその一大契機なのです。

――失業は人生で遭遇する最も過酷な事ですよね。今後それが爆発的に増えるわけですから、これからの日本は益々重苦しい社会になります。

秋嶋 :それがまさに「インター・リージョナル化の悲劇」なのです。「インター・リージョナル」とは世界支配に包括される地域という意味です。

――しかしこれに対抗する政治的な勢力がないからどうしようもないです。

秋嶋 :政治学者D・ヘルドは政府が国民のためではなく資本のために働く現代を「逆説の時代」と称しました。これがまさに我々の今という次元を言い当てた言葉なのです。

<国民社会は「支払い/履行共同体」に仕立て上げられた>

――やはり新聞テレビは洗脳装置です。

秋嶋 :ちょっと難しい言い方をすれば、3・11は政府広報とマスメディアによって「集合的歴史」と化しているのです。「集合的歴史」とは、事実ではないにもかかわらず事実として国民に広く共有される歴史認識という意味です。

<中国式のデジタル監視社会が登場する>

――コロナ騒動に乗じてデジタル関連法案が成立しましたが、これはかなりヤバイのではないでしょうか?

秋嶋 :63の法律を束ねた一括の採決でしたからね。しかも審議時間は衆参合わせて30時間にも満たず、法律の専門家に「中身が殆ど分からない」と言わしめるシロモノです。

――特定秘密保護法の審議が46時間、安全保障関連法の審議が117時間であったことからしても、デジタル関連法案の審議が一体どれほど異常だったかが分かります。

秋嶋 :ちなみにこの法律の核心である個人情報保護法改正案とは、これまで行政機関と民間企業がバラバラに保有していた個人情報を一元化し、双方が共有できるようにするというものです。そうなればグーグルやヤフーなどから検索、アクセス履歴、メール情報などが抽出されます。それだけでなく、スマホのキャリアから通信履歴や位置情報が、行政側の持つ個人情報と結びつけられることになります。

<コロナ禍の裏で日本の植民地化が進む>

――RCEPは東南アジアなど15カ国が加盟する巨大な貿易協定ですよね。かれこれ8年にもわたり協議されていましたが、内容はほとんど知らされていません。

秋嶋 :確かであることは、中国などの安価な物産が膨大に流入し、生産者の多くを駆逐し、一次産業を壊滅させることです。それによって(カロリーベースで)38%という先進国最低のニホンの食料自給率はさらに下がるでしょう。しかし、食料が有事の際には戦略物資に転化することを考えれば、これは深刻な国防問題に発展します。

<無知を自覚しないという悪>

<超富裕階級が構想する世界>

――秋嶋さんが陰謀論の大御所ベンジャミン・フルフォード氏と対談した本はメチャクチャ面白かったです。

秋嶋 :あれは対談というより対決でした。ほとんど口喧嘩と言ってもいいでしょう。共著にtalk battleという副題が添えられたのはそのためです。しかし陰謀を謀議という言葉に置き換えれば、これはもう社会の至るところにあるわけです。

――中小零細企業にも、田舎の役場にもある。

秋嶋 :まして何百兆円ものカネが動く国際政治や金融経済の世界には途方もない謀議があるわけです。「世界は謀議によって成る」と言っても過言ではありません。

・ギー・ドゥボールの言う「スぺクタクルの社会」さながらの状況です。要するに人々は新聞やテレビによって夢幻状態に置かれているのです。換言するならば、心理学者の言う「幻想の真実」に没入して、現実原則を失っているわけです。

<「帝国官僚制」が日本を絞め殺す>

――国の借金が1200兆円を超えたと発表されました。これは国民1人当たりに換算すると1000万円近い膨大な額です。

秋嶋 :前述した通り、国税60兆円のほぼ全額が、公務員や(旧特殊法人などの)準公務員の給与、彼らの福利厚生、財政投融資の返済、天下り団体の維持費などに注ぎ込まれています。だから税収では予算を編成できません。公務員が税金を食ってしまうからこれほど莫大な国債を発行しなくてはならないわけです。何度も言いますが、これは役人が作った借金ですよ。国民の借金ではなく、公務員の借金なわけです。

――財政投融資とは国の外郭団体が郵貯や簡保から借り入れることですよね。確かに役人が作った借金だ。ちなみに国の本当の予算額はどのくらいでしょうか?

秋嶋 :一般会計と特別会計の重複を差し引いた正味予算は245兆円くらいです。

――本体予算は国税のざっと4倍ですね。こんなことをしていては国は潰れますよ。それなのに国民はこの仕組みを全く分かっていない。国家債務がGDPの240%に達しながら、そうやって公務員が税金を私物化し、国家会計を国債で編成するという旧ソ連も真っ青の官制経済は全く解体されないわけです。

秋嶋 :こういうのを「ロトン・ビューロクラシー(腐敗官僚制)」と言います。「公務員アリストクラシー(特権貴族主義)」と言ってもいいでしょう。この構図は地方も同じです、自主財源で予算を賄っているのは東京都を始めとする僅かな自治体だけです。殆どの自治体は地方税の全額を役人の給与に充てています。そうやって地方は地方交付税(国債で調達したカネ)と地方債という二重の借金で予算を編成しているわけです。

<国民に思考を放棄させる運動>

――これまでの話をまとめると、MMT(現代貨幣理論)は財政問題や金融支配の実態を不明にするために広められているのでしょうね。

秋嶋 :だと思います。「国債を発行して現金を配れば万事解決するのだ」という誤謬によって、社会資本の再分配(集めた税金をどのように有効に使うのか)というプロブレマティク(政治の最重要課題)を殺しているわけです。

――反自公政権のインフルエンサー(影響力のある発信者)たちが「予算の使途なんて細かいことはゴチャゴチャ考えるのをやめろ!」とかツイートしていますからね。そうやって自分たちが自公政権を応援していることを全く分かっていない。

秋嶋 :だからMMTは巨大な曖昧主義運動に発展しているわけです。これは要するに国民に思考を放棄させるための取り組みです。

――そもそも「国債は国民の資産だ!」とか言い出したのは自民党の界隈です。

秋嶋 :「国債は国民の資産だ!」というキャッチは数年前までネトウヨの常套句でした。要は広告代理店を通じて雇われた連中がそんなことを5ちゃんねるに書き込んでいたわけです。

<この洗脳はオウムの洗脳を解くよりも難しい>

――今やMMT(現代貨幣理論)や「国債は国民の資産である論」は或る種のイデオロギーになっていますね。

秋嶋 :イデオロギーの本来の意味は「虚偽意識」です。早い話、ウソの刷り込みという意味です。その意味では確かにMMTはイデオロギー化しています。

――弊社の広報がMMTに懐疑的なツイートをすると、たちまち吊し上げられます。MMT信者のインフルエンサーが「みなさん! MMTを否定する愚か者がいます!」みたいな攻撃をけしかける引用文をつけてリツイートする。そしたらフォロワーたちがたちまち「撤回しろ!」と大量のコメントを送ってくるわけです。

秋嶋 :SNSでは「同類原理」が働きますからね。同じレベルの人たちが群れて凝集性が高まるわけです。だからそんな風に大人がつるんでネットリンチをすることが、恥ずかしいことだとも思わなくなるのです。

――こうなるとカルトと同じだから何を言っても無駄でしょうね。

秋嶋 :おっしゃる通り、導師に帰依するのと同じ心理状態です。言い換えると、「国債は国民の資産だ!」という聖句を唱えることで或る種のニルヴァーナ(法悦)状態が生じるから余計に始末が悪いのです。

・もし僕に反論するのなら、次のことに即答できるか自問して頂きたいのです。国債にはどのような種類があるのか。それぞれ発行残高はいくらなのか。借換債と合わせて年間どれだけの国債が発行されているのか。それらの金利は合計いくらなのか。償還費は国税額の何%に膨らんでいるのか。国債の発行にスライドして円のレートが対ドルでどの位下がっているのか。言っておきますが、これは基礎中の基礎ですよ。この程度のことも知らずに財政について賢しらな顔で語る愚かさを一度よく考えて頂きたいのです。

<国債によって国民が奴隷化する仕組み>

――国債を国債で返済し続けると、手形のジャンプと同じで金利が雪だるま式に増えますからね。

秋嶋 :それだけでなく、国債の累積に伴い通貨がダブつくから円の価値が下がります。現に毎年ずっと100兆円ペースで国債を発行しているから、今や円の通貨力は50年前の水準にまで低下している。つまり通貨価値が下がった分だけ国力が低下しているわけです。エネルギーや、食料や、原材料の輸入コストが跳ね上がり、国民の生活もドンドン苦しくなっています。

――つまり過剰な国債が円安を進行させている。そしてそれによって中小企業の経営が圧迫され、倒産や、廃業や、失業が増えている、個人消費が低迷して設備投資が上向かない。そうやって不景気がずっと続いているわけだ。

秋嶋 :だから「国債は国民の資産だ!」とかいう理屈は、為替や金利の影響を無視しているわけですよ。これほど酷い事態なのに。彼らの主張は摩擦や引力を考慮しない物理学のようなもので、最初からインチキなわけです。思考の粘り強さがない人間が難問に向き合うと、必ずこのような集合意識的な意見にハマるのです。

<恐怖政治の兆候が現れている>

――緊急事態宣言が4回にわたり発令されましたが、これによって国民の意識はどのように変化したとお考えですか。

秋嶋 :「緊急事態」という言葉によって、国民は異様な例外状態に慣らされ、正常な意識が鈍っていると思います。

・緊急事態宣言によって「アントロポゲネシス」が進んでいるとも言えるでしょうね。「アントロポゲネシス」とは例外状況で人間を再創造する行為という意味です。つまり一連のコロナ禍で戦時に匹敵する人間改造が行われているわけです。

・元々日本社会は「解剖政治」の営みなのです。「解剖政治」とは学校や企業で徹底的に規律を叩き込む体制という意味です。それが緊急事態宣言によって強化されているわけです。だから国防婦人会のような「マスクをしなさい!」とか「ワクチンを打ちなさい!」とか説教するオバサンが大量発生するわけです。

・何が社会的事実であるかを決定する諸力を「地位機能」と言いますが、結局、政治家や、企業や、マスコミや、公務員の都合によって、ワクチンは安全だとされているだけなのです。

<選挙で政治を変えることはできない>

――ところで、SNSの誹謗中傷対策を強化するため、侮辱罪が厳罰化されますよね。そうなると、今後は政治家や政党を批判した場合には、懲役刑が適用されることも考えられるのではないでしょうか。

秋嶋 :その可能性はあります。結局、侮辱罪の厳罰化は新しい体制に向けた「対処戦略」なのです。こうした反抗者に厳罰を科す専制社会が出現するわけです。ぶちまけて言うと、昭和の戦時中のような特高警察が支配する弾圧社会が再来するわけです。

・もっともTPPの約款は4年間非公開の取り決めであることから、このような事情が国民に周知されないわけです。今後周知されたとしても、その時には取り返しがつかないかもしれません。

――なるほど。結局全ては、与党や野党の頭上で決まっているわけですね。本当の権力は国会にも永田町にもないわけだ。

秋嶋 :ダヴォス階級(超富裕層と世界投資家)が真の王なのです。スイスの山荘や、フランスの古城や、アドリア海のヨットとか、そんなところで日本の重大なことが決められている。これがトランスナショナル(国境を超越する様)な世界権力なのです。与党も野党も、その末端に過ぎないのです。

<外資が日本のワクチン政策を決める>

・鳩山由紀夫が「総理大臣になるまでは、法案は国会で決まると思っていた。ところが、総理大臣になってみたら、重要な法案の大半が日米合同委員会で決まるのでびっくりした」と言ってましたからね。

・社会学的に見れば、選挙とは「ハマルキー」が在ると錯覚せしめる国劇です。「ハマルキー」とは、公正な選挙によって選ばれた国民の代表が政治を行う制度という意味です。要は形式的な選挙によって人治制という日本の政治の実体を隠しているわけです。

・今や勤労者の半数近くが派遣という奴隷である件、20年以上も給与が上がっていない件、自由貿易や民営化、特区や特別会計なども争点にされていませんでした。触れている政党もありましたが、マニフェストの片隅では「ちょっと言ってみた」という程度でした。憲法改正というメガ級の問題も争点にされていなかった。何度も言いますが、露骨な「談合選挙」だったわけです。

・インタ―ネットは元々アメリカ国防高等研究計画局の軍事イノベーションです。これが民間に転用された時点で、こうなることは最初から分かっていたわけです。これを「ポストモダンな支配状態」と言います。つまり我々はITを駆使した全方位的な監視体制によって人権が崩壊する時代を迎えつつあるのです。

――やはり国会を超越する世界的な権力が日本の政治家を支配している。だから、ワクチンという大きな問題が選挙で全く争点されなかったわけです。

秋嶋 :結局、日本の民主主義とは、仮想民主主義ないしは非自由主義的民主主義なのです。もしくは混成民主主義(独裁主義と民主主義のハイブリッド)などの、いわゆる「形容詞付きの民主主義」なのです。

<洗脳と調教の国家>

<国民の側に立つ政治家などいない>

――改憲勢力が衆院の過半数を占め、俄然きな臭くなってきましたね。

秋嶋 :「ベトクラシー」が完成しつつあるわけです。「ベトクラシー」とは諸勢力が一つの権力に糾合された状態という意味です。オルタナティブが消えて、昭和の大政翼賛会のような議会状況なわけです。

<人間が家畜化される時代の風景>

・結局、今起きていることは「国家のアデミア化」です。「アデミア」とは、人権を持つ国民がいない状態という意味です。そして同時に国民の「ヘルデ化」が進行しているわけです。「ヘルデ」とは、思惟という人間の要件を失った事物という意味です。ぶちまけて言うと「家畜動物」という意味です。こんな風になった原因も含めて全体社会を検証しなくてはならないわけです。

<全体主義より知性の崩壊の方が怖い>

・スマホによって国民の知性はドンドン衰えていますからね。特に若い世代は長文や活字に向き合いません。こうなると複雑な問題に対処する思考力や論理力を養うことができないでしょう。

<科学者による科学に対する暴力>

・全ては商業的強制力の現れです。要するに、アカデミズムの上部には多国籍なメディカル資本とそれに与する政治集団があり、学者たちはそのようなポークバレル(金権政治)な連合に下達され、「若者よ、コロナワクチンを接種せよ!」とぶち上げているわけです。

<命がけでなければ語れないこと>

――「秋嶋 亮はいつも問題を語るだけで解決策を示さない。一体どのように対処すればよいのか分からない」という声が寄せられています。そこで今回はこれに答える形で、言わば「秋嶋 亮のマニフェスト」として解決策を語って頂きたいのですが。

秋嶋 :高度専門職を除き非正規雇用を原則禁止し、ディーセント・ワーク(十分な収入があり社会保障が整備された正規雇用)を推進します。国民年金を倍額にし、3000万人の低年金者を救済します。成人まで一子あたり月額5万円の育児手当を支給し、義務教育から大学まで無償化します。その財源確保のため大企業の内部留保や宗教法人の資産に課税し、(大企業や富裕層の減税に充てられている)消費税を転用し、電波オークションの導入よりテレビ各局から適正な使用料を徴収します。オフショアへの送金を禁止し、企業部門の課税を強化し、中低所得者を減税します。

――これは鳩山・小沢政権がやろうとしていたことですよね。しかし国策捜査によって解体され頓挫しました。陸山会事件は事実上のクーデターだったのでしょう。

――それでは財政問題についてはいかがですか?

秋嶋 :国会の承認を受けずに官僚が秘匿的に編成する特別会計を廃止し一般会計に一元化します。これにより国家予算の内訳と明細を可視化させます。国防予算200%相当の予算を蕩尽する天下りを禁止し、国の外郭団体とその傘下企業を統廃合します。これにより国債の発行高を現行の50%以下に抑えます。公務員の給与を都道府県の中小企業の平均値に合わせ、昇給をGDPとのスライド制にします。地方公務員の天下り先となっている地方公社や第3セクターを廃止します。1200兆円に膨張した国債の約半分は(郵貯や年金の借り入れである)財政投融資によるものであることから、それを起債した独立行政法人や旧特殊法人の資産を処分するとともに、財政投融資の償還が終わるまで当該法人の職員給与を減額します。

・いずれ国民負担率(所得に占める税金と保険料の割合)は60%を超えますが、それはビューロクラシーによるものです。国民は公務員の奴隷と言っても過言ではありません。しかし故・石井議員のように財政問題に取り組む政治家は二度と出てこないでしょうね。誰だって命が惜しいですから。

――次に改憲問題についてお願いします。

秋嶋 :改憲は認めません。現行の憲法を護持します。改憲案に盛り込まれた緊急事態条項が一旦発令されたならば、政治体制は実質ファシズム化するからです。

――それでは民主政の危機問題についてお願いします。

秋嶋 :戦前回帰や徴兵制を唱道したりファシズムを礼賛する議員を罷免する制度を設けます。特定秘密保護法や共謀罪法を始めとする反民主法を廃案にします。

――それでは最後にグローバル化問題についてお聞かせ下さい。

秋嶋 :TPP、FTA、RCEPなどの自由貿易協定の条文を公開します。これらが食料自給、経済主権、保護医療などを破壊する実態を周知し、国民合意の上で離脱します。外資だけが利益を得る国家戦略特区や諸々の民営化を禁止します。すでに民営化された水道などの公営事業は再公営化します。日米経済調和対話を廃止し、在日米軍を段階的に縮小させ、アメリカ国債の引受割合を半分の60超円程度まで低減させます。外国人の土地取引を規制し、森林や水源、国防の重要地域の取得は全面禁止とします。銀行法を再改正し、金融機関による出資企業の株式の取得上限を10%以内とし、中小企業の乗っ取りを防ぎます。

・やはり問題は国民が政治家の背後にある巨大な権力の存在に気付いていないことなのです。これを「根本的帰属錯誤」と言います。日本人は国内外に跨る金権政治構造に無知であることを付け込まれている。なのにその自覚が全くないことが日本最大の問題なのです。

 

<ショック・ドクトリンの教科書通りに進んでいる>

・一般の人は信じられないでしょうが、この事件を契機にアメリカ型の監視空間が日本に移植されるわけです。いずれにしろ日米の二国間に跨る強力な専制権力を措定しなくてはなりません。それがすなわちこの事件を紐解く「仮説的構成概念」なのです。「仮説的構成概念」とは、不可視であるけれど状況からして在ると仮定せざるを得ないものという意味です。これによって我々は、部分情報(各論)と全体情報(総論)を結びつけることができるのです。

<公衆衛生の美名の下に成るファシズム>

・コロナによって世界は激変したと言ってもいいでしょう。公衆衛生の名目で民主政が後退し、地球規模で私権が制限され、かつて経験したことのない「カタクリズム」が生じています。「カタクリズム」とは破壊的な変化という意味です。やはり一連のコロナ現象は、世界を全体主義化させるモメントなのです。

<野党共闘ではなく与野党共闘>

・「原子化された多党制」という言葉がありますが、要は野党が結束して与党に対抗するなんてことはできないわけですよ。早い話、与野党の対立はポーズだけです。野党が連合して与党に立ち向かうなんてことは絶対ないわけです。これは議論の余地のない「社会学的な事実」です。それが先の選挙で証明されたわけです。

<破局の時代に突入した>

<多国籍な製薬企業が作る搾取構造>

・ちなみに薬品の世界市場の総額は約140兆円ですが、これは軍事市場の実に3倍の規模です。このような莫大なマネーが政界工作に用いられ、強権的なワクチン政策を推進している、と考えれば合点がいくのではないでしょうか。

<1億人がテレビに説得されワクチン接種を終えた>

・テレビの出演者たちは一様に感染の恐怖を煽り、集団接種を賛美し、ワクチンパスポートの導入を訴えています。このように意識に強烈な作用を及ぼす発話は、カルトが得意とする洗脳の「マンド」なのです。「マンド」とは要求言語という意味です。そうやって視聴者や購読者は無意識のうちに洗脳されているわけです。

<公共放送がフェイクニュースを流す>

・我々の体系は「全体主義の国家は情報に操作される大衆の国家である」という言葉さながらの様相を呈しているのです。

<改憲は与党と野党の双方にとって美味しい>

・何度も言いますが、緊急事態条項は支配層の自由解釈によって運用できる「授権法」です。ナチスはこれによって政権の地歩を固め、全面戦争に突き進み、ホロコーストをやってのけたわけですから、どれほど危険か分かるでしょう。

・緊急事態条項が一旦発令されたならば、内閣は法律と同等の政令を制定できるだけでなく、国民はそれに服従することが義務付けられます。集会や言論の自由も軒並み停止されるわけです。

・「劇場国家」とはそういう意味です。だって原発事故の実態解明、汚染水の放出、除染土の再利用、5G、自由貿易、ワクチン被害、経済特区、移民、特別会計、特殊法人、民営化、規制緩和、不正選挙とか利権の核心に触れる問題は全く言っていいほど国会で取り上げられないでしょ? 最初から問題の「中心」を避け、「周辺」の議論に徹することが、与野党の間で談合されているわけですよ。

・共産党が「桜を見る会疑獄」で安倍政権を追求していましたよね。自治はあの質疑の裏でFTAの審議が進められていたわけです。国民は全く気付いていませんでしたが。結局、FTAの発効によってアメリカ産の牛肉や穀物が大量に入って来ることになりました。そしてそれによって国内の生産者が潰されるわけです。それだけでなく、医療や保険の分野の開放も余儀なくされます。高額療養費制度や、国民皆保険制度などが、FTAの枠組みで段階的に骨抜きにされるでしょう。現にFTAが締結された際、当時の米国大統領だったドナルド・トランプは支持者に向かって「わが国の圧倒的勝利だ!」と宣言していましたからね。

<憲法を改正すれば人権を抹消できる>

・侵略的な自由貿易、関税権や食料主権の撤廃、社会保障の大削減、医療のプレミアム化(国民皆保険制度の解体)、労働権の縮減(不安定雇用の増加)、移民の流入に伴う大量失業、(個人消費の死絶による)永久的な不況、遺伝子組み換え・編集食品の流通、(グローバル企業を減税するための)重税と社会保険料の過剰な引き上げ、(特区化による)地方の自治機能と再配分機能の破壊、秘匿会計による財政破綻、改憲に伴う全体主義、ユビキタスな国民監視、SNS規制による言論統制、汚染水放出や除染土の再利用などによる環境の悪化という危機が堆積しています。いずれこの危機の砂山が破壊点を迎えて崩壊し、国民を呑み込むことになるでしょう。

――まさにマルチハザードの時代ですね。一つ二つの危機でも大変なのに、それが巨大な山になっているわけですから。

秋嶋 :人類社会がこれまで経験したことのないインセキュリティ(生存が保障されない状態)だと言えるでしょう。

<グローバル資本が立法集団化する悪夢>

・コロナ禍は日本史の転轍(てんてつ)点と言っていいでしょう。転轍とは分かれ目という意味です。もちろんこれまでも分岐となる出来事はいくつもありました。しかしその中でもコロナ禍は特段に重大な事件であり、日本人を逆走不能な轍へ追い込んだ、と僕は考えています。

・「嘘で安心させるのが政治家の仕事」であるのに対し、「事実で不安にさせるのが作家の仕事」です。そもそもポジティブかネガティブか、という二択がおかしいわけです。大事なことは、何が事実で、何が事実でないか、なのです。

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