第三次世界大戦=「(中東で)シオニスト(イスラエル)とアラブ人との間にイルミナティのエージェントによって引き起こされる」ここでのイルミナティとは「フリーメイソンの中枢を支配する秘密組織」を指す。(6)

 <10年間に合計1兆ドルの国防費を削るアメリカに対する疑念>

<日本に核を撃ち込むことに何の抵抗感も持たない中国人>

・(石平)私が危機感を募らせている理由は、最近、中国のインターネットで中国国防大学の張召忠教授(海軍少将)の論文を目にしたからだ。論文のタイトルは、ずばり「中国が一瞬にして日本を全滅させることはもはや空論ではない」という凄まじいもの。

 日本では中国の理不尽で勝手な振る舞いがどんなに目に余ろうと、「中国を全滅させるために日本はどうすべきだ」というようなテーマで話し合ったりはしない。

 しかし、中国は違う。「日本を全滅させるためにはどうすべきか」をテーマに軍人レベルは当然のこと、学者レベル、一般人レベルでも日常茶飯に堂々と語り合われているのである。

・日本人が理解しなければならないのは、中国の指導部にしてもエリートにしても、あるいは一般の多くの国民にしても、日本にミサイルを撃ち込むということに対して、何の抵抗感も違和感も持たない。要するに、内なる抑制力がないわけである。

・中国人エリートは、日本にミサイルを撃ち込むことはむしろ当然だと思っているし、仮に核兵器を日本に撃ち込んだとしても、中国国内では反対論はほとんど出ないはずだ。中国が本気で核兵器を日本に撃ち込む気ならば、2ヵ月間、南京大虐殺の映画を中国全土で上映すれば、すべての中国人は納得する。

・先刻の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われわれの安全と生存を保持しようと決意した」とする憲法前文に戻るけれど、中国にそれを期待するほうが間違っているということだ。

 繰り返すが、核兵器を日本に撃ち込んだとしても、中国人には何の心理的抵抗感も違和感もないということを、いい加減日本人はわかったほうがいい。

『2010年中国が牙をむく』

石平   PHP     2008/11/7

<2010~2012年、中国は牙をむく>

石;先生が台湾に対し、そういうお考えであれば、もう一つの問題として、台湾が自然に中国に飲み込まれる可能性が少ないほど、逆に中国共産党がいわゆる平和的に統合することを断念し、最終的には力ずくで統合に導くこともありますか?

中嶋;その可能性は十分にあります。

石;2010年か2012年か。台湾関係はかなり現実的な危険に立ち向かわざるを得なくなるということですね。

石;日本もこの数年間でいろいろな意味で「準備」をしておかないと手遅れになるでしょうね。

中嶋;そのためにも、やはり当面の外交政策の立直しをきちんとやらないといけないと思います。

中嶋;根本戦略と、それからやはり外務省の手腕がものをいいます。中国と日本外交官を比較すると、中国の外交官は実に巧みにロビー活動を根回しもうまくこなしている。日本の外交官はまったくダメだ。しかもストラテジー(戦術)がない。もう一つの日本の外交官の難点は英語力だといっているのです。英語力がもうぜんぜんダメだ、と。

<深刻化する社会の歪みと爆発寸前の中国社会>

<時限爆弾としての失業問題と貧富の格差>

・それにしても「都市部5000万人失業、農村部2億人失業」というのは、十分に深刻な事態である。すでに深刻化している中国の失業問題は2008年からさらに深刻化していくのが避けられない成り行きである。

<人類史上かってない規模の深刻な事態>

・これからの中国は、毎年、就職できずに労働市場から吐き出された百数十万人の大学卒業生と、1年間で1200万人増える都市部の新規失業者数と、常に失業状態にある農村部の2億人単位の「余剰労働力」と、5000万人も都市部の失業者が溢れているという史上最大の失業大国となっていくのであろうが、このような国に社会的安定を期待するのは最初から無理な話であろう。

・中国における「動乱の時代」の到来は、まさに失業問題の深刻化を背景とするものである。

・大富豪の一人の背後には、数千人かあるいは数万人の貧困層の人々が存在していることを忘れてはいけないのだ。

・「仇富」という新造語が数年前から流行っているのである。文字通り「富む者を仇とする」、「富む者を憎む」という意味で、要するに金持ちたちは貧乏人である民衆たちの憎むべき対象となり、その「仇」となっているわけである。このような心持が一種の社会心理として普遍化していることは、社会の安定化にとっては大変危険な要素であることは言うまでもない。

<金融と不動産、どちらが先に死ぬのか>

・「中国における不動産価格の暴落はやがて金融危機を引き起こし、いわゆる中国版サブプライムローン危機を引き起こすことになるだろう」との警告を発している。

・あたかも中国における「金融」と「不動産市場」の「死」はすでに確定事項となっており、「どちらが先に死ぬか」だけが問題となっているかのような風情である。

・彼らの論旨からすれば、中国の不動産市場の「死」はもはや避けられない趨勢になっているから、討論会の関心点は、もっぱらいつ「死ぬ」のかに集中している。

『米中新冷戦、どうする日本』

藤井厳喜   PHP   2013/2/15

<米中新冷戦>

・米中新冷戦がすでに開始されている。アメリカと中国は、激しい対決時代に突入した。筆者が米中新冷戦の到来を直感したのは、2010年1月にオバマ政権が対中国外交を対決姿勢へと大胆に転換させたときだ。

・2013年の冒頭に立って、今後の21世紀の世界を展望しようとするとき、どうしても考えに入れておかなければならない、いくつかのファクター(要因)が存在する。第一は、米中新冷戦である。第二はエネルギー革命(天然ガス革命)である。第三はビッグデータである。第四は、南北関係(先進国と発展途上国の関係)の根本的転換ないし逆転である。いかなる未来予測を行うにしろ、これら四つの要素の一つでも抜けていれば、その未来予測は全く非現実的なものになってしまうであろう。

<ビンラディン殺害でエスカレートした米中サイバー戦争>

・すでに指摘したように、2010年1月に、クリントン米国務長官は、中国からグーグルへのサイバー攻撃に対して、鋭い批判の言葉を放っていた。ある意味で、米中サイバー戦争は、すでに開始されていたのであるが、ビンラディン殺害によって、米中関係が険悪化したために、そのレベルがエスカレーションして、本格的な宣戦布告となったのである。

・2011年5月30日、ワシントンポストは、ロッキード・マーチン社へのハッカー攻撃の犯人の特定はできないものの「中国が最も疑わしい」と報道した。

・2011年5月31日、米主要メディアの報道によれば、米国防省は「外国政府からのサイバー攻撃を通常の戦争行為と見なし、アメリカ軍による武力行使も辞さない」という新方針を明らかにした。

・中国共産党からすれば、インターネット上の自由が拡散してしまえば、もはや一党独裁体制を維持することは不可能になる。この意味で、グーグルは、米防衛産業と並んで、彼らの最も敵視する存在なのである。

・そしてサイバー空間もまた、現代における戦場である。現代の戦争は、人間のあらゆる活動領域に広がっている。こういった戦略思想を中国側は「超限戦」、アメリカ側は「無制限戦争」と呼んでいる。そういう時代であればこそ、電脳空間におけるサイバーウォーは、兵器を使った戦闘と同等の重要性を持つのである。

<アメリカ戦略の大転換<対テロ戦争から対中国戦争へ>>

・すなわち、アメリカは自国の覇権を脅かす第一の敵がイスラム原理主義・国際テロリスト集団ではなく、中国の帝国主義・軍国主義・侵略主義であることにようやく本格的に覚醒したのである。

・アメリカは、イラクとアフガニスタンの泥沼から脱出することにより、ようやく自国の真の敵、中国と対決することができるようになったのである。

・ガスとオイルのシェール革命は、中国と対決するアメリカに著しい優位性を与えるものである。

<超限戦という新しい戦争の時代>

<中国の新しい戦略思想『超限戦』>

・「超限戦とは、あらゆる手段を備え、あらゆる情報をめぐらせ、あらゆる場所が戦場となる。そして、あらゆる兵器と技術が随意に重なり合い、戦争と非戦争、軍事と非軍事の二つの世界に横たわるすべての境界がことごとく打ち砕かれる、そういう戦争を意味している」

<無制限戦争の特徴>

① 国家以外も戦争の主体となる。 

② 「戦争の場」が通常の戦場だけでなく、人間活動のあらゆる領域へと広がってくる。サイバー戦争や金融と貿易を含むあらゆる経済分野に広がる。 

③ その当然の結果、戦争遂行の手段もまた多様化する。 

④ 複数の戦争分野と戦争手段を組み合わせて戦うことになる。 

⑤ これらの結果、「戦争であって戦争でない、戦争でないが戦争のような状況」が生じる。 

⑥ 無制限戦争においては、戦術レベル(小規模)の軍事行動で戦略レベルの巨大な心理的ショックを与えることができる。日本もまた、中国によって、無制限戦争の対象とされていることはいうまでもない。

<戦争は進化する>

・戦争も時代と共に進化していく。第二次世界大戦の後に戦われた米ソ冷戦を筆者は「第三次世界大戦」であったととらえている。そして、9・11以降の世界は、「第四次世界大戦」に突入したと考えている。

<米中冷戦の戦場としての日本>

・日本は、不幸なことに、米中冷戦の戦場と化している。中国は、尖閣列島を侵略のターゲットとしている。

・時間は日米、そして自由主義海洋国家群の味方である。近い将来において、共産党独裁国家ソ連が崩壊したように、必ず共産党独裁国家中国も崩壊する。独裁国家、帝国主義国家は必ず崩壊する。これは歴史の法則である。

・日本が憲法九条を改正して、ごく普通の国として、国防を行うと宣言すれば、これに反対するのはアジアでは中国、南北朝鮮と、各国の華僑くらいのものであろう。今こそ、日本人は自信と勇気を持って、敗戦コンプレックスを払拭すべきである。

『語られざる中国の結末』

宮家邦彦  PHP  2013/10/16

<人民解放軍の「サイバー戦」観>

・ここで、中国サイバー軍の概要について簡単にまとめておこう。各種報道によれば、中国は2003年以来、秘密裏に軍人3万人、民間専門家15万人という総勢18万人のサイバー・スパイを擁する、巨大なサイバー軍を実戦運用しているといわれる。

 中国はサイバー攻撃を最も有効な対米「非対称戦」と位置付けている。最近は中国サイバー戦能力の向上が著しく、米国は中国のサイバー軍を「米国にとって唯一、最大のサイバーテロ・脅威」とみなしているようだ。

<米国が恐れる中国版「真珠湾攻撃」>

・米国が恐れているのはズバリ、中国版の「真珠湾攻撃」だろう。冷戦終結後の湾岸戦争やベオグラードの中国大使館誤爆事件を契機に、中国側は現代戦争の重点が「機甲化戦」から「情報化戦」へ変わりはじめたことを、ようやく理解したからだ。

 情報化戦では、ミサイル、戦闘機など在来型兵器に代わり、敵のアクセス(接近)を拒否するため、緒戦で敵の指揮・統制を麻痺させる戦略が重視される。中国は初動段階でのサイバー・宇宙戦など、「非対称戦」の重要性を強く認識しているはずだ。

<対日サイバー攻撃は年間1000件以上>

・以上はあくまでシュミュレーションだが、実際に日本の政府機関や企業へのサイバー攻撃は、警察庁が把握している分だけでも、年間1000件以上あるという。また、情報通信研究機構(NICT)の調査では、2012年の1年間だけで、この種のサイバー攻撃関連の情報通信が、78億件もあったそうだ。

<「攻撃」を模索する米側のロジック>

・パネッタ長官は、サイバー攻撃には「防衛」だけでなく、「攻撃」の選択肢も必要であり、サイバー空間での「交戦規定を包括的に変更中」であるとも述べた。その直前にオバマ大統領は、「破壊的攻撃を行なうサイバー兵器」の開発を命じている。米中サイバー戦はすでに新たな段階に突入しつつあるのだ。

<「サイバー攻撃能力」の研究を>

・過去数年来、米国ではサイバー戦を「抑止」するための「サイバー攻撃」に関する準備が着々と進んでいる。日本でも、憲法上の制約があることを前提としつつ、サイバー戦「抑止」のための「サイバー攻撃能力」を研究する時期に来ている。

<「第2次東アジア戦争」は短期戦?>

・他方、だからといって近い将来、米中間で大規模かつ、長期にわたる軍事衝突が起こると考えてはならない。少なくとも、米国や米国の同盟国が中国を挑発する可能性はきわめて低い。米国は中国大陸に侵入して中国と戦うことなど考えてもいないだろう。

 ・先に述べたとおり、米国の関心は西太平洋地域における米国の海洋覇権が維持されることを前提とした「公海における航行の自由」の維持であり、中国大陸における領土獲得や政権交代などではないのである。

 一方で中国側、とくに中国共産党の文民政治指導者にとっても、いま米軍と戦争をする利益はあまりない。そもそも、戦闘が始まった時点で中国をめぐる多くの国際貿易や経済活動は停止するか、大打撃を蒙るだろう。これは中国経済の終焉を意味する、事実上の自殺行為である。

・そうだとすれば、仮に、たとえば人民解放軍側になんらかの誤解や誤算が生じ、サイバー空間や宇宙空間で先制攻撃が始まり、米中間で一定の戦闘が生じたとしても、それが長期にわたる大規模な戦争に発展する可能性は低いと思われる。

<実戦能力を高めるだけでは不十分>

<中国の「敗北」後に予測される7つのシナリオ>

A 中国統一・独裁温存シナリオ(米国との覇権争いの決着いかんにかかわらず、共産党独裁が継続するモデル)

サブシナリオA1 中国が東アジア・西太平洋における米国との覇権争いに勝利。

サブシナリオA2 中国が統一と共産党の政治的権威をほぼ現状のまま維持。

サブシナリオA3 第二次「文化大革命」などによる独裁強化。

B 中国統一・民主化定着シナリオ(米国との覇権争いに敗北。米国主導の民主化、中国超大国化モデル)

C 中国統一・民主化の失敗と再独裁化シナリオ(国家分裂のないロシア・「プーチン」モデル)

D 中国分裂・民主化定着シナリオ(少数民族と漢族で分裂するも民主化が進む、資源のない中華共和国モデル)

サブシナリオD1 たとえば北京を中心に漢族中心国家の統一が維持される一方、他の少数民族が民族自決する。

サブシナリオD2 サブシナリオD1で想定した漢族中心の統一国家がさらに分裂し、現存する中国各地の主要経済圏を基盤とする複数の漢族中心国家群が出現。

サブシナリオD3 分裂した中小国家群が、一部または全部で、連邦制ないし国家連合を組む。

E 中国分裂・民主化の失敗と再独裁化シナリオ(少数民族と漢族の分裂後、民主化が失敗するロシア・「プーチン」モデル)

サブシナリオE1 たとえば北京を中心に漢族中心国家の統一が維持される一方、他の少数民族が民族自決する。

サブシナリオE2 サブシナリオE1で想定した漢族中心の統一国家がさらに分裂し、現存する中国各地の主要経済圏を基盤とする複数の漢族中心国家群が出現。

サブシナリオE3 分裂した中小国家群が、一部または全部で、連邦制ないし国家連合を組む。

F 中国分裂・一部民主化と一部独裁の並立シナリオ(少数民族と漢族の分裂後、民主と独裁が並立するモデル)

サブシナリオD、Eと同様、分裂の仕方については三つのサブシナリオが存在。

G 中国漢族・少数民族完全分裂シナリオ(大混乱モデル)

(まとめ)

▼米中がなんらかの戦争ないし戦闘により衝突する場合、中国人民解放軍が米軍を圧倒し、決定的な勝利を収める可能性は低い。

▼他方、こうした戦争ないし戦闘において米軍が優勢となるにしても、中国側は早い段階から決定的敗北を回避すべく、政治決着をめざす可能性が高く、米側の決定的勝利の可能性も低い。

▼されば、サブシナリオA2、すなわち仮に中国が敗北しても、内政上の悪影響を最小限に抑え、中国の統一と共産党の政治的権威をほぼ現状のまま維持する可能性が、現時点では最も高い。

▼その場合、中国共産党の指導体制は当面、揺るがない。しかし、米中衝突という異常事態が中国国内の政治経済環境に及ぼす悪影響は計り知れず、いずれ、国内情勢は不安定化していく。

▼万一、国内の政治的安定が崩れれば、中国の分裂が現実味を帯びるだろうが、その場合でも、漢民族の連帯は強く、分離していくのはチベット、ウイグルなどの少数民族に限られるのではないか。

▼可能性は最も低いものの、実現した場合の悪影響が最も大きいのが「漢族分裂」現象であり、その場合には、民主的でない複数の漢族中小国家が生まれる可能性が最も高い。

▼複数の漢族国家が誕生するか否かは、中国人民解放軍がどの程度、軍としての統一を維持できるかにかかっている。

▼その場合、各国の軍隊の大小、装備の優劣、とくに核兵器保有の有無が鍵となる。各国軍隊の力が均衡すれば分裂は長期化し、逆に一国の軍隊が突出すれば、いずれ中国は再統一に向かうだろう。

・現在、中国では、国民の多様化した政治的、経済的、社会的利益を「誰が代表するのかが静かに問われはじめている。中国共産党が新たな統治の正統性を見出さないかぎり、正統性の第一、第二の柱に依存しつづける。そうなれば、中国共産党の統治システムはいっそう脆弱なものとなるだろう。

『日本は誰と戦ったのか』

コミンテルンの秘密工作を追求するアメリカ

江崎道朗  KKベストセラーズ    2019/2/8

<20世紀とは、ソ連・コミンテルンとの戦いであった!>

・「東西冷戦」は1991年のソ連の崩壊によって終結したと言われていますが、それはヨーロッパの話です。残念ながらソ連崩壊のあとも、アジアには中国共産党政府と北朝鮮という二つの共産主義国家が存在し、アジア太平洋の平和と繁栄を脅かしているのは御承知の通りです。

 この中国共産党政府と北朝鮮という二つの「共産主義」国家が第2次世界大戦後、なぜ誕生したのか。その経緯を調べると、アメリカのルーズヴェルト民主党政権がソ連に協力して、アジアの共産化に手を貸した「歴史」が見えてきます。(中略)半世紀が過ぎ、多くの機密文書が公開されたことで、日本を開戦に追い込み、東欧とアジアの共産化に手を貸したルーズヴェルト民主党政権の問題点が、アメリカの保守系の歴史学者の手によって次々と明らかにされてきています。端的に言えば、アジア太平洋で戦争を引き起こしたのは日本ではなく、ソ連・コミンテルンとルーズヴェルト民主党政権であったのではないかという視点が浮上してきているのです。

<日本は誰と戦ったのか>

・「日米戦争では、アメリカにも問題があったのではないか」

「その通りだ。アメリカのルーズヴェルト民主党政権には大きな問題があった。

 当時、野党の共和党も米軍幹部も懸命に警告したのに、ルーズヴェルト民主党政権は、日米戦争を仕掛けたソ連・コミンテルンの秘密工作に振り回されてしまった」

 こんな会話が日米の知識人の間で交わされる日が近い将来、訪れるかもしれません。

・コミンテルンとは1919年、ロシア共産党のレーニンが創設し、1943年まで存在した。共産主義政党による国際ネットワーク組織のことです(そのネットワークは戦後も形を変えて続きました)。その目的は、世界各国で資本家を打倒して共産革命を起こし、労働者の楽園を作る、というものです。

 このソ連・コミンテルンの対外工作によって世界各地に「共産党」が創設され、第2次世界大戦後、東欧や中欧、中国、北朝鮮、ベトナムなど世界各地に「共産主義国家」が誕生しました(厳密に言えば「社会主義国」を自称した)。かくして第2次大戦後、アメリカを中心とする「自由主義国」と、ソ連を中心とする「共産主義国」によって世界は二分され、「東西冷戦」という名の紛争が各地で起こりました。

 ある意味、20世紀は、ソ連・コミンテルンとの戦いでした。

 ソ連・コミンテルンと共産主義を抜きにして20世紀を語ることはできません。そしてこの「東西冷戦」は1991年のソ連の崩壊によって終結したと言われていますが、それはヨーロッパの話です。残念ながらソ連崩壊のあとも、アジア太平洋には中国共産党政府と北朝鮮という二つの共産主義国家が存在し、国民の人権や言論の自由を弾圧しているだけでなく、アジア太平洋の平和と繁栄を脅かしているからです。

・この中国共産党政府と北朝鮮という二つの「共産主義」国家が第2次世界大戦後、なぜ誕生したのか、その経緯を調べると、アメリカのフランクリン・デラノ・ルーズヴェルト民主党政権がソ連に協力して、アジアの共産化に手を貸した「歴史」が見えてきます。

 第2次世界大戦当時、アメリカとソ連は同盟国でした。そして、アメリカのルーズヴェルト政権は、ソ連のスターリンと組んで国際連合を創設し、戦後の国際秩序を構築しようとしました。その交渉過程の中で、ルーズヴェルト民主党政権は、こともあろうにソ連・コミンテルンによるアジアの共産化――特に中国共産党政府と北朝鮮の誕生――に協力したのです。

・それから半世紀が過ぎ、多くの機密文書が公開されたことで、日本を開戦に追い込み、東欧とアジアの共産化に協力したルーズヴェルト民主党政権の問題点が、アメリカの保守系の歴史学者やジャーナリストたちの手によって次々と明らかにされてきています。

・端的に言えば、アジア太平洋で戦争を引き起こし、世界を混乱させたのは日本ではなく、ソ連・コミンテルンとルーズヴェルト民主党政権だったのではないか、という視点が浮上してきているのです。

日本からすれば、我々が戦ったのはアメリカのルーズヴェルト民主党政権だったわけですが、そのルーズヴェルト民主党政権はソ連・コミンテルンの工作員たちによって操られていたのではないか、ということです。

・日本は誰と戦ったのか。

 日本の真の敵は、アメリカではなく、ソ連・コミンテルンではなかったのか。

 近年のアメリカの、それも反共保守派の学者たちによる近現代史研究を読んでいると、そうした「疑問」が湧いてきます。

 ところが残念なことに、アメリカのそうした動向は日本ではほとんど紹介されません。ガラパゴス化と言って日本でしか通用しない技術や製品が揶揄されることがありますが、それは学問の世界でも同様です。特に日米戦争、近現代史に関して日本の歴史学会のガラパゴス化はかなり重症です。

・この『スターリンの秘密工作員』は、日米戦争を始めたのは日本であったとしても、その背後で、日米を戦争へと追い込んだのが実はソ連・コミンテルンの工作員・協力者たちであったことを暴いています。アメリカの機密文書や連邦議会の議事録や調査報告書などを踏まえ、ルーズヴェルト民主党政権内部に滑り込んだソ連の工作員・協力者たちが日米両国を開戦へと誘導し、日米の早期停戦を妨害し、ソ連の対日参戦とアジアの共産化をもたらした側面があることを指摘しているのです。

 その指摘が正しいかどうかについては厳密な検証が必要ですが、それはそれとしてこうした議論がアメリカの反共保守派の間で活発に行われている「現実」に目を向けていただきたいと思います。

 

・詳しくは述べませんが、インドネシアも1960年代に、ソ連や中国共産党による秘密工作によって共産革命の危機に瀕したことがあります。そのため、ソ連・コミンテルンの対外秘密工作について研究する専門家たちが今なおインドネシアには存在していることがわかり、感心したのです。

 その2年後の2016年秋、インターネットに掲載されている「ソ連、コミンテルンの対米工作」に関する私の英語の論文を見て、米軍の情報将校だった一人のアメリカ人が私のところに連絡してきました。彼は、アメリカにおけるいわゆる従軍慰安婦問題に関する反日宣伝の背後に、中国共産党と北朝鮮の対米工作があると考え、その調査のために日本にやってきたのです。

 中国共産党の対外宣伝工作について調べていると彼といろいろ話をしていたら、アメリカの保守派による日米戦争の見直しの動向が話題になりました。彼は「中国の軍事的台頭の背景には、第2次世界大戦当時の、ルーズヴェルト民主党政権の外交政策の失敗があると考え、今、アメリカの保守派、反共派、軍事専門家の間で、ルーズヴェルト民主党政権と中国、ソ連、日本との関係を見直そうとする動きが活発になってきている」としていくつかの本を紹介してくれました。その一つがなんと『スターリンの秘密工作員』だったのです。

・日本の敗戦後、アメリカを中心とする連合国は東京裁判を開廷し、「日本は侵略国家だ」という一方的なレッテルを貼りました。

 この東京裁判史観のもとで、わが国の歴史学会もマスコミも、「侵略戦争をしたのは日本陸軍が悪かったからだ」、「いや東条英機首相が悪かった」、「日本海軍にも責任がある」、「昭和天皇にこそ戦争責任がある」といった形で「侵略戦争の責任」を、日本の誰かに負わせようとする議論ばかりをしてきました。

 この東京裁判史観について私はかねてより、自国のことを非難するだけで他国の動向を見ようとしないという意味で「偏狭史観」と呼ぶべきだと思っていました。戦争相手であるアメリカやソ連、イギリスなどの動向や内情をまともに分析せずに、ひたすら日本だけを糾弾する東京裁判史観は極めて「視野が狭い」と思ってきたからです。

 国際政治というのは、複数の国々の思惑で動くものであって、日本だけに「責任」があるかのような議論自体が無意味です。そして「日本が一方的に戦争を引き起こした」とする東京裁判史観を奉じているから、戦後、憲法9条のもとで「不戦の誓い」をしていれば戦争にならないなどという、特異な政治感覚を持ってしまったのでないでしょうか。

 

・実際に東京裁判史観を奉じる人たちの多くは、北朝鮮が核兵器を開発し、わが国に対してミサイルを撃とうが、中国が尖閣諸島周辺に戦闘機や軍艦を派遣し、わが国の領土・領海を脅かそうが、「憲法9条を守れ」と呪文を唱えるだけです。日本を取り巻く外国の「悪意」を見ようとしない「偏狭さ」には呆れるしかありません。

 こうした国際感覚の欠落への反省から、「偏狭な」東京裁判史観を見直す動きが起こっています。

・「太平洋戦争末期に日本の為政者が終戦を決定した政治過程は、日本人が大きな関心をもってきた問題である。終戦から現在にいたるまで、おびただしい書物や論文が発表されたにもかかわらず、不思議なことに、日本の終戦にいたる政治過程を国際的な文脈から緻密に分析した学術的な研究は存在しない」

<太平洋戦争終結を論じるときに、ソ連の役割は、アメリカと日本の歴史家によって無視されている>

・日本政府は昭和20年当時、なんとか早期終戦を実現しようと必死に模索し、日ソ中立条約を締結していたソ連を仲介に和平交渉をしようとしていました。この日ソ交渉を利用して日本の終戦を意図的に遅らせようとしたのが、ソ連の指導者スターリンでした。

・残念ながら日本では、アカデミズムの世界において「コミンテルン」「工作員」「秘密工作」などを扱うことはタブー視されてきました。

 対照的に欧米諸国では、国際政治、外交史の一分野として、このような秘密工作について論じる学問が「インテリジェンス・ヒストリー」として成立しているのです。

・安倍首相も、祖父の岸首相や父の安倍晋太郎外務大臣からこうした「裏話」を聞いていたはずです。ただし、残念ながら「対外インテリジェンス機関の創設」は思ったほど進展していません。それは安倍政権がやる気がないということではなく、インテリジェンスの専門家が不足しているからです。その背後には、インテリジェンスの基礎、つまり「インテリジェンス・ヒストリー」という学問が日本では十分に確立されていないという側面があると思っています。

<日米開戦はスターリンの工作だった――アメリカ保守派の歴史見直しはここまで進んでいる>

<変遷する「リメンバー・パールハーバー」>

・歴史というものは、新資料の公開や研究の進展によって次々と見直されていきます。

 たとえば、日米戦争の発端となったパールハーバー、つまり真珠湾攻撃がその代表です。

 1941年12月、日本軍が真珠湾攻撃をした当時、それはアメリカにとって「卑劣なだまし討ち」でした。

 ところが、その後、アメリカの著名な歴史学者チャールズ・ビアード博士が1948年に『ルーズヴェルトの責任』(邦訳は藤原書店、2011年)を書き、大意、次のようなルーズヴェルト謀略論が登場します。

「時のルーズヴェルト大統領は暗号傍受により、日本軍による真珠湾攻撃を知っていたのに、対日参戦に踏み切るため、わざと日本軍攻撃のことをハワイの米軍司令官に知らせなかった」

 その後もアメリカでは真珠湾攻撃について議論が続いてきました。

<スターリン工作説の誕生>

・このようなアメリカにおける真珠湾攻撃と日米戦争に関する歴史の見直しは、今後ますます進んでいくことになるでしょう。

 というのも、アメリカでは、「真珠湾攻撃背後にソ連の工作があった」とする「新説」が唱えられているからです。

<ヴェノナ文書研究が暴いたスターリンの戦争責任>

・ヴェノナ文書とは、第二次世界大戦前後に、アメリカ国内のソ連の工作員たちがモスクワとやり取りした通信を、アメリカ陸軍情報部がイギリス情報部と連携し、秘密裏に傍受して解読した記録です。

 その内容は衝撃的なものでした。

 というのも、ルーズヴェルト民主党政権の「ウィーク・ジャパン政策」、言い換えればソ連を味方にして日本を敵視するアジア政策の背景に、ソ連のスパイたちの対米工作があったのではないかという接点が急浮上してきたからです。

 第2次世界大戦後、保守派によるルーズヴェルト批判を許そうとしなかったサヨク・リベラルの多くが、ソ連びいきであったことも、そうした疑念を深めることになりました。

<連邦議会でもソ連のスパイ工作が追求されていた>

・かくしてソ連・共産主義の脅威や、ルーズヴェルト民主党政権内部におけるソ連のスパイたちの暗躍を追求することは、マスコミやアカデミズムではタブー視され、保守派が内部で隠れるようにして研究と議論をするだけにとどまってきたのです。

 ところが、1995年、アメリカ政府が公開したヴェノナ文書によって、ルーズヴェルト政権内部にソ連のスパイたちがいたことが「事実」であると判明しました。

 アメリカのサヨク・マスコミから全否定されていた、チェンバーズやベントレーの証言は大筋で事実だったことが立証されただけでなく、ソ連の工作がそれまでに考えられていたよりはるかに計画的・体系的で強力なものであったことが明らかになったのです。マッカーシー上院議員の告発も、内容自体はほぼ正しかったことが現在では判明しています。

<ソ連の秘密工作を「アメリカの正義」と讃える倒錯>

・それらの加筆部分でも、ラティモア、ロス、ビッソンらこそ正義であり、彼らのスパイ行為を告発したマッカーシー上院議員は悪である、という構図をいささかも変えていないのです。これは驚くべきことです。

 第2次大戦当時の「アメリカ的正義」からすれば、ナチス・ドイツと結んだ侵略者日本を敵として、中国を支援することは、申し分のない正当な行為であった。ところが、最も純粋な動機からこの闘争に参加した人々が、マッカーシズムによって、悪の烙印をおされて沈黙を強いられたのだから、そのことの怨念が鬱積し、やがて爆発したのも当然であろう。

・ソ連の国益に従ったラティモアたちを「アメリカ的正義」だと主張しているのですが、正確に言えば「ソ連の正義の代弁者」と表現すべきではないでしょうか。

<「ブッシュ大統領、ヤルタの屈辱を晴らす」>

・シュラーフリー女史はさらに、このヤルタ協定によって我々アメリカ人は現在、中国の共産主義帝国の台頭と北朝鮮の核開発に苦しまなければならなくなったとして、次のように訴えているのです。

 ルーズヴェルトの擁護者は、スターリンを日本との戦いに引き込むためにはこれらの譲歩が必要だった、と正当化しようとしました。ヤルタ文書は、その主張が間違っていたということを証明しています。例えば、ヤルタ会談の3ヶ月半前、アバレル・ハリマン駐ソ大使は、ルーズヴェルトに対して「太平洋戦争に単に参加するだけではなく、全面的に対日戦争に参戦するという完全な同意をスターリンから得ている」ことを伝えています。

 ロシアは太平洋戦争に必要ありませんでした。そして、ロシアの参戦は、中国と北朝鮮における共産主義帝国構築への道を開くことになったのです。ソ連の参戦は、1950年代の朝鮮戦争と、今日の北朝鮮共産主義の独裁者の息子による核兵器の恫喝を招いたのです。

<独立国家の学問としてのインテリジェンス・ヒストリー>

・「ソ連に甘かったルーズヴェルト大統領と、その政権内部に潜り込んだソ連の工作員たちが日米両国を開戦へと誘導し、日米の早期停戦を妨害し、ソ連の対日参戦とアジアの共産化をもたらした」というスターリン工作史観とも呼ぶべき、こうした見方に対して「あまりにも一方的過ぎる」「アメリカの歴史学会の主流ではない」などと批判することは自由です。

 しかし、アメリカの反共保守派たちによって唱えられ始めたこの歴史観は、近年の中国や北朝鮮の軍事的脅威の高まりの中で、アメリカのインテリジェンス関係者、特に米軍の情報将校たちに広がっていると聞いています。

・そもそもこのスターリン工作史観の根拠となっている「ヴェノナ文書」は、アメリカ陸軍とFBIのインテリジェンス活動の結果、生まれたものなので、それも当然と言えば当然かもしれません。

 アメリカでは、歴史学会を含むアカデミズムと、国際政治や軍事の専門家たちとでは、その歴史観はまったく異なるのです。言い換えれば、歴史学会などだけを見ていては、アメリカの歴史観の動向は正確に理解できないのです。

・今年(2017年)9月に欧米し、北朝鮮有事に関して米軍の元情報将校やシンクタンクの研究員たちと意見交換をしてきました。

 彼らの多くが「北朝鮮とその背後にいる中国やロシアに対抗するためには、軍事だけでなく、経済、外交、そしてインテリジェンスの四つの分野で対抗策を講じる必要がある」と強調していました。その上で韓国内に浸透している北朝鮮の秘密工作員の動向や北朝鮮とロシア、そしてパキスタンとのネットワーク、中国とアメリカ国内に浸透している工作員と宣伝工作などについて意見交換をしてきました。第2次世界大戦当時の、スターリンの秘密工作員の話は現在も形を変えて進行中なのです。

 一方、日本悪玉論を唱えた東京裁判史観を奉じている日本の政治家や官僚、言論人たちは、中国が尖閣諸島海域に軍艦や戦闘機を送ってきても、北朝鮮がミサイルを日本に向けて撃ってきても、「とにかく日本が悪いのだ、憲法9条を守れ」と呪文を唱えるだけなのです。こんな状況ではまともな独立国家とは言えませんし、何よりも同盟国アメリカのインテリジェンス関係者と議論が成り立つとも思えません。

・アジア太平洋の平和と繁栄を守るためには、日本も、軍事や外交だけでなく、秘密工作や宣伝といったインテリジェンスの戦いで勝たなければなりません。そしてそのためには戦後、日米両国の有識者たちによって隠蔽されてきた、スターリンの秘密工作をはじめとするインテリジェンス・ヒストリーを必死に学び、自らの力量をあげていくことが重要なのです。

・アメリカの反共保守派が唱える「スターリン工作史観」は、「先の戦争の原因をすべてスターリンに擦り付ける」ためのものではありません。「ソ連や共産主義をより深く理解」するための歴史観なのです。相手を知ろうともせずに上っ面だけ見て相手を批判したり、レッテルを貼ったりする姿勢は、インテリジェンスから最も遠いと言わざるを得ません。

 関連してもう一言だけ附言しておきたいと思います。

 本書を読んで「やはりルーズヴェルト大統領とスターリンが悪かったんだ、日本は悪くなかったんだ」というような誤読はしないでいただきたいということです。国際政治の世界では、騙された方が悪いのです。そして先の大戦では日本はインテリジェンスの戦いで「敗北」したのです。自戒を込めて申し上げるのですが、その痛苦な反省に基づいて必死に学ぼうとすることが、日本にインテリジェンスの戦いの勝利をもたらすことになるのです。

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