ダルシーの近くの渓谷に差しかかったとき、二人はともに全長1マイル(1600メートル)ほどの巨大なUAPを目撃した。(1)
(2023/11/28)
『UFOvs.調査報道ジャーナリスト:彼らは何を隠しているのか』
ロス・コーサート 作品社 2023/9/27
<彼らが友好的であることを祈ろう>
・世論調査によれば、アメリカ人の3分の2以上は、この現象について漏れ伝わってくる以上に多くのことを政府が把握していると思っている。合衆国の軍部と産業界のトップのあいだに巨大な陰謀があり、回収した地球外生命の乗り物はおろか、ことによると実在のエイリアンまで隠しているのだと信じている人も大勢いる。
<ロズウェル事件――怪しい否定>
・「ドイツは自国の上空に何か新しいものを投入した――夜空に浮かぶ奇怪な火の玉『フー・ファイター』が、ドイツへの侵入作戦を実行中のアメリカの戦闘機ボーファイターの翼の横を追走している」。1945年1月、ニューヨーク・タイムズはそう報じた。第2次世界大戦が始まってから1940年代後半まで、ヨーロッパ全土や太平洋戦域での作戦に参加した多くの飛行士が、俗に「フー・ファイター」と呼ばれる光り輝く円盤や球体を見たと報告した。
<プロジェクト・ブルーブックの開始>
・すると今度は1950年1月9日付のタイム誌で、ニューメキシコ州での墜落事故から「空飛ぶ円盤」と「人間に似た小さな宇宙人の遺体」が回収されたとの噂があると報じられた。続いて1950年3月には、FBI長官のJ・エドガー・フーヴァーに、とある空軍捜査官が秘密を明かしたことを伝える驚くべき報告が提出された。その秘密とは、「ニューメキシコ州でいわゆる空飛ぶ円盤が3機回収されている。機体は円形で、中心部が盛り上がっており、直径は約50フィート(15メートル)。各機にはそれぞれ三体の遺体が残されており、人間のような姿形をしているが身長は3フィートほど(1メートル弱)しかなく、非常に繊細な質感の金属製の衣服をまとっていた」というものだった。
<世界的現象>
・だが、ファーニー海軍少将は内密の目撃報告を海軍から直々に入手できていた。たとえば1953年に起こった事件も、それによって詳細を知ることができた。空母から発進した演習中の戦闘機1個中隊の上方に、巨大なロケット型の機体が急降下してきたのである。最初は飛行中隊の1000フィート(300メートル)上空を水平飛行していたが、戦闘機がそちらに向かって上昇すると、「巨大な宇宙船」は猛スピードで飛び去った。
<確かな証拠>
・アメリカはオーストラリアの上空に現れる物体も監視していたという話がある。1967年、アメリカ空軍のある軍曹が、CIAに1本のフィルムを見せられた。そこには飛行中の「UFO」をクローズアップした鮮明な映像が収められていたというのだが、どうやらこの映像が、1965年ごろにオーストラリア空軍の航空機が写真地図作成のためオーストラリア中央部を飛んでいたときに撮ったものであったらしい。アメリカのUAP研究家のボド・ホプキンズが、この空軍軍曹から聞いたという話を語っている。その主張によれば、CIAのフィルムが回ると両面いっぱいに「窓のついた巨大な機体が浮かんでいる」ところが映し出され、その後ろに「尻尾のよう」に三つの小さなUAPが付き従っていた。そして大きなほうの機体のドアが開くと、三つの小さな機体がそのなかに飛び込んでいった。すると大きな機体が「斜めに傾いて、あっというまに消え去った」。
<隠蔽をこじあける>
・オーストラリア空軍の目撃報告を見ると、リンともう一人、モイヤーだかマイヤーだかいう名前のアメリカ海軍少佐が、その夜の上空に回転しているような振動をしているような物体を見たと、それぞれ別個に報告している。海軍少佐という肩書からして、この人物は基地全体の副司令官と思われるが、彼はこのとき基地から車で南のエクスマウスに向かっていたので、おそらくリンよりもこの物体の近くにいただろう。彼はオーストラリア空軍に提出した「異常空中目撃」報告において、「晴れた空に大きな黒い物体」があるのに注意を引かれたと書いている。彼の推定によれば、、その物体の角直径は「空の高い位置にあるときの月とほぼ同じ」だった。およそ2000フィート(600メートル)上空にあったが、全くの無音だった。「最初はただ浮かんでいたが、やがて信じがたいスピードに加速し」、海軍少佐が見ている前で北のほうに消えた。自分が見たものについて何か常識的な説明がつけられそうかと問われ、彼はこう答えていた。「何も思いつかない」。さらに「このようなことはかつて経験したことがない」とも言っていた。
<誤認か、それとも隠蔽か>
・レンデルシャムで劇的な事件が起こっていたのと時を同じくして、アメリカのテキサス州デイトンでも、1980年12月29日の夜に、UAPとの遭遇が起こっていた。午後9時ごろ、ベティ・キャッシュとヴィッキー・ランドラムは、ヴィッキーの7歳の孫のコルビー・ランドラムを連れて、深い森のなかの静かな田舎町を車で走っていた。そのとき、光り輝く菱形の巨大な物体が空に浮かんでいるのが見えた。その物体は大量の熱を発していた。大人二人は車から出て、その物体をまじまじと見た。とてつもなく明るくて、鈍い金属的な銀色をしていて、直立させたダイヤモンドの上と下が平らに削られたようなかたちをしていた。
・キャッシュとランドラムの遭遇事件のとりわけ奇妙な一面は、ボーイング社が開発した巨大なヘリコプターCH-47チヌーク数機を含めた、少なくとも23機のヘリコプターが緊密な編隊を組んで、その物体に接近するのが見えたと主張されていることだった。
・当時は公表されなかったが、1986年11月17日には、日本航空1628便のパイロットがアラスカ州アンカレッジの近くを飛行中、2機の光る「宇宙船」と巨大な母船を見たと報告する事件も起きている。
日本航空1628便の乗員に連邦航空局からの聞き取り調査がなされたところ、彼らは頑として、明らかに地球上の既知のテクノロジーではありえない巨大な機体を見たと主張し、飛行中ずっとそれに追跡されたと断言した。そして、いくら違う答えを言わされそうになっても、最後までその主張を曲げなかった。彼らが目撃した機体は、いかなる既知のテクノロジーの能力をはるかに超えた、とてつもない速度と操作性を示していた。寺内謙寿機長は、2機の小型船と、空中に浮かぶ「空母の大きさの2倍はある」巨大な母船がいたと説明した。それは日航機がアンカレッジ空港に向かって降下する直前に現れ、ある時点で空中で停止をして、それから32分間にわたって日航機の左側に陣取っていたという。
・日航機目撃事件での当局の隠蔽を裏づける圧倒的な証拠が露見したのは、事件後、連邦航空局のワシントン本部で開かれた会議の場で、CIAのエージェントがすべてのレーダー証拠を没収したときだった。事件当時、連邦航空局の事故調査部長だったジョン・キャラハンは、のちに、1986年の会議そのものまでもなかったことにするようにCIAから命令があったと語っている。CIAのエージェントはこう言ったそうだ――「UFO」の存在を明かしてしまったらアメリカ国民がパニックに陥る、「だから、これについては話してはならない」。
<黒の三角>
・1989年、ベルギー全域からドイツにかけての一帯で、底面から特徴的な光を放ちながら低空を飛行する巨大な三角形の機体が、警察官を含む多数の人びとによってたびたび目撃され、写真まで撮影された。そうした物体の一つが何度かレーダーで追跡され、迎撃のためF-16戦闘機が緊急発進するにいたって、騒ぎは頂点に達した。
これがいわゆる「ベルギーのUFOウェーブ事件」である。
・レスリー・キーンの著書『UFO――将官、飛行士、政府役人の公式発言』には、ベルギー陸軍の軍事インフラ部長アンドレ・アーモント大佐が妻とともに、上空に浮かぶ巨大な三角形の機体をじかに目撃したときの話も収められている。
・静かに浮かぶ巨大な黒い「機体」は、1990年6月に、遠い西オーストラリア州ノースウェストケープのエクスマウス周辺でも目撃された。2014年に元オーストラリア軍兵士の一人が、アメリカ民間UAP研究団体MUFONにその目撃談を語っている。それは1990年、ラーモンス空軍基地の外での演習中に、夜間巡回をしていた午前2時8分のことだった。少なくともサッカー場二つ分はありそうな巨大な三角形の「機体」が浮かんでいるのが見えた。
・1990年の後半にも、ヨーロッパの各地で軍民双方のパイロットによる目撃があいついだ。ベルギー空軍のレーダーに、謎の黒い三角形のUAPが記録されたのもその一つだ。フランスでは1990年11月に、ティモシ―・グッドの著作『ニード・トゥ・ノウ(知る必要)』で紹介されているとおり、フランス空軍とエールフランスの元パイロットで、当時はジムのインストラクターをしていたジャン・ガブリエル・グレルが、パリの東25キロのグレ=ザルマンヴィリエールでジムの外に立っていたときに、6人の教え子とともに「全長1000フィート(300メートル)、奥行200フィートから250フィート(60~75メートル)ほど」の機体を目撃した。それは台形で、三角形の下部構造がついていて、たくさんの光を発していた。「まったく信じられない光景だった。雲の切れ間に一つの都市が浮かんでいるかのようだった」とグレイルは語っている。
・元イギリス国防省調査官のニック・ポープが明かしたところでは、このフランスの目撃事件と同時期に、イギリス空軍のジェット機トーネードが3機、イギリスからドイツに向かって北海上空を飛んでいたときに巨大な物体に遭遇した。それはトーネードの翼端の上をしばらく並走したあと、「想像を絶するスピ―ド」で追い越していった。見たところは航空機のようだったが、「とてつもなく大きく、青と白の光で埋め尽くされていた」。イギリス国防省は、未知のステルス機だったのではないかとあやふやに推測した。ニック・ポープは国防省を退職したあと、1993年3月にイギリスの各地で立て続けに起こったUAP目撃に内部情報を詳細に明かした。そのいずれにも巨大な三角形の機体がかかわっていたという。国防省時代、ポープは1993年3月31日付の機密報告書を調査していた。それはウルバーハンプトンの近くのコスフォード空軍基地の航空巡視隊から提出されたもので、全長200メートルほどの巨大な菱形の物体が巡視隊のわずか数百メートル上を飛んでいたという報告だった。
・グドールは、空飛ぶ円盤の内部告発者と自称して物議をかもしているボブ・ラザーのことを信じていると言った。ラザーはネバダ州の実業家だが、1980年代末にとんでもない主張をして大論争を巻き起こした。自分はエリア51に物理学者として雇われて、回収されたエイリアンの宇宙船の推進装置をリバースエンジニアリングするのにかかわっていたというのである。
・エリア51に保管されているエイリアンの宇宙船のリバースエンジニアリングを試みたというラザーの信じがたい主張に果たして真実があるのか、あるとすればどんな真実なのか――それを解明するのは不可能だ。
<ディスクロージャー・プロジェクト>
・ペンタゴンの会合のほんの数週間前に、アリゾナ州フェニックスの街の上空で、史上最も大々的に報じられたUAP目撃の一つが起こっている。1997年3月13日の夜、何千人もの目撃者が、市街ブロック数個分、すなわち「横幅1マイル」(1.6キロ)ほどの巨大なV字型の光の編隊が、街の上空30メートルほどのところを低空飛行していると報告した。
多くの人は、この物体を一個の黒い三角形、もしくは逆V字型の機体と認識し、それが角の部分で光を発しながら音もなく夜空に浮かんでいると見て取った。のちに空軍州兵は、市民が見たのは訓練中に投下された高輝度照明弾にすぎないというありえない説明をした。アリゾナ州知事ファイフ・サイミントンは後年、「パイロットとして、また元空軍士官として言わせてもらうが、この機体は間違いなく、私がそれまで見てきたどんな人工物にも似ていなかった。それに、確実に高高度照明弾でもなかった。照明弾は編隊飛行なぞしない」と反論した。
・私の見るところ、たしかにアメリカ政府がUAP事件を何度も封じ込めようと――そして場合によっては隠蔽しようと――してきたことは、歴史的証拠が裏づけていると思う。目撃者が軍や民間のパイロットであった場合には、とくにその傾向が強そうだ。
<スキンウォーカー牧場>
・ユタ州の片田舎の町バラードの南東に、小さな農場がある。かつてはシャーマン牧場と呼ばれていたが、UAP伝説上、いまではスキンウォーカー牧場という呼び名のほうがよく知られている。ここは1990年代半ばにモルモン教徒の農場主、テリーとグウェンのシャーマン夫妻が超常現象との遭遇を初めて地元紙のディザレット・ニューズに語って以来、同様の奇妙な報告が何度となくなされてきたところなのである。
・シャーマン夫妻は農場にいた15ヵ月間に何度もUAPを見たと主張した。それは「白い光を放つ小さな箱状の機体だったり、全長40フィート(約12メートル)の物体だったり、フットボール場を何個かあわせたぐらいの巨大な宇宙船だったり」したという。
夫妻は自らの体験におびえながら、ある機体は波打つ赤い光線を発しながら飛んでいたと話し、オレンジ色の丸い出入り口が空中に見えたとも主張した。
・さらに不穏な主張もあった。シャーマン夫妻によれば、これらのUAP目撃は、農場の7頭の牛の死や失踪に関連しているというのだ。そのうち3頭は死んでいるのが見つかったが、なんとその死骸には正確な外科的切除がほどこされていて、舌や直腸や生殖器がまるごと抜き取られていながら、血痕はいっさい残っていなかった。捕食者に襲われた形跡もなく、人為的ないたずらの証拠となるタイヤ痕や足跡もなかった。そしてだいたいにおいて、現場には独特の化学薬品臭が漂っていた。
・このセンセーショナルな話を、ジャーナリストが地元の先住民ナバホ族の伝説に出てくる邪悪な呪術師「スキンウォーカー」と結びつけるのに長い時間はかからなかった。テリー・シャーマンも、頭上のどこかから聞きなれない言葉をしゃべる男の声がして、飼い犬が怖がったという話をしていた。やがて地元の元高校教師ジョゼフ・ヒックスが、スキンウォーカー牧場の位置するユインタ盆地の一帯でUAPを見たという人に話を聞いたところ、浮かんでいるUAPの小窓に人らしきものの姿が見えたと話す目撃者が何人もいたと主張するにいたって、このスキンウォーカーの噂はいっきに広まった。
・懐疑派は、身体の一部をもぎとられた牛はいずれも捕食動物にやられたのだろうと推測したが、シャーマン一家の主張の少なくとも一つには、信じるに足るだけの補強証拠があった。ユタ州全域と、隣接するニューメキシコ州の一部の牧場主からも、驚くほど類似した謎の「キャトルミューティレーション」――つまり前述のような、家畜が身体の一部をきれいに切除されて殺されている異常現象が、なんと1万件以上も報告されていたのである。
・1996年7月、デイヴィスはボブ・ビゲローの全米ディスカバリーサイエンス研究所で働きはじめた。数週間のうちに、彼はスキンウォーカー牧場で最初の超常現象を体験した。
「9月、そこへの二度目の出張のときに、キッチンの窓越しに機体を見ました」とデイヴィスは言う。
「やがてそれが降下してきましたが、遠くの山脈を背景にして、まだ明るく照らされていました。おそらく西に30マイル(48キロ)ほどだったでしょうか」。デイヴィスが見つめていると、その機体らしきものの大きな琥珀色の光が木の高さより下まで降りてきて、やがて地上まで降りたのが木々のあいだから漏れる光で垣間見えた。機体はそこにそのまま30分ほど着陸していた。その年の11月には、デイヴィスが同僚の科学者コルム・ケレハーとともに牧場の家屋の裏口のポーチに座っていたときに、前と同じような光る機体が近くの断崖の上空から矢のように飛んできて、彼らの真上で90度の高速旋回をした。
・スキンウォーカー牧場でのまた別の晩には、牛の群がどうも落ち着かず、牧場の管理人は大きな山猫が近くに潜んでいるのではないかと疑った。草地の片隅にいたエリック・デイヴィスは、ある1本の木のてっぺんに猫の巨大な目が光っているのを見た。「本当に大きな目が2つ、黄色く光っていて、大型のネコ科の肉食獣の、目のように見えました」とデイヴィスは言う。「ただ一つ問題なのは、大きすぎたことです。両目があまりにも離れていたんですよ。しかも、木のてっぺん近くの高さです。つまり、枝が密集したところはあるんですが、てっぺん近くなんです。………そこでただ点滅してるんです。これはなんだと思いましたよ。あんなに大きな猫は見たことがないし、あんなに大きく離れた目も見たことがない。そして思いました、これは猫じゃないなと」
・デイヴィスがいっしょにいたコルム・ケレハーと牧場管理人のテリーにも知らせ、三人全員でそちらを見ていると、いきなり巨大な生き物が目の前に飛び降りてきた。それは山猫よりもはるかに大きく、熊や牛ぐらいの大きさがあった。テリーがとっさに至近距離からライフルで何発も撃ち込んだが、デイヴィスはこう振り返る。「ひるみもしません。ゆうゆうと歩き去って低木の茂みに入り、姿を消しました」。雪面には足跡もなく、血痕もなかった。その生き物がなんだったのであれ、それはただ消えてしまった。こうした異様な超常現象ををたくさん経験した結果、デイヴィスはきわめて物議をかもしそうな結論にいたらざるを得なかった――ここで目撃されているのは人間ではない、知覚を持ったなんらかの知的生命体で、これはどういうわけかスキンウォーカーの科学者がカメラやビデオを向けても、つねに検出を逃れられるのだ。
・ネバダ州ラスベガスを拠点とするジャーナリストのジョージ・ナップは、多数の賞を獲得している調査報道記者で、ラスベガスのテレビ局KLAS-TVで40年にわたって番組を持ち、UAPに関する驚異的なスクープを数多く報じてきた。また、国家の陰謀と超常現象を主要なテーマとする配信ラジオ番組「コースト・トゥ・コーストAM」の司会もたびたび務めている。
・出されていた説明は、どういうわけかこれらの異常現象は不思議とカメラに映らないことができる、というものだった。おそらく本のなかで主張されている最も驚くべき現象は、NIDSの調査員が目撃したという「顔のない黒い生き物」の出現だろう。それは黄色く光のトンネルから現れたというが、そのトンネル自体、まるで異次元から出てきたかのように、どこからともなく一瞬でそこに出現したのだという。シャーマン家が主張していた別の事件では、赤い目を鋭く光らせた、知性を持っているとおぼしき巨大な狼ににた動物が現れて、至近距離から大口径の拳銃で撃っても猟銃で撃っても、無傷でその場を離れていったそうだ。「銃弾が肩の近くの肉と骨に当たった音がしたのは間違いない。狼は一瞬のけぞったが、すぐになんでもなかったかのように立っていた」と本には書かれている。「呆然とする家族にゆっくりと最後の一瞥をくれると、狼はゆうゆうと向きを変え、小走りで草むらの向こうへ消えていった」。最終的にシャーマン一家が牧場を去るきっかけとなったのは、飼い犬が明るく輝く光球を追いかけて木立に入っていったまま、それっきり戻ってこなかったことだった。
・これらはじつにセンセーショナルな主張であり、それを信じるには別の独立した裏づけが必要だった。NIDSの調査について公に明かされた情報について公に明かされた情報から、NIDSは膨大なデータを集めていたことがわかっているが、それらのデータ――たとえばビデオ映像、電磁波の測定値、土壌や切断された家畜の死骸のサンプルの分析
、専門家の報告書、血液検査など――でも、これらの異様な主張の裏づけにはなりえなかった。もし赤い目をした巨大な狼や、伝説の猿人「ビッグフット」のようなものが本当にこの牧場に出没していたのなら、彼らはよほど恥ずかしがり屋で、ボブ・ビゲローの調査団がカメラを向けても出てこなかったということなのだろう。
・アレグザンダーは、牧場に出現した3次元の入り口から人間のような姿をした生き物が出てきたという信じがたい目撃談についても詳述している。それは1997年8月のある夜中、午前2時半のことだった。崖からあたりを見回していたNIDSの二人の科学者が、眼下の道路の近くにかすかな光が灯っているのに気がついた。その光は少しずつ大きくなり、強くなって、やがて直系1メートル余りの大きさに広がった。地面から1メートルほど浮いていて、気がつくといつのまにか三番目の次元ができており、トンネルのような格好になっていた。アレグザンダーの記述によれば、「研究者たちの目には、そこで展開されているできごとがはっきりと見えた。トンネル内に動く黒いものがあり、やがて姿を現した。それはかなりの大きさの、人型をした生き物だった。身長は180センチぐらい、体重も180キロぐらいありそうだった。両腕を使って光のトンネルから抜け出ると、道路に降り立った。そして直後、その生き物は暗闇に歩み去った………」。
・文書に記載されているダルシーでのUFO目撃報告のなかには、地元の先住民ヒカリヤ・アパッチ族からの証言もあり、当時のダルシー公安部の事務局長で、町の警察、消防、救急の責任者だったホイト・ヴェラーディも証言者の一人だった。ヴェラーディはNIDSの調査チームに、1987年に遭遇したできごとのことを話していた。そのときヴェラーディはもう一人の局員と夜間パトロールに出ていた。ダルシーの近くの渓谷に差しかかったとき、二人はともに全長1マイル(1600メートル)ほどの巨大なUAPを目撃した。二人が最初に気づいたとき、二人は頭上1000フィート(300メートル)ほどのところに浮かぶ、無音の小さなオレンジ色の光だった。「やがてその光が近づいてくると、それはゆっくりと静かに移動している巨大な黒い構造物で、その端に光が灯っていたのだと彼は気づいた。その物体のせいで星も見えなくなり、ホイトと同僚が見つめていると、その物体は渓谷にいた彼らの頭上に移動してきた。………その物体が菱形、もしくは平行四辺形をしていて、両側の斜辺が上に向かって長く延びているのがはっきりわかったという。どこまで延びているのかは推測しようもなかったというが、彼は繰り返し、とにかくそれが巨大だったと主張した。………その物体は端から端まで1マイルほどあったとホイトは言った。真っ黒で、先端に光が一つ灯っているほかは何も特徴がなかったという」
<宇宙から来たチクタク>
・降下中、フレーヴァー中佐は見えてきたものに衝撃を受けた。それは、のっぺりした巨大な白い「チクタク」(tic tacの名称で世界各国で販売されているイタリア発のミント菓子)としか表現しようのない物体だった。その腹の下に付属肢のようなものを二つつけたチクタクが、泡立つ海面のすぐ上に浮かんでいた。全長はFA-18機とほぼ同じで、窓もなく、エンジンも見当たらず、翼もなく、排ガスも煙も出ておらず、はっきとした模様もない。
<「ビッグ・シークレット」狩り>
・したがって、アメリカが砂漠のどこかの洞穴にETや宇宙船をしまいこんでいたのかどうかを確実に知っている人間がいるとすれば、現在80歳の元上院議員ハリー・リードこそ、「ビッグ・シークレット」を教えられていた一人である可能性が高い。リードは前々からUAPに強い関心を持っていることを認めていた。彼が任期中に訪れた秘密施設の一つが、地元ネバダ州にある空軍基地のエリア51だ。
・また、1948年3月25日にニューメキシコ州のアズテックで、やはり知的に制御された地球外起源の宇宙船が墜落し、回収されたという説もある。これについての本を書いたスコットとスザンヌのラムジー夫妻とフランク・セイヤー博士は、膨大な数の目撃証言を集めて、巨大な「直径100フィート(30メートル)の空飛ぶ円盤」がアズテックの町の東側にあるハートキャニオンの高台に鎮座していたという主張の裏づけをとった。この宇宙船もまた、アメリカ軍に秘密裡に回収されたという話だった。
・「何十年も前から、回収された残骸の一部をロッキード社が持っているという話は聞いていました」とリードは言った。「それでたしか、それを見せてもらえるようペンタゴンから機密上の承認を得ようとしたんです。しかし、その承認は得られなかった。詳しい数字とか、それがどの程度の機密扱いだったかとか、私は何も知りませんよ。教えてもらえませんでしたからね」。リードがニューヨーカー誌に語ったところでは、ペンタゴンは承認拒否の理由をいっさいリードに説明しえなかった。
<大統領なら知っているか>
・2011年の末、オバマ政権下のホワイトハウスは大統領に代わってある声明を発表した。
・その決定的な声明で、ホワイトハウスの科学技術政策局はきっぱりと宣言した。「アメリカ政府は、この惑星以外に生命体が存在する証拠も、地球外生命体が人類の一員に接触や関与をした証拠もいっさい持っていない。また、なんらかの証拠が国民の目から隠されていることを示唆するような信頼性のある情報も存在していない」。このホワイトハウスの否定が事実なら、エリック・デイヴィス博士は嘘つきで、彼の同僚の何人かも同様だということになる。
<われわれは真実を受けとめられる>
・トム・デロングの描写する壮大な陰謀とは、1940年代以降、アメリカ政府がとあるUAP研究プログラムを、独自の機体開発を含めて民間企業の内部にずっと隠してきたというものだ。
・将軍たちによって蚊帳の外に置かれてきたということだ。彼らは人類が何千年と崇めてきた神々に少数の邪悪なライバルがいるかもしれないことを、われわれに知られたくないのである。だから彼らはエイリアンとの戦争を準備しているのだ。
ともあれ、これがロックスターのトム・デロングに開陳された、巨大なUFO/UAP陰謀論である。
<罪深い秘密を漏らす>
・ワシントンDCでデスクに座るジョン・ポデスタは、今回は2016年の大統領選に臨むヒラリー・クリントン候補の選挙対策責任者を務めていた。このときポデスタは、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の26165班を率いるヴィクトール・ボリソヴィッチ・ネティクショのことなど聞いたこともなかった。だが、ネティクショのほうは間違いなくポデスタを知り尽くしていた。
・GRUは、冗談抜きのドクター・イーブル(カリスマ悪役)だ。そのGRUがソールズベリーで二重スパイの元ロシア軍人セルゲイ・スクリパリの自宅のドアノブに猛毒神経剤のノビチョクを塗りつけたのは、GRUのヒットマンだった。また、2019年8月にベルリンの公園でジョージア国籍の男性を射殺したのもGRUのエージェントだった。2014年7月にウクライナ東部の上空でマレーシア航空17便の罪のない乗員乗客298名が命を奪われた事件から、血まみれの軌跡をたどっていくと、GRUの特殊任務部隊スぺツナズに行き着くこともわかっている。ニューヨーク・タイムズの報道によれば、GRUには29155班という番号だけで呼ばれる部隊がある。その目的は「ヨーロッパ(とアメリカ)に不安定をもたらすための協調的かつ継続的な軍事行動」を仕掛けることであり、実行するのは「破壊工作、妨害活動、暗殺に長けた」秘密諜報員であるという。おそらく、この血まみれの29155暗殺班の部屋があるフロアの数室先に、ネティクショの26165サイバーハッキング班があるのだろう。その部隊の任務のなかに、世界最古の民主国家の一つをサイバー転覆することが含まれていた。
ポデスタは、それがじつはスピアーフィッシングというハッキングの手口だったことにも気づかすに、偽のGメールのリンクをクリックした。
・少なくともまた70年、「ビッグ・シークレット」が守られることを疑う者はいない。今度のトランプ大統領も、楽勝の相手だ。ロズウェルの事件があった1947年、さらにはもっと前にさかのぼるまで、歴代の大統領のほとんどは、われわれから何も知ることができなかったのだ。
<「トゥ・ザ・スターズ・アカデミー・オブ・アーツ・アンド・サイエンス(TTSA)」>
・宣言されたTTSAのミッションは、「深慮だが、いまだ解明されていない、人類に有益な影響をもたらしうる宇宙の謎について新たな気づきと理解を喚起することにより、変革の媒介となる」ことだった。もちろん、これがTTSAの真の目的をうまく言いつくろった表向きの記号であることは誰もが知っていた。TTSAが解明したいのはUAPの謎なのである。
・そこでローガンが口を挟む。「1種類じゃないの?」
デロングが答える。「そうそう、何種類いるのかわからない。いくつかの系統は、すごく人間に似ている。あんたや俺とそっくり」。続けてデロングは、伝説上のアトランティス文明が実在したと主張し、古代ギリシャ語とロズウェルの機体に書かれていたとされる文字とのあいだに関連性があると主張した。「世界第6位の防衛企業はSAICだけど、あのビルの正面には、王座に座ったアトランティス人の像があるんだよ。2メートル半の」とデロングはなぜか勝ち誇ったようにローガンに言った。まるでそれが何かを証明するかのような口ぶりだ。「それはエイリアンの体をピクルスにしたのかな?」とローガンが聞いた。「そうだろうね」とデロングは言った。「ほかにもオフラインでならしゃべれるんだけどなあ」
<検証される未確認物体>
・だが、ブリーフィング用のスライドをそっくりそのまま開示できないとは、何がそんなに秘密なのか。やはりアメリカ政府は確実に、これらのUAPに関して、一般には知られたくない何かを保持しているのだ。
この謎に関してもう一つ不可解なのは、元国防総省の内部関係者で、アメリカがこのような並外れた芸当のできる反重力機を持っているのかどうかを知れる立場にあったクリストファー・メロンが、これらの物体はアメリカのものではないと断言していることだ。「元情報部の人間として、私はいささか不満を覚えています。戦略的奇襲を受けないようにするのに年間150億ドルを費やしていながら、実際に尋常でない能力を持つ乗り物がそこにいて、われわれの空母戦闘群の一つを監視しているというのに、それがどこから来たのか、そこで何をやっているのか突きとめようとする行動を誰も起こしていないのです」。
・仮に、地球外起源の宇宙船がアメリカによって回収され、再設計されていたのだとしよう。このテクノロジーが世の中から隠され、議会からも隠されたまま、70年以上が経過した。
・この陰謀論にもう少々面白味を添えるなら、2016年3月に、デロングが奇妙な約束をしていたのを思い出してほしい。彼は8年以内、つまり2024年までには実用機をお届けできると言っていた。もし本当にゼロからスタートしていたのなら、どうしてそんな約束ができようか? しかし陰謀論で言えば簡単だ。もちろん、TTSAはよそから手伝ってもらっていたに決まってるだろう?そこで今度は、CRADA(共同研究開発契約)というものに行き着く。
<アートのパーツ>
・そして22年後の1996年。元陸軍兵の老人はとうに亡くなっていたが、その孫の一人はアメリカ陸軍の現役軍曹になっていた。彼は、亡き祖父から託された驚天動地の証拠をどうしたものかと葛藤していた。その証拠とは――ロズウェルのエイリアンの宇宙船から回収された一連のサンプルと、世界の歴史に残る特別な瞬間に自分が果たした異例の役割を詳細に綴った祖父の日記が収められた箱だった。
・TTSAが証券取引委員会に提出している開示通知書を見ると、トム・デロングが2019年に「アートのパーツ」そのものである6個のサンプルを3万5000ドルで自分の会社に売却し、それをハル・パシフがTTSAの依頼で分析する予定になっていたことがわかる。
・リンダ・モールトン・ハウは何年ものあいだ、「アートのパーツ」の一つであるビスマスとマグネシウムが層状になったサンプルについて、いろいろと信じられないような主張をしてきたが、その証明されていない主張の一つに、この物質が適切な磁場にぶつかると反重力効果が生じて空中浮揚をする、というものがある。いやはや、ずいぶんどでかくぶちあげたものだ。しかし思い出さないだろうか――以前トム・デロングがジョー・ローガンのラジオ番組で、同じようなことを劇的に断言していたのを。
<メタマテリアルという新たな科学>
・トム・デロング率いるTTSAは、「アートのパーツ」のサンプルが知的に製造されたものであるとほのめかす。そして彼らの匂わせる仮説の一つが、これらの材料は構造そのものが導波管としての機能を果たすため、適切な電磁信号がその構造を貫通すると、反重力的な空中浮揚など、さまざまな超自然的な特性を見せることになるというものだ。
・もちろん、それなら素直に認めなければならない。もし陸軍が万が一、実際にTTSAのサンプルに反重力効果を確認しても、それでただちにTTSAに国家安全保障上の緘口令が敷かれ、発見したことが公言できなくなるわけではないのだろうと。もしこれがすべて真実だとしても、最高に懐疑的な見方をするなら、どうして本気で信じられよう――未曽有の科学的発見であり、潜在的には史上最強の兵器となりうるものを、アメリカ軍が本当に私利私欲なく世界に広めたりするなどと? 米国科学者連盟の「政府の秘密保持に関するプロジェクト」が説明するように、1951年の発明秘密保持法により、アメリカ政府は長年にわたり、機密情報にかかわる特許出願には秘密保持命令を課すことができている。そのため発明者は特許を登録することもできなければ、自分の発明を公表することもできないのだ。2019年には、そのような秘密保持命令が5878件も施行されており、その発明のほとんどはアメリカ軍が資金援助したもので、多くは民間の発明者に課されている。
<宇宙飛行士と「スペースマン」>
・ミッチェルは生涯を通じて、知的生命体が異次元から、もしくは宇宙のどこかから地球を来訪していることを示す強力な証拠があるという物議をかもす見解を示してきた。
・「なぜいつもUFOを見たことを否定するのかと聞いても、かれはたった一言、反逆罪、と言うだけでした」とスペースマンは言った。「私はそれを、宇宙飛行士はUAP目撃についてしゃべってはならない決まりがあるのだと解釈しました。実際、エドは私にそれ以上、何も言いたがりませんでした」。
・この文書では、デイヴィスがかの悪名高い、本書でも触れた1980年のキャッシュ・ランドラムUFO遭遇事件について言及していた。テキサス州デイトン近郊の道路を車で走っていた二人の女性とその孫が、前方の上空に巨大な菱形のUFOが浮かんでいるのを見たと報告した事件である。
・ミッチェルの署名入りのファックスは、当時、出版間近だったフィリップ・コーソー大佐の著書『ロズウェルの翌日』でなされた物議をかもす主張を支持する目的で送られたものだった。コーソーは、1947年にロズウェルで宇宙船の墜落事故があったのは事実であり、その機体はアメリカ政府によって回収されたのだと主張していた。
<人間の手によるものではない>
・文書によると、トム・ウィルソン中将本人は、異世界の宇宙船をアメリカ政府が回収して隠蔽していることに関する衝撃的な秘密を発見したという、驚くべき告白をしたらしい。ウィルソンはデイヴィスに、回収された地球外起源の乗り物をリバースエンジニアリングしようとする極秘プログラムをアメリカ政府が長いあいだ隠していたことを突きとめたと話したのだという。このとてつもない秘密は、1947年のロズウェル墜落事故以来、回収されたエイリアンの機体とともに、ずっと隠し通されてきた。1997年に会計監査によって作戦全体が露見する寸前までいったので、それ以来、この「プログラム」――と文書で呼ばれているもの――は国防総省の調達・技術担当国防次官室の内部に隠されたそうである。
<ゴードン・ノヴェル――これは真実かフィクションか>
・私がコービッツに手紙を出した背景には、ゴードン・ノヴェルという一風変わった私立探偵で、CIA絡みのスパイのようなこともしていた人物がいる。私はこのゴードン・ノヴェルが語った話を追いかけていたのである。ノヴェル氏は2012年に亡くなっているが、その2年前に書いた一冊の本のなかで、いわゆるARV(複製エイリアン機体)フラックスライナーについて詳述していた。フラックスライナーの話は、現代のUFOの陰謀論の魅惑的な神話の一つである。ノヴェルがこの本で書いているように、マーク・マッキャンドリッシュというプロの航空宇宙イラストレーターが2001年5月にナショナル・プレス・クラブで行われたディスクロージャー・プロジェクトの公聴会で、アメリカ政府が1947年のロズウェル事件の墜落現場から回収した宇宙船をリバースエンジニアリングして、エイリアン機体の複製(ARV)を3機建造することに成功していると証言したという話もある。
<サルヴァトア・パイス博士の不可解な特許>
・バイスがこれらの特許を出願したことには、とんでもない意味がある。これはすなわち、アメリカ海軍が反重力機を開発していたことを公式に宣言したも同然であり、あの空母ニミッツとそのパイロットが西海岸沖でチクタク型のUAPを追跡し、ビデオ撮影したときから12年後の2016年4月に、堂々とその特許を出願したのである。
・この水陸両用の「ハイブリッド機」の特許は2018年に認められ、パイスは翌年1月に、今度は「ハイブリッド航空潜水機に使用される室温超電導システム」という大胆な主張を展開する論文を発表した。
・物理学者たちも、このような数々の信じがたい技術的躍進を果たしたというパイス博士の主張に対しては、深い疑念を表明してきた。素直に言って、もしこれらの特許が実際に使用可能なことが証明されさえすれば、その功績でパイス博士にノーベル賞がたっぷり進呈されるのは疑いない。一説によれば、海軍がこれらの特許を出願した理由は単純に、将来的に起こりうるこれらの画期的な技術革新に対して中国やロシアが権利を主張するのを阻止するためで、アメリカがそれらの技術に特許権使用料を払わなくても済むようにしたがったのだとも言われている。その点、たしかにアメリカの特許法は、特許が認められるものに対して非常にリベラルな基準を掲げている。
・さらに海軍は、パイス博士のあと二つの特許も後押しした。驚くべきことに、室温超伝導体と高エネルギー電磁場発生装置のどちらもがすでに使用可能な状態にあると公言したのである。
・ともあれパイス博士と海軍の弁護士は、まげることなく、高エネルギー電磁場発生装置なるものについても同じく「使用可能」の主張をした。
・これよりおかしなことはもうあるまいと思うその矢先、パイス博士は
またもや別の、同じくSF的な装置の特許を出願した。今度の発明品は、キロワットからメガワット級の入力で、ギガワットからテラワット級の出力を実現できるという「小型核融合炉」だった。
・クックはこう言った。「いまやアメリカ海軍はUFOについて語り、この現象を説明できないことを公式に認めている。これで私もこの問題をあれこれ語っていいことになったわけだ。実際、ずいぶん開放的になっていると思う」
・レスリー・キーンはこう言っていた。「これはおそらく、最も紙面に載せにくい問題です………理由はいくらでも思いつきます。物議をかもすことにもなるでしょうし、これに関する情報が機密扱いになっているということもあります。公にできることが限られているので、そういう問題を報じるのはとくに難しく、その内容がセンセーショナルですから」。
・情報開示のターニングポイントは2020年末にやってきた。
・自分でもとんでもないことを書いているとは思うのだが、自ら取材して集めた情報から判断して、私はいまや強く疑っている。人間の手によって作られたのではないテクノロジーが回収されている――それもアメリカだけでなく、ロシアや中国によっても回収されているのではないかと。思いきって言うが、アメリカはこの衝撃的な事実をどうやって公にするかをずいぶん前から考えてきたのだろう。
<史上最大の秘話……>
・もうみなさんもご存じのように、(いまのところまだ立証されていない)UFO―UAP陰謀論の聖杯は、アメリカ政府の内部、もしくは――もっともらしく否定できるという点でいっそうありがちな――民間航空宇宙産業を隠れ蓑にしたWUSAP(放棄済み非承認特別アクセスプログラム)の内部に闇の勢力が存在していて、これが回収されたエイリアンのテクノロジーを隠匿しており、もう何十年にもわたってひそかにこの驚異的な発見のバックエンジニリングを試みてきたと断言することだ。
そしてこれもまたご存じのとおり、こうした陰謀論に信憑性を与えるようなことをする人は、もう何十年ものあいだ、妙な考えに惑わされてアルミ箔の帽子をかぶっているような間抜けだと思われて、まともに相手にされずにきた。しかし本書を読めばおわかりのように、実際そうしたテクノロジーが回収されていると明言したり、強くほのめかしたりしている内部関係者は多数いる。
・さらに言えば、「彼ら」が(もし存在するとして)どこかよそからやってくると推断する理由はあるのだろうか。別の惑星や別の次元から来た人間ならざる知的生命は、目撃されているものの一部を説明するかもしれないが、私が聞いているところでは、それはこの現象の説明としてはますます可能性の低いものになっている。むしろ思い浮かぶのは、「クリプト・テレストリアル」(隠れた地球人)のような言葉だ。「彼ら」の正体がなんであれ、それはすでにここにいて、ここを離れることもないのかもしれない。
・2023年3月、ほかでもないペンタゴンのUAP調査チームの元責任者、ジェイ・ストラットンが、あるUFO会議において、ユタ州のスキンウォーカー牧場で自らが経験したことをありのままに語った。ストラッ トンは、コルム・A・ケレハー博士とジョージ・ナップの2021年の著書
『ペンタゴンのスキンウォーカーたち――政府の極秘UFO計画の内部関係者が語る』に「アクセルロッド」という仮名で登場する人物だ。ストラットンは自分の目で見た不穏な超常現象をいささかのためらいもなく公言した。会議の場で、映画『プレデター』のキャラクターを連想させる半透明の生き物がスキンウォーカー牧場に停めたトレーラーのすぐそばにいたのを見たと報告したのである。長方形の胸をしたこの生き物のことは、ストラットンとは別に、同僚のトラヴィス・テイラー博士も目撃していたという。さらにストラットンは、牧場に来た初日に、自分の真上を三角形のUAPが浮遊しているのも見たと語っている。
・ケレハーとナップの『ペンタゴンのスキンウォーカーたち』には、バージニア州にあるストラットンの自宅で起こった、さらに不穏なできごとについての言及もある。ユタ州の牧場での現象がなんだったのであれ、それはストラットンを自宅まで追いかけてきたようだ。いわば「ヒッチハイカー効果」の出現である。痛ましいことに、ストラットンの息子が目覚めると、腹部と胸部に複数の赤い打撲傷ができていた。「まるで誰かが少年の体を繰り返し、力ずくで殴ったかのようだった」。息子の証言によれば、寝室で青と赤の球体に襲われたのだそうで、さらに「人間のかたちをした黒い影のようなもの」が叫んでいる声が、頭のなかでテレパシーのように聞こえていたともいう。2009年7月にストラットンが牧場を訪ねて以来、こんなことが12年以上も続いた。ストラットンの妻と十代の子供たちも、みな球体を目撃し、犬人間のような奇妙なものが家の裏庭にひそんでいるのを目撃した。また、家の会談を昇り降りする説明のつかない足音も耳にしていた。
・このように、もはやUAP問題は、人間のものではないかもしれない高度なテクノロジーの問題と見るだけでは済まなくなっているのだと理解しておくことが重要だ。これは私たちを恐ろしい、居心地の悪い、民間伝承や古代史の背景をなす、人間の神話や神話的経験の周縁へといざなう現象についての問題なのだ。
<訳者あとがき>
・ここ数年のこうした動きが起きるまで、アメリカの当局は長いあいだ一貫してUFOに否定的な態度をとってきた。UFOがオカルト扱いされるようになったのも、一つはそれが原因だった。ところがいまや、そのUFOという呼び名を捨てて新たにUAP――未確認空中現象――という呼称を用い、これが国家安全保障上の脅威にあたるかを真剣に検討すると公言している。
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