このように日本が弱体化した最大の原因の一つが、総合的なインテリジェンス力の弱体化であることは間違いない。戦後日本は、インテリジェンスの重要性をあまりに軽視し過ぎた。(4)

<プーチンへの「接待外交」>

・共同経済活動といっても、実態はロシアの法律のものとで行われることになる。つまり、ロシアの国家主権を容認することになる。

<思いつき外交の弊害>

・結果的に、プーチン氏は日本を騙したことになった。約束した2018年末までに、平和条約が締結されることもなければ、それにむけての進展さえもまったく見られなかった。プーチン政権は、いったいなにを考えているのだろうか。

<ロシアが本音を吐いた>

・結局、2018年末までに平和条約を締結することがなかったプーチン政権………。どこまでプーチン氏を信頼してよいか。2019年に入ると、領土問題へのロシア側の姿勢が明らかに変化した。プーチン氏の側近たちが北方領土を支配する正当性を躍起になって主張しはじめた。

<北方領土の現実を見よ>

・それにしても懸念の一つは、歯舞群島の一つひとつの名称が日露間で違うことである。たとえば、貝殻島はロシア語の表記では「シグナーリヌィ島」、志発島は「ゼリョーヌィ島」となっている。

 領土交渉をするにあたって、日本側が返還要求しても、ロシア側は「そのような島は存在しない」と突っぱねることも当然想定できる。

<領土返還交渉は終わった>

・ペスコフ氏の口からは、「平和条約」や「領土交渉」という文言は一切出てこなかった。もうロシアを信じて領土交渉をするのは、やめた方がよいのではないだろうか。

<「偽プーチン」説の真相>

<悪魔に魅了されたロシア人>

・ふつうのロシア人は信仰心が篤く、全人口の7割ほどがロシア正教会の信者といわれている。残りの人びともイスラム教、仏教、さらには土着のシャーマニズムを信仰している。

 しかし、ことばでは神や仏の恵みを感謝するのに、心底では悪魔が大好きという人もいるようだ。

<飲まずにはいられない――世界最悪の飲酒大国>

<シベリアとは>

・シベリアは、世界最大の国土面積を有するロシアの57%の広さを占める。980万平方キロメートルの大きさは、ほぼアメリカと同じだ。

<「シベリアのパリ」>

・バイカル湖の南西岸のリストヴァーンカ村から北西60キロのところにイルクーツク市がある。1661年にコサックが城塞を築き、その後は中国との貿易と採金業で栄えた。

 その一方で、西欧流の彩りを添える街並みを形成した。意外と知られていないが、この町は「シベリアのパリ」の異名を誇る。

<大平原のなかの虚しさ>

・ザラリー駅で下車したのは、そこから南100キロほどの森林地帯に、東欧からの流浪の民ゴレーンドル人の村を訪れるためである。

 先祖はもともと1569年に誕生するポーランド・リトニア共和国内を放浪していたが、17世紀初頭にポーランドの伯爵によってブーク川沿い(現在のベラルーシとポートランド国境付近)に集められた。1795年のポートランド分割で、かれらの地はロシア領土に併合された。1906年のストルィピンの農業改革で農民は自由に農村共同体から離脱できる権利を付与され、ゴレーンドル人たちは土地を求めてシベリアの今の奥地に移り住んできたというのだ。以来、森の中にひっそりと暮らしているという。

<極上ウォッカの出番>

・ウォッカはロシア国内で広く飲まれる蒸留水であり、ときにはロシアの文化を育み、民間療法に利用されるなど、ロシア人の生活に大きな影響をあたえてきた。

・ウォッカの起原についてはいろいろな説があるが、薬用酒としてその名前が登場するのが1533年、一般にアルコールとして認知されたのは17世紀に入ってからだ。

<ウォッカの飲み方>

・ウォッカは「飲み込む」のではなく、「放り込む」。味わいを堪能したり、香りを楽しんだりする必要はない、といわんばかりだ、ちびちび飲むのも、ご法度だ。

<ビンから絞り出すほどに>

・「この一滴が、極上の美味しさなのだ」 どうやら、ウォッカの味わいは、最後の一滴に凝縮しているようである。

<警察官は「伝説の人」>

・飲酒運転は、ロシアの法律では初犯の場合、3万ルーブル(約6万円)の罰金、そして免停は最大2年に及ぶ。それを見逃す代償に、警察官が法外な賄賂を要求してくるかもしれない。ロシアの警察官は、反社会勢力と揶揄されるほど、人びとに怖がられている。わたしの懸念を伝えると、かれはこう開き直った。

「心配するなよ。シベリアの平原には、警察官なんて働いていないからだ。だって人間が住んでいないからね。警察官なんて出会ったことがないし、伝説の人だと思っている」

・ロシア国土の大部分を占める森林地帯、そのなかで暮らすロシア人にとってウォッカは欠かせない自己確認のための「神聖な水」なのである。ウォッカの語源は、「ヴァダー(水)」だ。2020年のアルコール飲料の消費量を見ると、ウォッカは全体の51%を占めており、ビールとワインを圧倒している。ウォッカの一人当たりの年間消費量を国別で比較すると、ロシアは世界一位の13.9リットル。

<オイルとウォッカ>

・当時のロシア経済は、まさにバブルの絶頂期を迎えていた。ソ連時代を含めてロシア人の多くがはじめて資本主義の怒涛に飲まれ、その栄華に酔いしれていた。

・たしかにプーチン氏が大統領に就任した翌年の2001年以降、町の様相が大きく変わった。GDP成長率は本格的な上昇局面に転じ、2006年には前年比で8.2%を記録している。とはいっても、ロシアが新しい産業を育成し、自力で経済大国にのし上がったというわけではない。

 世界的なオイル価格の上昇が、大きな要因となったのである。

・7年間で5倍近くにまで跳ね上がったのだ。ロシアの輸出高の7割が、天然資源関連で占められる。いわば「毎日、宝くじに当たる」かのように外貨収入が激増した。このようなオイル価格の上昇を招いたのは、石油需要の増大と投機マネーの流入である。だから、ロシア経済の繁栄は世界の資本主義経済に依存しているといえる。

<ロシアはヨーロッパなのか>

・だが、赤の広場で出会った先の老人は、バブル経済に踊るロシア人の浅はかさを見透かしているかのようだ、ロシア人にとって大切なのは、ロシア経済を潤すオイルなのか、それとも伝統的なウォッカなのか。

 いわば、資本主義を奉じる「欧米」と「ロシア」のどちらの価値観をロシア人は選択するのか、迫っているようだ。両者の選択は19世紀以降、ロシア人が繰り返し思い悩んできている本質的なテーマである。ロシアはヨーロッパの近代化に追随する道を歩むのか、それともロシアの独自性を追求するのか。

・欧米と古いロシアの間の選択を迫られるロシア人の辛い心情を察したのか、モスクワの商店では、オイルのドラム缶を模したアルミ容器に入ったウォッカが販売されるようになった。商品名は「オイル」、価格は4122ルーブル(8244円)だ。酒の販売コーナーにオイル缶が所狭しと並べられているのを見たときは驚愕した。

<祖国を愛せないロシア人の悲哀>

<ロシア人の根本的な不幸>

・「ロシアを愛するのは罪なことですが、でもロシアを愛さないと犯罪になるのです……。現実のロシア社会はあまりにも理想からかけ離れており、惨憺たる現実にあきれ果てています。改善しようという気持ちも消え失せています。権力者はつねに、不満を募らせる民衆の言動を警戒しており、さまざまな方法で社会の動向を監視し、わたしたちに愛国精神をもつように強要しているのです」

・しかし、祖国を露骨に嫌うという態度は、プーチン政権が推進するロシア愛国主義に抗することになる。反政府運動に参加すると、警察署から職場に通報され、上司からハラスメントを受けることは日常茶飯事のようである。退職を迫られたり、ときには、難癖をつけられて刑罰に処されたり、毒を盛られる危険もあったりする、とタメ息をつく。

<おんぼろバスでの喧騒>

・少し補足するならば、ロシアの離婚率は世界でトップクラスだ。2002年には離婚率は84%に達した。原因はアルコールと麻薬が41%、狭い住居環境が26%となっている。

<再起不能のロシア>

・喧騒を目の当たりにして、ロシアの知人たちがわたしになんども諭してきた言葉が、思い起こされた。まさに現実に起こっている光景にぴったりなのである。

「ロシアは、将来に何が起こるかを推測できない国です。信じられないようなことが突然起こったり、ときには人間の悪意で生活がゆがめられたりします。思いどおりにいかないことが多く、期待は簡単に裏切られてしまいます。だからあなたはずっと、そんなロシアに困惑していくことでしょう」

・「わたしたちが予測不能の国に住むことになってしまったのは、過去からなにかを学び、それを将来に生かしたり、未来を予測したりしなかったからです。悪意、絶望、怒り、幻滅、恥辱という人間の感情によって歴史がゆがめられてきました」 

ロシアは一見、再起不能のように感じられる。

・車内のドタバタを見つめながら、隣の女性がそっとささやくのをわたしは耳にした。「神様! わたしがロシアに生まれたのは、なにかの罪の代償なのでしょうか。前世でなにか悪いことをしたからでしょうか」

 哀愁に満ちた言葉に、わたしは嘆息してしまった。

<それでも「ロシアは偉大」なのか>

・本章の冒頭で、友人が打ち明けた「ロシアを愛するのは罪なこと」という煩悶は、心情としては理解できる。ここまで混沌として無秩序な祖国に愛着をいだくことはむずかしいだろう。だがそれにしても、「ロシアを愛さないのは犯罪」にはなるのだろうか。

 近年、プーチン政権はたしかにロシア愛国主義を強く打ち出している。

ロシアのクリミア併合に対し、欧米諸国が発動した経済制裁は今日でもロシア経済に深刻な打撃をあたえている。

・政権に批判的な立場の人間は、欧米諸国の反ロシア組織に扇動された裏切り者との烙印を押され、国家主権を侵害する外国の手先と見なされるのであろう。

 すでに述べたように、実際、反プーチンを訴える野党政治家やジャーナリスト、最近ではナヴァーリヌィー氏のような活動家までが身柄を拘束、毒を盛られる殺害未遂事件が相次いでいる。

<政敵の暗殺事件>

・ここで象徴的な事件に触れておきたい。

 2015年2月に起こった野党指導者ボリース・ネムツォーフ氏の殺害である。かれはソ連崩壊後のロシア改革を唱えるリーダーであり、エリツィン元大統領の政権下で副首相を務めた。ポスト・エリツィンの指導者に名前があがるほどの人気者であった。

・ネムツォーフ氏に対するプーチン政権の忍耐は、2014年に限界を超えた、かれはクリミア併合を強く批判し、さらには2015年2月には、親ロシア派勢力が牛耳るウクライナ東部にロシアは軍事支援していると声を荒げた。

 かれ自身、ロシア軍侵攻の秘密情報を入手したことをほのめかし、状況は一気に緊迫した。欧米派を自認し、プーチン氏と真っ向から対立するウクライナのポロシェーンコ大統領は、ロシアの干渉を強く非難しており、プーチン政権にとってネムツォーフ氏はウクライナ政権を支援する裏切り者となったのだ。

 ロシア政府は表向き、ロシア軍の侵攻を否定し、個人の判断で、いわばボランティアとして義勇兵がウクライナ東部で活動しているにすぎないと発表した。ロシアは民主国家であり、私的な行動を制限することはできないといわんばかりであった。

 ネムツォーフ氏は2015年2月27日の深夜、クレムリンに隣接する橋を歩いているとき、背中から銃弾4発を浴びた。

・ネムツォーフ氏の殺害でわかったのは、ロシア領土の拡大をはかるプーチン政権を批判するのは危険なことだということである。ロシアを愛さないのは犯罪者になるどころか、命の危険にさらされてしまう。

<プーチン氏は終身大統領>

・2000年以降、最高指導者として君臨するプーチン氏は一般民衆の言動にも疑心暗鬼となっている。2020年7月1日に実施されたロシア憲法改正の国民投票は、民衆にとってプーチン氏への忠誠心を問う踏み絵と映ったようだ。プーチン政権は、投票を監視することで有権者の政治姿勢を探ろうとした。

・さらに憲法改正で注目されるのは、プーチン氏の神格化が本格化し、その支配に対してゆるぎのない正当性が付与された点である。ロシアは先祖が育んできた神への信仰で形成され、そして発展していく国家であると明文化された(第67条)。プーチン氏が率いるロシアは神の国と位置づけられ、今後はより保守的な色彩の濃厚な国家体制が形成される。ロシア人は、もはや「ロシアを愛するのは罪なこと」と安易に話すことはできなくなりそうだ。というのも、祖国は神の国になるのだから。

・ロシアでは現在、無許可の集会に参加すると、30万ルーブル(約60万円)の罰金が科せられる。2012年6月の連邦議会で法案が採択され、従来の最大5000ルーブル(約1万円)から一気に引き上げられた。実質的に、反プーチン集会は封じられてしまっている。

 ロシア人は荒廃した社会に埋没し、ときには政治的な抑圧も受けながら、絶望のロシアに生きることの不幸を嘆く。それでも、祖国の実態とは対極に輝く理想や幸福を追い求めている。

 現実があまりにもおぞましいので、だからこそ生きる意味を真正面から問いかけ、たえず自分とロシアの距離感を探るのである。

 ロシア社会という大きな器のなかで、小さな個人の営みを見つめているロシア人の姿。わたしはかれらを、見守ることしかできなかった。

<モスクワのわるいやつら――さもしさがあふれる都市>

<すぐに破棄される約束>

・「あなたがホテルに迎えにきてくれたとき、あなたとタクシーを手配したコンセルジュ、そしてわたしの3人で、料金は3000ルーブルと約束しました。たとえ渋滞が発生し、どんなに所要時間が長くなっても、あなたは超過料金を求めないと約束しました。あなた自身が『一切、ありません』と明言した。それなのに……。余計な560ルーブルは、いったいなんの追加料金ですか」

 たしかに560ルーブル(約1120円)は、それほどの金額ではない。だから、わたしはチップだと思ってあきらめることもできる。でも、納得できない。なぜかれは約束を一方的に反故にするのか、その理由をわたしは資したいと思った。

<約束するにはその条件を確定すること>

・わたしがロシア人同士の会話でよく耳にするのは、約束を守らなかったことをめぐるモメ事である。時々というよりも、「とても頻繁」に聞く。人間関係に亀裂が走り、罵り合う場面も、なんども目撃している。

<善意につけ込むロシア人>

・わたしは、いつもポケットに携帯電話を入れており、なにかあれば、日本大使館に通報できるようにセットしている。わたしが「大使館に電話します」と声を絞り出すと、5人の男たちはバラバラに立ち去っていった。こうしてわたしは、窮地を逃れることができた。

<賛美される他力本願の生き方>

・ところで、わたしはモスクワ滞在中、スーパーに立ち寄って食料品を買うことが多い。ただ、ソ連時代から、レジの店員には細心の注意をはらってきた。紙幣を差し出すと、お釣りをごまかすことが多いからだ。買い物客から小銭を巻き上げるのだ。とくに外国人は標的にされやすい。

 露骨に「お釣りがないので、チューインガムをあげるね」と1、2枚を渡されることもたびたびある。

・店員のことばを聞いて、わたしはすぐにロシア人が日常しばしば口にするフレーズを思い出した。「他人のポケットに手を突っ込んで生きる」

 ロシア人の多くはどんなに努力しても、豊かな生活を手にいれることはできない。富は特定の階層に集中しており、貧者はどんなに努力しても報われることはない確信しているのである。たしかに所得に応じて大きく三つの階層に分けると、「富裕層」は人口の10%を占めるのに対して、「貧しき人びと」は全体の半分に達する。

 ロシア人は、プーチン政権が自分たちの生活を本気で改善してくれることはないと思っている。

<暴走する親切心>

<おせっかいな親切心>

・もちろん、ロシアにあるのは罪深い面だけではない。これまでに述べてきた側面とは真逆の、親切心に満ちたロシアが存在しているのも事実である。

 意外に感じられるかもしれないが、ロシア人の気遣いは桁外れだ。

<欧米スタイルを崩すロシア流の親切心>

・いずれにしても、店員はわたしを相手に過剰な親切心を発揮したのである。このような親切心は、ロシア人に特有の性質によるところが大きい。モスクワのような大都市では、欧米化の波が押し寄せているが、まるでそれを打ち消すかのように、個人を相手に全開になるロシア人の善良さが日常的に姿を見せるのだ。

<注意はするけど、お好きなように>

・「ロシアで生活すると、あれもダメ、これもダメ、窮屈に感じるだけではなく、ロシアに不信感をいだくようになります。たしかに制約が多すぎますが、それでも乗り越える方法があります」

<絶望のロシア>

<不条理の国>

・2019年12月28日、わたしはロシアで新年を迎えるために、成田空港からモスクワ近郊の空港に降り立った。10時間を超えるフライトに疲れていたが、経験上、ここから入国にむけての試練がはじまる。

 空港ビル内の長い通路を10分ほど早足に歩くと、少し広い空間に突き当たる。丸天井から白い蛍光灯の光がそそぐ入国審査場だ。

・よく観察すると、入国審査には一人当たり3分を要している。わたしは先頭から数えておよそ80番目なので、入国までに240分(4時間)待つことになる。とはいえ急いでいるわけではなく、焦ることもない。モスクワ時間は午後6時まえなのだが、日本時間では翌日の午前0時になろうとしている。たしかに眠気が増してきている。このまま無力感に打ちひしがれて無為の苦しみに悶えながら、時間をやり過ごすのも空虚なロシアらしさを体感できる。

<状況を突破せよ>

・「ロシアで生き抜くのに大切なことは、行列をいかに突破するかの知恵を身につけることです。どんなにたくさんの知識を得ても、りっぱな高等教育を受けても、ロシアではあまり役に立ちません。行列をくぐりぬけるのには、だれかに媚を売ったり、抗議したりするのは無駄です。たとえお伺いを立てても、「ダメ」と一蹴されるどころか、無視されてしまいます。とにかく、やみくもに突進することです。自力で、最悪な状況を突破することです」

<奇異なロシア>

・わたしでさえ、同じ場面に出くわすことは二度とないに違いない。一つひとつのシーンに反復性は期待できず、わたしの経験はいわばロシア社会のほんの小さな断片に過ぎないといえる。

 しかし大切なことは、ロシアを訪問すれば、だれでも自分だけの不可解な一コマを体験できるということだ。一過性のオリジナルなロシアに偶然にめぐり合うことができるのだ。ロシアの手荒い歓迎に狼狽することはない。

(2021/1/16)

『中国の正体』

知ってはいけない「歴史大国」最大のタブー

黄文雄    徳間書店   2020/1/31

     

<本当の中国>

・歴史、民族、国家までも捏造して侵略を正当化してきた中国。孔子や司馬遷から始まるウソの歴史から、中国を野蛮な国にした儒教や漢字文明の害毒、何でも統一したがる中華思想の実態まで、目からウロコの「本当の中国」を解説する。

<世界の中国誤解が中国の増長を招いた>

<中国人の『中国自慢』はすべてがあべこべ>

・中国ほど、外国人が抱く幻想とその実態のギャップが大きい国はないだろう。中国については「悠久の歴史をもつ」「文化大国」「礼儀の国」などと称され、また中国人自身もそのようによく自国を自慢する。

 中国人はよく自国のことを「地大物博」と称する。これは、土地が広くて資源が豊富であるということだ。

・最近は、人口が多いことまで自慢の一つとなり、「地大物博 人口衆多」という成句にもなっている。

 中国に人口が多く面積が広いのは確かだが、しかし、資源が豊富だということはウソである。本書でも述べているが、歴代王朝では必ずといっていいほど有限の資源をめぐる内乱が起こり、干ばつや水害などの天災も加わって各地で農民蜂起や反乱が発生、全土を覆う天下大乱となって、王朝滅亡・王朝交代という「易姓革命」が繰り返されてきた。

 その歴史のなかで森林伐採による禿山化、土地の砂漠化が進んできた。現在は砂漠化を食い止めるための植林事業も行われているが、工業化にともなう土地や水質の汚染が広がっており、ほとんど効果がない。

 毛沢東も、かつて中国社会を「一窮二白」(貧しく、無知)と喝破していた。

 しかも、現在は14億人もの「人口衆多」であるために、食糧不足やエネルギー不足が深刻化し、中国は食糧・石油の輸入大国となっている。

<なぜ世界は中国を見誤るのか>

・さすがに現在はそこまで中国礼賛はないものの、首相の靖國参拝を批判したり、日本の防衛力強化に反対したりする一方で、中国による尖閣諸島周辺への領海侵犯には口をつぐむなど、中国の主張に同調、あるいはお先棒を担ぐような日本の文化人やマスコミ、政治家も多い。

・また対外的には、国家の支援を背景とした国有企業が、鉄鋼などの過剰生産とダンピングによって国際市場を牛耳り、さらには国からの潤沢な補助金を元手に海外企業を買収し、その独自技術を吸い上げるといったことを、平気で行うようになってきた。

 西欧諸国も、明らかに中国の本質を見誤っていたと言わざるをえない。

<中国の野蛮に気づき始めた世界>

・しかしいま、中国という国への大きな疑問が世界で噴出している。ようやく世界も、中国が「近代国家としての常識が通用しない国」だということに気がつきはじめたといえる。

 2018年から始まった米中貿易戦争は、世界経済の秩序を壊す中国の横暴なやり口が、アメリカの安全保障を脅かすまでになったことが大きな要因である。

<中国に関する「常識」は間違いだらけ>

・本書では歴史的に「常識」となってきた中国についての通説や、日本人の一般的な中国理解について、そのウソや誤りを指摘し、日本のメディアや教科書などではまったく伝えられない中国の本性を解説したものである。

<封印された禁断の中国の歴史>

<なぜ孔子は大ウソつきか>

・中国人といえば、その国民性の一大特徴として、すぐ「ウソをつく」ということがあげられる。このようなことを述べると、すぐに「ヘイトだ」と批判されそうだが、しかし、これは中国に長年暮らしてきた西洋人も記録に残している。

<現代の中国人は漢人の「なりすまし」>

・いまでも少数民族を除く中国人は、みずから「漢人」を名乗る。だが、これは真っ赤なウソだ。後述するが、漢人は漢帝国の天下崩壊後、種の絶滅に至っている。

・中国政府は、「多党制は各党それぞれ党利党略に私利私欲ばかりだが、中国共産党員はすべて無私、人民専制(プロレタリア独裁)の制度がいちばんよい」と教えている。

<日本も台湾も「中国がつくった」というウソ>

・中国は昔から、日本人は中国人の子孫、日本国は中国がつくったと唱えている。尖閣諸島は中国の固有領土であり、「琉球回収、沖縄解放」まで叫びうごめいている。

 それは決して日本に対してだけではない。インドやロシア、ベトナムに対しても、「固有領土」回収のトラブルが絶えない。BC(生物化学)兵器や核を使ってアメリカを取り戻し、第2の中国をつくるとも意気込んでいる。

<地名を克明とした中国の策略>

・中国人では「日本人は中国人を侮蔑するために『支那』という侮蔑語をつくった」などとされ、現在では完全に死語となり、タブー用語として言葉狩りが行われているが、それは真っ赤なウソである。

<中国歴代王朝のウソを暴いた清>

・なぜなら、清の盛世は、「人頭税」が史上はじめて減免され、人口が爆発的に増えたのに対し、明の時代は北京宮廷の文武百官から万民に至るまですみずみに朝廷のスパイ網が張り巡らされ、監視下に置かれて、人格から人権まで歴史上もっとも蹂躙された時代だったからだ。「胡化」と「華化」はそこまで違うのだ。

<なぜ中国はウソばかりなのか>

<「同」の中国と「和」の日本>

・それによれば、「同」を求めることで窮極的に至るのが、すべて同一の価値、いわゆる同倫同俗の世界となる。現代語でいう全体主義である。

<中国の歴史認識はなぜ間違いだらけか>

・しかし日本では、中国のノーベル平和賞受賞者の劉暁波のように、史観の違いによって逮捕・収監されることはない。それは国のかたち、そして国体と国格が違うからだろう。

・まして、中国のいわゆる「正しい歴史認識」とは、ほとんど架空のものといってよいものであり、政治目的のプロパガンダばかりである。韓国のほうはただの空想妄想であり、大中華に呼応追随しているだけである。

・「正しい歴史認識」は逆説で知り、「すべて正しくないと知れ」という見方まで勧めることは、一見して極言や極論にも聞こえる。「なかには正しいこともあるのでは」という考え方は日本人には多いが、しかし、それは甘い。

<「騙」は中国の特色文化>

・台湾と海外メディアによる調査では、中国のメディアのニュースを信じるのは1%くらいで、残りの99%は「都是騙人的」、つまりすべてが人騙しだと思っていることが明らかになった。驚くのは、まだ100人に1人は中国のニュースを信じていることである。台湾では、そういうフェイクニュースを「烏龍(ウーロン)記事報道」と称している。

<中国を蝕む「八毒」と「七害」>

・「すべてはニセモノで詐欺師だけが本物(一切都仮、唯有騙子是真的)」という諧謔は、中国一般民衆のあいだの流行語だけでなく、かつて朱鎔基首相(当時)まで口にしたことがある。

 現在の中国では、ブランドものや薬品、食品から映画、音楽のDVDの海賊版のみならず、紙幣、免許証やパスポート、卒業証書など、ありとあらゆるものが偽造される。ニセモノで溢れかえっているのが現状だ。

 そんなインチキな商売だけでなく、庶民がいつも利用する市場にも、いわゆる「八毒」が蔓延している。八毒とは、坑(陥れる)、蒙(ごまかす)、拐(あざむく)、騙(だます)、仮(ニセ)、偽(いつわり)、冒(なりすまし)、劣(粗悪品)のことを指す。

 中国社会を蝕んでいるのは「八毒」だけではない。社会全体にはびこっているのが、いわゆる「七害」である。売春、密輸、賭博、婦女子誘拐、麻薬、詐欺、そして黒社会(ヤクザ)のことだ。

・詐欺は有効だが、有限だ。しかし、この有限な詐術が多くの人々を躓かせた。ことに善良な日本人は、中国人は詐術にあって騙されても、また懲りずに何度も騙されてしまう。騙す中国人の共犯者が、日本人のなかにいる。

・「詐欺師だけが本物」の中国では、替え玉受験と学歴詐称、著名学者や教授らの著作や論文剽窃、著書捏造、研究費の詐取などが氾濫している。もちろん、歴史学者は「正しい歴史認識」がむしろ本業にもなっている。そのうえ、エセ学者、エセ学術、ニセ情報が跳梁跋扈し、国際的には、ほとんど信用されていない。信用するのは、日本の進歩的、良心的といわれる文化人だけだ。大学教授、医師、弁護士、記者、文化人などは、中国の民間人からはもっとも軽蔑される人種である。

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