言葉だけの「党改革」では意味がありません。「殿さま商売」というのは、言い換えればずっと与党であった驕りでしょう。その驕りと決別して、お客さまである国民の目線に立つ。(3)
<「永世中立」を政策とするスイスの民間防衛>
<スイスの「永世中立」政策」>
・スイスの「永世中立」政策は、以下述べるように、民兵制の原則(非専業原則)に基づいた「国民皆兵」制度の下、軍隊と民間防衛、すなわち軍民の力を結集した国防努力によって成り立っている。
<スイス憲法>
<国防及び緊急事態の規定>
・スイスは、憲法第58条第1項に「スイスは軍隊を持つ。基本的には民兵制の原則の下に組織される」と規定している。同第2条に、軍隊の主な任務として、①戦争の防止及び平和の維持、②国土防衛、③国内的安全への重大な脅威が生じた場合及びその他の非常事態の場合における非軍事部門の支援の三つを定めている。
また、同第59条第1項で「すべてのスイス人男性(18歳以上)は、兵役に従事する義務を負う。非軍事的代替役務については、法律でこれを定める」と規定している。
<憲法の枠を超える緊急事態に対する措置>
・過去、2度の世界大戦の際、1914年と1939年に、いわゆる「全権委任決議」により、連邦議会は、連邦参事会に無制限の全権を委任し、憲法秩序の一部の変更を認めた。
<民間防衛>
<スイス憲法の「民間防衛」に関する規定>
・スイス憲法では、第3編「連邦、州及び市町村」第2章「権限」第2節「安全、国防、民間防衛」の第61条(民間防衛)において、以下の通り、民間防衛について定めている。
• 武力紛争の影響に対する人及び財産の民間防衛についての立法は、連邦の権限事項である。
• 連邦は、大災害及び緊急事態における民間防衛の出動について法令を制定する。
• 連邦は、男性について民間防衛役務が義務的である旨を宣言することができる。女性については、当該役務は、任意である。
• 連邦は、所得の損失に対する適正な補償について法令を制定する。
• 民間防衛役務に従事した際に健康被害を被った者又は生命を失った者は、本人又は親族について、連邦による適正な扶助を要求する権利を有する。
<シェルター(避難所・設備)の整備>
・スイスでは、国民の95%を収容できるシェルターが整備済みであり、旧型のシェルターを含めると100%程度に達する。
また、一戸建ての家を建てる場合は、地下に核シェルターを設置することを義務付けている。
<「民間防衛」から「市民保護」へ>
<背景・経緯>
・欧州を主戦場とした東西冷戦が終結し、欧州を中心に、民間防衛の課題が武力紛争対処から災害対処へと重点を移行した。従来の民間防衛は、全国民にシェルターを用意するなど市民保護の概念が強調されるようになった。
<市民保護組織(民間防衛隊)>
・緊急事態に際し、警察、消防、公共医療サービス、技術サービスと協力して住民のシェルターへの避難誘導、救助等を実施する。
・市民保護組織(民間防衛隊)は、民兵制の原則(非専業原則)に基づいた「国民皆兵」制度の下に作られている。
スイス人男性は、18~30歳まで兵役義務があり、兵役義務を終えた男性は40歳まで民間防衛に従事する。40歳以降は各人の自由意志となっている。
<スイス政府編『民間防衛』に見る民間防衛の精神>
・東西冷戦時代に作られたスイスの政府編『民間防衛』は、冷戦終了とともに廃刊となっているが、その精神は、CPS(市民保護システム)の中に脈々と受け継がれている。
<スイスの民間防衛体制が示唆する日本への主な参考事項>
・スイスの場合は、永世中立国としての国家政策の下、国防や民間防衛の努力がなされており、日米安全保障体制下で安全保障を構築している日本とは大きく異なる。よって、直接的に教訓にはなりにくいものの、民主主義国家としての国防の在り方には大いに参考にすべきことがある。
・スイスの「永世中立」政策は、民兵制の原則(非専業原則)に基づいた「国民皆兵」制度の下、軍隊と民間防衛、すなわち軍民の国防勢力いかんによって成り立っている。
スイスの安全保障は、軍民の国防努力いかんによって左右されるとの考えが、「民間防衛」の冒頭に記述されている。軍が国防の責任をもっているのに加えて、民間人及び民間団体組織にも国防努力の必要性が認識されているのである。
・また、スイスは、国民のほぼ100%を収容できるシェルターを整備済みである。
わが国も、大規模災害や武力攻撃事態などの場合には、国民を安全な場所に避難誘導することは避けて通れない最重要課題であり、核攻撃にも耐えうる避難所と必要な設備の整備を義務化することは喫緊の課題である。憲法改正には主権者である国民の認識が進むことが必要であり、それには時間がかかることが予測される。
<マルチドメイン作戦を前提とした民間防衛のあり方>
<マルチドメイン作戦とは>
・現代における戦いは、新たな領域(ドメイン)に拡大した「マルチドメイン作戦」として戦われることが明確である。そして、領域の拡大が平時と有事の区別を一層曖昧なものとし、いわゆるグレーゾーンでの戦いが常態化してきている。
<「グレーゾーンの事態」と「ハイブリッド戦」>
・いわゆる「グレーゾーンの事態」とは、純然たる平時でも有事でもない幅広い状況を端的に表現したものです。
・いわゆる「ハイブリッド戦」は、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法であり、このような手法は、相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いることになります。
・これからの我が国のあるべき民間防衛という概念では、平時からグレーゾーン事態そして有事を通じて展開されるマルチドメイン作戦によって引き起こされるであろう脅威から防衛することも視野に入れるべきである。
<中国・ロシアによるマルチドメイン作戦型の脅威>
<中国のマルチドメイン作戦>
・中国では、日米などが新たな戦いの形として追求しているマルチドメイン作戦という言葉は使用せず、それに相当する概念を「情報化戦争」と呼んでいる。
・そして、「情報戦で敗北することは、戦いに負けることになる」として、情報を生命線と考えるのが中国の情報化戦争の概念であり、そのため、電磁波スぺクトラム領域、サイバー空間及び宇宙空間を特に重視して情報優越の確立を目指すとしている。
<ロシアのマルチドメイン作戦>
・ロシアは、自らはマルチドメイン作戦あるいはハイブリッド戦という言葉は使用していないが、2014年にプーチン大統領が承認した「ロシア連邦軍事ドクトリン」の概念、いわゆる西側諸国の考えるマルチドメイン作戦及びハイブリッド戦に該当する。
・改めてロシアを見ると、実際に国家に対する破壊妨害を目的とした初めてのサイバー攻撃は、ロシアがエストニアに対して行ったものである。
・ロシアは、2014年、ウクライナのロシア離れを契機にクリミア半島併合と東部ウクライナへの軍事介入を敢行した。
・ウクライナに対するロシアのサイバー攻撃は、紛争の初期段階では、情報の窃取あるいは政府や軍のC4I系統の混乱等を目的としたサイバー戦が主であり、一般国民の目に触れる攻撃は見られなかった。
<中国・ロシアのマルチドメイン作戦による脅威>
・これまで、中国やロシアのマルチドメイン作戦について述べてきたが、両国が日本や日本人に対していかなる工作活動を行っているか、そしていかなる組織を日本に置いているのかについては、ほとんどの日本人は認識していないのではないだろうか。
・なお、北朝鮮については特段説明しなかったが、北朝鮮もサイバー部隊を集中的に増強し、サイバー攻撃を用いた金銭窃取のほか、軍事機密情報の窃取や他国の重要インフラへの攻撃能力の開発を行っているとみられており、中国やロシアと同様に警戒を厳重にすることが必要である。
<宇宙・電磁波空間における脅威――新たな脅威としての高高度電磁パルス(HEMP)攻撃>
<北朝鮮が使用をほのめかすHEMP攻撃>
・高高度電磁パルス攻撃とは、高高度での核爆発によって生ずる電磁パルス(EMP)による電気・電子システムの損壊・破壊効果を利用するものであり、人員の殺傷や建造物の損壊等を伴わずに社会インフラを破壊する核攻撃の一形態である。
<予想されるHEMP攻撃の効果・影響>
・HEMP攻撃は、これまで考えられてきた核爆発による熱線、爆風及び放射線による被害範囲を遥かに超える広大な地域の電気・電子機器システムを瞬時に破壊し、それらを利用した社会インフラの機能を長期間にわたり麻痺・停止させ、社会を大混乱に陥れる。
・いずれにしても、万一、HEMP攻撃があれば、国家としての機能が麻痺する可能性が極めて高く、国民一人一人がこのような脅威の存在を認識し、自ら避難し、避難生活等では自助及び共助によって命を守る行動をとらなければならない。
<マルチドメイン作戦を前提とした民間防衛のあり方>
・こうしたグレーゾーン事態は、明確な兆候のないまま推移し、被害発生時点では一挙に重大事態へと発展するような重大なリスクをはらんでいる。
<有事対応型の法律からグレーゾーン段階で対応しうる法律体系へ>
・こうしたニーズに応えるには、現行国民保護法では対応が困難であると言わざるを得ない。マルチドメイン作戦による脅威に対応しうる組織編成を盛り込んだ法律を制定するか、現行の「国民保護法」を全面的に改定するべきである。
<国民に精神的な安心感を付与できる体制構築>
・つまり、今後は、マルチドメイン作戦により国民がパニック状態に陥った状況、もしくはパニック状態に陥ることが予測される状況を想定し実効性のある対処法を確立しなければならないのである。
<国を挙げた対応ができる組織体制の整備>
・しかし、各省庁の縦割り行政では、効果的・実効的な対応は期待できないので、その弊害をなくし、政府が総合一体的な取組みを行えるよう、行政府内に非常事態対処の非軍事部門を総括する機関を新たに創設することが望まれる。
・このように、国家非常事態における国家防衛や国民保護、そして重要インフラ維持の国土政策、産業政策なども含めた総合的な対策を、いわば「国家百年の大計」の国づくりとして、更には千年の時をも見据えながら行っていくことが、わが国の歴史的課題である。
<都道府県知事直属の民間防衛組織創設>
<民間防衛組織創設の必要性>
・こうした国土防衛事態における住民避難は、強制力を伴わないために緊急性に欠け、統一的行動を取れないという致命的な欠陥を露呈する恐れがあり、早晩、国民保護法の改正も必要となろう。
<自衛隊の役割再考と都道府県知事直属の民間防衛組織創設>
・前述の通り、国民保護法は総務省所管(実際は消防庁)であり、敵部隊対処のための自衛隊運用は防衛省である。
・特に陸上自衛隊は、災害派遣等で培ってきた地方公共団体との連携や住民との信頼関係から、何が何でも国民保護に万全を尽したいとの思いがあるのは間違いない。
・民間防衛の研究については、日本でも過去にその検討がなされたことがある。それは、予備役の在り方を通じた検討であり、この研究は民間防衛を研究するにあたり極めて重要な先例となるだろう。
<戦後の予備役制度と民間防衛組織としての郷土防衛隊創設の検討>
<検討の経緯>
・わが国において、正規兵力を補完する予備兵力や郷土防衛隊等の民間防衛組織の必要性が問題提起されたのは、1953年8月に駐留米軍が「戦闘警護隊」の創設を勧告した吉田内閣時代にさかのぼる。
・昭和28年、吉田内閣の木村保安庁長官は、「民間防衛組織」建設の必要性について言及した。
・昭和29年8月、防衛庁長官は砂田重政氏に交替し、同長官は郷土防衛隊構想を積極的に推進した。「国民総動員による国民全体の力によってのみ防衛は成り立つ」と述べ、予備自衛官制度と並ぶ自衛隊の後方支援と郷土防衛を担う組織としての郷土防衛隊構想を掲げ、地域社会の青年壮年を対象にこれを組織する必要性を説いた。同時に、予備幹部自衛官制度の検討を指示した。
・他方、郷土防衛隊について、砂田防衛庁長官は昭和30年9月、「自衛隊の除隊者ではなく、消防団や青年団をベースとした民兵制度を考えている」と述べた。
・同年10月、防衛庁は、郷土防衛を目的とし、非常の際、自衛隊と協力して防衛の任に当たる「郷土防衛隊設置大要」を決定した。
・また、同じころ、「屯田兵」構想が持ち上がり、昭和31年度予算で正式に予算化された。自衛隊退職者を北海道防衛のための予備兵力として有効活用しようとするもので、1人10町の耕地を与えて入植させる計画であった。しかし、応募者が少なく立ち消えになった。背景には、戦後の経済復興が軌道に乗り、国民所得も戦前の最盛期であった1939年の水準に回復し、屯田兵の魅力が高まらなかったことが挙げられる。
・自民党内部でも再検討を要求する声が強くなったが、旧自由党系は時期尚早として郷土防衛隊構想に消極的であったこともあり、郷土防衛隊設置大要は、事実上白紙還元された。
・わが国防衛力の一大欠陥は、第一線防衛部隊並びに装備に次ぐ背景の予備隊またはその施設の少ないことである。予備自衛官3万人は余りにも少ない。
・この点について、「百万人郷土防衛隊」を整備すれば、相当な自衛隊の増強に匹敵し、自衛隊が郷土の防衛問題に後ろ髪をひかれることなく正規部隊をフルに前線で使用できる体制が整備できると強調している。
<自衛隊の予備自衛官(予備役)制度の現況>
・戦後、わが国は、警察予備隊発足当初から、終始一貫して志願制を採用してきた。その基本政策の枠組みの中で、わが国の予備役制度は、1954年の自衛隊発足と同時に予備自衛官制度として創設された。
<陸上自衛隊のコア部隊>
・陸上自衛隊の組織の一つで、平時の充足率を定員の20%程度に抑えた、部隊の中核要員によって構成された部隊のこと。
第3章<政策提言 民間防衛組織の創設とそれに伴う新たな体制の整備>
<国、自衛隊、地方自治体および国民の一体化と民間防衛体制の構築>
<国の行政機関>
・国家防衛は、軍事と非軍事両部門をもって構成されるが、その軍事部門を防衛省・自衛隊が所掌することは自明である。他方、非軍事部門については、民間防衛(国民保護)を所掌する責任官庁不在の問題があり、その解決と縦割り行政の弊害をなくすために、行政府内に国家非常事態対処の非軍事部門を統括する機関を新たに創設することが望ましい。
<自衛隊>
・「必要最小限度の防衛力」として整備されている自衛隊は、武力攻撃事態等において、現役自衛官の全力をもって第一線に出動し、主要任務である武力攻撃等の阻止・排除の任務に従事する。
<地方自治体>
・各都道府県には、国の統括機関に連接して「地方保全局」を設置し、その下に民間防衛組織としての「民間防衛隊」を置く。
市区町村には、「地方保全局」に連接して同様の部局を置くものとする。
<国民>
・国民は、それぞれ「自助」自立を基本とし、警報や避難誘導の指示に従うとともに、近傍で発生する火災の消火、負傷者の搬送、被災者の救助など「共助」の共同責任を果たす。また、地方自治体の創設・運用される「公助」としての民間防衛隊へ自主的積極的に参加するものとする。
以上をもって、国、自衛隊、地方自治体および全国民が参画する統合一体的な国家非常事態対処の体制を構築する。
その際、わが国の国土強靭化に資するため、国・地方自治体あるいは地域社会において、危機管理に専門的機能を有する退職自衛官の有効活用が大いに推奨されるところである。
また、各地方自治体と自衛隊の連携・協力関係の一層の強化が求められており、そのための制度や仕組みを整備することが必要である。
<自衛隊(陸上自衛隊)の後方地域警備等のあり方>
・自衛隊の後方地域警備のあり方については「陸上自衛隊の警備区域に関する訓令・達」の規定を前提として検討する。
陸上自衛隊の師団長が担任する「警備地区」に、予備自衛官をもって編成され、専ら後方地域の警備等の任務に従事する「地区警備隊」を創設し、配置する。
「地区警備隊」の下に、各都道府県の警備を担任する「警備隊区」ごとに、「隊区警備隊」を置く。
<民間防衛隊の創設>
<編成と任務>
・民間防衛隊は、各都道府県知事の下に創設することとし、退職自衛官、消防団員など危機管理専門職の要員を基幹に、大学等の学生や一般国民からの志願者の参加を得て編成する。
<民間防衛隊の創設に必要な人的可能性>
<一般国民からの公募の可能性>
・「自衛隊に参加して戦う」【5.9%、人口換算約748万人】という最も積極的な回答を除くとしても、「何らかの方法で自衛隊を支援する」54.6%、「ゲリラ的な抵抗をする」1.9%、「武力によらない抵抗をする」19.6%を合計すると76.1%となり、人口に換算すると約9642万人の国民が、いわゆる武力攻撃事態に、国・自衛隊とともに何らかの協力的行動を起こす意志を表明している。
<民間防衛隊を保護する予備自衛官制度の創設>
<民間防衛隊と自衛隊の部隊・隊員の配置・配属>
・2022年2月24日早朝、ロシアはウクライナへの武力侵攻を開始した。国際法では、軍事目標主義の基本原則を確認し、文民に対する攻撃の禁止、無差別攻撃の禁止、民用物の攻撃の禁止等に関し詳細に規定している。ましてや、病者、難船者、医療組織、医療用輸送手段等の保護は厳重に守らなければならないことを謳っている。
しかし、ウクライナに武力侵攻しているロシア軍は、文民に対する攻撃や民間施設・病院等への攻撃など、いわゆる無差別攻撃を行い、国際法を安易に踏みにじって戦争の悲劇的な現実を見せつけた。
このような事態を想定して、国際法は、民間人およびそれを保護する非武装の民間防衛組織の活動を守るため、自衛のために軽量の個人用武器のみを装備した軍隊の構成員の配置・配属を認めている。
・民間防衛隊は、都道府県知事の指導監督を受けるものとし、必要に応じて各市町村に分派される。
各都道府県知事は、「地方保全局」相互の調整を通じて、民間防衛隊が、各都道府県および各市町村において広域協力が行える体制を整備する。
<「民間防衛予備自衛官」の新設と予備役の区分>
・しかし、現行の制度においては、特に、後方地域の警備に充当できる予備自衛官は、ほぼ皆無に等しい。全国の後方地域の警備を行うには、大人数の予備自衛官が必要であり、その勢力の確保が不可欠である。
さらに、現行の制度に加え、国家非常事態に際して、民間防衛隊に配置・配属し、文民保護の人道任務に従事させるために「民間防衛予備自衛官」が新たに必要であり、併せてその勢力を確保しなければならない。
<おわりに>
・米国は、各州および国民の力を結集し社会全体で国を守ろうとする「共同防衛」の強い決意を表明しています。銃の保有権は、建国の歴史である民兵(自警団)の象徴なのです。
韓国は、外敵の浸透・挑発やその脅威に対して、国家防衛の諸組織を統合・運用するための「統合防衛」体制を重視し、中でも郷土予備軍や民防衛隊が大きな役割を果たしています。
台湾は、現代の国防は国全体の国防であり、国家の安全を守るには、全民の力を尽くして国家の安全を守るという目標を達成するため「全民国防」体制を敷いています。
スイスは、「永世中立」政策を国是とし、安全保障は軍民の国防努力いかんによって左右されるとの方針のもと、民間防衛はその両輪の片方となっており、そのため、かつてのスイス政府編『民間防衛』は、次のように国民に問いかけています。
・今日では戦争は全国民と関わりがある。
・軍は、背後の国民の士気がぐらついていては頑張ることができない。
・戦争では、精神や心がくじければ、腕力があっても何の役にも立たない。
・わが祖国は、わが国民が、肉体的にも、知的にも、道徳的にも、充分に愛情を注いで奉仕するだけの価値がある。
・すべての国民は、外国の暴力行為に対して、抵抗する権利を有している。
・中国の覇権的拡大や北朝鮮の核ミサイル開発によって、戦後最大の国難に直面している日本にとって、今ほど真の「民間防衛」が求められている時代はありません。真の「民間防衛」が整備されれば、国土防衛に直接寄与することになり、同時に周辺国に対する抑止力にもなりうるのです。
・実際、欧州に目を転じてみれば、2022年2月以降のロシア軍の侵攻により、ウクライナ国民がロシア軍によって虐殺とも言えるような被害が大規模に行われている現実をみて、我々はその教訓をただちに活かさなければなりません。
<●●インターネット情報から●●>
Hanadaプラスより引用(抜粋)
2021/10/24
徹底検証!習近平の「台湾侵攻」は本当に可能なのか? |澁谷司
今年(2022年)2月24日、ロシアがウクライナへ侵攻した。それ以来、盛んに、台湾海峡危機とウクライナ危機が同列に語られている。本当に中国は「台湾侵攻」を決行するのか、徹底検証する。
<台湾とウクライナの相違>
台湾とウクライナには、いくつもの相違が存在する。したがって、中国の台湾侵攻とロシアのウクライナ侵攻を別モノと考えた方が良いのではないだろうか。
第1に、台湾に関しては、後述するように、米国内法である「台湾関係法」が存在する。ウクライナには、そのような法律は存在しない。
第2に、すでに台湾には米軍が駐屯している。ウクライナには米軍やNATO軍は駐屯していない。
第3に、台湾と中国の間は、台湾海峡で隔てられている。だが、ウクライナとロシアは地続きである。したがって、ロシアはウクライナを攻撃しやすい。
第4に、中国にとって台湾は必ずしも安全保障上のバッファーゾーン(緩衝国)ではない。他方、ロシアにとって、ウクライナ(とベラルーシ)は、対NATOとの安全保障上の死活的バッファーゾーンを形成している。
<「中台戦争」は即座に「米中戦争」になる>
中国の「台湾侵攻」は、即、「米中戦争」となるのは間違いない(ここでは「米中核戦争」については、両国が“共倒れ”になるので捨象する)。また、中国による「台湾海峡封鎖」も、やはり「米中戦争」となるだろう。なぜなら、基本的に、台湾は米国の「準州」と同じ “ステイタス”(地位)だからである。
<台湾に米軍を駐在>
2018年6月、台北市の米国在台協会(AIT)の新庁舎が落成した。総工費は2億5500万ドル(約280億円)である。その建設には、台湾人は一切関わらず、秘密裡に完成した。新庁舎には、すでに在台米軍が駐屯しているが、最大4000人が駐留可能だと言われる。
<米国が台湾を特別視する理由>
なぜ、米国はそれほどまでに台湾を特別視しているのか。
まず、第1に、台湾の地政学的重要性にあるだろう。台湾は「第1列島線」(日本・沖縄・台湾・フィリピン・ボルネオ島を結ぶライン)の要所に位置する。同列島線は米国にとって中国「封じ込め」の重要なラインである。
第2に、台湾は半導体の重要生産基地である。
とりわけ、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)はナノ・テクノロジーで世界トップ企業となった。同社は5ナノメートルの半導体を供給している。近くTSMC は3ナノメートルの半導体を製造するという。同社は、今後しばらくトップを走り続けるだろう。
第3に、台湾は米国の重要な武器輸出国の一つである。
第4に、台湾は李登輝政権下で、蔣経國の権威主義体制から、民主主義体制へと変貌を遂げた。同国は米国の期待通りの理想的な国家となったのである。
<台湾のハリネズミ戦略>
近年、中国側が圧倒的な軍事的優位を確立している。そこで、台湾は非対称戦略であるハリネズミ戦略を採る。
イスラエルの防空システムは世界1の密集度を誇っている。台湾は防空システムでは、イスラエルに次ぎ、世界第2位の密集度だという。現在、台湾は、米国から購入した迎撃ミサイルシステムPAC3を72基設置している。
ところで、昨年11月、台湾・嘉義空港では約40機で構成されるF‐16V戦闘機部隊の発足式が行われた(その他、台湾軍はF‐16A/B、仏製ミラージュ2000、経国号<IDF>等、合計約280機を保有)。
他方、我が国の航空自衛隊は、戦闘機349機を保有する。とすれば、国土の狭い台湾が日本とほぼ同数の戦闘機を保有していることになるだろう。
<台湾人の高い祖国防衛意識>
「台湾が『独立宣言』したが故に、中国が台湾侵攻した場合、台湾防衛のために戦うか」という設問では、「戦う」と回答した人は62.7%で、「戦わない」と回答した人は26.7%だった(「無回答」は10.6%)。
次に、「もし中国が台湾を統一する際に武力を使用したら、台湾防衛のために戦うか」である。「戦う」と答えた人が72.5%、「戦わない」という人は18.6%にとどまった(「無回答」は9.0%)。
結局、「中国が武力統一のため台湾へ侵攻する場合、与党・民進党支持者のうち90%が、野党・国民党支持者のうち過半数が『戦う』という考えを持つ」という。
この結果を見る限り、中国の「台湾侵攻」がそう簡単ではないことがわかるのではないだろうか。
<米海軍少将マハンの金言>
米海軍少将だったアルフレッド・マハン(1840年~1914年)は戦略研究家として名を馳せている。特に、マハンは「いかなる国も『海洋国家』と『大陸国家』を兼ねることはできない」と喝破した。
実際、世界の大国が「海洋国家」は陸で苦戦し、「大陸国家」は海で苦戦している。その失敗例を挙げてみよう。
【失敗例1】第1次世界大戦と第2次世界大戦で、「大陸国家」ドイツはUボート(潜水艦)でイギリス等に対抗したが、どちらも敗北した。
【失敗例2】第2次大戦前、「海洋国家」日本は中国大陸へ“進出”したが、結局、敗戦に至る。帝国陸軍は強かったが、やはり限界があった。
【失敗例3】第2次大戦後、「海洋国家」米国は朝鮮戦争で勝利を収めることができず、またベトナム戦争でも敗れている。
【失敗例4】「大陸国家」旧ソ連は、原子力潜水艦を製造して米国に対抗した。しかし、最終的に、ソ連邦という国家自体が崩壊している。
【失敗例5】21世紀初頭、「海洋国家」米国がアフガニスタンへ派兵したが、20年後の今年、アフガンから撤退せざるを得なかった。
近年、「大陸国家」中国が、空母を建造し「海洋国家」米国の覇権に挑戦している。けれども、その試みは、果たして成功するだろうか。大きな疑問符が付く。
おそらく、マハンの金言には、経済的側面も含まれているのではないか。つまり、膨大なコストがかかる。したがって、どんな大国でも優れた海軍・陸軍を同時に持つのは極めて困難なのかもしれない。
<八方塞がりの中国経済>
2012年秋、習近平政権が誕生して以来、中国経済はほぼ右肩下がりである。
なぜ、中国は経済が停滞しているか。その主な原因は3つある。
第1に、「混合所有制改革」が導入されたからである。ゾンビ、またはゾンビまがいの国有企業を生き延びさせるため、活きの良い民間企業とそれらの国有企業を合併している。これでは、大部分の民間企業が“ゾンビ化”して行くに違いない。
また、これでは「国退民進」(国有経済の縮小と民有経済の増強)ではなく、真逆の「国進民退」(国有経済の増強と民有経済の縮小)という現象が起きる。習近平政権は、中国経済を発展させた鄧小平路線の「改革・開放」を完全否定したのである。
第2に、「第2の文化大革命」が発動されたからである。政治思想(「習近平思想」)が優先され、自由な経済活動が阻害されている。これでは、成長は見込めないだろう。
第3に、「戦狼外交」(対外強硬路線)が展開され、中国は国際社会で多くの敵を作ったからである。そのため、経済的にも八方塞がりの状態となった。
例えば、昨年来、習政権がオーストラリアに対して強硬姿勢を取り、豪州産石炭の禁輸措置を行った。そこで、現在、中国は電力不足に悩まされている。加えて、習近平政権が推し進める「一帯一路」構想は「コロナ禍」で行き詰まった。貸付先の「債務国」の借金が中国へ戻って来ない。中国が借金のカタに相手国の湾岸等を租借しても、すぐに利益は産まない。
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