私は、70代以上のおトシヨリには、がんを治療せず放っておく選択肢もあると考えています。ちなみに私は、もし70代でがんになったら手術はしないと思います。(2)

<出先でトイレを見つけるのは一苦労>

・高齢者が外出をためらう理由の1つに、トイレの問題があります。高齢者になるとおしっこが近い、いわゆる頻尿の症状を訴える人が増えてきます。膀胱が過敏になる過活動膀胱とかいくつかの原因があるのですが、利尿剤を飲んでいる人も頻尿になります。かくいう私もその1人です。

<コロナで死にたくないから外に出ない>

・確かに、コロナの死者数は年齢が上がるにつれて高まります。

<ワクチン以外でも免疫力は高められる>

・しかし、免疫力を高めるにはワクチンしかないと思い込んでいる人は、自然免疫の存在を忘れています。

<コロナ自粛は免疫力も落とす>

・もう1つ、自然免疫を高めるのに大事なのが運動です。適度な運動をしている人は免疫力が高く、かぜやインフルエンザなどの感染症にもかかりにくくなります。逆に、マラソンのような激しい運動は免疫力を低下させます。

・少なくとも、自分の足で歩ける元気な高齢者は、コロナといえどもそんなに心配する必要はないと思います。

<コレステロールを下げるとがんになる>

・ところが、コレステロールを薬で下げると、免疫力が低下するので、がん細胞という異物に対する反応が鈍ります。つまり、がんになりやすくなってしまうのです。

<コレステロールが減ると脳出血に>

・コレステロールは血管の細胞の材料でもあるので、少なくなると血管が破れて、脳出血を起こしやすくなります。

・肉にはコレステロールが多く含まれているので、日本人のコレステロール摂取量は飛躍的に増加しました。その結果、血管が丈夫になり、脳出血による死亡者が減ってきたと言われています。

・今もそれを信じて、コレステロールの多い食品を控えている人がいるかもしれません。そうであれば、すぐにやめてください。

<肉や卵を食べないと筋肉がつかない>

・少し太っているほうが長生きできる、というデータは世界中にあるのですから、無理にやせようとするべきではありません。

<高齢者の塩分制限はむしろ危険>

・ところが高齢者はナトリウムの貯留能力が低下するので、どんどんナトリウムを排出してしまいます。その結果、低ナトリウム血症という病態に陥りやすくなります。これを防ぐため、体が塩分を欲しがっているのかもしれません。

<「迷惑をかけたくない」の本音は?>

・老害の「害」というのは「人に迷惑をかけること」ですから、奥ゆかしい日本の高齢者は、それだけはしたくないと思っています。

<長距離ドライブにもチャレンジ>

・意欲的にファン・トゥ・ドライブ(運転そのもを楽しむこと)をしてみましょう。

<自動運転になっても免許は返納?>

・ただ安心できないのは、自動運転の車が普及したとしても、免許返納の同調圧力は続くのではないかということです。

<引きこもりをやめて街に出よう>

・前述したように、運動をしないと免疫力が下がり、コロナばかりか、インフルエンザやかぜにも感染しやすくなります。

<老害と言われても気にしない>

<性格の尖鋭化でがんこな人はよりがんこに>

・傍若無人な言動などで老害と呼ばれるような人は、若いときからそういう性格で、年をとってから急に暴言を吐くようになったわけではありません。ただし、年をとってから、言い方がより激しくなるという人はいます。

<怒りが抑えられなくなるのは?>

・もう一つ、老害に結びつきやすいのは、日本人に特有の「かくあるべし思考」です。多くの日本人は、「前例踏襲」からなかなか抜け出すことができません。そのため、時代に合わなくなったルールでも、いつまでも守ろうとします。

・ところが、前頭葉が委縮してくると、このブレーキが利かなくなるのです。その意味では高齢者のほうが腹を立てやすい傾向にあるとは言えます。

<かくあるべし思考が差別に>

・かくあるべし思考は、気をつけないと「差別」に行きつくことがあるので、注意しなければなりません。

<高齢者が仕事に就けないのは年齢差別>

・日本は先進国の1つだと信じている人が多いと思いますけど、年齢差別を禁止する法律がありません。

<よりレベルの高い笑いを求める>

・お笑いが好きな人であれば、演芸場や寄席に行くべきです。笑いは免疫力を上げることがわかっているので、笑う機会が増えるのはとてもよいことです。

<変化のある生活にチャレンジ>

・前頭葉の老化を防ぐには、変化のある生活をするのが一番です。

<「毎日が実験」の精神で生きる>

・前頭葉の老化を防ぐには、「毎日が実験」と思って暮らすことです。

<高齢者が「情弱」なんて誰が言った?>

・パソコンが普及して20数年、スマホが発売されてから10年以上たっているのですから、幸齢者への普及も今ではだいぶ進んでいるのです。

<時間がかかってもスマホに挑戦>

・そういう人も、これを機会にガラケーをスマホに替えてみてはいかがでしょうか。決して遅いということはないはずです。

<パソコンがあれば「自分史」もスラスラ>

・パソコンのワープロソフトは、長い文章を書くのに最適です。

<プロ並みの写真もデジタルなら簡単>

・みんながこんなに写真を撮るのが上手になったのは、写真がフィルムからデジタルに変わったからでしょう。

<杖を使って街に出よう>

・そうなりたくなかったら、杖を使って街に出ましょう。

<ためらわずに補聴器を使おう>

・まずは最新式の補聴器を試してみてはいかがでしょう。

<元気に歩ける高齢者こそ紙おむつを!>

・高齢者の三種の神器の3つめは、紙おむつです。

<仲間をつくって対抗する>

・でも、そんな勇気はないという人も多いのではないかと思います。そんなときのためにも、仲間がいると安心です。

<孤独でもSNSで発信できる>

・それでも、どこかで他者とつながっていたいと思うなら、それこそパソコンやスマホを活用してみてはいかがでしょうか。

<老害になるのは脳の衰え?>

<仕事は引退せず続けたほうがよい>

・第1章でデータを示したように、高齢者の免許返納に関しては、統計的な裏付けはまったくありません。むしろ、高齢者の多くは安全運転を心がけています。

<若い人がタメ口を聞いても気にしない>

・若い人のタメ口に腹を立てるのは、逆に若い人を差別していることにもなるのです。

<できることを無理に増やす必要はない>

・いずれにしても、高齢者はやりたくもないことにチャレンジしなくてよいし、したとしても結果を求めなくてもよいのです。

<昨日できたことが今日もできるように>

・むしろ高齢者の場合は、今できることをいかに維持していくかを基本に考えるべきでしょう。

<気にしたほうがよい老害もある>

・このような、正論とは違った、ユニークな意見を言ったほうが、若い人にもウケると思います。そもそも正論しか話せないのは、自分の意見を持っていないからでしょう。

<知識の量は何の役にも立たない>

・また、SNSで自分の考えを発信する方法もあります。脳の老化防止、特に前頭葉の老化防止になりますから、自分の頭で考える習慣をつけることをおすすめします。

<急に怒り出す老人にならないためには>

・前頭葉が多少老化しても、自分の性格がわかっていれば、感情のコントロールはできるということです。

<脳の神経細胞は高齢でも増える>

・認知症の患者数は60代だと約2.5%ぐらいですが、70代から急カーブを描くように増加し、80代では約30%まで増えてきます。認知症の発症は60代から70代にかけての生き方が大きく関わっているということです。その生き方というのは、脳を積極的に使う生き方です。

<若者も高齢者も記憶力に差はない>

・もう一つ、75歳ぐらいまでは記憶力はそれほど衰えないことも、最近の脳研究でわかっています。

<初めての店に入ると前頭葉が活性化>

・逆にいえば、生活に変化を持たせることで、前頭葉を活性化することができるのです。

<早くやることを目標にしない>

・年をとってもできることを続けるのが、老化の進行をゆるやかにする基本です。

<認知症は人に迷惑をかける病気ではない>

・脳の老化を防ぐことは大事ですが、それでも認知症になる人はいます。

今、日本には認知症患者が約600万人いるといわれています。日本の人口が約1億2000万人ですから、20人に1人は認知症ということになります。

・老人医療に30年以上携わってきた私に言わせれば、認知症はそんなに人に迷惑をかける病気ではありません。

<迷子にならないなら徘徊ではなく散歩>

・ゴミにして出すこともないので、家の外まで臭ってくるのです。それを、近所の人が保健所などに相談することがあります。これを「近隣苦情」と言うのですが、近隣苦情が来ている家に行政が医者を派遣することがあるのです。

<認知症でもできることはいっぱいある>

・認知症になると、何もできなくなると思っている人が多いのですが、できることはまだまだありますし、新たな能力が発見されることもあるのです。

<AIの進化で認知症の生活も楽になる>

・それに、これを読まれている60代、70代の人が認知症になる頃は、AI技術がグッと進化している可能性があるので、認知症でも楽に過ごせるようになるかもしれません。

<認知症とうつ病の症状は似ている>

・精神科医として数多くの高齢者を診てきた私からすると、高齢者は認知症よりもうつ病のほうがつらいと思います。

・うつ病の約4割は60歳以上というデータがあります。高齢者がうつ病になりやすい理由の1つに、セロトニンの減少が考えられます。

<朝日を浴びるとセロトニンが増加>

・朝日を浴びてセロトニンが増えれば、うつ症状も改善され、夜もぐっすり眠れるようになるでしょう。

<老害を気にせず老後を楽しむ>

<子どもが親の再婚に反対するのは?>

・子どもにお金を残さないというと、それこそ子どもたちから老害と言われそうですが、気にしてはいけません。それに、子どもにお金を残すと、ろくなことがありません。

<これが最後の海外旅行かも>

・何度もいいますが、子どもたちから、老害と言われることを恐れてはいけません。

<遺産を残したいなら寄付する>

・何度も言うように、老後資金は自分のためにお金を使うべきです。

・最近、「終活」といって、死ぬ前にいろんなことを整理することが流行っていますが、これはあまり意味のある行動とは思えません。

<日本の遺言は効力が弱い>

・この平等相続というやり方は、早く廃止すべきだと私は思っています。

<子どもにはお金を残さない>

・でも今はそうなっていないわけですから、やっぱり子どもに財産は残さないほうがよいと思います。

<ランチ通いはいいことずくめ>

・でもランチなら。そんなにお金はかかりません。

<高齢者向けの商品やサービスが皆無>

・そうなっている理由の1つに、高齢者がお金を使いたくなるような、わくわく感のあるサービスが少ないからだと私は思っています。

<消費する高齢者こそ現役市民>

・日本の経済が悪くなり、高齢者向けの産業がろくに生まれないのは、お金を持っている高齢者に消費してもらうという発想がないからです。

<生活保護は堂々ともらいなさい>

・だったら、生活保護のように、もらう権利のあるお金はもらいましょう。

<AIの進化で仕事がなくなる>

・消費不況になるのは、生産が余っているからですが、これからの時代はそれがもっとひどくなります。

<よいものなら高くても買う>

・それに対して、今の日本は90年代のアメリカとそっくりな状態になっています。安くないと買わないのはもちろん、壊れるまで買い換えようとしません。

<新しいテクノロジーを要求せよ>

・消費者は「こんな商品が欲しい」と要求することが大事です。先ほどAIの進化について述べましたが、テクノロジーの進歩もどんどん要求すべきです。

・残念ながら、今の若い人はあんまり本を買って読みません。

<青春時代のサブカルと再会>

・好きなことをやりなさいと言うと、自分には趣味もなければ楽しめるものもないと答える人がいます。実際、そういう人が多いのですが、本当にそうでしょうか。

<勉強するならグループ学習がよい>

・そこでおすすめしたいのがグループ学習。同じことを学ぶ人たちが集まって、議論することがアウトプットになるからです。

<昔の友人に気軽に会ってみる>

・その1つとして提案したいのが、昔の友人に会うことです。

<老害の壁を打ち破るための養生術>

<肉を食べてたんぱく質不足を防ぐ>

・しかし、多くの高齢者はたんぱく質が不足しています。

<太めのほうが長生き、カロリーを気にしない>

・宮城県で5万人を対象にして行われた大規模調査によると、やせ形のほうが、やや太めの人よりも6~8年早く亡くなることが明らかにされています。

<運動は散歩するだけで十分>

・老化予防のために歩くのは最低、1日30分ぐらいで十分。1度に30分歩いてもいいし、朝・昼・夕に10分ずつ、合計30分でもかまいません。

<薬の影響で骨折し、寝たきりになることも>

・高齢者の健康で、もっとも大事なことは「自分の身は自分で守る」ということです。

・高齢者が免許返納をすると、6年後には要介護率が2.2倍に上がります。そういうことも考えて、運転を続けるのか、それとも免許返納すべきか考えるということです。

<骨粗しょう症の薬に重大な副作用が>

・高齢者がちょっと転んだだけでも骨折してしまうのは、高齢になると骨粗しょう症という病気になる人が増えてくるからです。骨粗しょう症は骨が脆くなって折れやすくなる病気です。実は骨粗しょう症の薬の中には、強い副作用が出るものがあります。ところが、そのことはほぼ問題とされていません。

<大学の教授は薬の研究ばかりしている>

・そもそも、医学部の教授というのは、人間をほとんど診ないで、動物実験ばかりやって薬の研究だけをしている医者が圧倒的に多いのです。

<高齢になるほど薬は危ない>

・特に、高齢者にとっては薬はハイリスクです。その理由の1つが、高齢による肝臓と腎臓の働きの衰えです。つまり、高齢者は薬を分解するのも、排泄するのも時間がかかるので、副作用が起こるリスクも長くなるということです。

<薬は自分の意思でやめてよい>

・高齢者の多剤併用は、本当に大きな問題です。気がついたら15種類もの薬を飲んでいたという話をよく聞きます。もちろん、中には飲まなければならない薬もあります。

<自分と相性のよい医者を見つける>

・多剤併用の問題が起こるのは、日本の医療が臓器別診療のスタイルをとっているからです。

・ところが、ここにも問題があります。今通っているかかりつけ医に満足していないという人が多いのです。

<健康診断は受けなくてよい>

・私は70歳を過ぎたら、健康診断は受けるべきではないと言っています。健康診断では50~60項目くらいの検査をしますが、病気との因果関係がある程度はっきりしているのは、血圧や血糖値、赤血球数などの5~6項目くらいです。

・そもそも、海外のデータですが、血圧や血糖値、コレステロールなどの数値が高くても、心筋梗塞や脳梗塞になる人の確率が少し高くなるだけで、ならない人の確率のほうが大きいのです。

<突然死を防ぐ検査を受ける>

・よく「死ぬならがんがいい」という人がいます。がんは亡くなるまでに時間の余裕があるので、残された時間を大事に使えるというのがその理由です。私も突然死を防ぐために、心臓ドックと脳ドックだけは定期的に受けています。

<がんがあっても切らない>

・しかし、経験的にいうと、がんの手術をすると、高齢者の場合、ほとんどの患者の生活の質は低下します。なぜなら、がんと一緒に臓器の一部も取ってしまうからです。外科医にとっては、切ることが仕事だからです。

・浴風会病院の剖検でも、85歳以上でがんが1つもなかった患者さんはほとんどいませんでした。

<高齢者のがんは治療しない選択も>

・高齢者ががんの積極的な治療をしても、体が衰弱して、かえって寿命を縮めてしまう可能性のほうが高いのです。

 40~50代のがんなら、がんの進行も速いので、手術などの積極的治療をするのは意味があるかもしれません。体力があるので回復も早く、仕事に復帰することも可能でしょう。

<認知症と診断されても絶望しなくていい>

・でもいくら予防を心がけても、認知症になる人はなります。なぜなら、認知症の原因の1つは、加齢による脳の機能低下だからです。80代後半になるとおよそ半分、90代になると、7割近い人が認知症になることがわかっています。

・確かに、最終的には人にお世話をしてもらわないといけなくなる病気ではありますが、そうなるまでにはかなりの時間があります。

<認知症でも車の運転は続けてよい>

・それに、何もやらせてもらえなければ、頭も体も使わないので認知症が進みます。

・認知症になっても、できることの1つに車の運転があります。いずれできなくなるとしても、できるうちは続けてよいと思います。

・つまり、長年運転してきた車の操作は時間が経ってもずっと覚えているもの。

<若造が年寄りに説教するべきではない>

・答えは単純で、「快」を原則として生きるのです。

・私はこれまで6000人くらいの高齢者を診てきました。

<できないことが増えても楽しい時間を持つ>

・ただ、80代を過ぎると、さすがに「できること」よりも「できないこと」が増えてきます。

(2025/4/11)

『106歳のスキップ』

私は96歳までひとのために生きてきた

曻地三郎  亜紀書房  2012/12/5

<つねに新しい自分を――はじめに>

・私は「人を驚かす」ことが好きである。人を驚かすには、そのための材料がなくてはならない。自分自身で材料を仕込まなければならない。

 99歳で世界一周を始めたのも、何か新しいことをと思ったからで、行った先々で講演をする旅である。

・二人の知的障がい児と、妻、娘を失って、私は96歳で天涯孤独の身となった。これからは自分のために生きよう、と思い直し、先の世界行脚を始めたり、海外の大学などで記念講演を頼まれれば、その挨拶を現地語で覚えるなど、やはり新しい試みを続けている。

<充実して生きる>

<97歳からは自分のために生きる>

・私は教育者と学者の道を歩み、しかも障がい児のための施設を運営してきた。順番からいえば、まず教育者になり、広島の山奥の小さな小学校の子どもたちを教えたのが最初である。

<人に支えられるだけの老後ではいけない>

・先に97歳からは自分のために生きることにした、と書いたが、誤解がないように申し添えれば、今までのウェイトが家族や他人にかかっていたのを、自分を出発点にしよう、ということなのである。

<ただ長生きすればいいというものではない>

・長く生きただけで褒められるなんておかしくはないだろうか。

<老感を持つのはやめよ>

・106歳になって身体が弱ったとはいえ、まだまだ人と当意即妙の話ができる。饒舌は相変わらずである。

 今回の世界一周旅行でも、9ヵ国12都市を回り、カナダはバンクーバーで講演を行い、その後、南アフリカ・ケープタウンで開かれた国際心理学会で被虐待児童の治療教育の研究論文を発表した。

 昨年は、年に70回を超える講演を行い、年に2回も世界一周講演旅行をした。

<別のNPO>

・元気に生きて、すっと死ぬことを「ぴんぴんころり」でPPKという。これが高齢者の理想だという。

 私もそれを真似て、NPOということをいっている。非営利事業団体のことかと思うかもしれないが、「長生きでぽっくり往生」のことである。

 いずれにしろ、健康に生きて、それほど人の世話にならないうちに死んでいくのが、たいがいの人の理想である。しかし、誰しもがそういう生き方ができるわけではないから、理想なのである。たいていは子どもや施設のお世話になって生きることになる。

<世代の標語>

・自分の来し方を参考にしながら、50代以降の生き方の標語を作ったことがある。

50代……男の花道である。  60代……自分が持っているものを押し広げよう。  70代……これくらいで屈してはならない。 80代……ダメだと思ったらダメになる。  90代……今からでも遅くない。

私の場合は、これに「100代……中国で陣頭指揮を執る」というのが続く。これは、中国で障がい児教育普及のお助けをしたい、ということである。

<「おい」と呼ばない>

・私が健康なのは、昔から歩くのが苦にならず、機会があればすぐに歩くようにしていたからだと思う。

・いまは妻はいないが、生存中も「おい」などと呼んで、用を頼んだことはない。全部、自分のことは自分でやる主義である。こうして日頃から身体を動かす癖をつけておくと、特別な運動などしなくても、健康でいることができる。

・自分の健康のためにも、そして夫婦仲改善のためにも、「自分で動く」を主義にしたい。

<異なる人との交わりが大切>

・私は若いころからもの怖じしない性格だった。たとえ相手が外国人でも平気で声を掛ける。船上で、機上で、外国人に話しかけて英語の練習をした。同種との交わりも大事だが、異種との交わりこそ、自分で求めないかぎり、機会が限られているので大事だと思っている。

<努力に期限なし>

・エジソンは、天才とは1パーセントのひらめきお99パーセントの努力である、といったという。あの発明王にして努力がものをいうのか、とびっくりさせられる言葉である。

・天才とは並外れた努力をする人のことをいうのではないか、とも思う。どこまで努力できるかも才能である。

・私はつねに現状を脱却することを念頭に置いてきた。おかげで「努力は第二の天才なり」と思うようになった。

<「そのうちいいこともござっしょ」>

・長男ばかりか次男までも障がいを負っていると分かって、私は打ちのめされたような気持になった。できれば、苦しみのままに死んでいければ、とも思ったものだ。

 しかし、一方で、心の中に葛藤があっても、それを乗り越えて生きよう、と考える自分がいる。いつもそっちの人格のほうが優勢になる。

・そのときに老婆がいった言葉が忘れられない。「先生、そのうちいいこともござっしょ」そうなのである。悪いことばかりではなくて、そのうち何かいいこともあるのである。

<流れに負けない>

・それよりも、ゆっくりと、大河の勢いで老いが身に及んでいる感じに近い。私が日々、心を砕いていることは、その流れに逆向きで棹差すことである。

・というのは、しいのみ学園で預かる子の80パーセントは脳性麻痺の子で、彼らは脳の一番中心がやられている。多くの子は小学校6年のころから、歩行が難しくなり、手も使えなくなっている。言葉にも障がいが出始める。そこを境に寝たきりになる子も多い。いわば集団で下流に流されていくイメージである。

・脳性小児麻痺の子が、逆境に立ち向かう姿勢を植え付けてくれたように思える。たとえ敵が圧倒的に優勢と分かっていても。

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