日本が長期デフレに陥った諸悪の根源は、日本人の努力不足などではなく、過去の政府や日銀の経済政策の失敗です。(4)
<完全雇用というのは、国によって違いはありますが、大体、完全失業率で2.5%以下です。完全雇用を達成していれば、物価上昇率が1%でも問題はなかったのです>
数字まで入れて説明しているわけ。完全失業率を2.5%以下にするためにインフレ率が2%必要だと、安倍さんは回顧録にはっきり書いているんですよ。素晴らしい回答です。私が大学の教授として採点すると満点です。
・インフレターゲットっていうと物価の話のように思えるけれど、本当は雇用がポイントなんだよね。雇用を重視するのかそれ以外を重視するのかっていうので真面目に議論すると、経済学者でも時々、「雇用以外を重視する」って人がけっこういるんだよね。
<実は日本は黒字! 国債の仕組みを解説します>
――日銀が国債を買い取れば政府の借金は消えるということですが、これはどういうことでしょうかという質問がきています。
・どういうことかと言うと、政府が借金するということは国債を発行するということです。ということは国債を買って持っている人に必ず利息を払わなきゃいけない。これは間違いない。普通の借金と同じです。だけで、国債を持っているのが日本銀行だったらどうなるかって話だよ。
もちろん、日本銀行にだって政府は利息を払う。政府から国債をどうやって買うかっていうと、お札を刷って、その刷ったお札で国債を買う。お札は無料で刷れるから、日本銀行の収益はどのように発生するかっていうと、国債の利子がまるまる日本銀行の収益になる。ここまではいいよね。ところで、日本銀行は政府の子会社だから、日本銀行の収益は100%政府に収めることになっている。これを日銀納付金というんだ。
・だから日本銀行に政府はどれだけ利払いしてもぜんぶ納付金で回収できるから、その意味では日本銀行が持っている国債については全く利払いする必要がない。
――では国は借金漬けだという巷説は誤りですか。
・日本銀行からの“借金”がいくらかを言わないで、全体として「1000兆円の借金がある」という言い方をするから、大変な借金を背負っているように聞こえるけれど、1000兆円のうち日本銀行の持ち分が500兆円あるんです。
――それでもまだ500兆円ある。大変な額だという人もいるのでは。
・500兆円を民間に借金しているのは事実だけれど、一方で政府は、実は600兆円以上の金融資産を持っているんです。
――実は日本政府は黒字経営なんですか?
・ものすごい黒字というわけでもないけど、トントンって感じかな。
――国債を日本銀行が引き受け続けると、日銀が保有する割合が増え続け、いずれ日本国債市場が消滅してしまうと思います。すると国際的な信用がなくなって円や日本株式が暴落してしまうのではないでしょうか……こんな質問もきています。
・日本銀行がどんどん国債を買い増していくと、最後は1000兆円になる。そうなったら実は財政問題はなくなっちゃう。だって、いくら利息を払ったってぜんぶ戻ってくるんだから、財政再建なんてする必要がなくなるぞって。それは理論的にあり得ることなんですよ。
――国際的な信用がなくなるという問題は?
・財政問題がなくなるんだから、逆に国際的信用は高まりますよ。国債市場がなくなるということは事実ですけどね。
――円とか株式の暴落はあり得ない?
・だって、財政再建しないと円が暴落するっていうのと真逆の話じゃない。日銀が国債を買い続けて財政再建しちゃったら、どうして暴落するんだってことですよ。
――これはものすごくぶっ飛んだ意見なんですけど、国債の発行を際限なく増やして税金を減らせば実質的に無税国家になるみたいなことって理論的に可能なんですか。
・国債の発行による無税国家論というのは、頭の中では可能かもしれないけど、実際に計算してみると、税金の分だけ国債を発行するとものすごくインフレ率が高くなる。だからそういうおいしい話は実はほぼ起こり得ないですね。
――インフレギリギリのところで、国債によって無税に近くなるくらい税金を減らすことは不可能ですか。
・できないでしょうね。これは物価の状況に依存するんだけど、今回のコロナみたいな時には消費がドーンと落ち込むでしょ。そういう時には物価が下がるからできるけど、ノーマルな状況になったらなかなかできない。インフレ率が2%じゃなくて8%とか10%になるから。
――耐えられるインフレ率って10%くらいですか?
・10%は無理。せいぜい耐えられるのは4%ぐらいまでだと一般的に言われていますね。だから案外そういうオイシイ話っていうのは実はほとんど不可能なんです。残念だけどね。
<アベノミクス潰えて失われた20年がやってくる>
――高橋さんがツイッターに書かれていた、アベノミクスが潰えて失われた20年が再来する、というのは本当なんですか。
・本当になったらまずいなとは思っているんだけど、岸田さんは反アベノミクスの人だからね。可能性はなきにしもあらずですよ。
・失業率とインフレ率の間にはある一定の関係がある。それを表すのがフィリップス曲線です。失業率が高い時にはインフレ率が低くなる。そういう関係がこの線に表れるんですよ。
失業率はあるところで下がらなくなります。日本だと失業率2.5%くらいのところなんだけどね。そこに対応するインフレ率はだいたい2%くらい。
・ではインフレ率をどうやって測るかということだけど、GDPデフレーター(GDP算出時に物価変動の影響を取り除くために用いられる指数)で測るのが普通なんだ。GDOデフレーターで測ってインフレ率が2%を長く超えるようになると本当のインフレだから、こういう時には増税も許される。フィリップス曲線の「増税可」のあたりですね。ただしGDPデフレーターが2%をずっと超えない時は、もうちょっと金融緩和すると失業率が下がるから今は「増税不可」だって、安倍さんにもそういう説明をしていたわけ。
インフレ率の話をすると、みんなすぐ消費者物価が上がっているというけれど、GDPデフレーターで見ると現在は増税不可のところにあるんです。
――まだそのあたりなんですか。
・だってGDPデフレーターがマイナスなんだもの。増税したい人たちは自分たちに都合よく消費者物価でやるんだけど、GDPデフレーターで見るとマイナスだから、インフレ目標2%より右にいっているとは思えませんよ。インフレ目標を定めてやっている時に消費者物価を便宜的に使ってやっているんだけど、理論を言えばGDPデフレーターだから、そういう意味では私の認識はまだ増税不可の状況です。
・だから私が今の状況を説明するとすれば、「見かけ上はインフレ目標を達成したように見えるけれどデフレーターで見ると達成していませんから、こういう時には積極財政と金融緩和が必要ですよ」ということになる。緊縮財政と金融引き締めをすると、グラフの矢印が左に動くけれど、積極財政と金融緩和をすると右に動くんです。そうしてフィリップ曲線上の〇印を目指すのがアベノミクスです。
だから、アベノミクスって実はすごく簡単なんですよ。どこに現状があるかを判断して、この〇印を目指すだけ。簡単でしょ。これが本当の経済です。安倍さんはこの仕組みを完璧に理解していたから、安倍さんが御存命だったらおそらく日銀に利上げはさせなかったと思いますよ。
・安倍政権はインフレ率2%まで完全に行かなかったから失敗だと言う人が多いけれど、安倍政権以外、2000年代以降の政権はどれもインフレ率がマイナスばかりだから、安倍政権は2000年代以降ではトップの成績なんだよ。
――このいちばん右にある「鳩山政権」はあの民主党の鳩山由紀夫内閣とは別の政権ですか。
・これは1955年の鳩山一郎政権。自民党の初代総裁で、鳩山由紀夫さんの祖父です。この時は高度成長期だったから、放っておいても右側にいく。
・もう一つ、図表6で歴代政権の雇用状況を見てみましょう。
横軸に失業率の低下をとって、縦軸で就業者数がどれだけ増えたかを見るわけ。これは右上のほうがいいに決まっているけど、安倍政権は歴代政権の中でトップ、それも断トツなんですよ。こういうデータを見て評価しなきゃいけませんね。
・マクロ経済についての私の採点基準も簡単で、まず雇用のウェイトが6割。なぜかというと、雇用さえ確保できればまあ及第点と言えると思う。残りの4割は給料上がったかどうか。それはGDPで見ればいい。だからGDPの成績が4割。安倍政権は雇用が断トツだから、これは100点満点で60点をあげてもいい。成長率のほうは、2000年代以降はトップなんだけど、歴代政権をぜんぶ含めて考えるとだいたい真ん中あたりだから、GDPは50点。それが4割だから20点。60点と20点を足して80点。安倍政権にはそういう成績をつけています。
――まずまずのいい成績ですね
・まずまずですね。ABCDでいうとBくらいかな。
・そういうふうに見ていくと、今の岸田政権の防衛増税と利上げの話はいちばん最初に出したインフレ率と失業率のグラフの矢印が左側に向いている。これはまずいですね。
――だから失われた20年の再来ということですね。
・〇印のターゲットにいっていないのに増税なんかすると、もう一回、あの時代がくるかもしれない。安倍政権と菅政権は、どんな状況にあってもアベノミクスでいつも〇印を目指してやっていた。だから、安倍政権も菅政権も増税はしなかったんです。消費税は前の民主党政権で決めたことだからしかたがないけれど、ほかは基本的にやらなかった。利上げもしませんでした。
<ようやく30年前に戻れたのに、円安の何が悪い?>
――昨年(2022年)秋以降、1ドルが150円になって、マスコミは円安の危機感を煽って大騒ぎしました。この状況をどうとらえればいいでしょうか。
とくに日経新聞ね。円安だ、大変だ、大変だって騒いでいた。面白いね。
日経新聞がなぜこういうスタンスにあるかを先に言っておくとね、日経は今まで日本企業の中国進出をすごく後押ししてきたわけ。そのためには、実は円高のほうが都合がいいんだよね。少ないお金で大きな投資ができるから。ところが、円安が進むと中国進出もままならない。それに加えて、中国の経済成長も鈍化しているし、ウイグルをはじめとする人権問題も露わになってきた。かといって、今まで中国進出を勧めてきた手前、いまさら日本に戻るべきだとも言いにくいし、そもそも中国は資本規制が厳しいから、撤退するのが難しいんだよ。下手をすれば撤退と引き換えにこれまでの工場からインフラからすべて取り上げられてしまう。そんな中国をずっと推してきたわけだから、円安が悪い悪いって言わざるを得ないんだ。
・日経新聞の事情はさておいて、経済学の話をすると、自国通貨安は「近隣窮乏化政策」と言われるんです。日本の円安に限らず、どこの国もみんなそうだけど、自国通貨安というのは自国の輸出関連を優遇して、外国からの輸入関連にペナルティを与えることになる。輸出関連企業のほうが自国のエクセレントカンパニーが多いでしょ。だからそこに恩典を与えたほうがGDPは増えます。これは輸出依存度とかに関係なく、どこの国でもだいたい同じ。だから近隣窮乏化と言われるんですよ、
・日本の場合で言うと、10%の円安で成長率を0.5~1%ぐらい引き上げているから、例えば今のIMFの世界見通しでも日本だけ成長率が高いんだよね。これは円安だからですよ。
・円安は、だから本当はすごくいいことなんだよね。それなのに円安をけなしたい人はどういうふうに言うかっていうと、現在の為替レートでやると日本のGDPが世界の30位、40位になっちゃうと、そういう言い方をするわけですね。
・その話を解説する前にね、32年ぶりの円安だと騒がれているので、それじゃ32年前の1990年の経済状況はどうだったかについてちょっと言っておきましょう。そんなに良くない時代だったかどうか、数字を見てみると、1990年の名目経済成長率は7.6%、実質経済成長率4.9%、失業率2.1%、インフレ率3.1%。まったく文句のつけようのない数字です。
――それはいわゆるバブルの時代ですか?
・うん、実はバブルの時代の経済の成績は文句のつけようがないくらい良いんです。それを日経新聞がバブルは悪いものだと煽りに煽った結果、バブル潰しのために日銀が金融引き締めをした。日本の不況はその時から始まったと私は見ています。
ところが日銀は今でもその金融引き締め策を間違いと認めていない。間違った政策を正しかったものとして継続したために、実はその後30年間の平成不況があったというのが私の解釈です。
・日本のバブルは悪くなかった。上がっていたのは株と資産価格だけだったんだよ。それだけが上がったのは別の要因、つまり、税制上の問題で上がっていた。それだけの話。マクロ経済のパフォーマンスは全く悪くなかったんです。それなのに日銀が間違った金融引き締めをしてしまったというのが正しい理解ですよ。
――現在は当時と同じ為替レートに近づきつつあるわけですね。
・それが悪いかのように騒いで、円高を狙って金融引き締めなんてやったら、バブル後の30年間の過ちを繰り返すことになります。バブルの終わった後に不況が待っていることに誰も気がつかず、ずっと金融引き締めを続けた。それと同じことを繰り返したら、新たな不況がまた起こるよ。
――要するに、円安は悪いことではないんですね?
・今回、1ドル150円台になったのは、いい話なんですよ。ようやく30年前に戻れると思わなきゃいけない。失われた30年を取り戻すいいチャンスだよ。
それを日経のように円安が悪いと言っていたら大変なことになる。
――いま思えば平成の初め頃はすごく良い時代でしたものね。
・それは円安だったからだよ。ただそれだけのこと。なんでその時代に戻っちゃいけないの? 30年ぶりにようやくいい時代が来ると書いてしかるべきなのに、日経を読むとバカになるというけど、そのいい例だよ。
――日銀はまだ金融緩和を続けるべきだということですね。
・当たり前でしょう。インフレ目標がある限り、金融引き締めはやっちゃいけない。これはあの「平成の鬼平」と言われた三重野康さんが日銀総裁だった時はインフレ目標がなかったから、バブルが悪い世論に押されて三重野さんは引き締めをやっちゃった。そのせいで長い長いデフレを招いた。その反省の上に現在の日銀総裁はある。
・この質問はどういうことかっていうと、インフレ目標の中に株と土地の価格は含まれているかどうかとい意味です。「含まれません。土地と株価が上がったからといって引き締めるのは間違いです」と、先生ははっきり答えたよ。実に明快な答えでありました。
――インフレ目標の中に株価と土地の価格は入っていないんですか?
・そう、どの二つは私の分析だと税制上の問題だからです。だから金融引き締めするのは間違い。税制上の対策をするのが正しい政策だった。その間違いを日本銀行は犯し、しかもそれを失敗と認めないから、こんな不況になっちゃった。そのうえ日経をはじめとするマスコミも性懲りもなく、また同じ間違いに誘導しようと煽っている。今はそんな非常に情けない状況ですよ。いくらなんでも同じ間違いを二度繰り返してはいけません。
<防衛三文書と防衛増税に関する朝日・産経のおかしな社説>
――政府は、防衛費の大幅な増額と反撃能力の保有などを盛り込んだ新たな防衛三文書を決定し、防衛費はGDP比2%に増やすと発表しました。
・本当はみなさんご自身で三文書の全文をお読みになったほうがいいんだけれど、それもなかなか大変だろうから、どう理解すべきかのノウハウを、初めにお教えましょう。
各新聞の社説を読むんですよ。
・だから、社説は朝日と毎日、読売と産経をそれぞれ読むとよろしい。なぜかというと、朝日と毎日は左派、読売と産経は右派にはっきり色分けされているので。この4紙を読めば、左右両方の意見がわかります。
――何をダメだと言っているんですか?
・とにかく防衛費を増やすのはけしからんと言っているわけだよ。防衛費について議論する場合、当然ながら防衛の中身の議論が必要になってくる。
――ではどうしろと言っているのですか。
・この期に及んでも、「防衛費を増やすとお隣の国を刺激するからやめろ」という意見だよ。
――とにかく防衛費を増やすのはけしからんということ?
・防衛費を増やすのはけしからん。そのための増税などもってのほかだ。わかりやすいと言えばわかりやすい議論です。「近くにどんな凶暴犯がいても温かく接しろと」いうことだよ。
――今の時代でも、まだそういうことを言うんですね。
・まだ言っている。だからこういう社説になるわけじゃない。これが朝日なんだよ。毎日の社説も似たり寄ったりだけれどね。
――それでも朝日と毎日にも一定数の読者がいるわけですよね。
・産経の社説も読んでみましょう。
「安保3文書の決定 平和を守る歴史的大転換だ 安定財源確保し抑止力高めよ」(2022年12月17日)というのが見出し。中身はどうかというと、「平和を守る抑止力を格段に向上させる歴史的な決定を歓迎したい。政府の最大の責務は国の独立と国民の生命を守り抜くことだ。岸田政権が決断し、与党と協力して、安倍晋三政権でさえ実現できなかった防衛力の抜本的強化策を決めた点を高く評価する」
・私は防衛国債がいちばん正当だと言っているし、当座をしのぐんだったら、たとえば外為特会の評価益とか、国債の一般会計に繰り入れている債務償還費というのが15兆円くらいあって、これがとりあえずは使えるから、それを充てるべきだと言ったわけね。
ところが、税制改正大綱という自民党の文書には増税が盛り込まれていて、さらに税調の資料には、財源確保法という法律を次期通常国会に提出すると書かれている。それが本当に出されたら増税確定で、一巻の終わり。だからいま自民党内では財源確保法を阻止すべく、いろんなバトルが水面下で行われていますよ。
――防衛三文書の中身自体は評価していますか?
・非核三原則と専守防衛に関してはちょっと弱いけれど、他のところは評価しますよ。けっこういいことがたくさん書いてある。まぁ当たり前といえば当たり前のことなんだけどね。
<マスコミは絶対言えないマイナンバーカード反対のホントの理由>
――マイナンバーカードと健康保険証の一体化に反対する人が大勢いました。これはなぜでしょう。
・それで、私は「立民と共産党とれいわが反対する理由は何でしょう?」ってクイズ形式でツイッターにあげたわけ。その答えは何かというとね。この3党に共通しているのは実は在日外国人の支持を受けている政党だってことなんだよ。
――けっこう杜撰だったんですね。
・そうなんですよ。だから健康保険証で本人確認なんて、ハッキリ言って意味ないんだよね。それもあって健康保険証からマイナンバーカードに移行することになったわけです。
――今まで通称名称でやっていた人たちと、その支持政党の声が大きいから、勘違いしてしまうというだけなんですね。
立民・共産・れいわはプライバシーがどうのこうのと理屈をこねるけど、マイナンバーカードのID(本人確認)で保険証や運転免許証、銀行口座やクレジットカードを紐付けるっていうのは、どこの国でもやっていることなんだけどね。そうしないとなりすましがいくらでもできちゃうから。でも、そういうごく当たり前のことを、マスコミは絶対に口にできないというのが、日本の特殊なところだよ。
<少子化対策・奨学金問題・研究開発費について語ります>
――少子化対策、奨学金や大学の研究開発費の問題について、まとめて解説をお願いしたいと思います。
・少子化対策については、私は人とはちょっと違う意見を持っているんですよ。少子化がこのまま進むと、経済成長が鈍って大変なことになると、そういう話をする人が世間には多いんだよね。
・だから、私は人を増やすということは考えない。人口の減少で何が困るかというと、基本的には労働力の不足です。だから、人が減った時にはロボット化を進める。そういうことを私はいつも言っているんですよ。
・つまり、人口を増やそうと考えるよりも、機械化を推進して一人当たりのGDPを高めるほうが人口減少に対する対策としては有効だと思うわけです。何かというと人口を増やさなければいけないとみんなすぐ言うんだけど、さっきも言ったように、人口を増やすのって案外難しいんだよ。お金があれば子供をたくさん産んで人が増えるかっていうと意外にそうでもないんですよ。だから少子化対策だといってお金をバラ撒くことを考えるんだったら、そのお金を機械化投資に回したほうがいい。
――働き手が少なくなると年金制度が崩壊するのではないか、という意見についてはどうでしょう。
・はっきり言って、年金については問題ない。人口減少の傾向はだいたい10年先ぐらいまではすごく読みやすいわけ。年金の制度なんていうのは2~3年で変えられるから、もし人口減少で年金が危なくなるっていうなら、その前に制度を変えればいいだけだよ。
――あとよく言われるのが、人口が減ってしまうと防衛費も削られるんじゃないかという問題です。
・それも機械化と同じく無人化で対応する。どこかの国が侵攻してきた時には無人機で対応するとかね、無人兵器もこれから増えていくでしょうね。
<国内政治篇 なぜ公明党は中共の支持団体なのか?>
<旧統一教会と自民党の関係はそれほど不適切か>
――旧統一教会と自民党の親密な関係について説明してくださいという質問がたくさんきています。
・まず一般論として、政治と宗教の問題は必ずあります。先進国ならどこの国にも信教の自由というものがありますから、政治がどこかの宗教とあまりに密接に結びついていると、それ以外の宗教の人から、信教の自由が損なわれるという批判が出る。
・その昔、安倍さんのおじいさんの岸信介さんをはじめ、他国の大統領なんかも支援していた過去があります。その関係が時とともにだんだん薄れてきた。
・安倍派には旧統一教会と関係のある議員が30人いるとか言われるけれど、どこの派閥でもそれくらいのつながりはあります。たとえばある会合やパーティにメッセージを送ったり、何万円レベルだったら政治資金の提供を受けたりすることもあるかもしれません。これは安倍派に限らず自民党もそうだし、野党も同じですね。そういう意味ではたくさんの政治家が旧統一教会系とは薄いつながりがある。
――薄いつながりですか?
・薄いよ。数も少ないし、旧統一教会系の候補なんてまずいません。そんなこと言ったら、与野党を問わず立正佼成会系の議員は多いし、いちばんはっきりしているのは、公明党の議員は全員、創価学会系じゃないですか。政治の世界で考えると、創価学会は公明党が与党になっているという意味で自民党議員にも影響が大きい。
――公明党の山口代表はどうして旧統一教会問題について発言しないのでしょう。
・それはだんまりに決まっていますよ。自分のところが政界に関わるいちばん大きな宗教団体をバックにしていることは周知の事実ですから、そのことで根掘り葉掘りやられたくないし、下手をすれば自分のところに火の粉が飛んでくるから、ずーっとだんまりを続けるしかない。
――安倍派がことさら槍玉に上がっているのはなぜですか。
・反安倍ということで、わかりやすいからでしょうね。
――立憲民主党も党内でヒアリングしたということですが。
・私は国会でいろんな法律の案件を担当したから知っているんだけれど、旧統一教会の霊感商法の被害はずいぶん前に社会問題になっていたわけ。さっきもちょっと言ったけど、旧統一教会は最初は反共主義の団体だった。それがどんどん変節して、霊感商法が問題になったのは1980年代以降だだと思うけど、人気アイドル歌手の桜田淳子とかが広告塔になって話題になっていた時の話ですよ。強制的に壺を売りつけて、寄付やお布施を巻き上げるような、そういう霊感商法をやっていた。
・その当時は、霊感商法については宗教にかかわる話だからってまだ規制という話は出なかった。それで、この問題にいちばん熱心に取り組んだのは第2次安倍政権なんですよ。第2次安倍政権ができた翌年の2013年には、すでに霊感商法に関する訴えが続出していました。ところが、当時は直接の被害者でないと裁判が起こせなかった。
・被害にあっても、信者は教えを信じ込んでいるから、自分を被害者だとは思わない。だから裁判を起こそうとしないんです。そこで、直接の被害者でなくとも、周囲の人たちが訴えることができる共同訴訟(集団訴訟)という概念を取り入れることにした。
これは海外ではクラス・アクションという言い方をするんだけどね。
・それでも裁判を起こすっていうのは大変なことだから。安倍政権の2018年だったかな、霊感商法を一掃するために消費者契約法を改正したわけ。消費者契約法というのは、消費者がいろんな商品に関して契約を結ぶ場合に消費者の利益を守るための法律なんだけれど、不当な勧誘行為などによる霊感商法のような商売をしたら、契約そのものが取り消せるように法改正したんです。それ以降、霊感商法の被害はグンと減ったはずです。
――クーリングオフではなくて、後になってからでも取り消せるんですか。
・霊感商法による売買は最初から契約がなかったものとする、そんな感じです。これはちょっと画期的だった。それ以降は、霊感商法の被害があっても、霊感商法自体が成り立たない。いつでも取り消せるから、弁護士がただ契約を取り消せばそれで終わっちゃうんだよ。
・この1999年の奈良地裁の判決というのは、霊感商法は宗教の問題ではなく、消費者契約法で扱えというものだった。ところが、この時点では消費者契約法が不備だったから、契約取り消しまではできなかったんです。それで2018年までかかってしまったんだけど、安倍政権の時に法改正をしたわけ。それで今は契約自体が取り消しできるようになった。霊感商法にひっかかったら、内閣府の国民生活センター、確か特別のダイヤルがありますから、そこに連絡して、弁護士を間に入れて取り消せば、お金も全額戻ってきます。
<読売の「国葬・統一教会問題」世論調査の裏にナベツネの影?>
――読売新聞の世論調査で、安倍元総理の国葬決定を評価せず56%、旧・統一教会との関係を断つことに賛成76%という結果が出ました。この数字をどうご欄になりますか。読売は関連会社を使って旧統一教会はけしからんと執拗に報道しました。
・一つは読売グループが、とくにテレビ番組を使って旧統一教会との関係はけしからんと世論を煽りに煽った理由ですね。どうして読売がそんなに統一教会をけしからんと言うのかを探ると面白いのではないか。
・安倍元首相が暗殺された後で統一教会の話が出てきたでしょ。それを政治的に利用した人がいた。あの時に旧統一教会はけしからんと大声で叫べば、旧統一教会と関連団体との関係を認めた岸信夫さんや安倍派議員は内閣改造で打撃を受ける。だから、岸さんと安倍派グループを政治的に排除するために旧統一教会批判を読売が煽ったと考えると、それはすごくすっきり理解できる。
・その私から見ると、安倍派潰しのために読売グループが旧統一教会を叩くというのは政治的にはあり得る話なんです。ただ結果的に叩きすぎちゃって政権にブーメランが戻ってきちゃったというのが私の解釈。
国葬についても読売グループは絡んでいるんだよね、国葬を実行・運営したムラヤマというイベント会社は、昔からイベント業界ではけっこう有名な知る人ぞ知る存在で、たとえば武道館や国技館に関係するイベントはずっと以前から手掛けているんですが、実はこれが読売グループの子会社なんです。
――国葬にかかる追加費用が14億円以上にもなって、当初2憶5000円とされていたものが、総額16億6000万円に膨らんだことも問題視されていますが。
・でも、追加される額はそんなに大きくない。当初の2億5000万円にプラスアルファでしょうね。
――旧統一教会と国葬とを一緒に考えるのがどうしてもわかりません。
・統一教会はお祖父さんの岸信介さんの時代にはけっこうまともな団体だったんだけど、孫の安倍さんの代になると、北朝鮮に近づいたり、北の拉致問題に関係したりして、韓国で合同結婚式をする時には慰安婦問題に言及したりする。安倍さんは嫌いに決まっていますよ。拉致問題と慰安婦問題なんて安倍さんが最も怒っている話だからね。だからこそ霊感商法の法律改正を閣法でやっちゃったわけですよ。つまり、内閣の権限で法改正したわけだから、安倍さんが統一教会をよく思っていなかったことは間違いない。
――そういう話はなぜ表に出てこないのでしょう。
・こういうことをネットで言うでしょ、そうすると、猛烈な反発がくる。あちら系の人からだったことはすぐわかるよ(笑)。
――前提が崩れると、国葬批判までぜんぶ崩れてしまうから?
・ぜんぶ崩れますよ、話の筋としては。
<公明党と創価学会と中国の不思議な関係>
――公明党はなぜ親中なのでしょう。支持団体の創価学会はどのようにカルトなんですかといった質問が寄せられています。
・宗教に関してはそれぞれの見方によるからね、興味のない人には、その宗教を信じているというだけでカルトに見えることもある。カルトを客観的に説明するのは難しいから、創価学会がカルトかどうかということは、正直なところ、私には何とも言えません。
でも、前者の公明党がどうして親中国なのかというのは歴史上の常識みたいなもので、過去を振り返るとすぐわかることなんだけどね。
<敵基地攻撃に反対する皆さん、抑止力をデータで説明します>
――防衛費増額への動きが着々と進んでいますが、敵基地攻撃能力に反対する人がいるようですね。
・でもこれ、「中国や北朝鮮」という言葉を「日本」に置き換えると、どういう表現になるか。「日本は相当数のミサイル施設があり、全て一気につぶせなければ、中国や北朝鮮が報復される」ということになるでしょ。だから、逆に言うと日本が相当数のミサイル施設を持てばいいんじゃない。これを抑止論っていうんだよ。
――こういう人が一定数いるわけですか?
・抑止力を説明するのは簡単だけど、本当にそういうことが実際のデータで言えるのかどうか、学者として検証したことがあるんですよ。
その結果、やっぱりお互いに防衛力を持つと戦争確率は圧倒的に下がることがはっきりした。過去のデータから言うと、4割から5割下がる。防衛力がアンバランスな時の戦争確率が半分くらいになる。お互いに防衛力を持つと攻撃しにくくなる。片方の戦力が突出していると、一方的にやられるか、威圧されて降参するかどちらかになっちゃう。
<原潜はいらないって、岸田さん正気ですか?>
――岸田総理が原潜保有に慎重という報道がありました。
・びっくりしましたね。慎重というより、はっきり否定していましたよ。
・その中に「抑止力向上のために原子力潜水艦を保有すべきか」という質問があった。これにはまず挙手で答えるんだけど、手を挙げたのは維新の松井一郎さんと国民民主党の玉木雄一郎さん、それになんとN党の立花孝志さん。この3人がりりしく賛成した形になった。
・抑止力の話だから、すぐには実行できないにしても、方向性だけでも示すべきでしょう。原潜というのは抑止力に当然なるから、持つべきだとは言わなくても、総理大臣としてはせめて検討するくらいは言うのが普通なんだけどね。
・私もその時テレビを観ていたんだけれど、手を挙げた松井さんたちが頼もしく見えたのに比べ、岸田さんは何だか全く興味がなさそうな感じだった。さらに、「原潜を保有する必要はない」という、その理由にはもっと驚いた。
岸田さんはなんと「開発コストがかかるから……」と言ったんだよ。他の分野にもお金が必要だから、原潜はできないって。
この言い方が間違い。国防に関してお金の話をするべきじゃない。国防というものはコストを考えないでやるっていうのが常識なんだよ。
たとえば有事の際、いろんな戦費の調達をする時には、どこの国でも財務諸表大臣を入れないで検討するというのが国際的な常識です。
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