運動は散歩するだけで十分。老化予防のために歩くのは最低、1日30分ぐらいで十分。1度に30分歩いてもいいし、朝・昼・夕に10分ずつ、合計30分でもかまいません。(1)

(2025/4/30)

『老害の壁』

和田秀樹    エクスナレッジ    2022/11/18

長生きよりも「元気」「好きなこと」を優先させる生き方。

<はじめに>

・日本人の平均寿命は、女性87.57歳、男性81.47歳となっています。

 一方で、介護なしで生きられる健康寿命のほうは、女性75.38歳、男性が72.68歳。女性は約12年、男性は約9年、誰かに介護してもらいながら晩年を過ごすことになります。

そうならないために、これまで私は、60代、70代、80代の過ごし方について、たくさん本を書いてきました。それらの内容は、身体的なことだけではありません。私の専門は老年精神医学ですから、心の問題も大きく扱っています。

・でも地方に住んでいる人はご存じだと思いますが、日本には車がないと買い物にも病院にも行けない地域がたくさんあります。

・また、コロナ禍の外出自粛を強く要請されたのもリタイアした高齢者です。高齢者は重症化率や死亡率が高いというのが根拠になっていますが、要請を真面目に守った高齢者の中には筋力が低下し、歩けなくなる人が続出しています。

<老害という名の同調圧力>

<高齢者が免許返納しないのは老害なのか?>

・高齢者に免許返納を促す理由の1つが、認知機能の低下。すでに75歳以上のドライバーには、免許更新時に認知機能検査を行うことが義務づけられています。

<高齢者の免許返納は死活問題>

・今の地方は車社会。車がなければ、買い物もできません。日本には、近くに鉄道もバス路線も通っていない地域がたくさんあります。

・車しか移動手段を持たない地方の高齢者が免許返納すれば、外出の機会が減りますから、運動しなくなります。その結果、筋肉量が減るなどして、自立歩行ができなくなる可能性があります。

<コロナ自粛でフレイルに>

・若い人なら自粛して筋力が落ちてもすぐに回復しますが、高齢者はそうはいきません。1カ月も家に引きこもっていたら、歩けなくなってしまうのです。

<高齢者が運転事故を起こす確率は低い>

・「令和3年の交通事故状況」によると、原付以上の免許をもっている人口10万人当たりの年齢別事故件数では、もっとも事故を起こしているのが16~19歳の1043.6件、次いで20~24歳が605.7件となっています。 これに対し、高齢者でもっとも事故を起こしているのは85歳以上で524.4件。次いで、80~84歳が429.8人、75~79歳が390.7人となっています。続く70~74歳は336.0人で、30~34歳の329.1人と同じくらいです。

<75歳を超えると個人タクシーの運転はできなくなる>

・ところが、個人タクシーのドライバーにも定年があって、75歳になったら営業できなくなるのです。

<高齢者マークをつけた車は安全運転>

・私も運転するのでわかりますが、高齢者マークをつけている車は基本的に安全運転しているように思えます。

<誰にでも交通事故を起こす可能性はある>

・確かに、高齢になれば動体視力や判断力が若い頃より低下するので、より慎重に運転する必要があります。でもそれは高齢者もわかっていることです。

<交通事故の原因は薬の副作用>

・長年、高齢者医療に携わってきた医者の立場から言うと、高齢ドライバーが交通事故を起こす事例の1つとして、常用している薬の影響が考えられます。

<老害という名の同調圧力>

・このように、薬の副作用で事故を起こした疑いがあるのに、ほとんど検証されていません。逆に、このような事故も、高齢者の免許返納の口実に使われているのが現状です。

<「老害恐怖症」の怯える高齢者>

・私は高齢者の免許返納の問題について、いろんな本で書いてきましたが、結論は一貫しています。それは、まだ十分運転できるうちは返納すべきではないということです。

・老害という名の同調圧力にしろ、老害恐怖症にしろ、現代を生きる高齢者の前には「老害の壁」が立ちはだかっています。この壁をぶち破るのは、かなり勇気がいることです。

<今さらタバコを吸っても寿命は変わらない>

・そもそも、高齢者がタバコを吸っても、寿命はそれほど変わりません。これも浴風会病院に併設された老人ホームでの追跡調査のデータにありますが、高齢者の場合は、タバコを吸っても吸わなくても生存曲線が変わらないという結果が出ています。

<快を犠牲にしてまで長生きしたいですか?>

・私自身は現在63歳で、高齢者に近い年齢ですから、もういつ死んでも悔いはないと思っています。

<お酒は暗くなってから飲む>

・依存症が心配な人は、お酒は暗くなってからと決めてはいかがでしょうか。

<高齢者がお金を使わないと経済は回らない>

・そうでなくても、何歳まで生きられるかわからないからと、高齢者はお金をあまり使いたがりません。

<「ぜいたくするな」という圧力に負けない>

・「年寄りのくせにぜいたくするな」といった世間の圧力に負けてはいけません。高齢者こそ、もっともっとお金を使って、快を求めて生きるほうが国のためなのです。

<老害の壁は壊すべき>

・現代ほど高齢者が生きにくい時代はないでしょう。

<老害を恐れていたら要介護に>

<シルバー民主主義なんてウソばかり>

・シルバー民主主義とは、有権者の中で高い割合を占める高齢者に向けた施策を優先する政治といった意味。

・例えば、保育園の待機児童が5634人(2021年)なのに対し、特別養護老人ホームの入居待機者数は約29.2万人(2019年)もいます。これを見ても、みなさん政治がシルバー民主主義を反映させていると思いますか。

<日本の道路は歩道橋だらけ>

・高齢者にとって歩道橋の階段を上るのは大変なことです。日本で歩道橋の整備が進んだのは、交通事故の死者数が1万6000人を超えていた1970年前後からです。

<駅にエスカレーターがない>

・今のような高齢化の時代に、JRは公益企業であることを意識していないから、バリアフリーを進める気がないのだなと思われても仕方がありません。

<運転免許も公共交通もなくなったら>

・赤字ローカル線が廃止されたら、これらの沿線に住む高齢者はいったいどうなってしまうのでしょうか。免許返納したら、移動手段は公共交通に頼るしかありません。運転免許もなく、鉄道もバスもないとしたら、まともに生活することができなくなるのです。

<高齢者にやさしい政策がない>

・現在、日本の人口の約3割が高齢者で、有権者ベースでいうと約4割、投票率で考えると高齢者の票だけで過半数を占めることができます。

 シルバー民主主義というなら、もっと高齢者に寄り添った政策をどんどん実現すればいいのに、実際は行われていません。高齢者もそれに対して、あまり文句を言いません。いったい何を期待して投票しているのでしょうか。

<日本の街には休憩するイスがない>

・ところが、日本の都市はイスがほとんどないので、歩き疲れた高齢者が、座って休むことができません。

<出先でトイレを見つけるのは一苦労>

・高齢者が外出をためらう理由の1つに、トイレの問題があります。高齢者になるとおしっこが近い、いわゆる頻尿の症状を訴える人が増えてきます。膀胱が過敏になる過活動膀胱とかいくつかの原因があるのですが、利尿剤を飲んでいる人も頻尿になります。かくいう私もその1人です。

<コロナで死にたくないから外に出ない>

・確かに、コロナの死者数は年齢が上がるにつれて高まります。

<ワクチン以外でも免疫力は高められる>

・しかし、免疫力を高めるにはワクチンしかないと思い込んでいる人は、自然免疫の存在を忘れています。

<コロナ自粛は免疫力も落とす>

・もう1つ、自然免疫を高めるのに大事なのが運動です。適度な運動をしている人は免疫力が高く、かぜやインフルエンザなどの感染症にもかかりにくくなります。逆に、マラソンのような激しい運動は免疫力を低下させます。

・少なくとも、自分の足で歩ける元気な高齢者は、コロナといえどもそんなに心配する必要はないと思います。

<コレステロールを下げるとがんになる>

・ところが、コレステロールを薬で下げると、免疫力が低下するので、がん細胞という異物に対する反応が鈍ります。つまり、がんになりやすくなってしまうのです。

<コレステロールが減ると脳出血に>

・コレステロールは血管の細胞の材料でもあるので、少なくなると血管が破れて、脳出血を起こしやすくなります。

・肉にはコレステロールが多く含まれているので、日本人のコレステロール摂取量は飛躍的に増加しました。その結果、血管が丈夫になり、脳出血による死亡者が減ってきたと言われています。

・今もそれを信じて、コレステロールの多い食品を控えている人がいるかもしれません。そうであれば、すぐにやめてください。

<肉や卵を食べないと筋肉がつかない>

・少し太っているほうが長生きできる、というデータは世界中にあるのですから、無理にやせようとするべきではありません。

<高齢者の塩分制限はむしろ危険>

・ところが高齢者はナトリウムの貯留能力が低下するので、どんどんナトリウムを排出してしまいます。その結果、低ナトリウム血症という病態に陥りやすくなります。これを防ぐため、体が塩分を欲しがっているのかもしれません。

<「迷惑をかけたくない」の本音は?>

・老害の「害」というのは「人に迷惑をかけること」ですから、奥ゆかしい日本の高齢者は、それだけはしたくないと思っています。

<長距離ドライブにもチャレンジ>

・意欲的にファン・トゥ・ドライブ(運転そのもを楽しむこと)をしてみましょう。

<自動運転になっても免許は返納?>

・ただ安心できないのは、自動運転の車が普及したとしても、免許返納の同調圧力は続くのではないかということです。

<引きこもりをやめて街に出よう>

・前述したように、運動をしないと免疫力が下がり、コロナばかりか、インフルエンザやかぜにも感染しやすくなります。

<老害と言われても気にしない>

<性格の尖鋭化でがんこな人はよりがんこに>

・傍若無人な言動などで老害と呼ばれるような人は、若いときからそういう性格で、年をとってから急に暴言を吐くようになったわけではありません。ただし、年をとってから、言い方がより激しくなるという人はいます。

<怒りが抑えられなくなるのは?>

・もう一つ、老害に結びつきやすいのは、日本人に特有の「かくあるべし思考」です。多くの日本人は、「前例踏襲」からなかなか抜け出すことができません。そのため、時代に合わなくなったルールでも、いつまでも守ろうとします。

・ところが、前頭葉が委縮してくると、このブレーキが利かなくなるのです。その意味では高齢者のほうが腹を立てやすい傾向にあるとは言えます。

<かくあるべし思考が差別に>

・かくあるべし思考は、気をつけないと「差別」に行きつくことがあるので、注意しなければなりません。

<高齢者が仕事に就けないのは年齢差別>

・日本は先進国の1つだと信じている人が多いと思いますけど、年齢差別を禁止する法律がありません。

<よりレベルの高い笑いを求める>

・お笑いが好きな人であれば、演芸場や寄席に行くべきです。笑いは免疫力を上げることがわかっているので、笑う機会が増えるのはとてもよいことです。

<変化のある生活にチャレンジ>

・前頭葉の老化を防ぐには、変化のある生活をするのが一番です。

<「毎日が実験」の精神で生きる>

・前頭葉の老化を防ぐには、「毎日が実験」と思って暮らすことです。

<高齢者が「情弱」なんて誰が言った?>

・パソコンが普及して20数年、スマホが発売されてから10年以上たっているのですから、幸齢者への普及も今ではだいぶ進んでいるのです。

<時間がかかってもスマホに挑戦>

・そういう人も、これを機会にガラケーをスマホに替えてみてはいかがでしょうか。決して遅いということはないはずです。

<パソコンがあれば「自分史」もスラスラ>

・パソコンのワープロソフトは、長い文章を書くのに最適です。

<プロ並みの写真もデジタルなら簡単>

・みんながこんなに写真を撮るのが上手になったのは、写真がフィルムからデジタルに変わったからでしょう。

<杖を使って街に出よう>

・そうなりたくなかったら、杖を使って街に出ましょう。

<ためらわずに補聴器を使おう>

・まずは最新式の補聴器を試してみてはいかがでしょう。

<元気に歩ける高齢者こそ紙おむつを!>

・高齢者の三種の神器の3つめは、紙おむつです。

<仲間をつくって対抗する>

・でも、そんな勇気はないという人も多いのではないかと思います。そんなときのためにも、仲間がいると安心です。

<孤独でもSNSで発信できる>

・それでも、どこかで他者とつながっていたいと思うなら、それこそパソコンやスマホを活用してみてはいかがでしょうか。

<老害になるのは脳の衰え?>

<仕事は引退せず続けたほうがよい>

・第1章でデータを示したように、高齢者の免許返納に関しては、統計的な裏付けはまったくありません。むしろ、高齢者の多くは安全運転を心がけています。

<若い人がタメ口を聞いても気にしない>

・若い人のタメ口に腹を立てるのは、逆に若い人を差別していることにもなるのです。

<できることを無理に増やす必要はない>

・いずれにしても、高齢者はやりたくもないことにチャレンジしなくてよいし、したとしても結果を求めなくてもよいのです。

<昨日できたことが今日もできるように>

・むしろ高齢者の場合は、今できることをいかに維持していくかを基本に考えるべきでしょう。

<気にしたほうがよい老害もある>

・このような、正論とは違った、ユニークな意見を言ったほうが、若い人にもウケると思います。そもそも正論しか話せないのは、自分の意見を持っていないからでしょう。

<知識の量は何の役にも立たない>

・また、SNSで自分の考えを発信する方法もあります。脳の老化防止、特に前頭葉の老化防止になりますから、自分の頭で考える習慣をつけることをおすすめします。

<急に怒り出す老人にならないためには>

・前頭葉が多少老化しても、自分の性格がわかっていれば、感情のコントロールはできるということです。

<脳の神経細胞は高齢でも増える>

・認知症の患者数は60代だと約2.5%ぐらいですが、70代から急カーブを描くように増加し、80代では約30%まで増えてきます。認知症の発症は60代から70代にかけての生き方が大きく関わっているということです。その生き方というのは、脳を積極的に使う生き方です。

<若者も高齢者も記憶力に差はない>

・もう一つ、75歳ぐらいまでは記憶力はそれほど衰えないことも、最近の脳研究でわかっています。

<初めての店に入ると前頭葉が活性化>

・逆にいえば、生活に変化を持たせることで、前頭葉を活性化することができるのです。

<早くやることを目標にしない>

・年をとってもできることを続けるのが、老化の進行をゆるやかにする基本です。

<認知症は人に迷惑をかける病気ではない>

・脳の老化を防ぐことは大事ですが、それでも認知症になる人はいます。

今、日本には認知症患者が約600万人いるといわれています。日本の人口が約1億2000万人ですから、20人に1人は認知症ということになります。

・老人医療に30年以上携わってきた私に言わせれば、認知症はそんなに人に迷惑をかける病気ではありません。

<迷子にならないなら徘徊ではなく散歩>

・ゴミにして出すこともないので、家の外まで臭ってくるのです。それを、近所の人が保健所などに相談することがあります。これを「近隣苦情」と言うのですが、近隣苦情が来ている家に行政が医者を派遣することがあるのです。

<認知症でもできることはいっぱいある>

・認知症になると、何もできなくなると思っている人が多いのですが、できることはまだまだありますし、新たな能力が発見されることもあるのです。

<AIの進化で認知症の生活も楽になる>

・それに、これを読まれている60代、70代の人が認知症になる頃は、AI技術がグッと進化している可能性があるので、認知症でも楽に過ごせるようになるかもしれません。

<認知症とうつ病の症状は似ている>

・精神科医として数多くの高齢者を診てきた私からすると、高齢者は認知症よりもうつ病のほうがつらいと思います。

・うつ病の約4割は60歳以上というデータがあります。高齢者がうつ病になりやすい理由の1つに、セロトニンの減少が考えられます。

<朝日を浴びるとセロトニンが増加>

・朝日を浴びてセロトニンが増えれば、うつ症状も改善され、夜もぐっすり眠れるようになるでしょう。

<老害を気にせず老後を楽しむ>

<子どもが親の再婚に反対するのは?>

・子どもにお金を残さないというと、それこそ子どもたちから老害と言われそうですが、気にしてはいけません。それに、子どもにお金を残すと、ろくなことがありません。

<これが最後の海外旅行かも>

・何度もいいますが、子どもたちから、老害と言われることを恐れてはいけません。

<遺産を残したいなら寄付する>

・何度も言うように、老後資金は自分のためにお金を使うべきです。

・最近、「終活」といって、死ぬ前にいろんなことを整理することが流行っていますが、これはあまり意味のある行動とは思えません。

<日本の遺言は効力が弱い>

・この平等相続というやり方は、早く廃止すべきだと私は思っています。

<子どもにはお金を残さない>

・でも今はそうなっていないわけですから、やっぱり子どもに財産は残さないほうがよいと思います。

<ランチ通いはいいことずくめ>

・でもランチなら。そんなにお金はかかりません。

<高齢者向けの商品やサービスが皆無>

・そうなっている理由の1つに、高齢者がお金を使いたくなるような、わくわく感のあるサービスが少ないからだと私は思っています。

<消費する高齢者こそ現役市民>

・日本の経済が悪くなり、高齢者向けの産業がろくに生まれないのは、お金を持っている高齢者に消費してもらうという発想がないからです。

<生活保護は堂々ともらいなさい>

・だったら、生活保護のように、もらう権利のあるお金はもらいましょう。

<AIの進化で仕事がなくなる>

・消費不況になるのは、生産が余っているからですが、これからの時代はそれがもっとひどくなります。

<よいものなら高くても買う>

・それに対して、今の日本は90年代のアメリカとそっくりな状態になっています。安くないと買わないのはもちろん、壊れるまで買い換えようとしません。

<新しいテクノロジーを要求せよ>

・消費者は「こんな商品が欲しい」と要求することが大事です。先ほどAIの進化について述べましたが、テクノロジーの進歩もどんどん要求すべきです。

・残念ながら、今の若い人はあんまり本を買って読みません。

<青春時代のサブカルと再会>

・好きなことをやりなさいと言うと、自分には趣味もなければ楽しめるものもないと答える人がいます。実際、そういう人が多いのですが、本当にそうでしょうか。

<勉強するならグループ学習がよい>

・そこでおすすめしたいのがグループ学習。同じことを学ぶ人たちが集まって、議論することがアウトプットになるからです。

<昔の友人に気軽に会ってみる>

・その1つとして提案したいのが、昔の友人に会うことです。

<老害の壁を打ち破るための養生術>

<肉を食べてたんぱく質不足を防ぐ>

・しかし、多くの高齢者はたんぱく質が不足しています。

<太めのほうが長生き、カロリーを気にしない>

・宮城県で5万人を対象にして行われた大規模調査によると、やせ形のほうが、やや太めの人よりも6~8年早く亡くなることが明らかにされています。

<運動は散歩するだけで十分>

・老化予防のために歩くのは最低、1日30分ぐらいで十分。1度に30分歩いてもいいし、朝・昼・夕に10分ずつ、合計30分でもかまいません。

<薬の影響で骨折し、寝たきりになることも>

・高齢者の健康で、もっとも大事なことは「自分の身は自分で守る」ということです。

・高齢者が免許返納をすると、6年後には要介護率が2.2倍に上がります。そういうことも考えて、運転を続けるのか、それとも免許返納すべきか考えるということです。

<骨粗しょう症の薬に重大な副作用が>

・高齢者がちょっと転んだだけでも骨折してしまうのは、高齢になると骨粗しょう症という病気になる人が増えてくるからです。骨粗しょう症は骨が脆くなって折れやすくなる病気です。実は骨粗しょう症の薬の中には、強い副作用が出るものがあります。ところが、そのことはほぼ問題とされていません。

<大学の教授は薬の研究ばかりしている>

・そもそも、医学部の教授というのは、人間をほとんど診ないで、動物実験ばかりやって薬の研究だけをしている医者が圧倒的に多いのです。

<高齢になるほど薬は危ない>

・特に、高齢者にとっては薬はハイリスクです。その理由の1つが、高齢による肝臓と腎臓の働きの衰えです。つまり、高齢者は薬を分解するのも、排泄するのも時間がかかるので、副作用が起こるリスクも長くなるということです。

<薬は自分の意思でやめてよい>

・高齢者の多剤併用は、本当に大きな問題です。気がついたら15種類もの薬を飲んでいたという話をよく聞きます。もちろん、中には飲まなければならない薬もあります。

<自分と相性のよい医者を見つける>

・多剤併用の問題が起こるのは、日本の医療が臓器別診療のスタイルをとっているからです。

・ところが、ここにも問題があります。今通っているかかりつけ医に満足していないという人が多いのです。

<健康診断は受けなくてよい>

・私は70歳を過ぎたら、健康診断は受けるべきではないと言っています。健康診断では50~60項目くらいの検査をしますが、病気との因果関係がある程度はっきりしているのは、血圧や血糖値、赤血球数などの5~6項目くらいです。

・そもそも、海外のデータですが、血圧や血糖値、コレステロールなどの数値が高くても、心筋梗塞や脳梗塞になる人の確率が少し高くなるだけで、ならない人の確率のほうが大きいのです。

<突然死を防ぐ検査を受ける>

・よく「死ぬならがんがいい」という人がいます。がんは亡くなるまでに時間の余裕があるので、残された時間を大事に使えるというのがその理由です。私も突然死を防ぐために、心臓ドックと脳ドックだけは定期的に受けています。

<がんがあっても切らない>

・しかし、経験的にいうと、がんの手術をすると、高齢者の場合、ほとんどの患者の生活の質は低下します。なぜなら、がんと一緒に臓器の一部も取ってしまうからです。外科医にとっては、切ることが仕事だからです。

・浴風会病院の剖検でも、85歳以上でがんが1つもなかった患者さんはほとんどいませんでした。

<高齢者のがんは治療しない選択も>

・高齢者ががんの積極的な治療をしても、体が衰弱して、かえって寿命を縮めてしまう可能性のほうが高いのです。

 40~50代のがんなら、がんの進行も速いので、手術などの積極的治療をするのは意味があるかもしれません。体力があるので回復も早く、仕事に復帰することも可能でしょう。

<認知症と診断されても絶望しなくていい>

・でもいくら予防を心がけても、認知症になる人はなります。なぜなら、認知症の原因の1つは、加齢による脳の機能低下だからです。80代後半になるとおよそ半分、90代になると、7割近い人が認知症になることがわかっています。

・確かに、最終的には人にお世話をしてもらわないといけなくなる病気ではありますが、そうなるまでにはかなりの時間があります。

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