権力は必ず腐敗する。40年も永田町を見てくれば、この言葉がいかに真実であるか、身を持って知ることになる。(5)
・売れている雑誌ほど、編集部は溶鉱炉のように熱くなっています。熱くなりすぎて、溶鉱炉が壊れ、熱いマグマのようなものが流出すると大損害になります。だからこそ、溶鉱炉の仕組みを理解し、制御の仕方を知っている編集幹部の存在が必要なのです。
<社内の美風と伝統>
・『文藝春秋』90周年号には、阿川弘之先生に原稿を書いていただきました。「伝統の社風」と題された文章は、一度は文春に入社を志した作家にしか書けない愛情にあふれたものでした。
阿川さんは文春社員に必要なことを6ヵ条、示してくださいました。
1、 どんな上役に対しても自由にものが言えて自己の主張を容易には曲げないこと
2、 ユーモアが通じること
3、 字句難解で観念論風な文章は好まれざること
4、 偏向した議論も、右寄り左寄りを問わず遠ざけること
(以下略)
みなさん、どうか、伝統を大切に扱ってくださいというのが阿川先生の言葉で、OBの私も同じ気持ちです。
<出版の未来>
・本は、書店まで出かけて、オカネを出して買ってもらう相当ハードルの高い商品です。販売店が家に届けてくれる新聞やリモコンを押すとも見えるテレビとはハードルが違います。ゆえに数字だけ見て企画を立てていても通用しないように思うのです。元々雑誌は新聞やテレビの補完メディアでした。大メディアが報じる隙間を狙って、それだけではわからないことを報じるのが役目。
だからこそ、取材の厚みも、誌面から溢れ出てくる教養も必要です。
PV(閲覧回数)や数字にこだわりすぎた今の雑誌・書籍編集では、テレビ、新聞、ネットと同じ土俵にのっているだけです。実は、補完メディアとしての役割は、今こそ重要になっていると私は感じます。
(2019/11/4)
『外国人ヒットマン』
一橋文哉 KADOKAWA 2019/9/19
<日本の国はいったい、どうなってしまったのだろうか>
・世の中ではこれまで、店舗の事務所に押し入って、高校生ら女性従業員3人を縛り上げるなどして抵抗を奪った直後に射殺したり(1995年の八王子スーパー強盗殺人事件)、幼い姉弟2人を含む一家4人を皆殺しにした後、メロンを皮ごと齧り、アイスクリーム5個を貪るように食べ、大便までして去ったり(2000年の世田谷一家惨殺事件)、本社の前で車で出勤してきた叩き上げの老社長の胸や腹に至近距離から4発の銃弾を浴びせて殺害したり(2013年の「王将」社長射殺事件)……など、手口は凄まじいのに、大金を奪うだけでもなく、深い怨恨などの犯行動機も見当たらない不可解な事件が頻発している。
しかも、こうした、まるでギャング映画に出てくるシーンを思わせる残虐な犯行は、すべて平成に入ってから起きた事件で、大半が未解決のまま今日に至っている。
年号が令和に変わって、過ぎ去りし平成の世を「戦争や大きな問題もなく、豊かで平穏かつ幸せな時代だった」と論じた学者たちがいたが、とんでもない。
犯罪はますます凶悪化し、前述した以外にも、思わず目を覆いたくなるような冷酷非道な事件が山のように起きている。
<こうした凶悪犯罪はなぜ起きるのか>
・私は、この短い「まえがき」でそうした犯罪の分析を行うつもりはないが、これまでに日本になかった凶暴な手口の犯行が増えた要因としてもう一つ、犯罪の国際化、つまり外国人による犯行が増えたことを挙げたい。
・新聞記事を読んだり、テレビのニュースやワイドショーなどを観ても、毎日のように外国人による犯罪が取り上げられている。詐欺や窃盗といった知能・技術型犯罪から殺人や強盗といった凶悪犯罪まで、その範囲は幅広い。
決して外国人ばかりが悪い訳ではないのだが、あまりそうした事件が続くと、不安を覚える市民が多くなることは間違いない。
・前述した八王子スーパー強盗殺人事件や世田谷一家惨殺事件、ライブドア「懐刀」怪死事件、「餃子の王将」社長射殺事件……など、私はこれまで多くの未解決事件を取材して、新聞や雑誌に執筆し、書籍にまとめてきた。
そして、それらの多くが、動機を持った主犯とカネで雇われた実行犯の二者に分かれた犯行であることを突き止めた。しかも、各事件の実行犯が外国人である可能性が高いことが分かり、そうした事がなぜ起きたのかを様々な視点から暴いてきた。
・なぜなら、各事件の犠牲者や被害企業の身辺捜査を進めていくうちに、それらの周辺に必ずと言っていいほど外国人犯罪者の影がチラついていたからである。
さらに中国、韓国など近隣諸国の捜査当局から実行犯に関する幾つかの有力な情報提供がもたらされたことも影響している。
・外国人犯罪者に対する捜査がなかなか進展しないのと同様に、外国人犯罪者に対する取材もかなり難航を極めたからである。
決して本名を名乗らず、正体や出生地、家族構成、学歴も不明。近くに家族や友人はいないし、仮にいても口が固くて何も分からない。
もちろん、自ら犯行を誇示してペラペラ喋ったり、指紋や顔写真など「決定的な証拠」を残す筈もない。
大がかりな犯罪組織の支援を受けて、偽造パスポートで入国し、アッという間に犯行に及び、主要道路での検問や組織的な聞き込み捜査が行われる前にさっさと海外に逃亡してしまう。事件が大々的に報じられる頃にはとっくに国外にいるのだから、犯人の正体はおろか、その行動や背景事情を探ることは困難と言わざるを得ない。
しかも、本書で取り上げた外国人たちは単なる犯罪者ではなく、政財界の要人や事件などある種の出来事の真相解明の鍵を握る人物=キーパーソンらを暗殺する「外国人ヒットマン」であるから、簡単に分かるわけはないのだ。
・これまで私が挑んできた事件ノンフィクションの分野では、詳細かつ正確な捜査情報をはじめ、緻密な現場検証報告、被害者を中心とした事件関係者の証言など、客観的な「証拠」類を丹念に拾い集めたうえで、慎重に報じるしかなかった。
例えば犯行動機に繋がる何らかの事情を抱え、事件当時のアリバイがないなど、いくら怪しい人物がいても、それだけで容疑者扱いするわけにはいかない。
まず、本人から直接、事情を聴かなければならない。
・もちろん、そこでは関係者の供述だけではなく、犯行現場の状況や遺留品の有無、犯行のきっかけとなった出来事や予兆の確認、事件に至るまでの経緯と背景事情………など様々な要因を考えて取材し、相互の因果関係や影響などを踏まえていかなければならないことは言うまでもない。
これは「言うは易く行うは難し」そのものであり、プロの捜査員を百人以上集めて捜査本部を立ち上げる警察当局でも難しいくらいだから、ジャーナリスト一個人の取材範囲や能力では到底出来るものではない(と言いながらも、懸命に裏付け取材を行ってはいますが………)。
まして取材相手が、存在そのものがトップシークレットである「外国人ヒットマン」であり、その予想もつかない(あるいは予想をつかせない)行動を、一つ一つ確実に辿っていくことは、ハッキリ言って不可能である。
最初から客観的に辿ることなど出来ない対象なのだ。
・しかし、世間から姿を隠して行動し、他人とは決して接しない「外国人ヒットマン」の正体や行動を客観的証拠から明らかにするのは至難の業であり、出来る限り「外国人ヒットマン」のことを知る人物を探し出し、その証言をもとに、闇に包まれた「外国人ヒットマン」の存在を浮き彫りにすることが精一杯だ。
そこで、彼らの存在を白日の下に晒すことに意味があると考え、それこそが何より重要ではないかと思い、ノンフィクションに必要不可欠な確実性や客観性を少々犠牲にしてでも、本人や関係者の証言をもとに捜査資料などと照らし合わせながら、この本を書いたというわけである。
各章で詳らかにした「外国人ヒットマン」の行動や犯行に至る経緯は、ヒットマン本人や支援組織のメンバーなどへのインタビューをもとに、出来る限り客観的な資料と照合しながら再現したものである。
・これまで世の中を騒がしてきた、あの著名な未解決事件が外国人ヒットマンの犯行だったことが分かり、まさに驚きの連続となるに違いない。
<韓国 世田谷一家惨殺事件の謎>
<韓国グルメ街にあった暗殺組織の拠点>
・そのチャジャンミョンの発祥の地として知る人ぞ知る土地が、韓国・仁川市にあるチャイナタウンの一角にある。
韓国の表玄関・仁川国際空港から車で約30分ほど走った場所に、その街はあった。
・そのメインストリートを北に向かってしばらく歩き、三つ目の角を左折して裏通りに出ると、極端に人通りが減ってきて、うら寂しい雰囲気が漂い始める。そんな裏町の少し先に建つ古びた5階建てビルの4階の一室に、目指すオフィスはあった。
・観光施設や飲食店を経営する興業会社風の名前が中国語で書かれた看板が表の出入り口付近の壁に掲げられていたが、古過ぎて文字が消えかかっていてよく読めない。
何より、誰もそんな看板など見向きもしていない感じがありありと伝わり、物悲しい感じと言うよりも、何やら不気味で恐ろしい雰囲気さえ漂って来る。
過去にこのオフィスを訪れたことのある人間の証言によると、外見はいかにも古びているのだが、内部はコンピュータなどのIT機器がズラリと並び、外見と違って「おシャレな外資系貿易商社」のように見えるという。
ただ、常駐している者はわずか数人しかおらず、それも一癖も二癖もありそうな男たちばかりだというのである。
・それもそのはず。この部屋は実は、日本の暴力団関係者や中国のチャイニーズマフィア幹部、地元韓国の暗黒組織幹部らが共同で営む暗殺請負組織の拠点があるビルで、その4階のワンフロアを占めているのが、ヒットマンを操る「司令部」と呼ばれるオフィスだった。
公式の法人登記や約款などは存在しないので、関係者の証言などから組織の特色や活動内容などごく簡単に説明すると、こんな組織であることが分かる。
地元韓国や日本、中国、北朝鮮など東アジアをはじめフィリピン、マレーシア、インドネシア、東南アジア諸国などを中心に、地元の暗黒組織を通じて依頼主から、復讐したい相手や利害が対立する者などを標的とする殺害依頼を受け、十分に下調べや監視をしたうえで、ゴーサインが出たら標的を素早く捉えて暗殺し、その直後には殺害場所から国外に離脱する、という仕事である。
・因みに、暗殺に掛かる費用や成功報酬などの料金は、標的の状態や凶器の選定、殺害場所の地理的かつ環境的条件などが一件ずつ違うため、その都度、依頼主との交渉で細部まで決めることが多い。
ただ、中国人ヒットマンを一人派遣して普通の市民クラスの人間を殺害するというごく一般的な暗殺行為の場合、ヒットマンの成功報酬は一人当たり3百万から4百万円が相場だと言われている。
もちろん標的がSPやボディガードに囲まれているVIPクラスになれば、料金は1千万円単位に跳ね上がることが多い。暗殺が実行されるまでの期間がどうしても長くなりがちだし、現場の下見や闘争支援態勢などの人員も増え、それだけ必要経費も嵩んで、料金に上乗せされることになるからだ。
・中国人の暗殺請負組織の場合、通常の例で言うと、依頼主がまず自分のいる国や地域の仲介代理人を通じて、成功報酬の半分を中国大陸にいる暗殺請負組織のボスに送金する。そうすると組織がいろいろと調査したうえで、了解・合意に達すれば、直ちに標的の状況や殺害方法などの条件に応じた中国人ヒットマンを送り込んでくる、という仕組みなのだという。
・いずれにしても、ヒットマン自身は標的や依頼主とは全く直接的な関係を持たないし、標的を殺害した後は直ちに出国するため、アシがつく心配はまずない。
あとは依頼主がちゃんと残金を振り込めば、何の痕跡も後腐れもなく一人の人間がこの世から消え去り、依頼主懸案の“問題”は解決するという訳である。
<「世田谷の事件は俺の仲間のヤマだ!」>
・この韓国の暗殺請負組織は第二次大戦中から存在する老舗グループで、そこに所属するヒットマンや支援スタッフにそれぞれの活動を語らせたら、何冊もの自伝が書けるほど多数かつ多彩な話が提供され、おそらく収拾が付かなくなるだろう。
それは韓国や中国、台湾など東アジア諸国における犯行だけではないということで、彼らは東南アジアやインド、豪州、そして欧米諸国にまで活躍する舞台を広げているという。そこで、対象をアジア諸国としたうえ、さほど古くない時期の代表的な犯行に絞って興味深い話をこの組織の責任者の一人にリクエストしたら、何と2000年12月末に日本国内で発生した、戦後を代表する未解決事件である世田谷一家惨殺事件の話が飛び出して来た。
「世田谷の一家皆殺しの事件は、俺たちの組織のヒットマンがやった犯罪と聞いている。当時、手際の良さが評価され、仲間内の話題になったと聞いている」
インタビューに応じた在日の仲介代理人の男は、そう言い切った。
平和に暮らしていた、どこにでもいそうなごく普通の一家4人が、何か大それたことを仕出かしたとは思えないし、もし彼に何か特別な事情があったとしても、2人の子供を含め一家皆殺しにすることはないだろう。いったい、誰が何のために殺害しなければならなかったのか――犠牲者4人の無念極まりない気持ちを思うと、やり切れなさと同時に、犯人への憤りを抑え切れなくなる。
・だが、発生から約19年が経過した現在でも、犯人は捕まらないどころか、有力容疑者さえ浮かばず、2010年に改正された刑事訴訟法が施行され、殺人事件の公訴時効が撤廃されたため、捜査は未だに続行されている。
この事件については、拙著『世田谷一家殺人事件――韓国マフィアの暗殺者』(角川文庫)で詳述しているので是非、そちらをお読み頂きたい。
私は韓国人ヒットマンを実行犯とにらんで本人に直撃インタビューしたほか、被害者家族やヒットマンの周辺を徹底取材し、犯行の依頼主を浮かび上がらせることに成功して厳しく追及するなど、事件の全貌に迫ったつもりである。
ここでは、その韓国人ヒットマンと、背後に見え隠れする韓国の暗殺請負組織を中心に様々な角度から事件の真相や背景を考えてみたい。
・家中の壁には血が飛び散り、床は血の海と化すなど宮澤家は凄惨な状況になっていたのである。
<未だに残る事件をめぐる七つの謎>
・この事件には、警視庁特捜本部が懸命の捜査を行ったにもかかわらず、19年経った今でも解決出来ていない七つの謎が存在する。
まず、①侵入経路だ。即ち犯人はいったい、どこから宮澤家に侵入したのか、という点が定まっていないのだ。
・次に、②殺害の順番。犯人は宮澤家の人々をどういう順番で殺害したのか、という点である。
・これは後述する犯行動機面の謎にかかわることだが、この事件最大の謎とも言える③犯人はなぜ、小さな子供を含めた一家4人を皆殺しにしなければならなかったのかに繋がってくる。
<誰がパソコンを操作したのか?>
・四番目の謎は、④犯人はいつ逃走したのか、であろう。
つまり、現場検証や周辺の聞き込み捜査から、犯人が逃走した時刻は31日午前10時過ぎと見られ、かなり遅くまで(と言うより、朝が来て明るくなるまで)宮澤家にとどまっていた可能性が出てきた。
犯人は、1階の仕事部屋に置いてあったデスクトップ型のパソコンを操作した形跡があり、みきおさんの勤め先などにアクセスしたことが通信記録で明らかになっている。
その通信記録によると、犯行後の31日午前1時18分と午前10時の2回、インタ―ネットに接続しており、マウスからも犯人の指紋が採取されている。
つまり、犯人は犯行後10時間以上も殺人現場の宮澤家に居座り、4人の遺体が発見される約50分前までパソコンを操作していたことになる。
犯罪者、特に殺人など凶悪犯罪を行った者は一刻も早く、そして、出来るだけ証拠を残さずに現場を離れたいと考えるのが普通で、この犯人は明らかにそうした犯罪者心理と矛盾する不可解な行動を取っていたのだ。
・それなのに、犯人は悠然とパソコンの電源を切り、玄関の鍵をきちんと掛けて(母親の「玄関の鍵を開けて入った」との証言を信じるのであれば………だが)、堂々と現場を去っていったと見られ、決定的な目撃証言も出ていない。
いったい、なぜ犯人はそんな“ヤバい行動”を取ったのであろうか。
これについては後に詳述するが、ここで言えるのは、犯人は⑤こうした不可解なパソコン操作でいったい、何を調べようとしていたのか――であり、これこそ五つ目の謎と言っていいだろう。
もっとも不可解な行動を取ったという意味では、警察当局も同様であった。事件発覚当時、何と、現場の捜査員たちは犯人が31日午前10時過ぎまでパソコンを操作していたという重要情報を上層部の判断で知らされていなかったのだ。
・さて六番目の謎は⑥4人を殺害した後の犯人のおかしな行動である。
犯人はまず、キッチンの冷蔵庫を開け、2リットル入りペットボトルの麦茶に直接口をつけてラッパ飲みした後、今度はメロンを取り出し、皮を剥かずにそのまま齧りついたほか、ハムも丸齧りし歯形がくっきり残った食べ残しをキッチンに放置している。
・また犯人は家中を激しく物色しており、⑦何を探していたのかが七つ目の謎だ。
<刃物を取り替え母娘の止め刺す>
・犯人が宮澤さん一家と知り合いだったという仮説が成立すれば、これらの犯行は十分に可能であるし、私が実行犯と目する「李仁恩」を取り巻くグループなら文句なく出来るだろう。
宮澤さん一家の周辺には、言葉の発達が遅れ気味の長男の教育問題に絡んで親しく交流している「金田秀道」(仮名)氏という宗教団体に関係する在日韓国人の男性がいて、金田氏の間で金銭貸借をめぐりいろいろとトラブルがあったことが、世田谷一家惨殺事件の起きる原因となっている。
この辺の事情については拙著『世田谷一家殺人事件――韓国マフィアの暗殺者』(角川文庫)をお読み頂きたいが、事業の失敗などで金に困っていた金田氏が宮澤家の財産を狙って、幼い頃から育ててきた「李仁恩」という若者に宮澤さん一家の殺害を命じたのが事件の始まりだった。
<一端の特殊部隊兵士に成長して>
・李は韓国京畿道出身だが、生まれつき頭の回転が遅かったらしく、韓国陸軍に入隊後は上官や古参兵に訳もなくいじめられた。そのため、次第に性格までおかしくなり、上官の一人が見るに見かねたのか李に除隊を勧め、彼も自らの意志で軍隊を辞め、故郷に戻ってきたと言われている。
・そんな彼はなぜか銃やナイフの扱い方に秀でたところがあり、身体能力も優れていたため、見事、傭兵部隊の入隊試験に合格し、傭兵部隊の一員となった。
そこで連日、銃撃や格闘技、さらには特殊部隊の訓練を受けた際、李の性格や特技を理解し生かしながら指導してくれる上官に恵まれ、各種能力はメキメキ上達し、気がつくと一端の特殊部隊兵士として活躍するようになっていたという。
・その後、地元韓国の暗殺請負組織からリクルートされ、組織が誇る有望なヒットマンとして注目され、その座を揺るぎないものにした。
李が世田谷事件の発生する10日前に日本に渡り、事件の翌日に台湾に出国していたことは、日本の入国管理局(現・出入国在留管理庁)の記録で確認出来ている。本人は私の直撃インタビューで犯行にかかわったことを否定しておらず、彼こそが「韓国から来たヒットマン」である可能性は極めて高いと言えるだろう。
・韓国内にはこの暗殺請負組織とよく似た新手のグループが次々と誕生し、お得意様である日本に上陸している。かつてのオウム真理教のように殺し屋候補を韓国の宗教団体に入れて洗脳するための学校とか、顔形だけではなく指紋まで変える裏整形業者、韓国の退役軍人が創設したボディガード研修所と称する私兵組織……などいかにも怪しい組織や団体が現れ、鎬を削っているのが現状だ。
<宮澤さん一家と悪夢の接点があった………>
・世田谷一家惨殺事件が持つ何とも言えぬ不可解さの所以は、宮澤さん夫妻に恨みを抱いたり、その金品を狙う者が何とも言えぬ不可解さの所以は、宮澤さん夫妻に恨みを抱いたり、その金品を狙う者が直接手を下さず、李のような第三者に殺害を実行させるという二重構造になっている点ではないか、と思っている。
・金田氏が所属する宗教団体の信者らに取材すると、金田氏は宗教団体内でかなりの実績を挙げたが、独断専行のきらいがあり、信者の評判は芳しくなかった。しかも自分の勢力拡大に必要な事業に失敗し、団体上層部への上納金確保に苦しんでおり、カネが欲しいという犯行動機を持つ金田氏は十分に主犯になり得る立場にあった。
・コリアンマフィアは日本国内でもパチンコ、スロット業界に加え、産業界にも積極的に進出。芸能活動を通じて、さらに政財界へと繋がっていくといわれる。
<中国 「王将」とスーパー襲う悪い奴>
<大東社長射殺の裏に東北マフィアの影>
・その事件は2013年12月19日午前5時45分頃、京都市山科区西野山射庭ノ上町にある企業の本社前で起きた。
社名は「王将フードサービス」だ。「餃子の王将」チェーンを全国展開するなど同社のやり手経営者として知られた大東隆行社長(当時72歳)が、本社前で何者かによって射殺された事件である。
<君臨する台湾・香港マフィア>
<歌舞伎町は犯罪組織のオールスター>
・もっとも、メンバーの団結力を誇る中国人犯罪組織、特にチャイニーズマフィアの台頭と活躍は、暴力団にとって物凄い脅威となった。
・歌舞伎町は彼らにとって「宝の山」であり、悪と欲の巣窟と化した。
ピーク時には台湾マフィアやチャイニーズマフィアなどが経営するパブやクラブ、ディスコなどで不法に就労していた外国人女性は、留学生のバイトを含め5千人を超えており、外国人の売春婦の国籍は三十か国以上に上っていた。
<女殺し屋「抱きつきのリン」>
・日本国内にかかわる中国人ヒットマン派遣組織として、日本の警察当局が密かに把握しているものは四系統あると言われる。
各組織のボスは上海や北京、大連など中国大陸にいることが多いため、在日中国人の代理人を通じて、依頼主からの要請や注文を受け付けるシステムが確立している。
<大連進出で地元マフィアとトラブルに>
・「王将フードサービス」が中国・大連市に進出した際、地元のコーディネーターへの謝礼やマフィアへの仲介料をめぐってトラブルになったことがある。
・そんな中国・東北部の地で、「王将」はどんなトラブルに巻き込まれたのか。
「餃子の王将」が中国・大連市に初めて出店したのは2005年7月。以降、「王将」は同市内に最大6店舗をオープン(後に3店舗に減少)したが、地元マフィアに多額の仲介料(ショバ代)を要求され、トラブルになったため、事業としては失敗に終わっている。特に「王将」側から一方的に特別成功報酬の約束を反故にされたと激怒した地元のマフィアが自ら「王将」本社を訪れ、大東氏に直談判して約束の履行を求めていたという、会社関係者もほとんどが知らない事実が発覚した。
しかも、こうした要求を大東社長が断固拒否したため、マフィア側が怒りと裏切りに対する制裁か、要求に従わない者への見せしめのために殺し屋を送り込んだのではないかとの考え方は分かりやすく、説得力がある。
『未来の中国年表』
超高齢大国でこれから起こること
近藤大介 講談社 2018/6/20
<2018年 中国でも「人口減少時代」が始まった>
・長年にわたる「一人っ子」政策が、少子高齢化時代を大幅に早めてしまった。しかも日本と違って、国の社会保障制度が十分に整っていないまま少子高齢化へと突入することになる。
(出生数が1786万人から1723万人へ)
・少子高齢化が世界で一番進んでいるのは日本だが、中国は日本に遅れること約30年で、同じ道を歩んでいる。
・ところが、全面的な「二人っ子政策」元年とも言える2017年に出生数は増えるどころか、63万人も減少してしまったのである。
(「子育てする20代女性」が600万人も減っている!)
・出生数が減少した主な原因は、ひとえに一人目の子供の出生数が減少したためだ。
・それにしても、一人目の子供の出生数が、日本の3年分近くに相当する年間約250万人も減少するというのは、尋常な社会ではない。いったい中国で何が起こっているのか?
(人口激増を懸念した鄧小平)
・そして食糧を豊富にするためには、できるだけ多くの人々を、農作業に従事させる必要があった。古代から中国大陸において戦争が絶えなかったのは、一つは土地の争奪が原因だが、もう一つは人間の争奪戦だった。
・こうして中国は、憲法で家庭の出産数に制限を設けるという、世界でも稀有な国家となったのだった。
(日本の人口よりも多い「中国の一人っ子」)
・2010年の時点で、全人口13億3972万人中、一人っ子の数は、すでに1億4000万人に達していた。これは日本の総人口よりも多い数だ。
(親と祖父母が子供を徹底的に甘やかす)
・一般に、中国が日本を反面教師にしている事柄が二つあると言われる。一つは日本のバブル経済の崩壊で、もう一つが日本の少子高齢化である。
・特に、中国の人口規模は日本の11倍にあるので、近未来に人類が経験したことのない少子高齢化の巨大津波が襲ってくるリスクがあったのだ。
(激論!「二人っ子」は是か非か)
・こうして2016年元旦から、「人口及び計画出産法」が改正され、中国は全面的な「二人っ子政策」の時代を迎えたのだった。
(子供を生まなくなった3つの理由)
・①子育てコストの上昇、②公共サービスの欠如、③出産観念の変化(夫婦二人きりの生活を楽しみたい)
(病院の診察整理券を狙うダフ屋たち)
・私が北京に住んでいた頃は、病院の「挂号」(診察の順番を示す整理券)を確保するために夜明け前から並んだり、「挂号」を高く売りつける「黄牛」(ダフ屋)が病院内に跋扈したりということが起こっていた。
(貧富の格差が定着する)
・だが中国は、依然として世界最大の発展途上国であり、あらゆるものが未整備のまま、少子化に突入したのだ。
<2019年 首都・北京の人口もごっそり減る>
・自然減に加え、習近平政権の複雑な思惑と極端な政策により、この年から北京は大きく姿を変えていく。
(2万2000人の減少)
・21世紀に入って17年目にして、初めて北京市の人口が減少したのだ。
(北京の人口が減る本当の理由?)
・北京市の人口がマイナス成長に転じたことは、北京市の人口は発展の変動の趨勢にマッチしたもの。
(3億人の出稼ぎ労働者)
・「農民工」の都市部での悲惨な状況は、たびたび社会問題となってきた。
・彼ら全員に大都市の戸籍を与えていけば、大都市はすぐにパンクしてしまう。だがそうかといって、「現代版アパルトヘイト」と揶揄される中国の戸籍制度は、隣国の北朝鮮を除けば、世界に類を見ないものだ。
(「特大都市」「超大都市」への移転はより厳しく)
・北京市の戸籍改革計画では、「中心部6区の人口を、2020年までに2014年比で15%減らす」としている。
(自治体が住人を選抜する!)
・習近平政権による戸籍改革で、もう一つ興味深いのは、「積分落戸」と呼ばれる新制度の導入である。これは、「特大都市」及び「超大都市」の戸籍を取得したい中国人を点数づけして、自治体が選別するというものだ。
(「第二首都」誕生)
・一つめは、「第二首都」の建設である。
(「低端人口」の一掃が始まる)
・その出稼ぎ労働者たちのことを、「低端人口」(下層の人々)と呼んでいるのだ。
・「低端人口」は、北京市内に数百万人いるとも1000万人近くいるとも言われた。
(本地人と外地人の分断)
・「『低端人口』を追い出さないから、北京の街は汚いし、人騙しは跋扈するし、治安も悪い」
(「拆拆拆」される人々)
・これによって、合法と違法の間のような、道路に少し張り出した店舗やレストランなども、すべて撤去させられてしまった。中国語で「撤去する」という動詞は「拆(チャイ)」と言うが、「拆拆拆」という言葉が、たちまち北京で流行語になった。
(20年前にタイムスリップ)
・つまり、北京の街並みは、20年前にタイムスリップしたのである。
・「低端人口がいないと、ゴミの回収から宅配便の配達まで何もできなくなってしまうことが分かった。それが春節の後、彼らを黙認するようになった」
<2020年 適齢期の男性3000万人が「結婚難民」と化す>
・適齢期の男性が適齢期の女性よりも圧倒的に多い社会が到来する。「剰男」(余った男)たちが選ぶ3つの道とは?
(「一人っ子政策」最大の副作用)
・だが、そうした歪みの中でも看過できない「副作用」が、男女比率の歪みである。
(女性100人に男性118人)
・嬰児の性別の話に戻ろう。中国の農村部では、女児が生まれた場合、役場に出生届を出さなかったり、間引いてしまったり、業者に売りつけてしまったりということが横行した。何と言っても、欲しいのは跡取り息子なのである。
・世界の出生数を見ると、男子が女子より多いのは各国に共通な現象で、国連では「102から107の間」を正常な国家と定義づけている。
・だが、時すでに遅しだった。中国は2020年には、結婚適齢期とされる20歳から45歳までの人口で見ると、男性の数が女性の数よりも、3000万人も多い社会となってしまうのだ。
(「持ち家のない男」は話にならない)
・中国の女性は、マイホームを買えて、「家を成せる」男性と結婚したいのである。
(国策ドラマだった『裸婚時代』)
・2011年春、中国全土で『裸婚時代』というテレビドラマが大ヒットした。「裸婚」とは、何とも意味深な漢字だが、「裸一貫(無一文)で結婚する」という意味である。つまり、究極のジミ婚である。
(「お一人様の日」で大儲け)
・それは、「1」が4つ並ぶ11月11日を、「お一人様の日」と定めて、結婚できなかったり、彼女や彼氏がいない若者たちに、24時間限定の大規模なセールを行ったのである。
(「超男性社会」の近未来)
・重ねて言うが、2020年の中国には、20歳から45歳までの男性が、同年齢の女性より3000万人も多いという、人類未体験の「超男性社会」が到来する。
・将来は「アフリカ系中国人」という人々も、普通に目にするようになるかもしれない。
(同性愛大国への道)
・近未来の中国で起こるであろう二つ目の現象は、男性の同性愛者の増加である。
・「人民解放軍の若い兵士たちの中には、大量の同性愛者がいる」
・社会主義国の中国では、例えば、人民解放軍などの組織では同性愛は禁止しているが、それでもいまどきの若者たちは、意外にあっけらかんとしている。そもそも中国人は他人に無関心なこともあって、同性愛の青年たちは徐々に表に出始めてきているのである。
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