宗教は我々の経済・ビジネス活動すべてのオペレーティング・システム(OS)なのだ。(1)

(2025/4/10)

『宗教を学べば経営がわかる』

池上彰・入山章栄   文藝春秋  2024/7/19

<本書を手に取った方へ 入山章栄>

・いや、むしろこれからは変化が激しく、不確実性の高い時代だからこそ、経営者、管理職、一般社員、起業家、すべてのビジネスパーソンにとって宗教を学ぶことが不可欠とすらいえるかもしれない。

■宗教は経営であり、経営は宗教である

・よく考えれば、歴史上最も成功した「組織」は、キリスト教やイスラム教だと捉えることもできる。

■宗教は経済・社会のオペレーティング・システムになっている

・実は世界を見渡せば、我々のビジネス・経営観念は、宗教の視点が前提としてインストールされている、ということだ。

■池上さんとの対談からこその成果

・皆さんもご存じのように、池上さんは様々な分野で膨大な知識を持つ「知のモンスター」のような方だ。

■宗教×経営の「掛け算」を楽しむ

・では、宗教×経営の「掛け算」という、世界で初めてかもしれない試みを、みなさんに楽しんでいただきたい。

<トヨタはカトリック、ホンダはプロテスタント~強い企業と宗教の類似性はセンスウメイキングにある~>

<解説 宗教と優れた企業経営は、本質が同じである 入山章栄>

・「同じ目標・信念を持つ人たちが集まり、その動機づけを持って共に行動する」という意味で、宗教と優れた経営に何ら変わりはない。

<本書全体でカギとなる経営理論「センスメイキング理論」>

<◎本書で学ぶ経営理論(1):センスメイキング理論>

・つまりセンスメイキング理論は、「腹落ち」の理論といえる。センスメイクには「腹落ち」という意味がある。センスメイキング理論の経営実務への合意は、「変化の激しい時代に、腹落ちの弱い企業は生き残れない」ということだ。人は腹落ちをしてこそ初めて本気で行動するし、それが組織を動かす最大の原動力になるからだ。

<リーダーが企業に腹落ちを浸透させるには>

・日本で巨大な実績をあげた経営者も、多くが腹落ちをさせる達人である。

<ソニー平井氏は、現代のマルティン・ルター>

・ソニーの復活は、平井氏がセンスメイキングを浸透させていったことが背景にあるのだ。

<企業研修は、ミサや礼拝を見習うべし>

・これと全く同じことをやっているのが、実は世界で成功するグローバル企業の「研修」だ。欧米のグローバル企業でも、社員研修を頻繁に行っているところは多い。

<文章や絵の力を最大限に活用すべき>

・いまや動画を誰でも作れる時代になったのだから、企業がセンスメイキングの手段として動画を作ることは、私も多くの企業に勧めているところだ。

<あなたの会社はカトリック型か、プロテスタント型か>

・池上さんからホンダは「プロテスタント型」ではないか、との興味深い指摘があった。これに対して私は、だとするとトヨタ自動車は「カトリック型」かもしれないと応じている。

<対談 池上彰×入山章栄>

<経営学は、人間と組織の学問>

入山:人間はどのように行動するのか。人間が織りなす組織は、どのように行動すると、うまくいったりいかなかったりするのか。これを探求するのが経営学の本質です。経営学は「人間と組織の学問」であると言えます。

<「腹落ち」こそが人を動かす>

入山:人はセンスメイキング(腹落ち)をするからこそ行動するし、それが人を動かす原動力になるんだと。このセンスメイキングこそが、現在の日本の大手・中堅企業に最も必要なのに、最も欠けているものだと思っています。

<テスラやスペースX「イーロン・マスク教」>

入山:日本に限らず、たとえばテスラやスペースXは、完全に「イーロン・マスク教」ですね。「教祖」である彼の宗教観というか世界観にみんなが共鳴するから、人が集まってくる。その意味で、強い会社と宗教ってそんなに違いがないと思うんですよ。

<「江副教」から脱したリクルート>

池上:江副さんがメディアの追及を受けて会長を退任したことで、会社が存続の危機に陥ったわけですよね。結果として、ガバナンスが強化されることになった。ここでうまく切り替えることができたんだと思いますね。

<創業者を信じているホンダ、トップダウンのトヨタ>

池上:キリスト教にたとえてみると、ホンダは「プロテスタント型」なんじゃないですか。

入山:このたとえで言うと、トヨタは「カトリック型」ですね。トヨタは内部の統制がものすごくとれている。

<ウクライナ戦争は子会社と孫会社の争い?>

池上:こうやって見てみると、ウクライナ戦争は、どこまでがロシア正教のエリアになるかというマーケット争いの要素もあるんですよ。

<ローマ教皇の人選はマーケット戦略>

池上:南米にはまだカトリックの強固な地盤がある。そして、今後発展の可能性があるのはアフリカなんですよ。

<プロテスタント型が生み出したホンダジェット>

入山:対照的に、「プロテスタント型」のホンダは、あくまで私の印象ですがトヨタと比べて、歴代の社長をみると社長の力が弱い時がある。

池上:三菱重工業のMRJは失敗しましたけど、ホンダジェットは大成功しましたね。

<イノベーションのためには、宗教化が不可欠>

<解説 なぜ企業の宗教化がイノベーションを引き起こすのか  入山章栄>

<イノベーションの基本理論が「両利きの経営」>

・世界の経営学で、イノベーション創出のメカニズムを説明する最も有名な理論が、「知の探索・知の深化の理論」である。日本では「両利きの経営」の名称で知られている。

<◎本書で学ぶ経営理論(2):知の探索・知の進化の理論(両利きの経営理論)>

・このように企業がイノベーションを起こして行くには、両面が重要なのだ。まず「知の探索」で遠くの離れた知と組み合わせる。他方、「探索」の結果うまくいきそうなものが出てきたら、徹底して深堀りして効率化する(「知の深化」)。

<多くの企業が「知の深化」に偏りすぎている>

・いま日本の伝統的な大手、中堅企業の多くでイノベーションが足りないと言われる。そうなのであれば、経営学的にはその理由は明快なのだ。多くの日本企業が、「知の深化」だけに偏りがちなのである。

<トップの任期の短さが足かせに>

・日本企業が宗教化する上で、カギは何か。私から一つ重要な論点を挙げたい。これは特に大手・中堅の伝統的な企業に向けてのものだが、これらの企業の最大の課題は、経営のトップの在任期間が任期制になっており、しかも短いことだ。

・実際、私の周りでイノベーションを引き起こしている日本企業は、トップの任期が長い。

<◎本書で学ぶ経営理論(3)レッドクイーン理論>

・レッドクイーン理論は、簡単に言うと、「企業はライバルと競争して、切磋琢磨すれば成長できる」というものだ。

<対談 池上彰×入山章栄>

<ホンダやソニーは「知の探索」をしていた>

・この「知の探索」と「知の深化」をバランスよく行う人・組織は、イノベーションを起こせる可能性が高い。世界の経営学で広く主張されている組織理論で、英語では「アンビテクスリティー」と言うのですが、私はこれを「両利きの経営」と名付けました。

<「知の探索」はコスパが悪い>

入山:企業の規模が大きくなると自由な発想は失われがちですし、そもそも一般的に、人や組織は「探索」を避けて「深化」に偏る傾向があります。遠くにあるものを幅広く見渡すには当然、時間もお金もかかりますから。

<二番煎じをやりたがるテレビ局の「編成官僚」>

池上:たとえば「編成官僚」という言葉があるんですね。放送局では、どんな番組をつくって放送するかを編成という部署で決めるんですが、ここがまるで官僚のようになっているんです。

<書店は「知の探索」にうってつけの場所>

入山:そんなとき私は、「書店に行って、目をつぶったまま本を1冊つかんでください。その本を買って帰って、最後まで読んでください」ってお伝えしているんです。これを習慣化すれば、日頃の自分の関心事とはかけ離れたものと触れる機会が増えて、「知の探索」ができるんですね。

<「創造性は移動距離に比例する」>

池上:別の場所に移動することで得られる発想力は、間違いなくあります。

<これからの企業は「宗教化」する>

・だからこそ、経営者が社員を「うちの会社はこういう方向でやるんだ」と腹落ちをさせるセンスメイキングがますます重要になっているんです。こうした変化を受けて、最近の日本では、いい意味で「宗教的」な会社が出てきていると思います。

<若者を集める宗教的ベンチャー企業>

・それに代わる存在として、新しい宗教が出てくるという考えもありますが、実は私は、崇高なビジョン、理念を掲げた「宗教的な企業・ベンチャー」が宗教の代わりを果たしだしているのだと理解しています。

<どんなビジネスも最初は「カルト」>

<解説 カルト宗教の行く末は、ベンチャー企業の進化論に学べる 入山章栄>

・そういったベンチャー企業の成長理論を応用することが、一般に「カルト」「セクト」と呼ばれる新興の宗教団体の進化プロセスの理解にもつながる、ということだ。

・最高のスタートアップは、究極よりも少しマイルドなカルトと言っていい。

<チャーチ・セクト論>

・彼らの論では、収去団体は4つに分類される。「チャーチ」、「セクト」、「デノミネーション」、「カルト」。

<◎本書で学ぶ経営理論(4):エコロジーベースの進化理論>

・経営学には、生物生態学のアナロジーを企業分析に応用する領域があるのだ。生態系における生物進化の過程のように、特定業界のベンチャー企業も一定のプロセスで進化する、とみなすのである。

・これを企業にたとえると、「一度生まれた組織は、ある程度その形が形成されると、以降その本質は大きく変化できない」ことになる。

<ベンチャー成功のカギは、正当性(レジティマシー)獲得にある>

・たとえば現代のベンチャー企業にとって顧客の納期を守ることは、レジティマシー獲得の第一歩だろう、

<カルト・セクトの成長のカギも、正当性(レジティマシー)にある>

・加えて、創価学会は社会的正当性(レジティマシー)の獲得にも注力した。公明党を通じて政界に進出していった。

<対談 池上彰×入山章栄>

<キリスト教は「カルト」だった ⁉>

・この類型化はおおまかに、「チャーチ・セクト論」と呼ばれます。この論では、宗教団体は「チャーチ」「セクト」「カルト」「デノミネーション」の4種類に分類されます。

・そう考えると、キリスト教も最初は「カルト」だった可能性があるわけですよね。キリスト教はそもそもユダヤ教から派生したわけです。

<組織は誕生したときがいちばんイノベーティブ>

・この理論の示唆を端的に言うと、「組織は誕生したときがいいちばんイノベーティブだ」ということになるんです。

<創価学会の「座談会」は「QCサークル」>

池上:いま思うと、創価学会の座談会って、企業の「QCサークル活動(小集団改善活動)みたいだなと思うんです。

<高度成長期にフィットした「現世利益」>

池上:特に創価学会の場合は「現世利益(げんぜりやく)」という考え方を提示したのが大きかったと思いますね。

<過激派の政治的セクト、そして旧統一教会>

入山:過激派は、万人が共感できるかどうかはともかく、「革命」に向けたビジョンがあるわけじゃないですか。それに腹落ちした人が集まるわけですよね。

<デジタル技術が生む「新しい宗教」>

池上:そう考えると、最新のテクノロジーを駆使して、いままでとはまったく異なる宗教が生まれる可能性もありますよね。心配なのは、それが危険なものにならないとは言い切れない点です。

<パーパス経営の時代こそ、プロテスタントの倫理が求められる>

<新説 ビジネスの行動原理は、宗教というOSで決まっている 入山章栄>

・宗教は我々の経済・ビジネス活動すべてのオペレーティング・システム(OS)なのだ。

<『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』>

・そもそもマックス・ウェーバーは、「人の行動原理は、かなりの部分が宗教によって規定されている」と主張する。

<対談 池上彰×入山章栄>

<人間の行動原理は宗教というOSで決まる>

入山:そう考えると宗教というのは、人間にとって本当に根源的なものだと思います。人の心の奥底に、OS(オペレーティング・システム)としてインストールされている。だとすれば、企業経営にも影響がないはずはありません。

<「お金のためじゃない」から成功する>

入山:特にいまの世の中と通じると感じたのが、プロテスタントの感覚は「働くのは、お金のためじゃない」という点ですね。でも、逆説的ですが、お金のためではなく働くから、資本主義の中で成功するということです。

<今も生きているプロテスタンティズムの精神>

・「人間はお金のために働くんじゃない。でも、だからこそ人間は一生懸命に働くことができる。結果としてお金が儲かるんだ」

<キリスト教もイスラム教も利子は禁止 ⁉>

入山:実はキリスト教でも、利子は禁止されていたんですよね? イスラム教では利子が禁止されているのは知っていましたが、キリスト教でも本来は禁止されていたとは……。

<産業革命で大ブレイクした背景>

・巨額の投資をするためには、金融の仕組みがきちんと機能していなくてはなりません。工場を稼働させるために、勤勉な労働者が大勢いる必要もある。イギリスはプロテスタント国家であり、そして当時のイギリスはこうした要素が全て揃っていたから、産業革命発端の国という形で大ブレイクしたんじゃないかと考えているのですが、いかがでしょうか?

<近江商人の「三方よし」はパーパス経営>

池上:ほら、近江商人の「三方よし」っていうのもあるじゃないですか。「売り手よし、買い手よし、世間よし」。近江国に拠点を置き、全国各地を行商した商人の理念として知られています。

<儲からないフリをする日本人>

池上:やっぱり日本には同調圧力がありますよね。「世間の目」というやつです。お金を持っているからといって贅沢な暮らしをしていると、成金趣味だと眉をひそめられる。

<「子ども銀行」運動が高度成長の原動力に>

入山:貯蓄率が高いと、そのお金が投資に回ります。結果として社会インフラとかいろいろなものが整備されるので、国の経済は成長する。経済成長論の原則です。

<なぜイスラム教は「ティール組織」が作れるのか>

<解説 イスラム教こそ、次世代ビジネスの最強OSかもしれない 入山章栄>

・現在、世界の宗教別人口はキリスト教徒が最も多いが、イスラム教徒(ムスリム)は2030年には世界で約22億人、世界人口の4分の1を占めるようになるとみられている。さらに、2070年にはキリスト教徒とほぼ同数になり、2100年には最大勢力になるという予測もある。

<イスラム教を理解する上で重要な「ティール組織」>

<◎本書で学ぶ経営理論(5):ティール組織とシェアード・リーダーシップ>

・ティール組織は「ある一定の価値観を共有した組織で、個人個人が各自の判断で自律的に行動する、自律分散型の組織」のことだ。端的には、「特定のリーダーがいない、ある意味で全員がリーダーの組織」と言い換えられる。

・「ある条件下では、シェアード・リーダーシップはピラミッド型組織よりも高いパフォーマンスを実現する」

<宗教の本質を理解する上で最重要な「常識の理論」>

・こちらはセンスメイキング理論と並んで、宗教の本質を理解する上で最重要の理論なのではないか、と私は考えている。

<◎本書で学ぶ経営理論(6):社会学ベースの制度理論>

・この理論の前提は、「人は必ずしも合理性だけでは行動せず、心理バイアスのかかった行動をとる。中でも、その社会・組織で正当性があると認識される行動をとるようになる」というものだ。

<常識は幻想であり、衝突を生む>

・さらに言えば常識は幻想なのだから、社会・組織ごとに、まったく異なる常識を持っていることも多い。

<対談 池上彰×入山章栄>

<『コーラン』を翻訳してはいけない>

池上:実は、日本語訳の『コーラン』を読んでも本当の意味で読んだことにはならない。なぜなら、アラビア語で書かれている『コーラン』を他の言語に訳してはいけないという大原則があるからなんです。

<シーア派とスンニ派の違いとは>

池上:世界のイスラム教徒のうち、シーア派が15%、スンニ派が85%を占めます。

<『コーラン』の「多義性」がもたらすもの>

入山:イスラム教について、もう一つ印象的なのは「多義性」です。文書主義で、重要なことが文字になってはいても、それをどう解釈するかは人によってかなり違ってくる。

<解釈をめぐって割れたソニー>

入山:「たとえばソニーも、考え方の違いで社内が割れて、業績が低迷していた時期がありました」

<戒律に厳格な国と緩やかな国>

池上:アラビア半島から離れれば離れるほど緩やかになっていきますね。インドネシアではけっこうお酒を飲んでいたり。

<ユダヤ教との共通点も>

池上:ちなみに、ユダヤ教徒も豚肉を食べません。『旧約聖書』の教えに反するからです。ユダヤ教徒は肉と乳製品を一緒に食べてはいけないことにもなっています。また、うろこのある魚は食べていいのですが、イカやタコは食べられません。

<『聖書』は物語、『コーラン』は理念>

池上:『旧約聖書』『新約聖書』は基本的に物語なんですね。しかし、『コーラン』は神の言葉をそのまま伝えるもので、ストーリーがあるわけではない。

<近代資本主義の一歩先を行く?>

池上:つまり、基本的に商売は自由にやっていい。だから、資本主義が入って来ることに対して、本来、抵抗はないはずなんです。

<「イスラム金融」は利子を取れない>

池上:利子を取ってはいけないという教えがあるので、イスラムの世界では建前上、普通の銀行のようにお金を貸して、利息の分を上乗せして返してもらうことはできません。そこで登場した「イスラム金融」というシステムがあります。

<世界中で信者が増える理由>

池上:イスラム教は「参入障壁」が非常に低いんですよ。イスラム教徒の男性二人を証人にして、「アッラーの他に神はなし、ムハンマドはアッラーの使徒なり」という言葉をアラビア語で唱えれば、その人はもうムスリム(イスラム教徒)なんです。

<「すべてを神に委ねよ」という安心感>

入山:ちょっと失礼な言い方になるかもしれませんけど、私のような西洋近代主義に毒された人間からすると、イスラム教に改宗すれば精神的に楽になれる気もするんですよね。日常生活の細々としたことを含めて、「ああしなさい、こうしなさい」と指示されるから、個人がいちいち悩まなくていい。たくさんの同胞がいて、孤立感に苛まれることもありません。

<「常識の理論」でイスラムとの関係を考える>

入山:経営学には「制度理論」と呼ばれるものがあります。いわゆる「常識の理論」です。人間の認知能力には限界があるので、「まわりの人と同じことをしていれば大丈夫だ、それが常識だ」となり、企業や業界などの「内側だけで通じる常識」ができあがっていく、という理論です。これが、今後のイスラムとの関係を考える上で、とても重要だと思います。

<「ティール組織」と相性がいいイスラム教>

入山:ティール組織とはどういうものか簡単に言うと、経営者や上司が管理するのではなく、個人がそれぞれの判断で行動する、自律分散型の組織です。私は「このティール組織とイスラム教はすごく相性がいいんじゃないか」と思っているんです。

<ISはネットワーク型テロ組織>

池上:IS(イスラム国)はネットワーク型のテロ組織なんですよ。彼らの大きな目標は、要するに「世界イスラム化計画」です。

<組織を動かす力は時代によって変化する>

入山:ここまでを踏まえて、この章の最後に、組織を動かす「ドライビングフォース(牽引力)」について、お話をしてみたいんです。ティール組織の概念を提示したフレデリック・ラルーという人は、ドライビングフォースは歴史とともに変化すると言っているんですね。

<アメリカ経済の強さも矛盾も、その理解には宗教が不可欠>

<解説 宗教と経営の学びあいは、さらに続く  入山章栄>

・本章では締めくくりとして、超大国アメリカの強さと不思議さの背後にも、宗教が深く埋め込まれていることを池上さんと議論している。

<■対談から得た学び>

・宗教と優れた企業経営の共通点は、ともにセンスメイキング(腹落ち)で人を動かすことにある。

・キリスト教プロテスタントのカルヴァン派の思想は、資本主義と相性が良かった可能性が高い。だからこそオランダは世界最初の株式会社を作り、イギリスで産業革命が起き、アメリカが経済大国となった。

<■「企業経営はさらに宗教化すべし」>

・私の解説はここで終わるが、この「宗教と経営を結びつけて考える」という、新しくも本質的な視点の探求は、始まったばかりである。

<対談 池上彰×入山章栄>

<個人主義でリスクを恐れず短期志向>

入山:他にも日米の差が大きい指標があって、一つは「不確実性の回避度」。この数値は日本人がすごく高い。やっぱり日本人は国民性として、不確実性を避けるんです。

<成功者は神に祝福されている>

池上:カルヴァン派の予定説では、誰が救われて誰が救われないか、あらかじめ決まっています。

池上:一生懸命に働いて成功を収めた場合に、「神に祝福されたから成功したんだ。神に選ばれたんだ」と考える。厳密には、現世で成功したからといって、実際のところ神に救済されるかどうかはわからないんですけれども、彼らはそのように理解します。

<救済が保証されないから、さらに努力する>

入山:アメリカでは、研究者同士の競争も猛烈に激しいんです。ようやく博士号をとって大学のアシスタント・プロフェッサーとかになって一生懸命に頑張っても、多くの人は途中でクビになったりして浮かばれないんですね。

池上:さきほど、現世で成功したからといって、神に救済されるかどうかはわからないという話をしました。成功を収めて「神に選ばれた」と思っている人でも、このことには気づいているのではないか。

入山:お金持ちになったのは神に祝福されているからだけれども、そのお金を持ったままでは天国に行けない。こういう理屈なんですね。

池上:聖書の記述から、寄付の文化が生まれたわけですね。

<隣人愛の実践と「強欲資本主義」>

入山:橋爪さんの本を読んでいて興味深かったのが、「市場に製品を提供することは、隣人愛の実践だ」というアメリカ人の考え方です。

入山:神様に認めてもらうために頑張っているだけで、自分なりの目的があるわけじゃない。だから、アメリカ人は短期志向になるのかなって気がするんです。はっきりとした目的がないから、「とりあえず金を稼ごう」って話になる。「強欲資本主義」とも呼ばれるウォール街の性質は、このあたりに原因があるのかもしれません。

<信心深さの原点は「リバイバル(信仰復興)」>

池上:いまでも同じようなことが行われています。中西部から南部にかけては熱心なキリスト教徒が多くて、「バイブル・ベルト」とも称されますよね。このあたりには5000人くらい収容できる巨大な教会がある。「メガ・チャーチ」と呼ばれています。

<突然宗教に目覚めた「リボーン・クリスチャン」>

池上:もう一人、福音派の支持を受けて大統領になった人物にジョージ・W・ブッシュ(息子)がいます。彼は、「リボーン・クリスチャン」と呼ばれているタイプなんです。若いころは飲んだくれていて、どうしようもない男だったんですね。それがあるとき突然、宗教に目覚めた。急に敬虔なキリスト教徒になったんです。そして福音派の支持を得て大統領になる。こういう「生まれ変わったクリスチャン」というのが、実はアメリカにけっこういます。

<「神の国」であるがゆえの傲慢さ>

池上:福音派とは、『新約聖書』に収められている4つの福音書を、本当に信じている人たちということですね。ちなみに福音とは、「よい知らせ」という意味です。

池上:「神の国」なんだから、先住民を追い払おうが、土地を奪おうが、別に構わないってことになっていく。

・『聖書』の教えに忠実であろうとする彼らの子孫が、のちに「福音派」と呼ばれるようになったわけです。

<しがらみの強い組織で新しいものはできない>

入山:アメリカは、純粋な宗教の国なんですね。今回それがよくわかりました。

池上:エストニアが独立を回復して、モスクワから派遣されていたソ連の幹部連中がみんな引き揚げたわけですよね。結果的に若い人たちが実権を握ることができた。

<全国一律への嫌悪感>

池上:アメリカ人って、全国一律に何かを行うことに嫌悪感や恐怖感を持っている気がしますね。連邦準備銀行にしても、全国に12もある。

<東海岸はチャーチ、西海岸はセクト>

入山:私は、東海岸の方は、よりチャーチ的で、西海岸は際立ったセクトではないかという印象を持っています。シリコンバレーのIT企業をはじめ、ベンチャーはたいてい西海岸から出てきます。

<「反知性主義」が生まれる理由>

入山:トランプ支持者の特徴としてよく語られる「反知性主義」も、チャーチとセクトの対立として捉えることができそうです。

池上:アメリカ人は、「成功した人は神に祝福されている」と考えますよね。裏を返すと、「貧しい人は神に見放されている」となる。

<「コロナは神からの罰だ」という福音派>

池上:あの人たちは福音派が多いんです。彼らがなぜワクチンに反対しているかというと、そもそも「コロナは神からの罰なんだ」と。私たちが放埓な生活をしているから、こうした形で罰を与えられたというわけなんですね。

<モルモン教徒はなぜ成功する?>

入山:私は最近、成功している経営者や投資家がどんな宗教を信仰しているのか気になって、調べてみたんです。すると、意外なくらいに正統的なプロテスタントが少ないんですね。

池上:モルモン教徒って、ビジネスで成功している人が本当に多い。信者はアメリカ国内に600万、世界では1500万人いると言われています。

池上:アメリカのホテルの部屋には、聖書だけでなく、「モルモン書」も置いてあることに気づいていらっしゃいましたか?

池上:刺激物を断って、ひたすら勉強して働くから、成功する人が多いんでしょう。

<矛盾を抱えているからこそ強い>

入山:私は、対談や講演などで「いい会社ほど矛盾を抱えている」ってお話をよくするんです。

<おわりに 池上彰>

・国際情勢は宗教抜きに語れない。ということは多くの人が理解していることでしょうが、宗教が経営にも大きな影響力を持っているとは、なかなか気づかない視点ではないでしょうか。

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