「英単語は1語1万円もたらすそうだ。君たちも1日に10万円儲けるつもりで単語を10ずつ覚えろ」と諭した(それは30年前だから今では英単語1語の価値はもっとずっと上がっているはずである)。(4)

<食料輸入価格の高騰は必至>

・先述のとおり現在の世界人口は約77億人だが、国連が2019年に発表した予測によれば、2030年に85億人、2050年には97億人、2100年には109億人に達する。

・もし、世界の人口増加に温暖化による気候変動が加わり、干ばつや洪水によって農作物が被害を受ければ、各国とも自国の食料確保を最優先にするはずだ。余剰生産はあっても、価格の高騰は必至である。

 そのとき日本に、食料を十分に輸入できるだけの資金があるか。輸出に充てられるだけの食料生産量は世界にあるだろうか。日本は、食料輸入に見合うだけの国力があるだろうか。令和日本の大問題は多元連立方程式となるだろう。

<公衆衛生学の常識が通用しなくなる>

・温暖化のリスクはまだある。平均気温が2度上がれば、東南アジアや台湾で一般的な疫病が日本でも発生するリスクが高まる。

・疫病の種類が変化するということは、これまでの公衆衛生学は通用しなくなるということだ。

 このときは蚊が日本の冬を越せなかったのか、翌年以降のデング熱患者は発生していない。だが、冬場の気温が上昇すれば日本でも繁殖する可能性はある。

<水資源の問題とは食料の問題である>

・先述の通り国連の人口予想では、地球の人口はいまから20年後には90億人を超え、2057年には100億人に達するとされている。

 地球が、果たして100億人の食料を支えるだけ淡水の量を貯えているか。

<アメリカも中国も水資源の問題を抱えている>

・当然のことながらコロラド、テキサスの農業も「オガララ帯水層」の地下水に頼っており、アメリカ全体の農業生産量の3~4割が深刻な打撃を受けかねないのだ。

 世界最大の食料輸出国のアメリカで、水不足が起きれば世界中が影響を受ける。

 世界に影響を与えるということでは、中国の水不足も大問題だ。世界の約5分の1の人口を有する中国は、地理的に水の乏しい国である。

<21世紀は水を争う世紀になる>

・「20世紀の戦争が石油をめぐって戦われたとすれば、21世紀は水を巡る争いの世紀になるだろう」

・水を争うということは、食料を争うということだ。

 このままでは温暖化と同様に、日本の食料確保を脅かすことになる。いまは飽食の日本だが、今後30年のうちに食料問題は必ず水問題として世界と日本に襲いかかってくる。

<人口減少社会の真実を直視せよ!>

<10年後、日本は大きな選択に迫られる>

・持続可能な日本社会の姿を求めて、この研究がはじまったのである。

答えを得るための方法として、日立製作所の協力を得てAIを活用したシミュレーションが採用された。まず149個の社会要因を設定し、2018年から2052年までの35年間で、約2万通りのシナリオが描かれた。

<日本の未来を左右する2つのシナリオ>

・2050年に向けた2万通りの未来シナリオは、まず2つの分かれ道にぶつかる。

・都市への人口一極集中が加速する「都市集中シナリオ」

・地方に人口が分散する「地方分散シナリオ」

 都市集中シナリオでは、出生率の低下、格差の拡大、個人の健康寿命や幸福感の低下は進行するものの、人口集中による公的サービスの効率化によって政府の財政は持ち直す。

 地方分散シナリオでは出生率が回復、社会的な格差縮小、個人の健康寿命や幸福感は増大するという未来が描かれた。

・広井教授たちのシュミュレーションによれば、10年後には「都市集中シナリオ」か「地方分散シナリオ」を選らばなくてはならないのだ。モラトリアムの時間はそう長くない。

<一極集中シナリオでは破局の確率が高い>

・広井教授によれば、「日本が持続可能であるためには、一極集中から多極集中に向かうべき」だという。多極化というのはドイツがそのモデルとなるという。ひとつの大都市に人も産業も集中するのではなく、国内に分散させるのだ。

<仕事はあっても収入は増えない>

・生産性の高い一部の業種で働く所得の高い労働者と、圧倒的多数の生産性の低いサービス業で働く低所得の労働者との間では、ますます格差が開く恐れがある。

・そうなると人口減少社会では、仕事はあるものの、働く人の収入は増えないままということも真剣に考えておかねばならない。

<収入減がもたらす不動産リスク>

・当初の計画通りに給与が上がっていかないと、生活は苦しくなる一方だ。その結果、ますます少子化に拍車がかかることも暗い予想として成り立つ。経済の原則通り、永遠に上昇するものは何もない。上がったものは必ず下がる。

<老朽化するインフラも将来世代へのツケ>

・今日でも、すでに高度経済成長期以降につくられた道路や橋、トンネルの老朽化が問題となっている。

 この問題も、10年後、20年後にはさらに深刻化するはずだ。

 国土交通省によると、日本全国のトンネルのほぼ半数、道路橋、港湾岸壁、河川管理施設の約6割、下水道管きょの約2割が建設から50年を超える。

・水道のみならず、1億2000万人の人口をベースに設計された各種のインフラは、ことごとくコスト割れを起こす恐れがある。

 地方の公共交通機関もそのひとつであるし、公共施設も維持が困難になる自治体が出てくるはずだ。人口減少社会では、それらのコスト増も受益者自らが負担しなければならないだろう。

<君は、人がいなくなる風景を想像したことがあるか>

・つまり、これから20年から30年の間、人口減少は止まらない。我々は、この点から目を背けてはならない。

<寂寥(せきりょう)とした社会に人は耐えられるのか>

・2050年過ぎには日本の人口は1億人を切る。

・私はすでに80歳を過ぎている。毎年、親しい友人の何人かは鬼籍に入ってしまう。人に寿命がある以上、こうした事実は致し方ない。だが、私の周囲から少しずつ人が消えていくことによる、いずれやって来る陰気な喪失感は、私がいま現実に感じているところだ。

・いまから30年間で、この社会の人口が2000万人近く減る。その結果、日本の各地で、どれだけ寂寥感に満ちた光景が現れるか、想像してみてもらいたい。

 年を追うごとに、想像以上の形で急速に自分の周りから人が減っていくのだ。

 

<人口減少が人の心に与える影響>

・人が減っていく中で生きることは、とても生きづらいのだ。

 総務省の報告書では、2015年と比較して、2040年に人口が半減する自治体が400以上に及ぶ。暗く、人っ子ひとり目にしない活気を失った老衰した街を見たとき、老若男女を問わずこのままではいけないと突き動かされる気がするだろう。

・人口問題とは社会的、生物学的な条件のみで語られるべき問題ではない。人に心がある以上、人の心を無視して社会を語るわけにはいかないはずだ。

 人の本質を深く理解し、人の本姓から人口問題を考えることも、残念ながら問題解決に必要な残虐なアプローチのひとつと思われる。

<日本はすでに急激な人口減少がはじまっている>

・このグラフでは、2010年に人口のピークを迎えた後、2050年頃に1億人を切り、滝の水が落下するように、ほぼ真下に向かって落ち込む様子がよくわかる。

・だが、このような激しい人口減少の結果、日本社会に何が起きるのかということになると、意外に多くの人がその深刻さを実感していない。森田教授によれば「たしかに人口は減るかもしれないが、そのときになったら何とかなるんじゃないか」と考えている人は多いという。そこまで楽観的ではなくても、まだ20年、30年先のことと事態を等閑視しているのだろう。

 しかし、人口減少の結果起きる社会の変化は、ある程度推測されている。

 総務省が2018年に発表した「自治体戦略2040構想研究会」の第一次、第二次報告には、主に自治体を中心に日本社会の20年後から30年後の姿が描かれている。

<20年後の日本の危機>

・総務省の「自治体戦略2040構想研究会」では自治体消滅の他に、2040年頃にかけての危機としては11の項目を挙げている。

(東京圏の危機)

1,東京圏は入院・介護ニーズの増加率が全国で最も高い。そのため医療・介護人材が地方から東京圏へ流出する恐れがある。2,東京圏には子育ての負担感につながる構造的要因が存在し、少子化に歯止めがかからない恐れがある。

(地方圏の危機)

3,地方圏では、東京からのサービス移入に伴う資金流出が常態化する恐れがある。4、中山間地域等では、集落機能の維持や耕地、山林の管理が一層困難になる恐れがある。

(経済・雇用の危機)

5,世帯主が雇用者として生活給を得るモデルは標準的とはいえなくなる。6,就職氷河期世代で経済的に自立できない人々が、そのまま高齢化する恐れがある。7,若者の労働力は希少化し、公民や組織の枠を超えた人材確保が必要となる。

(教育の危機)

8,教育の質の低下が技術立国として国際競争での後れにつながる恐れがある。

(都市インフラの危機)

9,多くの都市で「都市のスポンジ化」が顕在化。放置すれば加速度的に都市の衰退を招く恐れがある。10,東京圏では都心居住が進むが、過度の集中は首都直下地震発生時のリスクになる恐れがある。11,高度経済成長期以降に整備されたインフラが老朽化し、設備更新の投資を必要とする。そのため国民生活を圧迫する。

<大都市圏で孤独死が急増する>

・20年後の大都市圏には、85歳以上の高齢者が集中することになるのだ。

<隣人の孤独死に対する強い動揺>

・地域とのかかわりが薄いと、心配されるのが孤独死である。孤独死は、単なるひとりの人間の死去というだけではない社会への強いインパクトがある。

 

<街の未来の姿を決めるのは今しかない>

・同レポートでは、危機への対応策も挙げられているものの、高齢者の自助・共助、AIの活用、イノベーションの期待、働き方やライフスタイルの多様化、コンパクトシティなど、問題の解決にはこれといったものがない。

 <都市インフラの危機>で挙げられている「都市のスポンジ化」とは、人口減少によって空き地や空き家が増える状態をいう。

<移住外国人の幸福に責任を持てるか>

・日本で暮らす在留外国人の数は、30年前の1989年には約98万人であった。グローバリゼーションが進む社会で、在留外国人が増えていくのは自然な成り行きといえよう。日本がよければ、どこの国の人であれ、日本に住むことは可能だ。一方、日本人の海外移住も増えている。

 だが、労働力の補填を意図した移民政策は、自然な増加とは質の異なるものだ。

<166万人の外国人が働く日本>

・外国人を雇用する日本企業も増えて、厚生労働省の2019年10月の調査によれば24万2608事業所だ。前年同期比で約12%の増加である。外国人労働者は約166万人で、外国人雇用の届出が義務化されてから、過去最高を更新している。

<移民の定義が定まらない日本>

・在留外国人はいわゆる「移民」なのか。自民党の特命委員会による定義では、移民とは「入国時にいわゆる永住権を有する者」である。永住目的で日本にやって来る外国人が移民であり、一時的な就労目的の外国人は移民ではないとしている。

・移民大国のアメリカでは、永住権を持った外国人が移民である。

<外国人移住者受け入れで世界第4位の日本>

・OECDの移住者の定義は、「有効なビザを保有し、90日以上在留予定の外国人」としているため総務省の在留外国人総数とは数字が異なる。

 日本への移住者数は、以前からOECD35ヵ国中では常に上位にランキングされていた。2010年から2011年は7位、2012年から2014年は5位である。

<日本にやって来る外国人も、我々と同じ人間である>

・「我々は労働力を呼んだ。だが、やって来たのは人間だった」

 移民問題が取りざたされるようになって、よく聞く言葉である。

・日本にやって来た外国人が日本で信頼を得て、彼らも日本を信頼すれば、彼らの何割かは日本の地域社会になじみ、その一員となるはずだ。労働力としてやって来ても、そのうちの何割かは「移民」、一部は「国民」として日本の社会を構成することとなる。

<これからの30年、日本の周辺で起きること>

・グローバリゼーションは世界の流れだ。しかし排外主義の台頭、イギリスのEU離脱など反グローバリゼーションの動きも激しい。未来は不確定である。それでも事実を正視すれば、自ずと未来は見えてくる。

<2049年、アジアに巨大な民主主義国が誕生する>

・中国は、やがて巨大な民主主義国にならざるをえないだろう。

 私は、これまでずっとこう言い続けてきた。民主主義国家中国の誕生は、中国建国100年に当たる2049年あたりのことになるだろう。つまり短いようで長い30年後である。これからの30年の間に、アジアに巨大な、いままでと同じでないにしろ、合法的な形をもった新しい民主主義国家が現れるだろう。

<香港で起きているデモは中国でも起きる>

・私は、香港で起きたような民主化要求のデモが唯一の音色とは思わない。時と文化、風土により異なるのは当然で、やがて中国国内のあちこちで民主化の動きは起きると考えている。

 人はパンを求めているうちはペン(民主主義)には鈍感だ。しかし、十分にパンが手に入るようになれば、必ず権利に目覚め、自由を求めはじめる。

<中国は6つの州の「中華人民合衆国」となる>

・「パンはペンに勝る」という法則でいえば、中国はいわば自力でパンを手にするところまできた段階である。やっと自力で立ち上がることができた人に、すぐに走れと言っても、走れるはずはない。走る前に歩くことができるようになることが肝心だ。

 性急な民主化は、多くの発展途上国で失敗に終わっていることを見ても、中国の民主化には時間をかけなければいけない。

・「ユナイテッド・ステイツ・オブ・チャイナ=中華人民合衆国」が、妥当な民主中国の形である。USAならぬUSCが民主主義国家中国の落ち着く先だろう。

 たとえば、6つのステイツ(州)と中央政府で国をまとめ、運営していくのである。これが私の考える民主主義国家中国の姿だ。

 中央政府は各州の政府に権限のほとんどを委譲し、自治を進め相互の発展を促す。

<中国を知らない人の中国脅威論>

・日本人の持っている中国政府に対する印象は、非民主的で覇権主義の国というものかと思う。北朝鮮に次ぐ危険な国という扱いだ。だが、中国自身は一度も覇権主義を唱えたことはない。

<中国は巨大なホールディング・カンパニー>

・多くの日本人にとって、中国はよくわからない国だ。しかし、見方を変えてみると中国のシステムは、日本でもなじみのある持ち株会社のシステムに近いと私は考えている。

<越えなければならない人権問題>

・中国にとって組織のようで組織化されていない、権限も責任もない少数民族問題は、世界的な批判を受けやすい頭の痛い問題だ。

・中国が民主主義国となるまでの30年に、民主化は徐々に拡大していくだろう。同時に少数民族の自治権も徐々に拡大するはずだ。

 しかし、問題の解決には時間がかかる。パンの時代が終わりペンの時代になるころだ。これらの問題は、先進諸国や隣国の我々にとっても高みの見物は許されない問題である。アメリカとは異なった形で、14憶の民の人権のあり方を考えることも、対等のパートナーとしての日本の役割であろう。

<30年後の中国は日本のパートナーか、敵対国か>

・中国にとって、最も重要なのは経済成長政策である。それは、これからの30年間も変わりない。経済成長のためにはグローバリゼーションでなければならない。

・グローバリゼーションが国是であるのは、日本も同様である。これもまた、今後30年変わらない。

 では、30年後の日本のパートナーはどこの国か、というのが多くの人が関心を寄せる話題である。だが問題の核心は、日本の主要な経済パートナーがどこの国かよりも、30年後の日本に、どこの国とも良好なパートナーとなれるだけの経済力と国力があるかである。

<輸出先も輸入先も中国がトップ>

・しかし、経済的な関係だけを見れば、日本はすでにアメリカと中国の両輪なしではやっていけないというほうがより事実に即している。

<ASEANという成長株>

・現在、世界で最も大きな経済圏はEUである。しかしEUの成長率は低い。経済成長率では、何といってもASEAN(東南アジア諸国連合)だ。

<中国が嫌いでも引っ越しはできない>

・私はアメリカ、中国とも、経済面では紆余曲折はあれども、今後の30年の間にはグローバリゼーションの基本原則に戻り、双方の経済発展を優先することになると考えている。それがビジネスであり、そうでなければビジネスは成り立たない。

 現実の経済関係では、アメリカと中国の関係は遠くて近い。

<冷静な目で世界を見るときだ>

・これからの30年、日本社会にとって好材料はほとんどない。問題だらけである。その中で、日本にとり経済的にわずかにチャンスがあるとすれば中国とASEANの巨大な市場だろう。せっかくのチャンスを狭量で、偏った価値観のためにむざむざふいにすることはない。

 中国が嫌いな人でも、中国は「有望な得意先」であると、せめてアメリカの半分でも歩み寄ることを試みるべきだ。

<平和でなければ、中国の投資資金は水泡に帰す>

<2049年までに製造強国を目指す>

・ステップ1が、2025年までに製造強国の一角に加わる。ステップ2は、2035年までにその中位に位置する。ステップ3が、建国100年の2049年までに製造強国のトップグループに昇りつめる。これが「中国製造2025」で示された目標である。

<重点プロジェクトより重大な経営イノベーション>

・製造技術、環境技術、AI技術のイノベーションと充実をうたっているが、私は「中国製造2025」に最も必要なのは、「経営イノベーション」と考えている。経営者が先進国並みのマネージメントができなければ、中国は「巨大な技術二流国」で終わりかねない。

<ファーウェイを叩く前にファーウェイに学べ>

・5Gとは5th Generation の略で「第5世代移動通信システム」とも呼ばれる。4Gに比べて7倍のデータ量を通信できるし、100倍のスピードで処理するという。

<5G先進国中国を認められない人々>

・反中派といわれる人の中には、中国にはものづくりの技術がないから、情報通信機器の技術は盗んだり、技術者を買収して得たものだと、ピントの外れた議論さえある。

 中国はすでにネット通信大国、電子マネー大国である。

<ファーウェイの本当の強み>

・令和日本を考えるとき、重要なのはファーウェイの特許の数でもなく、留学生や研究者を通じて技術を盗むなどという問題でもない。注目すべきは、ファーウェイが多額の資金を投じて有能な技術者をたくさん確保・育成しているということだ。

・中国の主要都市では、いま技術者の獲得競争が激化している。報道によれば、技術者はA人材からE人材にランクされ、世界的にも有名で実績のある人はA人材、最下位のE人材は大卒、あるいは修士号を持っているというだけの人である。

・ファーウェイを排除することよりも、ファーウェイを凌ぐ道を、単独では難しいとしても、日本の生き方を真剣に考えることのほうがずっと大事である。

<グローバリゼーションがあってはじめて、日本人の平和と生活は守られている>

・これからの30年間も、2020年初頭に発生した新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のような事件は過去を振り返れば、今後も第2、第3と起きるだろう。

・これからの30年も、日本の立ち位置は平和と貿易、これらをなくして日本の維持・発展はあり得ない。

 相手がたとえ北朝鮮であっても、いずれは、やはり仲よくやっていくということが、日本の地政学にも、絶対に離れられない国是だ。

<アメリカ・ファーストは昔から>

・それぞれ自国が第一なのだ。こんなことは、普通の国ではごく当たり前のことである。アメリカ・ファーストは、トランプ大統領の保護主義的側面の表れという批判もあるが、どの国も自分の国益が第一であることは疑いのないことだ。

<氷上のシルクロードの地政学>

・アメリカ・ファーストやブレグジットをもって、反グローバリゼーションと片づけるのは、やはり過剰反応なのではないか。

 今後の30年を考えれば、グローバリゼーションは世界の理性、各国の国是というべきものだ。とりわけ技術革新や地球環境を考えれば避けられない世界の動きである。

・日本にとっても、北極海航路の経済的利益は大変なものになるはずだ。北極海航路は温暖化の結果だが、このルートを利用すれば日本とヨーロッパの間も、10日程度の行程が短縮できると見られている。

<世界は米中という二極で動く>

・大統領が何と言おうとアメリカは、これからも世界第1位の軍事大国であり続けるだろう。しかしそのアメリカは、世界の警察官の立場から降りようとしている。いや、降りている。

<異なるサイズの両輪で走る世界>

・とはいえ、これからの世界がアメリカと中国という両輪で動いていくことは疑いない。両輪といっても、アメリカと中国は同じ大きさではないことに注意すべきだ。

<戦争を起こしてはならない、それが日本の国是だ!>

・一国の脅威とは「攻撃能力×攻撃の意思」で表すことができる。攻撃能力はあっても、攻撃の意思がなければ脅威とはならない。

<米中に潜む戦争の危機>

・これからの30年、世界はアメリカと中国の両輪で動く。

 とはいえ、先述の通りしばらくの間は、車輪のサイズはアメリカが圧倒的に大きい。それでも30年を経れば、やがて中国はアメリカと並び立つ大きさになるだろう。

 中国の力がアメリカと並び、アメリカを追い越しそうになったときが、戦争危機は頂点となるはずだ。

 「トゥキディデスの罠」のように、覇権国アメリカと新興国の中国が衝突するのは、両輪の大きさに差がなくなるタイミングで、両国の緊張感は否応なく高まるであろう。

<中国の崩壊は日本の危機>

・ビジネスでは巨大企業が倒れれば、取引先の連鎖倒産が起こる。もし中国が崩壊すれば、日本が倒産しかねないくらい多方面からの影響がある。

・これから30年の間に中国は、ソ連のように崩壊するだろうか。

 私はの可能性は低いと考えている。中国の歴史は統一王朝の歴史である。分裂していた時代は、その間の混乱時代であり、中国はひとつというのが中国人の歴史観だ。

<令和の若者に告ぐ!>

・令和日本のネガティブリストの筆頭に、「戦争をしてはいけない、近づいてもいけない」を挙げたが、意に反して日本はどんどん戦争に近づいているよう見える。

 歴史は繰り返すというが、繰り返しているのは人間である。

・そういう意味でも、世界のどの国であれ、記録という真実の姿を墨で塗りつぶしたり、焼却したりするのは「国賊」「非国民」以外あり得ない。政治家、役人の罪の重さは「万死に値する」ものだ。

<頭脳に投資せよ!>

・質で勝負するのは、設備ではなく人間の頭脳に投資して生産性を上げるしかない。

・世界と対等にビジネスをするのは、コミュニケーション能力がいる。詩歌文芸の文化感覚力(日本語)でなく、デジタル、主格・目的格の明確な語学力(英語)は若者にとって欠くことのできない、これからの大きな道具のひとつなのだ。

<日本株式会社でいけ!>

・企業は、とかく若者を労働力と見がちである。人口減少とは、労働力不足の問題とだけ捉える政治家や役人、経営者ばかりでは人口問題の解決は覚束ない。若者は一企業の労働力ではなく、日本の財産だからだ。

<世界に共通するベターを探せ!>

・世界ではアメリカの民主主義がよいか、中国の社会主義がよいかで揺れている。アメリカがよいか、中国がよいか、その答えは「どっちもベストにはならない」である。社会システムにベストはない。あるのはベターだけだ。

<戦争以外ならOK>

・何十年と変わらない日本。令和の30年もそうなるのか。もういいかげんにせい!

 令和の君達は、戦争以外なら何でもOKという「ヨコ」との連係・研究・自由というネガティブリストで、激しい挑戦力と調和精神を失わず、「死ぬまで努力する」つもりで、身体も金も、若い君たちのいまの財産をかけて思い切りやってみる勇気と決断力をもて!

 その若さで老人のように将来の金や体力の計算はするな!

(2022/1/14)

『「強い日本」をつくる論理思考』

データを重視しない議論に喝!

デービッド・アトキンソン、竹中平蔵  ビジネス社 2021/8/4

<「論理思考」が欠落した日本>

<世の中の理不尽なこと>

・考えてみれば、今の日本の社会には、確かに不条理と感じることがたくさんあります。私は長年、経済の問題を中心に政策の研究をしてきました。そして小泉内閣の5年5ヵ月、政府の経済政策の責任者として仕事をしました。

 その間、「これはおかしい!」という問題のいくつかを解決するよう取り組みました。不良債権の処理や郵政民営化などが代表的な政策の成果ですが、その過程では多くの反対に遭いました。バブルが崩壊した後はバランスシートを調整するのは論理的に当たり前の話で、多くの国でこれを行ってきました。

 そして民間でできることは民間でやるのも、論理的に考えれば当然の話です。

・そしてこうした問題の根底にある省庁間の「縦割り」解消を、まず実行しようとしています。

<論理的に考えない人>

・少し考えてみましょう。世の中にこのような理不尽なこと、納得できないおかしいことが、なぜ解決できないまま放置されてきたのでしょう。

 この対談を通じて、私は以下のような三つの理由があると感じています。

 第一は、極めて基本的な問題として、残念ながら今、国民一人ひとりが、社会の問題をしっかり論理的に考えていないのではないか、という点です。例えば、昨年来世界をそして日本を悩ませてきた新型コロナウイルスの問題です。

 日本ではしきりに「医療崩壊の危機」という言葉が使われます。

・しかし「論理的に」考えれば、これはおかしな話です。なぜなら、日本は人口あたりの病院ベッド数が世界一多い国です。

・しかし多くの人々はこの問題を無視し、感染者数が増えたか減ったかという表面的な現象に目を奪われてきたのではないでしょうか。要するに一人ひとりがもっと問題の本質を捉え論理的に考えることが、社会を良くする基本条件だと思います。

・「日本の大学(とくに文系)を出た人の論理的思考力が、あまりに低いことに驚いた」

<既得権益者の抵抗>

・社会全体として、さまざまな重要問題(コロナ問題、財政問題、格差問題など)の本質を捉え論理的に考えることを阻んでいるもう一つの要因があります。それは先に述べたように、今の「おかしな」制度で特別な利益を得ている企業や個人が存在し、彼らが論理的に正しい政策を妨害することです。

 

<世論の移ろい>

・論理思考に基づく政策や制度がなかなか実現しない第三の要因は、世論の移ろい易さです。もっと具体的に言うと、甚だしく論理思考にかけたワイドショー、それを面白おかしく拡散するSNSによって、かつてなかったほどに世論にバイアスがかかり易くなっているという事実です。

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