権力は必ず腐敗する。40年も永田町を見てくれば、この言葉がいかに真実であるか、身を持って知ることになる。(2)

<徹底的なプラグマティスト>

・菅義偉は徹底的にプラグマティックな政治家である。

 これまで歴代の総理大臣が掲げたようなスローガン、国民受けするようなキャッチを好むひとではない。

<具体的なターゲットが必要>

・菅の、政権構想というより政治課題の目標には、いつも具体的なターゲットがある。

 最も有名な施策となった携帯電話料金の値下げを例にとろう。ターゲットは大手通信会社三社だった。

・その後、菅政権において、大手三社の一角に楽天グループを参入させて楔を打った。さらに携帯料金を一気に4割近く下げ、契約体系も乗り換えを容易にする形に改めた。

・「全国に1470のダムがあるが、そのうち水害対策に活用されているのは国交省所管の570のダムだけ、残りの900は、経産省が所管する電力会社のダム、農水省が所管する農業用のダム等で、これら『利水ダム』は水害対策には利用されていない、と」

 そこで菅のツルの一声が飛んだ。

「台風シーズンに限って、国交省が全てのダムを一元的に運用する体制」に変えてしまった。これで、全国のダム容量のうち、水害対策に使える容量が46億立方メートルから91億立方メートルに倍増した。八ッ場ダムの50個分に相当するという。

<「農業改革をやりたいんだよね」>

・大手通信会社、中央官庁のみならず、構想の中には具体的に触れられていないが、菅は、農協や漁協と真っ向から対立してきた。これも世間に知られていないが、菅は官房長官就任直後から「農業改革をやりたいんだよね」とよく口にしていた。「農業・水産業改革」である。自民党の長年のスポンサーである農協、漁協を敵に回して、60年ぶりという「農協の解体的見直し」、「漁業権の制限」をなし遂げている。

<「国民にとって当たり前なこと」をやる>

・そんな「国民にとって当たり前なこと」を政治課題とした、仕事師内閣もコロナには勝てなかった。安倍政権もコロナ対策で追い詰められたように、菅政権も東京五輪開催をめぐるドタバタ、何より感染者数の急増大の前に、政権のちからを削がれていった。

・のちに、総理を辞めたあとの会合で菅はこう漏らしていた。

「夜中に救急車のサイレンの音で目が覚める。乗っているひとは大丈夫かなあ、無事かなあと考えるとね」

「国民の安心安全」、言葉は言い古されたものかもしれないが、総理大臣の職にあるものの業のようなものを感じた。

<「不妊治療への保険適用」という少子化対策>

・もうひとつ、菅政権で実施された見逃すことのできない施策がある。それは、不妊治療の保険適用である。

<政治とは不思議なもの>

・結果からいえば、菅政権は短命に終わった。

 コロナの感染状況が一段落して国民が冷静さを取り戻すにつれて、菅への評価が変わり始めた。ある有力財界人のひとりも「菅さんは惜しかったよなあ。時期がよくなかった」としみじみ語っていた。

<これからの経済政策プラン>

・大手メディアの政治記者は政局しか取材をしないので、「経済政策」についてまともな取材と報道がなされることがほとんどない。よって国民もその中身を知らない。在野の政治経済記者として取材を続けてきた筆者による、「失われた30年を生んだ経済政策」の俯瞰による検証と、日本が生き残るための「これからの経済政策」の提言。

<三菱地所の失敗>

・だがしかし、このロックフェラーセンター買収劇は、いわば「ブランデーの空瓶を買わされたのも同然」だったのである。経緯をごく簡略にいえば、相続問題に窮したロックフェラー一族が、当時の不動産金融のテクニックを弄して、日本の大手デベロッパーに資産価値の低いビル群を譲渡したのである。

<アメリカ本土が4つ買える>

・何も三菱地所の古傷をあげつらうために、この話を持ち出したのではない。

・1980年代、アメリカはS&L(貯蓄投資会社)の経営破綻による、いわばアメリカ版バブル崩壊の危機に陥っていた。そこで日本の大手デベロッパー、不動産会社は争って、マンハッタンのビル群を買いまくっていた。

・「レーガノミクスによって、アメリカ経済は80年代前半の好景気に沸いていた。ところが、その景気に変調を来してきたときに合わせて、FRBがドル安、高金利に舵を切ったのです。85年に1ドル238円だったものが88年には128円まで円高となった」

<「失われた日本経済」元年>

・冒頭のシーン――ロックフェラーセンター上空をヘリでホバリングしていた90年代半ばまでの時期が、日本経済最後の栄光のときだったと、わたしは思う。

・羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)……。

 まさしく、このことわざ通りの展開で、バブル退治に奔走した日本政府・日銀は、三重野康日銀総裁時代に金融を引き締め過ぎてしまう。「失われた10年」さらに、20年、30年と時代は移っても日本経済は浮上せぬまま、いまだに空白期が続いている。

・バブル崩壊10年目以降の空白の原因は、多分に金融行政の失敗にある。

・森長官は「検査のための検査をやめさせる」と意気込み、金融庁改革を進めた。

<「ゼロ金利政策」の副作用>

・そこに並走する形で、金融ならびに経済界を徹底的に歪めたのが「ゼロ金利政策」であったと思う。

・この「ゼロ金利政策」は、黒田日銀総裁が「マネタリーベースを2倍に、2年間で物価上昇率2%が目標」と異次元金融緩和をブチ上げたことに始まる。そして、当初2年だったはずが10年も続いてしまった。

・繰り返しになり、素人が言うのも僭越だが、「金融において金利ゼロという世界がそもそも間違っている」のではないか。人間の経済活動において、ひとに金を貸して借り手から金利を取らないというのでは、これは金融そのものが成り立たないはずである。金融の専門知識を振り回す人々は、理屈をこねて「ゼロ金利政策」を正当化するが、世界中でこんなに長期にわたって、「ゼロ金利」を続けている国は存在しない。1昨年(2022年)まで継続していたスイスもゼロ金利をやめた。

・日銀総裁による金融政策の是非について継続的に論評されることは少ないのは何故だろう。

 その最大の副作用が財政規律の緩み、いや崩壊と言っていいほどの財政悪化である。

<1286兆円の借金>

・1286兆円――。まったくピンとこない数字である。2023年度末における国及び地方の長期債務残高である。対GDP比で213%にのぼる。国富といわれるGDPの2倍を軽く超えてしまった。

・さらに、「国には巨額の資産があるではないか」と指摘する専門家もいる。矢野康治元財務次官の論考によれば、日本政府のバランスシートでは資産は741兆円、そのうち金融資産は366兆円だと指摘している。しかし、国債も含めた国の負債は1443兆円。その差額は約700兆円で債務超過状態なのである。しかも、金融資産のうち、例えば外貨準備は195兆円あるが、そのうち米国債が4分の3以上であるうえ、将来の通貨危機に対応するための必要な資金である。

<現役財務次官論文の衝撃>

・先ほどの矢野は、現役の財務事務次官のときに、この財政問題を大胆に世に問うて波紋を呼んだ。

 2021年11月号の「文藝春秋」誌上で「財務次官、モノ申す『このままでは国家財政は破綻する』」という論文を発表したのだ。

・同時に岸田政権の「バラマキ政策」を痛烈に批判している。

「かつて松下幸之助さんは、『政府はカネのなる木でも持っているかのように、国民が助けてほしいと言えば何でもかなえてやろうという気持ちでいることは、為政者の心構えとして根本的に間違っている』と言われたそうですが、これでは古代ローマ時代のパンとサーカスです。誰がいちばん景気のいいことを言えるか、他の人が思いつかない大盤振る舞いが出来るかを競っているかのようであり、かの強大な帝国もバラマキで滅亡したのです」

 岸田政権は23年の時点でも、「税収の増えた分を国民に還元する」と減税を打ち出したが、これなどまさに誰も思いつかなかった大盤振る舞いであった。

<「このままでは日本は沈没する」>

・矢野次官は強烈な危機感を持って続ける。「このままでは日本は沈没してしまいます」

・ワニのくちは「開いた口が塞がらない状態だ」と指摘する。そして、ゼロ金利政策が続けられているうちにこそ、財政を健全化せよと訴える。

「たしかにこの十年ほど、金利が成長率を下回るという、借り手にとってありがたい状態が続いています」

・ここまで現役財務次官が警鐘を鳴らしたにもかかわらず、その後2年のあいだにさらに財政は悪化し借金を膨らまし続けている。ボトム・ラインはプライマリーバランスの均衡だと、わたしも考える。

<「ゼロ金利政策」が財政規律を崩壊させた>

・矢野次官は「ゼロ金利」(金利ボーナス期間)であるいまのうちに、財政規律を取り戻せと主張している。この趣旨は正しいとわたしも思う。しかし逆にいえば、この「金利ボーナス期間」すなわち「ゼロ金利政策」こそ、財政規律を完全に崩壊させてしまった元凶ではないだろうか。

・黒田東彦が総裁に就任して以降、日銀は、財政法第5条で禁ずる「日銀による国債の直接引受」に等しいことを断行し続けた。結果、日銀のバランスシートが激しく傷んでしまった。

・日中戦争が始まると、戦費調達のため単年度予算を止めて戦争のあいだはずっと決算をしないという「臨時軍事費特別会計」に移行する。1937年の予算が約20億円だったものが、44年度には約735億円と膨張し、敗戦を迎える。

この後始末は悲惨を通り越して無惨であった。円の価値は凄まじいインフレで紙屑同然となり、国民の貯蓄は預金封鎖で取りあげられ、巨額の戦費、国家財政赤字の穴埋めに使われたのである。

・現在の日本国政府は、特例国債などと言いくるめて赤字国債となんら変わらないものを発行して続けている。しかも、日銀は事実上の日銀引受といわれる買いオペを続けている。官僚や日銀マンは見かけ上は合法な手段でそれを行っているが、「財政法の精神」は完全に踏みにじられている。

<「ゼロ金利解除」の副作用>

・では、国債発行で財政赤字が膨らむと、なぜ日本経済にとって恐ろしいことになるのだろうか。

 第一に、当然のことながら、金利上昇によって国債の利息が増える。

・さらに金利2%上昇となれば、3年目からは約6.4兆円の負担増になるから恐ろしい。

<日本国債の格付けが下がる脅威>

・第二に、国債のレーティングである。

 現在、日本国債のレーティングは、格付け機関であるムーディーズが「A1」(9段階の上から5番目)、フィッチ・レーティングが「A」(上から6番目)、S&Pグローバルレーティングが「A+」(12段階で上から5番目)。おおよそG7主要国のなかで6番目の格付けである。

<日本銀行が債務超過となる日>

・第三には、前述したように、日本銀行のバランスシートが傷むことが挙げられる。「銀行の銀行」である日銀が金利上昇によって金融政策的に復活すると考えるひとは多いと思うが、いいことばかりではない。日銀は市中銀行から当座預金と呼ばれる預金を預かっており、その残高が540兆円を超えている。

 金利が1%上がれば、市中銀行に対しても利払いが発生し、これだけで5兆円を超える。

・救いは、国民の一部が、この状況をおかしいと思いはじめていることだ。

 ある現役閣僚は、「有権者はもう気が付いてますよ。声がけせずとも、『減税するなんておかしい。この国の財政は本当に大丈夫なんでしょうか』と聞いてくるほどです」と驚きの表情で言っていた。

 国民は愚かではない。歳入に比べて巨額支出を行い、かつそれを、国債を安易に発行することで賄っている現実に大いなる不安を覚えているはずだ。

<本質的な動向を見極めていく>

・こうした予測が外れた「メモ」を示したのも、わたしが考える大摑みの経済状況の分析姿勢を明らかにしたかったからだ。経済指標は数多あり、経済評論家の見通しも、その数だけ存在すると言われるほどだ。そのなかで、できるだけ本質的な動向を見極めていくことこそ肝要だと考えている。もちろん、このメモのように当たっているところもあれば、外すこともあるわけだが。

<経済政策の方向性を考える>

・では、経済政策の具体策としては、一体何をするべきなのだろうか。

・植田和男新総裁が異次元金融緩和解除の道を慎重に探ってきた。市場との対話を重視しながら徐々に引き締めの方向にもっていくだろう。その選択肢は正しい。

・これから金利を上げるしか道はないとしても、同時に、その副作用に対応しなくてはならない。

<新規国債の発行はやめよ>

・第二に公共投資である。

 ここまで財政赤字、国債残高を膨らませてしまった以上、わが国の最も重要な経済政策の課題は財政問題だとわたしは認識している。

・古くて新しい課題である財政再建のための、歳入と歳出の見直しを計る。

・おそらく20代、30代の若いひとたちは、「自分たち世代への皺寄せが延々と続く」、この財政システムの理不尽さに本能的に気付いている。だからこそ、この国で安心して子供をつくり育てることに前向きになれない。少子化問題の根底に、財政問題が横たわっているのではないか。

<最大の問題は医療費>

・歳出見直しの中核となるのは、間違いなく医療費である。

・「介護については、保険料に応じたかたちがまだ対応できている。最大の問題は医療費だ。ここが少子高齢化にともなって飛躍的に伸びてしまっている。国民皆保険というのは素晴らしい社会インフラであることは理解しているが、残念ながら、これを維持するだけのシステムの設計が人口比率の激変に対応できていない。薬価、診断報酬、国民負担などあらゆるところから見直していくことが急務だ」

・国民皆保険という医療保険システムは維持したい――これは皆賛成。しかし、国民あるいは医療関係者がそれぞれ応分に負担する、あるいは報酬を減らすといった各論には、反対する。にっちもさっちもいかないのが現状だ。

<バラマキ政策の末路>

・医療費の問題の本質は、医療の側が、「この患者には〇〇が必要です」と言って支出したものは全て国なり保険料なりで賄わなくてはならないことだ。すなわち、「供給サイドが需要を決める珍しい財」であり、特異な業態なのである。有体にいえば、医療はやった者勝ちの世界で、「ヤブ医者ほど儲かる」という構造になっている。ここが大問題だ。

・この問題の解決策は三つの方向性があると考えられている。ひとつは、この供給する側が決めるという構造にメスを入れて、いままでのようになんでもかんでも大病院で診療を受ける仕組みを改めることだ。

・第二に、医療費の負担をより公平にすることである。

・第三には、クスリの濫用に歯止めをかけることだ。

・実は、60歳以上でも所得がある、あるいは金融資産があるひとにはさらなる応分の負担を願う。そうしなければ、拡大していくいっぽうの医療費を国債発行という形で若い世代に先送りし負担させる未来となってしまう。ただちに医療体制全体の見直しに手をつけるべきではないか。

・にもかかわらず、選挙があるから政治家はこの不都合な真実を言いだせない。

・矢野次官が止むを得ず声をあげたように、政治家たちはもういい加減に有権者の耳に心地良い「バラマキ」は止めるべきだ。

<経済産業政策の新基軸>

・第三に産業政策について触れたい。

 2013年から始まったアベノミクスの三本目の矢である成長戦略。民間投資を喚起する構造改革と謳ってはいたが、悔しいことに7年8ヵ月のあいだには特筆すべき成長分野が生まれなかった。ただ菅官房長官が主導したインバウンド政策は新たな成長分野となったといえよう。

 第三章でも触れたが、実は30年前の「梶山10兆円構想」のなかでも、この産業政策については通産省や民間エコノミストから様々な知恵を借りた。

・日本経済の現状について、経産省は「潮目が変わった」と判断している。91年以来、企業の設備投資はずっと100兆円を割っていたものが、2023年は100兆円を超えてきたことが大きい。春闘も30年ぶりの高水準となり賃金も上がり始めた。マクロに変化が見えてきたことを、その要因に挙げている。

・こうした流れを見越して、21年から「経済産業政策の新基軸」と名付けた政府のカネを使った施策を次々と打ち出している。

・ざっと、これからの3年から5年のあいだに、およそ8兆4000億円以上の資金を投入しようというのである。

・そして、三つの好循環、国内投資→イノベーション→所得向上に向けてがんばると言うのだ。公的投資を集中的、戦略的に投下して、好循環を生んでGDPを押し上げよう、という構想なのである。

 こうしたせっかくの重要経済施策が、所得税減税問題、そして安倍派の政治資金問題で埋没してしまったことは残念だ。日本が今後、何を食い扶持とすべきか、常に議論が求められているはずである。

<ショートレンジの経済政策>

・これまで三つのマクロ的な視点から経済施策を見てきたが、レイヤー(階層)の異なる視点も必要だと思う。それはショートレンジの経済政策である。

・簡単のようだが、それぞれ既得権があり役所の壁もあって、容易に改革ができないのだが、それを菅はシナリオを考えて実行していく。長く永田町を見てきたが、菅のようなタイプは非常に少ない。

・国家の政権構想としては、先に示したマクロ的な3政策(金融政策、公共投資、産業政策)を掲げながら、一方でショートレンジの政策メニューを組み合わせていくのがベストではないかと考えている。

・「政治とはスケジュールである」と喝破したのは、政治評論家の後藤謙次である。

<「経済戦略」のない国>

・この30年を振り返って痛感するのは、この国に大枠の「経済戦略」がないことである。戦略がないからこそ「失われた30年」を招いた。それは数十兆円単位で富が失われてきたことに他ならない。あるいはもっと大きな国益を失っているのかもしれない。かつて国家戦略がなく世界の40ヵ国以上と戦って敗れた太平洋戦争と同様、この国は依然として大戦略を立てることが不得意のようだ。

 ならば、戦略をもつ政治家を選んでほしい、そうした人物に政権を担ってもらいたい。そのためのサポートとして、官邸に「経済戦略センター」といった組織をつくり、しかるべき報酬を払って優秀な人材を集めて戦略を練るべきではないか。政権が交代するたびに、場当たり的な経済政策が出てくるのは不幸の連鎖である。

・これからの時代は、継続性のある「経済戦略」の担い手が求められている。

<あとがき>

<角さんの最後のあいさつ>

・言うまでもなく、立花隆の筆名を高めたのは1974年10月発売の「文藝春秋」における「田中角栄金脈研究」だった。雑誌の記事によって、一国の総理を追い詰め辞任させたことで雑誌ジャーナリズムの地位を確立した。たいへんな偉業だと思う。

 立花さんによる金脈研究、ロッキード事件研究の25年後、わたしも、アメリカの機密情報公開によって新たにわかった事実を取材し特集したことがあった。

<権力亡者になる政治家たち>

・わたしが関わってきた記事が、立花さんのそれに遠く及ばないことはよくわかっている。雑誌ジャーナリズムにおいては、政治家は国家権力の象徴であり、その権力を国民に代わって監視するのがその役割である。

・権力は必ず腐敗する。40年も永田町を見てくれば、この言葉がいかに真実であるか、身を持って知ることになる。それまでは常識を備え、ひとの話をよく聞く政治家が、権力を手にしてしばらく経つと別人のごとくなり、権力亡者になっていった例は何度となく目にした。

・ただ、疑惑追及といった仕事を続けている傍らで、反権力だけでいいのか、という思いもあった。

<衰退国家になる!>

・梶山はモルトケのような戦略家を志していたのではないか。そして金融危機に際して、その機略の才を見せた。ただプランを練るだけではない、その実現性に向けて、霞が関も永田町も動かし、「金融再生=ルネサンス」に向けて尽力した。

<財務省の「口のひと」>

・「ウチの会社(財務省)には二種類の人間がいるんだよね。書くひとと口のひと。書くっていうのは法律を作る、予算案を作るひと、でも、やっぱり最後は口なんだよなあ」

<戦略に長けた「外交のひと」>

・もうひとり、戦略に長けた「外交のひと」がいた。外交評論家の岡本行夫だ。岡本の場合は月刊誌で彼のスキャンダルに触れた記事を担当したことで、逆に親しくなった。奇妙なことである。

・香川と岡本、ふたりに共通するのは権力の中枢に飛びこんで中からこの国を変えようとしたこと、あるいはその志があったことだ。

<「編集者」の仕事>

・編集者の仕事は、さまざまなひとに会い、その人たちから知恵を授けてもらいながら、ひとつの作品を形づくっていくことだろう。

・いま、わたしの手元に1万5000枚ほどの名刺がある。編集者をやったおかげで、本来なら目通りも叶わない数多くの方々の知己をいただいた。そのうち、年賀状を出すのが1000人ほど。

・そして、編集者にとって最も重要なことは、「問い」であると思っている。

『週刊東洋経済』2014.12.27

「危機  著名投資家ジム・ロジャーズ」

<世界規模の破綻が2020年までに来る>

<行きすぎた紙幣増刷は世界に何をもたらすか>

(――東京オリンピックまでの世界経済をどう見ていますか。)

・安倍晋三首相がおカネを大量に刷らせているから、日本経済は当分の間、景気がいいでしょう。しかし、東京オリンピック前に状況が悪化し始め、日本のみならず、世界のほぼ全土で経済が破綻するでしょう。2020年までに、少なくとも1回は世界規模の破綻が起こります。米国や欧州など多くの国々で、今後6年の間に問題が起こるでしょう。正確な時期はわからないが、たぶん16年か17年でしょう。

(――つまり国債が暴落すると?)

・そうです。国債が大暴落し、金利があがります。株価も暴落します。今すぐにというわけではありませんが、20年までに起こるでしょう。世界規模の経済問題が発生し、ほぼすべての人が影響を被るでしょう。

<安倍首相は円安誘導で日本を破滅に追い込む>

(――なぜ破綻が起こるのですか。)

・大半の国々では4~6年ごとに経済問題が発生しています。だから、もうじき、いつ起こってもおかしくない状態になります。

 今の景気浮揚は、日本や米国、英国など欧州の国がおカネを大量に刷ったことによる人為的なものです。

(――破綻を回避する道は。)

・今のところ、防ぐ手立てはありません。(何をしても)非常に悪い状態になるか、少しましなものになるかの違い程度でしょう。いずれにせよ、世界経済は破綻します。

・日本は減税をし、大型財政支出を打ち切るべきです。人口問題対策も

講じなければなりません。どうせやらないでしょうがね。仮にやったとしても、問題は起こります。しかし、(何もしないと)16~18年に事がうまく運ばなくなったとき、問題が表面化するでしょう。

・安倍首相は、「日本を破滅させた男」として、歴史に名を残すでしょう。投資の世界の人たちや、(金融緩和)でおカネを手にしている人たちにとっては、しばらくは好景気が続くでしょうが、安倍首相が過ちを犯したせいで、いずれはわれわれ皆に大きなツケが回ってきます。

(――日本は、東京オリンピックがあるから、少しはマシ?)

・いや、逆かもしれません。オリンピックで大量におカネを使い、債務が増えていくため、状況が悪化する可能性があります。1億2000万人強の日本の人たちを、オリンピックで救うことはできません。

(――円安誘導が間違っている?)

・最悪です。短期的には、一部の人が恩恵を受けますが、自国通貨(の価値)を破壊することで地位が上がった国はありません。この2~3年で、円は対ドルで50%も安くなりました。このことが日本にとってよいはずはありません。

<『日本を破滅させた男』として安倍首相は歴史に名を残すでしょう。>

(――以前「米国は世界の警察をやめるべき」と言っていました。オバマ大統領は実際そう宣言しました)

・米国がおカネを大量に刷るのをストップし、(世界の)人々に対し何をすべきか、あれこれ言うのをやめるとしたら、世界にとっても米国にとっても素晴らしいことだと思います。しかし、私はオバマ大統領のことは信じません。

・多くの米国人は「米国が他国にあれこれ指図すべきだ」と思っています。私は、そう考えない少数派の一人です。「米国の言うことを聞くべきではない」と考える人たちが世界中に増えているのに、大半の米国人は今でもそう思っています。

 日本でも「米国に指導してもらうべき」だとみんな考えているのでしょうが、それは間違い。自分で考えるようにしなければなりません。

『総理の影』  菅義偉の正体

史上最強の官房長官を完全解剖!

森巧   小学館    2016/8/29

<秋田から上京した農家の青年は、いかにして最高権力者となったのか。>

・菅義偉(よしひで)が生まれ、少年時代を過ごした秋田県雄勝郡秋ノ宮村は、そんな自然の恵みと厳しさを併せ持っている。現在は湯沢市となっているが、新潟県の越後湯沢とよく似ている。菅の生まれた故郷である秋ノ宮やその周辺が米どころと呼ばれるようになったのは比較的新しく、第2次世界大戦前までは農業に適した地域とも言いがたかった。

 それゆえ戦中は、大勢の村人が日本政府や関東軍にそそのかされ、新たな開墾地を求めて満州に渡った。全国の農村から渡満して入植したそんな人たちは満蒙開拓団と呼ばれ、秋ノ宮の村人たちもまた地名にちなんだ「雄勝郷開拓団」を結成した。そうした開拓団の人たちは満州で終戦を迎えた。

 終戦間もない満州の悲劇はこれまでにもいくつか紹介されているが、秋田の雄勝郷開拓団で起きた筆舌に尽くしがたい惨状はあまり知られていない。

・雄勝郷は牡丹江省安寧安県にあり、(昭和)15年6月に入植した。当初は先遣隊19名であったが、逐次増加し、20年8月のソ連参戦時において雄勝郷の規模は、戸数79、人口374名、水田四百町歩を有していた。

 

・匪賊の出没が頻繁なので、軍から小銃45丁、弾薬3千発を渡された。

 満州では戦況の悪化に伴い、すでに開拓団の成人男性が根こそぎ関東軍に徴兵され、残った女子供や高齢者は、終戦すら知らないまま、旧ソビエト軍や中国人反乱軍の脅威にさらされた。

 そして8月19日、戦地で戦っている一家の主の足手まといになるまい、と妻たちが話し合い、子供を道連れに、みずからの命を絶った。郷土史家の伊藤正が描きまとめた小冊子「満州開拓団雄勝郷の最後」には、たまたま入植地に居残り、妻たちの自決を知った柴田四郎という団員の手記が掲載されている。

・菅の故郷の雄勝郷開拓団の集団自決は、最近になってようやく明らかになった史実といえる。冊子には、その雄勝郷開拓団に逃げ込んで生きながらえた長野県「東海浪開拓団」の佐藤元夫が書き残した目撃談も掲載されている。

・菅の父や母もまた、新天地を求めた満州に渡った口だ。父親は南満州鉄道(満鉄)に職を求め、叔母たちは農民として入植した。雄勝郷開拓団員たちと同じような体験をしている。そうして菅一家はまさに満州の悲劇に居合わせ、運よく命が助かった。

・戦後、菅一家はいちご栽培で生計を立てたが、復興の著しかった都市部に比べ、雪深い生まれた故郷は、さほど豊かにはならなかった。菅が少年時代を送った終戦から高度経済成長の走りまで、多くの家庭では、冬になると一家の主が東京に出稼ぎに行き、妻や子供が留守を預かってきた。中学を卒業した生徒の大半が、集団就職のために夜行列車で上野を目指した。

・いちご農家の息子である菅本人は、中学を出ると、地元の秋田県立高校に進んだ。冬は雪で道路が閉ざされ、学校には通えない。そのため、高校の近くに下宿し、高校を卒業後に東京・板橋の段ボール会社に住み込みで働き始めた。

 中学や高校の幼馴染たちは、成人してしばらくすると、郷里の秋田に戻ってくるケースが多い。いわゆるUターン組であり、秋田で農業を継いできた。

 だが、菅はそこから大学に入り直し、政界に足を踏み入れた。やがて保守タカ派の政策で安倍晋三と意気投合し、信頼を得る。言うまでもなく安倍は戦中、満州国国務院実業部総務司長として、満鉄をはじめとする満州の産業振興に携わった岸信介の孫であり、祖父を敬愛してやまない。ともに戦争体験はないが、二人は互いに惹かれる何かがあったのかもしれない。

 そして菅自身は、第二次安倍晋三内閣における官房長官という政権ナンバー2の地位にまで昇りつめた。

日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ

コンタクティとチャネラーの情報を集めています。 森羅万象も!UFOは、人類の歴史が始まって以来、最も重要な現象といわれます。

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