重要なのは、物語がキャラクターの力で動くのか、それともプロット中心で動くのかという点だ。(1)

(2023/5/26)

『物語のつむぎ方入門』

<プロット>をおもしろくする25の方法

エイミー・ジョーンズ  創元社 2022/12/15  

<はじめに>

・あらゆる偉大な物語は、アイディアの萌芽、すなわち、やがて成長する“何か”から始まる。

・ストーリーテリングには、2つの基本要素がある。構造、つまり物語のプロットと枠組みに関するものと、方法、つまりストーリーの語り方である。

 

・本書ではまずプロットの理論を概観し、具体的なプロットモデルを取り上げる。次に、古くから使われ続けてきた「必須プロット」とも言うべきパターンに話を移す。続いてプロットと時間軸を論じ、それをどう操って劇的効果を生み出すかについて述べてから、幕開けと終幕に関するアドバイスを記す。

<キャラクター主導か、プロット手動か>

<プロットの最初の一歩>

・物語のアイディアの萌芽が得られたら、プロットの核となる部分を文章ひとつかふたつにまとめよう。人の心をつかむ要素は何か? 一番やりたい展開は何か? 重要なのは、物語がキャラクターの力で動くのか、それともプロット中心で動くのかという点だ。

・あらゆるドラマは対立である。(……)キャラクターが場面を引っ張るか、場面がキャラクターを引っ張るかのどちらかである。

・プロット主導の物語では、主人公が出来事によって動かされていく。

・プロット主導の物語は、読者を自然に惹きつけながらテンポよく進んでいくことが多い。しばしばイン・メデァス・レス(途中から語りはじめる手法)で幕が開き、読者を素早く場面に引き込む。

 キャラクター主導の場合のプロットは、登場人物が置かれた環境がどんなものであれ、その人物の成長に焦点を合わせる。

・『ジェーン・エア』は、ヒロインの少女時代から成人後までの精神的・道徳的成長をたどる、典型的なビルドゥングスロマン(主人公の成長を描く文学ジャンル)である。

・さて、あなたが取るべき次のステップは、短い概要を作成することだ。主な登場人物を考え、彼らの相関関係をざっと描き、ストーリーの重要なプロットポイント(転換点)をフェンスの支柱のように地面に打ち込む。

・この概要は2ページ程度の文書にすることが望ましい。そうすれば、後で自分自身の書く言葉の迷宮に迷い込んだ時に参照できる。

<始まり、中間、始末>

<アリストテレスと三幕構成>

・まずは、古代の教えに立ち返ってみよう。ギリシャの哲学者アリストテレスは、『詩学』の中で、悲劇、喜劇、サテュロス劇(悲喜劇)などの劇詩や、抒情詩、叙事詩の技法を論じている。彼は、筋立て(プロット)の中心は因果関係だと述べる。ひとつの出来事は、明確に別の出来事につながっていなければならない。彼はまた(物語には始まりと中間と結末がある)とし、今日まで西洋の多くのプロットを支えてきた三幕構成を簡潔に言い表している。

 『詩学』は優れた物語を結び目にたとえ、プロットの中で最も重要なふたつの出来事として、結び目を作る結び合わせ(もつれ)と、結び目をほどく解きほぐし(解明)(言い換えれば結末/大団円)を挙げている。

・私のいう結び合わせとは、始まりから、運が良い方または悪い方へ転じる転換点までの部分であり、解明とは、この転換の開始点から終了までである。(…)多くの詩人は、出来事を結び合わせるのは巧みだが、解きほぐすのは稚拙である。

・アリストテレスはまた、物語の中の、ある特別な瞬間に注目する。中でも最も強力なのはペリペテイア(逆転)、状況が正反対になるどんでん返しである。運命の急激な反転は、恐怖や憐れみや笑いや涙をもたらす力を持つ。貧乏な登場人物が大金持ちになる。あるいはその逆が良い例だ。

・悲劇では、主人公はしばしばハマルティア(錯誤)のために誤った行動をとり、それが不幸な結果を招く。

・アリストテレスによれば、悲劇のもうひとつの重要な要素はアナグノーリシス(認知)、すなわち、主人公が何が起こっているかを認識し、翻意したにもかかわらず、事態を止められないと気付く瞬間である。これは、顧客の憐れみの情や不安を高め、最後のカタルシス(感情の浄化)に向かう盛り上がりを作る。

 

・物語を始まり、中間、結末に分け、鍵となる場面によって物語を先へ進めるというアリストテレスの考え方は、現在でも物語の語り方に関する理論の基本である。以下はその現代風解釈で、これから本書でこれらの要素を扱っていく。

第1部:導入

提示:主な登場人物が、それぞれの日常の中で紹介される。

もつれ:ひとつの出来事によって波風が立ち、物語が動きはじめる。

プロットポイント:主人公が、困難な問題に立ち向かう決意をする。

第2部:対峙

上昇展開:利害関係や危険が高まる。敵や味方との出会い。

中間点:目標達成へ向けた主人公の行動が邪魔される。

プロットポイント2:主人公が試練にあう。成功が危ぶまれる。

第3部:解決

プレ・クライマックス:夜明け前の最も暗い時間にあたる。主人公は行動するか、失敗するかのどちらか。

クライマックス:最後の決着をつける場。

終幕:未解決だった問題がすべて片付く。新しい均衡が生まれる。

<フライタークのピラミッド>

<上昇と下降>

・古代ローマの詩人ホラティウスは、演劇理論家の草分けでもあった。彼は『詩篇』で、アリストテレスの考えを発展させた五幕構成を提唱している。ドイツの作家グスタフ・フライタークも、物語を5つの部分に分け、そこにきっかけの出来事(アリストテレスの「結び目作り」と解明・解決)を含めている。

1、 提示: 主要登場人物、主題、設定を提示する。

2、 上昇展開:「きっかけの出来事」(例:いずれ恋に落ちるふたりの出会い、殺人事件、秘密を暴露する手紙といった重要な出来事)で構成される。謎や困難な課題が波乱を予想させ、主人公がそれに応える。

3、 クライマックス: 通常は劇的な場面が描かれ、高まる緊張を解消して一定レベルの満足を与える。一般に、それまでのストーリーで張り巡らされた糸を短時間で一本にまとめる。

4、 下降局面: 登場人物がクライマックスに反応し、すべての出来事や未解決の問題に対処して解決・解明に向けて動く。

5、 結末・大団円: ひとつの物語が完了し、結末が訪れる。登場人物と読者・観客が先に進むことが可能になる(例:結婚、旅立ち、死など)。

・テレビやラジオの連続ドラマの大部分では、シリーズ全体を通した物語の流れがフライタークのピラミッドを構成しつつ、各シーズンや各エピソードの中にもそれぞれ小規模なピラミッドがあって、毎回視聴者の興味を引き、満足を与え、続きを視聴したいと思わせている。

<緑の世界>

<古い世界を離れ、新たな成長を得て帰還する>

・物語が非現実的な状況や超自然的な世界に入った場合も、その世界は驚くほどリアリズムを模倣している。これについて文学理論家ノースロップ・フライは、われわれはふたつの世界に住んでいると説明している。

 われわれは、われわれが正常と呼ぶ覚醒の世界と、われわれが自分の欲望から作り出した夢の世界とを、行き来しながら人生を過ごす。

・『十二夜』や『夏の夜の夢』のような喜劇は、認識可能な世界から始まり、次にそこから離れた別の世界――フライいわく「緑の世界」――へ移行し、最後に再び「正常な」現実に戻る。

<衝突と対立>

<森の中へ>

ヨークは、作者に、物語について10の質問をするように勧めている。

1, これは誰の物語か?

2, 彼らには何が必要か?

3, きっかけの出来事は何か?

4, 主人公の望みは何か?

5, たちふさがる障害は何か?

6, 何が問題で、そこに何がかかっているのか?

7, なぜそれを気にするのか?

8, 主人公は何を学ぶのか?

9, それをなぜ、どのように学ぶのか?

10, 物語はどう終わるのか?

<ウェルメイド・プレイ(よくできた芝居)>

<すべてが整ったプロット>

・19世紀、フランスの劇作家ウジェーヌ・スクリーブとヴィクトリアン・サルドゥは、アリストテレスの悲劇の構造を基に、ウェルメイド・プレイ(よくできた芝居)と呼ばれるプロットのひな型を作った。

<5段階構成の映画>

<トドロフの構成論>

・演劇は長年かけて確立された定型に従っているかもしれないが、映画も同じなのだろうか? 1960年代、ブルガリアの文芸評論家・文化理論家のツヴェタン・トドロフは人気映画のプロット構造を分析し、多くの物語が以下の5つの段階を踏んで進むことを見出した。

1, 均衡: すべてがあるべき状態にあり、登場人物は普通に生活を送っている。

2, 崩壊: ある出来事によって均衡が乱される。

3, 認識: 混乱が起きたことが認識される。

4, 行動・展開: 損害の修復や混乱の解消が目指される。

5, 回復: 新しい均衡が見いだされる。

・トドロフの説く構造は、フライタークのピラミッドやフライの3つの世界とそれほど大きくは違わない。物語を書く際にも、分析する際にも、利用可能だ。

<プロットポイント>

<物語をつなぎ合わせる連結部分>

・物語の中ではどの出来事もそれぞれ意味を持っているが、特に重要なのは、筋立てを動かすカギとなるいくつかの事件である。そうした出来事はプロットポイントと呼ばれ、前述したきっかけとなる出来事はそのひとつである。

・必要なプロットポイントが2つだけの物語もあれば、もっと多いものもある。作家ダン・ウェルズの7ポイント・ストーリー構造はフィールドのパラダイムに基づいており、一方で脚本家デイヴ・トロティアーによる『荒野の七人』型プロットポイントは、少しリズムが違っている。以下は、そのふたつを組み合わせた説明である。

A,バックグラウンド:現状。主人公は何らかの影を抱えている。

B,触媒(きっかけ):冒険への呼びかけがあり、登場人物が掘り下げられる。

C,大きな事件:何かまずいことが起きたり、主人公の人生に変化が起きたりする。

D,中間点:主人公は、もう戻れないラインを超える。受動的であることをやめ、能動的になる。

E,危機:ひどく悪いことが起こる。最悪の状態で、決断を迫られる。

F,クライマックス:最後の決着の場。問題解決の鍵が見つかる。

G,解決:問題が解決される。主人公は、自分が変わったことに気付く。

<昔話の構造>

<ウエアジーミル・プロップ>

・最も古き昔から伝わる物語の中には民話も含まれており、そのテーマの多くは真に時代を超えた内容を持つ。民俗学者ウラジーミル・プロップは、何百編ものロシア民話を研究し、そこから31の物語の機能、すなわち一般的なプロット装置を導き出した。その多くは今も使われている。

 一般に昔話は、初期状況(起点となる状況)で始められる。家族が列挙されたり、未来の主人公(例えば兵士)が名前や身分・地位とともに紹介されたりする。

 プロップは、昔話の連続的な構造に注目した。その後、クロード・レヴィ=ストロースのような理論家が、物語に共通して見られる特徴を研究する。レヴィ=ストロースは、スイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュールの理論を基に、物語の大部分は対立の上に築かれていると論じた。例えば、スーパーヒーロー映画は善対悪、ゴシック小説は人間対超自然、といった形に収斂させることができる。

<英雄(ヒーロー)の旅>

<およびヒロインの旅>

・世界各地の偉大な神話は、古代から生き残った最良のストーリーテリングの例といえる。1940年代に比較神話学者のジョゼフ・キャンベルは、そうした叙事詩の英雄の多くが内面的にも極めてよく似た旅をしていることに気付いた。心理学者カール・ユングの影響を受けたキャンベルは、これらの英雄の「自我意識」が、しばしば対立的存在たる「影」の人物や、女性的な「アニマ」/男性的な「アニムス」によって試されることに注目した。

・キャンベルは、ユングと同じく、<この世のすべての物語は、本当はひとつの物語、モノミス(単一神話)である>と結論づけた。彼は、主人公の物語を出立、イニシエーション、帰還という3つの段階に分け、全部で17の具体的出来事で構成されるとした。

(英雄の旅)

1,冒険への召命 2、召命の拒否 3、自然を超越した力の助け

4,最初の境界を超える 5,鯨の腹の中 6、試練の道 7、女神との遭遇 8,誘惑する女 9、父親との一体化 10、神格化 11、究極の恵み 

12、帰還の拒絶 13、魔術による迷走 14、外からの救出 

15、帰還の境界越え 16、ふたつの世界の導師 17、生きる自由

<物語の形>

<ヴォネガットの基本的プロット>

・「プロットの種類は実は少ない」という考え方を追求したのが、作家カート・ヴォネガットである。彼は、時間軸に沿った運勢の上下動のグラフを使って、どんなものの「形」も一目でわかるようにした。

 彼によれば、ほとんどの物語は、主人公が快適ないし平穏な位置にいるところから始まる。そこからすべて失うか、人生を変える出来事に直面する。

<7つのプロット>

<すべてを統べるための作法>

・プロットについて最も徹底的に研究したのは、おそらくジャーナリストのクリストファー・ブッカーだろう。彼は何百もの物語を分析した末、基本的なプロットは次の7つしかないと結論づけた。

すなわち、1,怪物退治、2,貧者から富豪へ、3,航海と帰還、4、探求、5、悲劇、6、再生、7、喜劇。いずれも、ひとりの中心的主人公のメタナラティブ(大きな物語)である。

<1, 怪物退治>

<猛獣との闘い>

・数千年前の『ギルガメシュ叙事詩』と1962年の映画『007/ドクター・ノオ』は、歳月の隔たりにもかかわらず、怪物退治の物語という共通点を持つ。ブッカーは、このプロットは5段階で構成されると述べている。

1, 予期の段階と召命:読者や観客が怪物を意識する。通常、怪物はまだ非常に遠い存在である。時には、その破壊力が垣間見られることもある。主人公は怪物を倒すために召命を受け入れる。

2, 夢の段階:主人公は戦いに向けて準備や訓練をする。主人公と怪物の距離が縮まる。ものごとはすべて順調に進む。

3, 落胆の段階:ついに怪物と対面する。敵は非常に強く、主人公が無力に見える。

4, 悪夢の段階:最後の試練が始まり、主人公はあらゆる困難を乗り越えてクライマックスの戦いに至る。万事休すと思われたところで、逆転が起こる。

5, 絶対絶命からのスリリングな脱出/怪物の死

 怪物は、わかりやすい存在である必要はない。

<2, 貧者から富豪へ>

<失うものは何もない>

・無一文から出発し、困難を乗り越えて、望む宝を手にするというサクセスストーリーは、万人に好まれる。

・幼少期から成人後までを描くか、人生の特定の時期に焦点を合わせるかにはかかわりなく、このプロットには5つの主要な段階がある。

1、 最初は故郷でのみじめな生活:若い主人公は、身分が低く不幸な状態にある。しばしば、悪意のある「邪悪な」存在が力を持っていて、主人公をさげすんだり、いじめたりする。そこへ召命が訪れる。

2、 外の世界への旅立、最初の成功:外の世界には新たな試練がある一方で、初めての成功も味わう。後に訪れる輝かしい運命を予感することも多い。

3、 大きな危機:突然、何もかもがうまくいかなくなる。邪悪な存在の投げかける影が再び覆いかぶさり、それを乗り越えねばならない。

4、 自立と最後の試練:主人公は危機を脱して立ち上がり、新たな境地に達する。クライマックスは最後の試練の場面で、目的の達成を目指す主人公と、その前に立ちはだかる邪悪な存在との戦いであることが多い。

5、 最終的な成功、完遂、成就:成功の報酬は、王子や王女との結婚や、真理の実現などである。

<3, 航海と帰還>

<うさぎの穴に落ちて、戻ってくる>

・航海と帰還の物語では、登場人物は見知らぬ環境に放り込まれ、それまでと全く異なる世界で冒険をし、成長や変化をして戻ってくる。このプロットの主な段階は次のようなものである。

1, 予感や期待と、異世界への“転落”:主要登場人物が新しい経験にいざなわれる。不思議な移動によって、あるいは拒絶を通じて、または逃避を求めたために、慣れ親しんだ世界から見知らぬ別の世界へ送られる。

2, 最初の感激または夢:見たこともない不可解な世界での探検に最初は胸が躍るが、やがて不安になる。

3, 落胆の段階:冒険に嫌気がさし、耐えがたくなってくる。心に影が忍び込み、それがどんどん力を増す。

4, 悪夢の段階:影の支配が強まり、命が危険にさらされる。

5, スリリングな脱出と帰還:絶対絶命のピンチから主人公が脱出し、以前とは違う人間になって故郷に帰還する。

<4, 探究>

<たどる旅路のその中身>

・登場人物が最終的な目的に向かって肉体的または精神的な困難な旅をしている場合、「探求の道を歩んでいる」と言える。

・ブッカーは、探求の旅を5段階に分けている。

1, 召命:家が退屈、あるいは耐えがたい。主人公は長く困難な旅に出る必要がある。主人公は、「彼方の地に人生を一変させるような目的があるからそこへ向かえ」といった超自然的な指示を受ける。

2, 旅の始まり:主人公は仲間とともに敵対的な世界に乗り出し、命がけの苦難や試練に遭遇する。

3, 到着と落胆:一行は目的地のすぐそばと思える場所まで到達するが、新たな障害が立ちふさがり、目的を達成するにはそれを乗り越えなければならない。

4, 最後の試練:一連の試練が課される。主人公だけが最後の試練までクリアし、褒美を手にする資格があることを証明する。危険な脱出劇を伴うこともある。

5, 目的達成:目的が達成される。何かが奪還されたり、破壊されたり、手に入ったりする。全く異なるタイプの目的達成でもある場合もある。

 探求の旅では、多くの場合、第2の段階である「旅」が物語の中で最も大きな部分を占める。旅の中では、さまざまな形の試練がある。

<5, 悲劇>

<起こったことは元に戻せない>

・誰にでも不運な時はある。しかし、よくできた悲劇は、ものごとはもっとずっとひどくなりうると教えてくれる。ブッカーは、悲劇の主要な段階を次のように論じる。

1,予感: 主人公は満たされていない。何かが欠けている。主人公は、欠落のない完全な状態になろうとして、何らかの欲望の対象や行動方針に固執する。

2,夢: 主人公は自分の行動方針にのめりこむ。

3,落胆: 小さなあれこれがうまくいかなくなりはじめる。苛立ちとあせりで主人公は過剰に反応し、救いを遠ざけるような「悪行」を重ねてしまう。

4、悪夢: 状況が制御不能になる。計画は頓挫する。恐怖や絶望が支配し、運命の魔の手と敵対者が迫ってくる。

5,破壊、または死の願望:外的な力または何らかの“最後の暴力的行動”(つまり殺人または自殺)により、主人公は破滅する。主人公を悼む者は少なく、闇は消散し、人々は歓喜する。

 悲劇は、貧者から富豪へや探究の物語と同じ始まり方をすることも多いが、召命ではなく誘惑が訪れ、プロットは大きく異なる軌道を進むことになる。

<6, 喜劇>

<いっときの大騒ぎ>

・伝統的な喜劇は、どこか抜けた人物や迷える人物が混乱やお祭り騒ぎを繰り広げた末に、平常の状態に戻ってハッピーエンドで終わるものであった。

・ブッカーは、古典的喜劇には3つの段階があるとしている。

1, 混乱の影がさす:人々は狭い世界の中で不安と不満を抱えて生きており、互いの間にさまざまな形で壁がある。

2, 混乱の成長:全員の関係がもつれて抜き差しならぬ状況になる。

3, 混乱の解消:光がすべてを明らかにし、影を追い払い、奇跡的に状況を一変させる。喜びのうちに大団円が訪れる。

<7, 再生>

<暗闇から立ち上がる>

・誰でも時には苦境に陥る。ほんの少しの助けがあれば自力で抜け出せる人もいる。ブッカーは基本的な段階を次のように述べる。

1, 闇の呪い:主人公が何らかの理由(最初は闇の力を利用して得をするなど)で、闇の力の支配下に落ちる。

2, 現状維持:しばらくはすべてがかなり順調である。闇の力は主人公の役に立ち、脅威を与えないように見える。

3, 脅威の再来:主人公は自分のやり方が間違っていたことに気付くが、闇の力は支配力を強めて主人公を苦しめる。

4, 終わりが見えない:3の状態が長く続く。主人公は生ける屍のような状態で幽閉され、闇の力に完全に支配されているように見える。

5, 奪還:主人公が女性なら、ヒーローの手で奇跡のように救出される。男性なら、若い女性か子供が救い手になる。

 このように、主人公はいったん蛹(さなぎ)のような状態に入り、そこからより強く賢くなって出てくる。この“冬眠”は主人公の試練として必要であり、これがあるからこそ最後の報酬が十分に評価される。

<時間軸>

<時間を最大限活用する>

・自分の意図に合わせて時間を操れることは、作者の特権のひとつである。映画理論家クリスチャン・メッツはこう書いている。

 語られるものごとの時間と、語りの時間がある。この二重性が、物語に頻出する時間的歪曲のすべてを可能にする。

 文学史家ギュンター・ミュラーもストーリーの時間と悟りの時間の対立を取り上げ、作者は時間軸の大部分を省略することで、内容全体よりも特定の事実のみを強調することができると述べている。

・物語の時間軸と、出来事の時系列を区別することは、20世紀初めの文学理論家であるロシア・フォルマリストたちにとって大きな関心事であった。彼らはふたつの側面を定義した。ファブラは物語の素材、つまり物語の背後にある真の時系列であり、シュジェートは物語の構成のされかたである。

<伏線>

<先の展開の暗示>

・伏線は、この先に起こることを暗示して、物語に影を忍び込ませる技法である(文字通り時間を跳び越すフラッシュフォワードとは異なる)。

<前方照応と後方照応>

<アナフォラとカタフォラ>

・前方照応(アナフォラ)と後方照応(カタフォラ)とは、物語の前の方あるいは後ろの方とのつながりを作る言葉、表現、シンボル、モチーフなどである。

<急転回と新事実>

<予想もしなかった展開>

・プロットを成功させるコツのひとつに、物語に意外な転回を用意することがある。急転回や驚くべき新事実は、物語はまったく新しい方向へ向かわせたり、過去、現在、未来のすべてを新しい光に照らして示したりする。ほとんどの急転回は登場人物や人間関係をめぐって起こり、主人公はしばしばそれに(読者と同様に)ショックを受ける。

・コミック作家のアレック・ウォーリーは、急転回には5種類があるとする。

1, アイデンティティの急転回:誰かまたは何かが、それまで信じていたのとは別人/別物だと明らかになる。

2, 動機の急転回:誰かの意図が実は全く違うものだったことが明らかになる。

3, 認知の急転回:目から鱗が落ち、すべてが真の姿を見せる。

4, 運の急転回:登場人物の運が、期待と逆になる。多くの場合、不運へと転じる。

5, 達成の急転回:登場人物が手に入れたと思ったものが、寸前で帳消しになったり敵対者に奪われたりする。

<クリフハンガー>

<この先はどうなる?>

・主要な登場人物が危険にさらされ、読者や視聴者が続きを知りたくてたまらないところで物語を中断する手法は、クリフハンガーとして知られる。

<小道具>

<チェーホフの銃、マクガフィン>

・特定の品物をとても効果的に利用するプロットもある。その品物は、それ自体が重要な場合もあれば、全くそうでない場合もある。ロシアの劇作家アントン・チェーホフは、こう助言する。

 ストーリーに関係のないものはすべてはぎとることだ。第1幕で壁にライフルが掛けてあると言ったなら、第2幕か第3幕で必ずそれを撃たなければばらない。発砲されないなら、最初から壁に掛けるべきではない。

 チェーホフの銃と呼ばれるこの原則は、説明されずに終わる要素を物語の中に持ち込んで、読者に空しい期待を持たせてはいけないという意味である。何かに注意を向けさせたなら、後でその理由を明らかにすべきである。

・「チェーホフの銃」の腑抜けた兄弟と言えるのがマクガフィンで、話を動かす道具になる品物やアイディアだが、それが何であるかには重要な意味はない。アルフレッド・ヒッチコックは、「スパイが狙っているが、顧客は気にしないもの」と定義した。

<閉じ込めと脱出>

<デウス・エクス・マキナ>

・登場人物が物語の中で出口のない状況に閉じこめられる理由には、好奇心や名誉、あるいはアリストテレスのペリペテイア(逆転)のような後戻りのできない事態がありうる。しかし、もっと大きな動機付けが必要な場合もあり、そこで作家がよく使うのが閉じ込めである。

 アガサ・クリスティは、この仕掛けを非常に好んだ。『そして誰もいなくなった』では、10人の人間が英国デヴォン州の小さな島の館に閉じ込められ、殺人が始まると逃げ場がなくなる。

・デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)は、解決不能に思えた問題を、一瞬で魔法のように解決する手法である。

・デウス・エクス・マキナの裏返しの存在にあたるのがディアボルス・エクス・マキナ(機械仕掛けの悪魔)で、悪の力の介入によって、主人公または敵役、あるいはその両方の状況が急に暗転する。

・悪魔的な出来事はたいてい物語の最後に起こるが、もっと早い段階で使われることもある。ロアルド・ダールは多くの著書でこの手法を軽妙な悪ふざけとして利用し、ほとんど自虐的に近い形でプロットの障害を切り抜けてみせた。

<プロットを作る>

<綿密な計画を立てるか、筆の勢いに任せるか>

・巧みな伏線や明確な焦点を織り込んだ緻密な構想を立て、それをもとに簡潔でまとまりのある作品を仕上げる作家もいれば、キャラクターを軸にして物語を書き進め、登場人物が“勝手に動く”ことを許しながら、独創的・実験的・即興的でリアルな作品を生み出す作家もいる。

<プロットをふくらませる>

<スノーフレーク法>

・著述法アドバイザーのランディ・インガーマンソンは、プロットをふくらませる10のステップを考案し、「スノーフレーク法」と名付けた。

・家の建築のたとえと同様、まず単純なアウトラインからスタートし、サブプロットや登場人物の肉付けによって徐々に細部や複雑さを加えていく。

1, 要点だけの簡潔な説明: 何についての物語か? 物語のエッセンスを15単語以内(日本語ならば40文字程度)に凝縮する。

2, 要約文: 1で作った簡潔な説明を、パラグラフひとつぶんにふくらませる。序盤、中盤、終盤を説明し、主な転回点や対立を決める。

3, 登場人物の概要: 主要登場人物それぞれの概要説明を作る。名前、外見、動機、目的、外部との軋轢や内面の葛藤、その克服。加えて、物語内で彼らがどう動き、どう変わるのかのストーリーライン(パラグラフひとつ)も作成する。

4, 要約文の拡張版: 2つの要約文のそれぞれのセンテンスを、パラグラフひとつぶんにまで発展させる。

5, 登場人物の詳しいプロフィール: 印象的な登場人物がストーリーを作る。

6, 詳細な要約文: 4の拡張版要約文の各パラグラフを1ページにふくらませて、全体で4~6ページの詳細な要約を作る。

7, 登場人物の成長チャート: 5の登場人物のプロフィールをもとに、それぞれの人物が物語の中でどう変化し成長するかの図を作る。

8, スプレッドシート: 物語の見取り図となる表を作る。

9, ラフスケッチ(なくてもよい):スプレッドシートの各行をふくらませて、各場面の説明を複数のパラグラフからなる文章にする。

10, 執筆: 書き始める。十分に練り上げたプロットで武装しているので、リラックスして表現の質を高めることに集中できるだろう。

<読者を引き込む幕開け>

<むかしむかしあるところに>

・とびきりの書き出しの1行とは? 19世紀の小説は、名文句で始まるものが多かったが、最近はテンポが良くあっさりしている傾向がある。

<心に残るエンディング>

<めでたしめでたし――とはかぎらない>

・物語のラストはとても重要な瞬間だ。読者は、大団円や真実の提示にせよ、想像の余地を残す結末にせよ、何かしら報われることを期待する。

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