腰から下の壁が小銃弾の貫通に耐えることができる強い壁になっていたり、建てる方向も、「緊急時」に監視できるように、陣地的な形で計画的に造られている個人の住宅もある。(12)
<●●インターネット情報から●●>
<清水幾太郎>
その60年安保にかけての時期、安保条約反対の論陣を張った清水幾太郎(社会学者)という人物がいる。安保改定後は急速に「右転回」して、1980年9月に『日本よ国家たれ――核の選択』(文藝春秋社)を出版。日本核武装を主張するまでなった。清水はいう。「最初の被爆国である日本が核兵器を所有しなければ、有事の際、世界中の国国が日本に遠慮してくれるという滑稽な幻想を抱いているのではないか」「核兵器が重要であり、また、私たちが最初の被爆国としての特権を有するのであれば、日本こそ真先に核兵器を製造し所有する特権を有しているのではないか」と。清水が提言する核政策変更への4つの選択肢はこうだ。(1)独自の核武装、(2) 核運搬手段を日本が持ち、核弾頭を米軍から提供してもらう、(3) 核兵器を保有する米陸軍の新たな駐留、(4) 米軍の核持ち込みの許可を宣言する、である。清水は、核武装を含む軍事力強化の道を、「日本が一人前の国家になること」への第一歩と見ている。安保反対論者から核武装論者へ。実に振幅の大きい生きざまではあった(1988年8月10日、81歳で死去)。
『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』
北村淳 講談社 2015/3/23
<中国軍の対日戦略が瓦解した日>
・現実には(2015年3月現在)日本には中華人民共和国に対してだけでなく、いかなる国に対しても海を越えて報復攻撃を実施する軍事力は存在しない(ゼロとはいえないものの、ほぼゼロに近い)。
・ただし、「日本には日米安全保障条約があるではないか」という人々が少なくない。これらの人々は、「たとえ日本自身が報復攻撃力を保持していなくとも、日本の防御力で敵の攻撃を防いでさえいれば、アメリカ軍が助けに来てくれて、彼らがやり返すことになっている」というふうに信じ込んでいるようである。
その結果、日本は防衛のために必要な軍事力の片面にしか過ぎない「防御力」しか保持せず、「報復攻撃力」がゼロに近い状態でも、平然として国家をやっていられる、というのである。まさに「アメリカは矛、日本は盾」というレトリックに頼りきっている点、これこそが、日本社会が「平和ボケ」といわれている最大の理由ということができる。
・そもそも「防衛」のために莫大な税金を投入して軍事力を保持しなければならない究極の目的は、日本が外敵から軍事攻撃を仕掛けられたら「防御」するためではなく、「外敵が日本に対して軍事攻撃を実施するのを事前に思いとどまらせる」こと、すなわち「抑止」にある。
自衛隊が「防御」する段階に立ち至った場合には、いくら自衛隊が頑強に「防御」したとしても、日本国民の生命財産が何らかの損害を被ることは避けられない。したがって「防衛」の理想は「防御」ではなく「抑止」なのである。
・そして、日米同盟のレトリックに頼りきった日本が「防御」のための軍事力しか持たないならば、いくら世界最強の防御力を持っていても、アメリカが助けに来てくれるまでは「やられっぱなし」の状態が続くことになってしまう。
日本を軍事攻撃しようと考える外敵にとっては、「やられたらやり返す」という軍事能力を持たない日本を攻撃する場合、アメリカが登場するまでのあいだは「やり返される」ことを考えに入れる必要はないため、軍事的には日本攻撃にさしたる躊躇はいらないことになる。
・日本が「防御力」しか持っていない状態と、日本が「防御力」に加えて最小限度の「報復攻撃力」を保持している状況とでは、外敵に対する抑止効果という点では、雲泥の差が生ずることになる。
極言してしまえば、暴力によって勝敗を決してしまう軍事の根底に流れるメカニズムは、実はこのように単純なのだ。そして、「外敵からの武力攻撃を受けないためには、適正な報復攻撃力を持たなければならない」ということは、国防の鉄則なのである。
・本書では、現在日本が直面している最大の軍事的脅威は何か、それを明らかにするとともに、その軍事的脅威が実際に発動されないように抑止するために、日本自身が可及的速やかに手にしなければならない「とりあえずの抑止力」を明確に提示したい。
<「とりあえずの抑止力」の脆弱性>
・憲法第9条や「専守防衛」という奇妙な原則に拘泥してきた日本は、自衛隊という大規模な軍事組織を構築してきたにもかかわらず、中国や北朝鮮に限らずいかなる外敵に対しても、報復攻撃を実施するための軍事力を保有しないように努めてきた。その結果、現在の自衛隊は、様々な優秀かつ高価な兵器を手にしてはいるものの、中国に対しても北朝鮮に対しても、海を渡って攻撃する能力はほとんど保有していない。
<中朝への報復攻撃力を持つと>
・逆説的にいうと、「日本から攻撃される」という変数が存在するだけで、対日攻撃計画は複雑になってしまうわけだから、そのような変数を初めから捨ててかかっている日本は、お人好しを通り越した存在ということになる。
・このように、これまで通りの自由に攻撃作戦を立案させないようにするという効果があるだけでも、日本が「とりあえずの抑止力」を可及的速やかに手にする意義は大きいし、絶対に必要となる。
<トマホークのピンポイント攻撃で>
・そのようなピンポイント攻撃を敢行できる方法としては、現在のところ、長射程ミサイル(弾道ミサイル・長距離巡航ミサイル)による攻撃が唯一の選択肢である。
日本は弾道ミサイルを製造する技術力は保有しているが、実際に中国や北朝鮮を報復攻撃する兵器としての弾道ミサイルを開発するには、ある程度の年月が必要である。しかし、「とりあえずの抑止力」を手にするためには、日本自身による弾道ミサイルの開発を気長に待っているわけにはいかない。かといって、弾道ミサイルを輸入することはまったく不可能である。
一方、長距離巡航ミサイルは、弾道ミサイル同様に独自開発には時間がかかり過ぎるものの、アメリカからトマホーク長距離巡航ミサイル(トマホーク)を購入するというオプションが存在する。
<中国が恐れるトマホークの配備>
・逆に考えると、約9600億円では、トマホークが9600基も手に入ることになる(それほど多数のトマホークは存在しないが)。このように、破壊力と装備費だけを比較すると、いかにトマホークがコストパフォーマンスに優れているかが理解できる。
<発射可能なトマホークの数は>
・このように現在、海上自衛隊には、最大1024基の水上戦闘艦発射型トマホークと、最大108基の潜水艦発射型トマホーク、合わせて1132基を一度に装填する能力が備わっている。
・以上のように考えると、海上自衛隊の現有艦艇によって、約800基のトマホークを発射することが可能である。そして、水上戦闘艦発射型トマホークは1基およそ1億円であり、潜水艦発射型トマホークは1基およそ1億5000万円である。すると、海上自衛隊は、約900億円で上記のような駆逐艦と潜水艦から発射されるトマホーク約800基を手にすることができる計算になる(実際にはテスト用数十基を含めて約1000億円)。
この場合、自衛隊艦艇の稼働状況や展開状況を考えると、現実的には保有する800基全弾を一度に発射するのは困難であり、400~500基が報復攻撃として連射されることになる。
<北朝鮮への「4倍返し」の値段>
・このように、年間の防衛費の約2%、1000億円を投入してトマホークを海上自衛隊艦艇に配備するだけで、日本は北朝鮮に対し最大で「4倍返し」の報復攻撃力を手にすることになる。
<対中報復攻撃は日本海から>
・国際軍事常識をはるかに凌駕したスピ―ドで長射程ミサイル戦力の充実に邁進し、短期激烈戦争を周辺国に対する侵攻(可能性による脅迫)のドクトリンとしている中国に対しては、トマホーク400~500基による報復攻撃だけでは「とりあえずの抑止力」を超えた抑止効果は期待できそうにない。
<中国でより深刻なトマホーク被害>
したがって、日本が1000億円で手にできるトマホーク戦力は、少なくとも「とりあえずの抑止力」であると、中国共産党指導部は考えるはずだ。
<さらに強力な抑止力の構築には>
・1000億円を投入して、自衛隊が800基のトマホークを装備することによって、本書での目的である「とりあえずの抑止力」は手に入れることができる。本書の目的はここにおいて達成されるが、日本の防衛は「とりあえずの抑止力」を手にすることによって、真の防衛のスタートラインに立ったことになる。
・いうまでもなく、抑止力を強化するためには、報復攻撃力だけを強力にしていくのは得策ではない。できるかぎり受動的抑止力と報復的抑止力をバランスよく増強していくとともに、場合によっては報復攻撃力を予防的抑止力に転用する途も工夫して、すべての形態の抑止戦力を手にしていかねばならない。
・そして、日本の技術力のすべてを投入すれば、最大射程距離2500キロで最高巡航速度マッハ2を超える巡航ミサイルの開発に成功する可能性は十分にある。
・何をおいても1000億円で「とりあえずの抑止力」を手に入れよ――。
「封じ込めうる抑止力」に近づけるための各種抑止力の増強策、そして国防戦略そのものの大修正を行うための大前提は、1000億円を投入して「とりあえずの抑止力」を手に入れることである。これなくしては強力な抑止力はいつまでたっても手に入らず、それほど遠くない将来に短期激烈戦争を突きつけられ、実際に戦闘を開始する前に中国の軍門に降らなければならなくなる。または、北朝鮮から大量の弾道ミサイルが原発に降り注ぎ、福島第一原発事故の数十倍の放射能被害を受けるかもしれない。
<●●インターネット情報から●●>
「三峡ダム」の恐怖! 攻撃されたら万事休す・・・軍壊滅、民は「億単位で飲み込まれる」=中国メディア (サーチナ)
中国の軍事情報サイト「捷訊網」は21日、米国や台湾と戦争の事態になった場合、三峡ダムがミサイル攻撃を受け破壊された場合には、戦争に必要な軍部隊も水に飲まれ、民間人の被害は数億人にのぼると紹介した。
三峡ダムの危険性については早い時期から指摘があり、応用数学などを研究した著名学者の銭偉長氏(1912-2010年)は、三峡ダムが通常弾頭付き巡航ミサイルで攻撃されて崩壊すれば、上海市を含む下流の6省市が「泥沼」となり、数億人が被害を受けると試算した。
記事によると、三峡ダム下流の長江沿岸には軍の駐屯地が多く、軍も戦争遂行が不能になるという。
記事は、三峡ダム攻撃をまず研究したのは台湾と指摘。中国軍が台湾侵攻を試みた場合、台湾は同ダムを含む大陸部のインフラ施設攻撃を念頭に置いたという。
記事は次に、尖閣諸島で対立する日本による攻撃も取り上げた。奇襲すれば「釣魚島(尖閣諸島の中国側通称)はポケットの中の物を取り出すのと同様に簡単に手に入る」と豪語するタカ派軍人もいると紹介する一方で、三峡ダムへの攻撃リスクを考えれば、「釣魚島奇襲は不可能」と指摘。それまでに、時間をかけて三峡ダムの水を抜いておかねばならないと主張した。
記事はさらに「釣魚島を奪取しても利は小さい。三峡ダムの被害は甚大だ。しかも、(尖閣奇襲で)先に手を出した方(中国)が国際世論の非難を浴びる」と論じた。
記事は、尖閣諸島が原因で戦争になった場合、米国による三峡ダム攻撃もありうると指摘。さらに、国境問題で対立するインドが攻撃する可能性にも触れた。(編集担当:如月隼人)
<●●インターネット情報から●●>
ウィキペディアWikipedia
「スイス連邦」
国民皆兵を国是としており、徴兵制度を採用している。20歳から30歳の男性に兵役義務があり、女性は任意である。スイス男性の大多数は予備役軍人であるため、各家庭に自動小銃(予備役の将校は自動拳銃も含む)が貸与され、予備役の立場を離れるまで各自で保管している。かつては、冷戦下の厳しい国際情勢に即応するため、包装された弾薬と手榴弾が貸与され、悪用防止の封印を施した容器に入れて各自が保管していた時期もあった。
冷戦の時代には、スイス連邦政府によって、スイスの一般家庭に配布された小冊子『民間防衛』の内容からも窺い知れる様に、スイス国民はあまねく民間防衛組織に加入し、有事に備えていた。冷戦の終結後は、民間防衛組織の多くが役割を失って消滅したか、人員や装備を大幅に削減したため、現在のスイスには「民間防衛」が発行された当時のような高度な防衛体制は、もはや存在しない。それでも、政府が食糧を計画的に備蓄し、スイス軍の施設と公立の学校については、核戦争への備えとして核シェルターが常設されている。民間でも、過去には自宅や職場にシェルターを装備する義務があったが、現在では撤廃された。それでも、任意でシェルターを装備している企業や個人が多いことで有名である。
<●●インターネット情報から●●>
「産経ニュース」(2017/10/6)
「北朝鮮が核攻撃なら死者210万人 米大推計、東京とソウル」
ワシントン=黒瀬悦成】米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は4日、米国と北朝鮮の間で軍事衝突が起き、北朝鮮が東京とソウルを核攻撃した場合、両都市で合わせて約210万人が死亡し、約770万人が負傷するとの推計を発表した。
一部の専門家によると、北朝鮮は爆発規模15~25キロトン(TNT火薬換算)の核弾頭を搭載した弾道ミサイルを20~25発実戦配備しているとされる。
データ解析を専門とするマイケル・ザグレク氏が38ノースに寄せた分析は、米軍による北朝鮮の弾道ミサイル迎撃や、核・ミサイル関連施設の攻撃を受けて、北朝鮮が報復核攻撃に踏み切った事態を想定している。
北朝鮮が25キロトン弾頭のミサイル計25発を東京とソウルに向けて発射し、うち20発が日韓の迎撃ミサイルをかいくぐって目標の上空で爆発した場合、東京で約94万人、ソウルで約116万人が死亡するとしている。
一方、搭載された弾頭が、9月3日に北朝鮮が地下核実験で爆発させた「水爆」と同規模の250キロトンで、発射されたミサイル25発のうち20発が東京とソウルの上空で爆発した場合、東京での死者は約180万人、ソウルでの死者は約200万人、両都市の負傷者の合計は約1360万人に上るとしている。
米国が広島に投下した原爆は16キロトン、長崎は21キロトンだった。
<●●インターネット情報から●●>
ウェッブサイト(スイス公共放送協会(SRG SSR)国際部)より引用
(国内最大の地下施設)
スイスの地下世界は素晴らしく、また風変りでもある。同書によれば、国内には個人用の核シェルターが36万戸、大規模なものは2300戸あり、非常事態には全住民を収容してもまだ余裕がある。都市全体が地下にそっくりそのまま避難できるというわけだ。これらの大規模な防護施設は今も残り、中に入ることもできる。
多くの観光客が訪れる古都ルツェルンの地下には、世界最大級の住民用避難施設ゾンネンベルク他のサイトへがある。1976年に稼働したこの施設は、第三次世界大戦に備えて6年かけて建設された。収容可能人数は2万人。アウフデアマウアー氏は「この核シェルターを爆破したら、ルツェルンの半分が吹っ飛ぶ」と熱弁をふるう。同氏はまた「スイスは地下に向かって開拓している」と説明する。
ルツェルナー・ツァイトゥング: 「地下のスイス」はどのくらい大きいのですか。
アウフデアマウアー: もし通行可能な空間を全て一列に並べたとしたら、理論的にはチューリヒからテヘランを繋ぐ3750kmのトンネルができる長さになります。スイスの地下工事を専門にする企業のおかげで、確かな数がわかり、また立ち入り禁止区域についても、いくつかの推定で補うことができました。
ルツェルナー・ツァイトゥング: がっかりしたことは何ですか。
アウフデアマウアー: 権力政治の失策や誤った投資です。トンネル計画に目が眩んだ技術者や政治家は、適切な政策を無視して計画を実行に移し、最後まで罰せられることはなかった。巨大な住民用避難施設として構想された核シェルターの街、ルツェルンのゾンネンベルクや、「ベドレットの窓」がその一例です。「ベドレットの窓」は長さ5km以上のトンネルですが、一度も列車が通ったことはありません。完成した時にはもう無意味なものになっていたのです。
ルツェルナー・ツァイトゥング: 貴著「地下のスイス」はスイス軍との関係は限られたものだと示しています。
アウフデアマウアー: その通りです。スイス軍は連邦国家の設立以来、3世代の要塞を造りました。第3世代は冷戦が終結してから初めて完成しましたたが、使い物にならなかったのですぐに放棄されました。
軍隊は全体でも全地下構造物の約8%しか建造していません。通行できる空洞としては250km相当です。交通に1240km、水力に800km、市民防護におよそ1200kmで、どれも広々としています。
私は、果たして「Xデー」に備えて何億フランも鉄筋コンクリートに投資するべきなのか、という哲学的な疑問もあります。あるいは、それよりも例えば社会の改善のために出費した方がマシなんじゃないかと。私たちは、おそらく世界で唯一、コンクリートの天井に金を使おうと決断した。それこそスイスという特殊事例ですよ。
しかしもし軍隊が、今のNEO計画(注:軍隊の情報科学プロジェクト、ネットワーク対応作戦のこと)のように120億~150億フラン(約1兆4千億~1兆7千億円)を使ってスイス中部に位置するウーリ州の岩盤に穴をあける計画を国民の頭越しに強行するなら、不信感を強めることになるでしょう。NEOはある種の電子的な司令塔にする計画で、スイスが戦場となった場合に指揮官はそこからリアルタイムで国土を眺めたいというわけです。
民間防衛に関する連邦法の第45条と第46条では次のように謳 ( うた ) っている。「全ての住民のために住居から避難可能な近隣に避難場所を用意する」そして「 家屋所有者は、家屋、宿泊施設等を建築する際には、避難の部屋を建設し、必要な設備を設置、管理する」
1960年以降に建設されたほぼすべての家屋で避難場所が設置されているのは、1963年に発効した連邦法が上記のように定めているからだ。
2006年には、スイスにはおよそ30万の核シェルターが個人の家屋、施設、病院といった場所にあり、5100の公共の防衛施設があった。通算すると、860万人もの人々が避難できる。これは、当時のスイスの人口比で考えると、114%もカバーできる計算になる。
スウェーデンやフィンランドといった国も、世界でも比較的多くの核シェルターを設置している。それぞれの国が720万と340万の核シェルターを所有し、人口の81%と70%をカバーするといった具合だ。しかしながらスイスの収容力には及ばない。
ほかのヨーロッパ諸国のシェルターはさらに規模が小さく貧弱だ。例えばオーストリアには国民の30%をカバーするシェルターがあるだけで、換気装置がない。ドイツにいたっては人口の3%とごくわずかだ。
ヨーロッパ諸国以外では、中国、韓国、シンガポールやインドといった国に多くのシェルターが設置されている。しかし国民の50%もカバーされていない。イスラエルでは国民の3分の2がシェルターに避難できる。とはいえ、この避施設は、敵から100%完全に遮断されているわけではない。
この建設ブームは1970年代に入り、最盛期を迎え、毎年30万から40万もの核シェルターが新しく作られた。今日ではブームは去り、年間5万が建築される。
(膨大な価値)
スイスは、2006年にはおよそ30万の核シェルターを一般家屋、施設、病院に所有し、750万人分の場所を確保していた。また、5100もの公共の避難所( 110万人分 ) を所有していた。
2006年にかかった、核シェルターの建造、維持、解体費は、1億6740万スイスフラン(約150億円 )である。そのうち、個人1億2820万スイスフラン (約115億円 )、地方自治体2350万フラン( 21億円 )、連邦政府980万フラン(約8.8億円 )、州政府420万フラン ( 約3.8億円 ) 、それぞれの費用を負担した。
核シェルターにかけられた総額は、今日では118億スイスフラン (約1兆600億円 ) と推測されている。
(役所へ補償金)
一般家屋に核シェルターを建築するには、およそ1万フラン( 約90万円 ) の費用がかかる。
家を建てる場合、シェルターを作る代わりに、自治体に代替金を支払うことで義務を果たすことも可能だ。その場合は、家の大きさで支払い金額は決められる。例えば、建てた家の大きさが3部屋であればシェルター2人分を支払うことになる。1人頭は1500( 約13.5万円 )フラン。
1979年にこの法律が発効して以来2006年まで、自治体はおよそ13億フラン( 約1兆1080億円 )を代替金として徴収した。このうち7億5000万スイスフラン ( 約675億円 ) が公共の避難所建設、もしくは、そのほかの公共の民間防衛施設に費やされた。
今日、5億5000万フラン ( 約495億円 ) が準備金としてストックされている。政府は個人の代替金の支払額を半額にする意向だ。
個人家屋の核シェルターは、地下収納室や貯蔵庫といった、ほかの目的にも使用することが可能だ。しかしながら、所有者は法的に維持費を負担しなければならない。
公共の民間防衛施設は近年、難民申請者を一時的に宿泊させるために使用されたりもした。
(2017/2/19)
『現代アメリカのガン・ポリティクス』
鵜浦裕 東信堂 2016/12
<規制の緩い州が規制の厳しい州に銃を供給>
・犯罪で使われることになる銃を輸出する頻度のもっとも高いミシシッピー州では、人口10万人当たり50丁を他州へ供給している。これは全国平均の約3倍である。これが本当ならば、規制の緩い州が規制の厳しい州に銃を供給し、後者の規制を骨抜きにしていることになる。
<対立の具体的な論点>
・ガン・ライツ派と銃規制派が対立を繰り広げる前線は多様である。許可証に必要な資格や講習や待機時間、保管の方法、銃・マガジンの種類、隠匿やオープンな傾向の方法、学校やレストランなど携行が認められる場所、正当防衛の積極的解釈、精神病や薬物中毒の対策など多岐にわたる。
(1)許可証の発行
・犯罪歴などに問題がなければ許可証を発行しなければならない法をもつ州「シャル・イシュー・ステイト」(Shall-Issue-State)と、問題がなくとも、当局に裁量の権限を残す州「メイ・イシュー・ステイト」(May-Issue-State)に分かれる。
前者では銃の保有・携帯の免許証の取得が簡単であるため、州外の申請者も多い。たとえばユタ州では、1996年からの15年間で免許証を取得した24万人のうち、およそ半分が州外居住者である。
(2)銃器とマガジン(弾倉)の種類
・銃の種類については、とくに攻撃用ライフルなど高性能の銃器を認める州と、それを禁止し拳銃とショットガンだけを認める州に分かれる。
・しかし2016年、テネシー州が公認したものは、同州出身のロニー・バレットによる製造とはいえ、アメリカ軍スナイパーが公式に採用する「バレット50キャリバー」であり、旅客機を打ち落とせる。いうまでもなくアメリカ市民が入手できるもののうちでもっとも破壊力がある。連邦は禁止していないが、カリフォルニア州やワシントンDCは認めていない。
マガジンの弾数については、上限を設ける州と設けない州がある。カリフォルニア、メリーランドなど、都市部が支配するブルーステイトでは、マガジンの弾数を10発までに制限する州が多い。その上限はほとんどの州でリボルバーが装填できる6発より多い。ちなみに連邦法の定義では11発以上の弾を装填できる弾倉を高性能マガジンと呼ぶ。トゥーソン乱射事件の犯人が使った9口径のグロックのマガジンは31発装填できるものだった。乱射による犠牲者の数が多くなるため、高性能マガジンの規制は重要である。
(3)携行の方法
携行の方法は、オープン・キャリー(公共の場所で銃が見える状態で携帯すること)とコンシールド・キャリー(隠匿携行)の2つに分かれる。
オープン・キャリーは、ほとんどの州で認められている。2000年頃からバージニア州で始まった「オープン・キャリー・ムーブメント」は、2010年頃には、およそ40州に波及している。とくに「ミート・アップ」(meet-up、集合)と呼ばれるイベントを呼びかけ、公園など公共のスペース、ファースト・フード店やコーヒーショップなど、民間の飲食店を集合場所として、デモンストレーションをおこなう。ガン・マニアに加えて、現役、退役の軍人、予備軍人、州兵、警官、消防士などが参加する。
この種のデモンストレーションは、とくにカリフォルニア、ニューヨーク、イリノイなど、隠匿銃の携帯の許可をとるのが難しい州で多くみられる。その目的は、反対派との対決や銃にまつわる悪いイメージを払拭することにあるというよりは、銃の露出に不快感を覚える人を多くすることで、目立たない銃の携行、つまり隠匿銃の規制緩和を求めて、州議会に圧力をかけることにあるらしい。
「オープン・キャリー・ステイト」では、営業妨害を恐れるビジネスに、それを拒否し「禁止」の張り紙をすることが認められている。
・次に、隠匿銃を認める州は、1987年には10州だったが、2012年に認めたイリノイ州を最後に、現時点で、隠匿銃を認める法はすべての州にある。許可証の取得や講習の義務づけなど、厳しい条件をもつ。
・隠匿銃の普及を示すエピソードとして、空港のセキュリティ・チェックで押収される銃の数が近年急増したことがある。隠匿を忘れて通過しようとしたケースがほとんどだという。また保護者が学校や保育園を訪れるさいに、金属探知機でひっかかるケースも増えている。この場合、保護者は携行の権利を主張するので、訴訟に発展することもある。
(4)携行できる場所
・「キャンパス」大学のキャンパスは、長年、ガン・フリー・ゾーンだった。1745年、イェール大学が持ち込みを厳罰に処して以来、ほとんどの大学は警備員や法取締官を除いて、銃の保有・携行を禁止してきた。しかし近年キャンパスで乱射事件が頻発するため、大学は方針を変えつつある。
・ガン・ライツ派は大量殺人を思いとどまらせ、学生に反撃のチャンスがある分、キャンパスは安全になると主張している。確かにアメリカの大きな大学はキャンパスも広く、フェンスやゲートもないので、ほとんど自由に出入りできる。ナイフや銃による恐喝事件やレイプも少なくない。女子学生をふくめて、銃による武装が必要だという主張には一理あり、リバティ大学のように学長自ら隠匿銃の携行を学生に薦める大学もある。隠匿銃の携行を認めたテキサス州では、テキサス大学のある学部長が抗議の意味で辞任した。
他方、銃規制派は銃犯罪による死亡者が増えると警告する。とくに学部の学生は未熟で、感情を抑えられず、口論が、銃撃戦にエスカレートしたり、落第した科目の担当教員を射殺したりする事件が増える危険を心配する向きも多い。終身雇用や昇進を拒まれて審査教授を射殺する、科目を不合格にされて担当教員を射殺するなどの事件も起きている。教員や学生や事務職員が銃を携行することで、その分、彼らと銃撃犯の区別が難しくなる。銃撃犯に応戦できる教員や学生もいるかもしれないが、銃に慣れない人も多いという。
「バー、レストラン」
・選挙のさいの対話集会に使われるなど、飲食店は政治化された場所である。
アルコールを飲ませるバーやレストランへ弾丸を装填した隠匿銃を持ち込むことを法的に許可した州は、テネシー、アリゾナ、ジョージア、バージニア州など、合わせて4つある。この問題について規定をもたないために、事実上、持ち込みが許されている州は、ニューヨーク、ニュージャージー、マサチューセッツなど、20州ほどある。
「教会」
・教会もまた乱射による大量殺人を免れない。2015年、サウスカロライナ州の黒人教会で、白人青年が牧師をふくめ9人の黒人を射殺する事件をはじめとして、ヘイト・クライムが起きている。現在、その是非をめぐり、訴訟がすすむ州もある。
ジョージア州では、教会への銃の携行をめぐり、2011年1月、教会の一部やガン・ライツ派の団体が、許可証をもつ市民にチャーチ、シナゴーグ、モスクなど、礼拝所への銃の携帯を禁止する同州法は合衆国憲法で保障された信仰の自由の権利を侵害するという訴訟を、第11連邦控訴裁判所(アトランタ)に提起し、口頭弁論がおこなわれている。
・このように大学、教会、職場、駐車場、レストラン、バーなど、銃を持ち込めない場所を探すのが難しくなっている。
<アメリカで銃規制がすすまない理由>
・ガン・ライツ派と銃規制派の対立は「保守主義、共和党」と「リベラル、民主党」という対立に重なる。つまり銃イシューはアメリカ政治の基本的な対立構造に完全に組み込まれている。そして近年の二極化の流れのなかで、ガン・ライツ派と銃規制派もまた対立をさらに深め、歩み寄りの気配がまったくみられない。政治化された分、解決が遠のいている。
アメリカという広大な国は、イデオロギー、党派性、銃イシューの観点から色分けすると、「保守、共和党、ガン・ライツ」の支持者が多数派を占める「ミッドウェストとサウス」のレッドステイトと、「リベラル、民主党、銃規制」の支持者が多数派を占める「ノースイーストとウェスト」のブルーステイトとに分かれる。とくに「ミッドウェストとサウス」には、移民が持ち込んだ暴力を肯定する文化的伝統があり、それは正当防衛を拡大解釈する州法に反映されている。この色分けは州内の農村部と都市部のちがいにもあてはまる。
・ビジネス界に概して「保守主義、共和党」支持の立場をとるが、銃イシューについては、飲食チェーンをはじめ、銃規制を支持する業界が多い。しかし銃産業や関連産業は堅調な展開をみせている。ペンタゴン、FBI、ローカルの警察の需要など、防衛と治安のための需要が絶えることがない。余剰生産は文民仕様とされ、市民の需要に応え、その権利の実現に貢献している。銃撃事件や政府による銃規制の提案はむしろ売り上げ増加につながる。また技術革新により、銃器の殺傷能力を年々高めているだけではく、規制を迂回する技術力もある。加えて、製造者責任や販売責任の追及を免れているなど、連邦法にも守られている。
・銃イシューにおける両派は、有権者もビジネスも、市民団体や業界団体によって、それぞれ政治力に組織化され、啓蒙活動や選挙運動やロビー活動に動員される。NRA(全米ライフル協会)をはじめガン・ライツ派の団体はその強力な動員力や資金力を使い、連邦議会、大統領、行政、そして最高裁裁判官の指名にまで、影響を及ぼす。啓蒙活動や選挙活動により、ガン・ライツ拡大の立法を公約する候補者を当選させ、銃規制を唱える候補者を落選させようとする。当選後もロビー活動を展開し、議員の議決や発言を監視する。公約に反した場合には、再選のさいに報復する。議会をコントロールするだけでなく、NRAは取締機関を抑え込むことにも成功している。他方銃規制派には、NRAに匹敵する団体がないため、政治力で遅れをとっている。
・連邦議会の構成は有権者や利益団体の意向が反映されているため、銃規制が多数を占めることは難しい。たとえ銃規制派の民主党が多数派を占めたとしても、レッドステイト選出や農村部選出や農村部選出の議員が造反したり、共和党議員がフィリバスター(議事進行妨害)を行使したりして、銃規制法案を葬ることが多く、たとえ成立したとしても必ず抜け道が用意されている。結果として、銃規制がすすむはずがない。逆に、ガン・ライツの名のもとに危険人物や悪徳業者にまで銃の権利を保障し、ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)や警察をはじめ、法執行機関の取締りや捜査を妨げる立法をしている。
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