当時、歴史を学びながら気づいたのは、世界中で現在起きているほとんどの出来事は、過去にも起きていて、それが繰り返されているということだった。(1)
(2025/2/27)
『2030年 お金の世界地図』
ジム・ロジャーズ SBクリエイティブ 2024/2/7
<はじめに>
・今、私たちは、人類史上類を見ないほどの混迷の時代を迎えている。
世界秩序を根底から覆し、人々を震撼させたロシアによるウクライナ侵攻は、すでに2年が経過しようとしている現在も戦いの出口が見えていない。
・今私たちが生きているこの時代は、世界の「潮目」の大転換にほかならないのである。
・当時、歴史を学びながら気づいたのは、世界中で現在起きているほとんどの出来事は、過去にも起きていて、それが繰り返されているということだった。
・だからこそ、歴史を学び、歴史の流れを踏まえた上で未来を予測することが重要である。
・私は歴史に学んだだけでなく、世界各地を実際に訪問した経験をもとに「お金の流れ」の傾向をつかむことができた。投資において成功したいなら、未来を見通す力を付けなければならない。特に「お金がどう動くか」をイメージする力が不可欠である。
・しかし、うろたえる必要はない。歴史に学び、先を見通す力を養っておけば、冷静に物事を把握し、必要な行動を取ることができる。
<未曽有の大潮流に乗り遅れるな――戦争、世界インフレ、一帯一路構想……>
<ウクライナ戦争、米中衝突、一帯一路構想……「乱気流」がお金の流れを激変させる>
<ウクライナ戦争>
<ウクライナ戦争が世界経済に与える影響>
・今、世界は非常に混沌としている。特に地政学的な緊張がいつにもまして高まっている。
・戦争が起きればエネルギーや貴金属類、農産物類の価格は高騰する。
・ウクライナもロシアも穀物やエネルギーの主要な生産国である。
・それゆえ、ウクライナ戦争は、世界の穀物需要に対しても大きな影響を与えることとなった。
・WFPによると、2023年に深刻な食糧不足に見舞われた人は、過去最高の3憶5000万人に上った。特にアフリカ大陸では1億4000万人にまで増加しており、由々しき問題である。
・ウクライナ戦争により、化石燃料は国際的な価格高騰に直面した。
<ロシア経済の現在地>
・ウクライナ戦争により、先進国はロシア産原油について価格の上限設定という制裁措置を行っており、ロシアの財政収支は急速に悪化している。
・資金流出はルーブル安を助長し、ルーブル安からの利上げ、物価上昇と経済悪化、さらなる資金流出という負のループが続きかねない。
<長期的観点に立てば、ロシアにはチャンスがある>
・とはいえ、永遠に続く戦争はない。
戦争が終わると多くの場合、素晴らしい投資のチャンスが生まれる。通貨が急落した国への投資は、長い目で見ればリターンを得られる可能性が高い。
・ロシアはヨーロッパや日本、中国などより政府債務は少ない。現在の日本の財務状況は、ロシアよりも悪い。つまり、ロシアはまだ日本よりも健全な財務状況を維持しているのだ。
ウクライナ戦争が終結すれば、ロシアは再び天然資源や農産物の輸出国として成長を遂げることになるだろう。
・同じように、時間が経てばロシアの戦争国家としてのイメージは薄れていく。それに伴ってロシアは少しずつ信頼を回復していくだろう。
<台湾有事>
<台湾有事が世界経済に与える影響>
・今後数年のうちに、新たな戦争が起こるとすれば、真っ先に思い浮かぶのは台湾有事である。
・もちろん台湾で戦争が起きると断言できないし、起きたとしても長期化するとは限らない。ただ、戦争が起これば、世界の混乱をさらに大きくするのは間違いない。
・ペンタゴンのほとんどの研究では、諸々の条件を踏まえ、アメリカが敗北する可能性が高いと予測しているはずである。
だが、それでもアメリカが中国を挑発し、台湾有事が起きる可能性はある。
・歴史を見れば、実際に無謀な戦争は何度なく繰り返されている。
・アメリカもかつてはベトナムと戦争に介入し、実に8年以上に及んだ戦争に延べ260万人の兵力を派遣し、南ベトナムに駐留したアメリカ軍はピーク時に54万人を超えている。
・いずれも、なんと愚かな決断であり、愚かな戦争なのだろう。しかし、残念ながら今後も愚かな決断は繰り返されるに違いない。
<米中衝突は勃発するか>
・では、なぜアメリカは中国との無謀な戦争へと向かおうとしているのか。
アメリカにはもともと反中国的な政治家が多い。
・実際に、アメリカ人の対中感情はかつてないほどに悪化している。
・アメリカに限らず、政治家が他国への嫌悪感を煽ると多くの場合、排他的な言論は盛り上がりを見せるようになる。
歴史的に、国内に問題を抱えた国は、その原因を外国人に推し付けようとしたがる。
・トランプも、過去に政治家が繰り返し用いてきたこの古典的な手法を使い、人種差別的な言動を繰り返した。
とりわけ中国人に対して差別的な言動が多く見られた理由は、中国が今、世界の国々の中で最も成功しており、アメリカを脅かす存在として攻撃対象にしやすい国だからだろう。
・私は、この対中嫌悪感情が、台湾をめぐる米中の武力衝突には発展していくことを恐れている。
・アメリカも中国も、何もしないのが最良の選択肢であるが、すでに米中間には敵対意識が芽生えており、指導者たちが合理的な判断ができるかはわからない。
・私は、自分の子どもが生きている間に米中衝突が勃発しなければいいと願ってやまないが、残念ながらおそらくは勃発するのだろう。
・人間の焦りや不安が愛国心を駆り立て、戦争に発展してきたという歴史を、忘れてはならない。
<戦争はいつでも起こりうる>
・戦争の多くは、たいていささいな理由から始まり、数年の時間をかけてリアルな銃撃戦へと発展する。ちょっとした行き違いをきっかけとして新たな戦争が始まっても何の不思議もない。
・こうなると、後戻りすることは難しい。政治家が「いったん落ち着いて相手に譲歩しよう」などと言おうものなら、アメリカでは選挙に勝てなくなるし、中国では権力の座を奪われることになるからだ。
・戦争は非常にコストがかかるため、問題解決を焦って戦争に踏み切るメリットは存在しないといってもいい。
しかし、中国政府の誰か、あるいはアメリカ政府の誰か、あるいは第三国の誰かが戦争を望む場合、戦争が起きる可能性は高い。
<戦争がもたらす利益は一時的>
・ちなみに戦争が起きれば、一部の産業に資金が集中するため、必ず利益を得る企業が出てくる。
・しかし、戦争で利益を得る者は非常に少なく、しかも利益は一時的なものに過ぎない。戦争が起きたことで、国全体が恩恵を受けるということはない。
・戦争が起きたときに、私は当事国のマーケットに目を向けるべきだと考えている。戦争が起きて、価格が暴落した国への投資は、長い目で見ればリターンを得ることが多い。
ここで重要なのは、発展しそうな分野に目を向けることである。たとえば、AIの開発がそうである。
<世界インフレ>
<インフレスパイクの到来>
・新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ戦争がもたらしたインフレは、世界経済にとって今も大きなリスクとなっている。
・インフレが再発すれば、一度目より状況は悪化する可能性が高い。なぜなら、ここ数年にわたって、歴史上かつてないほど大量の紙幣が印刷されてきたからだ。
・私に言わせれば、FRBはインフレについて無知であり、適切な対応策を持ち合わせていない。そもそも物価上昇率2%という目標値には、正当な根拠がなく、誰かが、言い出した数字を別の人が取り入れ、もっともらしい目標値にされてしまっているというだけの話だ。
とはいえ、私は決してFRBだけをこき下ろしたいわけではない。
・アメリカや日本に限らず、中央銀行はこれまでにも間違いを起こしてきたし、今後も新たな間違いを起こすに違いない。
<一帯一路構想>
<アジアとアフリカへの投資の活発化>
・各国が混乱している中で、中国は着実に一帯一路構想を推し進め、世界に存在感を発揮しようとしている。
・よく知られている例がスリランカである。スリランカはAIIBの融資を受けてハンバントタ港という港を建設したが、投資資金を十分に回収できず、2017年には「借金のカタ」として99年間にわたって港の運営権を中国に引き渡すことに合意している。
<一帯一路が世界経済に与える衝撃>
・すでに一帯一路は世界経済にプラスの影響をもたらしつつある。世界銀行によると、一帯一路の共同建設に関連する投資を通じて、2030年までに760万人が極端な貧困から、3200万人が中度の貧困から脱却できると予測している。
・いずれにせよ、世界的に見て一帯一路は21世紀で最も成功した経済プロジェクトになるだろう。
<お金は「安心」「リターン」「開放性」がある場所に集まる>
<お金が流れ込む国の条件>
・お金の流れは地政学と不可分に結びついている。地政学的な混乱が大きくなれば、当然お金の流れにも変化がもたらされる。
・お金は安全な場所を非常に重視すると同時に、高いリターンを求める。
・戦後から現在に至るまではアメリカドルが世界の基軸通貨として機能し、アメリカにはお金が流れる構造が確立していたが、今やアメリカは世界史上最大の債務国である。将来の安全とリターンのために多くの資金を投入できる国とはいえない。
<条件①:国が開かれていること>
・多くの国でトップが交代したとき、真っ先に「国境を閉ざせ」と言い出すことがある。国境を閉ざすことで、国内で自分の権力と支配力を維持しやすくなるからだろう。
・国境をオープンにすることの重要性を理解している国は少ない。しかし歴史上、オープンにした国のほとんどが繁栄と成功を収めていることを忘れてはならない。
<条件②:有能な指導者がいること>
・投資は地政学的リスクを抜きにして語ることはできない。地政学的リスクが高まれば、特定の商品の価格は変動し、経済の先行きは不透明になる。
・もっとも、アメリカも状況は似たようなものである。アメリカは有史以来最大の債務国であり、国の借金は毎日膨らみ続けている。
<BRICsは、机上の空論に過ぎない>
<私がBRICsに懐疑的な理由>
・BRICsとは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5ヵ国の頭文字を合わせた造語である。
・「2039年までに経済規模が現在のG6の合計を上回る」と予測したことで注目があつまるようになった。
・ただ、私はBRICsについて懐疑的な立場を取っており、中身の伴わない集合体だと考えている。
<ブラジルが抱える諸問題>
・ブラジルで2003年から18年まで政権与党だった労働者党は、約4000万人いるともされる貧困層に給付金を支給し、財政悪化を招いた。
<インドは世界第2の大国にはなれない>
・インドは世界第7位の国土面積を有し、14億1717万人(2022年)の人口を抱える大国である。
・しかし、私自身はインドをそれほど高く評価していない。
・インドの実情に目を向ければ、発展を阻害する要因がいくつも見つかるはずだ。
たとえば、この国がインド・アーリヤ族、ドラビダ族、モンゴロイド族などの民族が共存する多民族国家であることは、その要因の一つだ。
紙幣に17の言語が書かていることからもわかるように、インドには数多くの言語が存在している。
第一言語であるヒンドゥー語を話す人は人口の40%を超えているが、ベンガル語やその他さまざまな言語が使われており、各州が公認している言語だけでも22種類ある。日常的に使われている言語でいえば、なんと1800~2000ほど存在するともいわれている。
・中国では、全国民が同じ言語を読み書きできるが、インドはそうではない。国内でも遠く離れた地域同士では意思疎通を行うのも一苦労である。
インドでは英語が使われているイメージもあるが、実は英語を使用できる人は人口の10%強で、流暢に話せる人となると4%ほどしかいない。
また、宗教も非常に多様であり、人口の8割を占めるヒンドゥー教徒以外にも、イスラム教徒は14.2%、キリスト教徒2.3%、シク教徒1.7%、仏教徒0.7%、ジャイナ教徒0.4%と多種多様だ。細かく分けると2000もの宗教があるとされている。
<歴史上、まとまりのない国は成功しない>
・私の知るかぎり、まとまりのとぼしい国家は、大きな成功を収めることができない。
・ちなみに、私自身がBRICsに批判的だからといって、BRICs諸国の経済成長を全否定しているわけではない。
<中国に次ぐ有望株の国>
・BRICsで有望な国といえばやはり中国であり、その次に挙げるならばロシアだろう。
・私は50年以上ロシアを投資先として敬遠してきたが、2015年頃からロシア経済に対してポジティブな姿勢になった。
・現状では、ウクライナ侵攻で混乱しているが、ロシア自体は政府債務が少なく、国民の借金も少ない。西側諸国よりもよほどまともなファンダメンタルズだ。しかもエネルギー価格の高騰が、ロシアにとって追い風となっている。
<世界的投資家が予測するこれから10年で「伸びる国」>
<成長国の共通点は「安さ」と「劇的な変化」>
<大転換は戦争・災害・指導者によって生まれる>
・今、世界で成長している国に共通しているのは「安さ」と「劇的な変化」である。
・投資家や起業家は、その国の本気度を見極めるために、たとえば規制緩和のような変化を起こしているか、投資家にインセンティブを与えているか、といったポイントに注目する必要がある。
<「低価格」と「高品質」で名声を得たかつての日本>
・たしかに、通貨安となると商品は安くなるが、商品が安いだけでその国が成功するとはいえない。
・戦後の日本は低価格で高品質な自動車や電化製品を大量に生産し、世界に輸出することでマーケットシェアを勝ち取った。
・非常に高品質で安価な商品を作ることに力を入れていたから、日本は世界で成功したわけだ。
<第2次世界大戦の敗戦国が、戦後劇的に成長した理由>
<要因は「人口」と、「自由な精神」>
・日本でも1950年の朝鮮戦争を機に朝鮮特需が起き、これを足がかりとした神武景気により、54年には高度経済成長が本格化している。
・当時のドイツと日本には若くて有能な人口が多かった。
・要するに、戦後の日本では自由なものづくりが許されたからこそ、世界企業が続々と誕生したのである。
<中国――次なる覇権国の座につく日>
<国力の背後にある、豊富な天然資源>
・現在、次の覇権国家になる可能性があるのは中国である。
ウクライナと戦争をしているロシアが、2030年までに支配的で最も強力な国になる可能性があるとは、今のところ思えない。
・しかも中国には天然資源もある。中国にはこれまで埋蔵が確認されている鉱物だけでも171種類がある。
・中国の力の背景には、シベリアにある大量の天然資源もある。
<今後、中国に待ち受ける障壁>
・もちろん、中国が覇権国家になるには、さまざまな障壁が予想される。
アメリカは20世紀では最も成功した国となったが、その過程では内戦、深刻な不況、多くの企業の倒産、暴動などの問題が発生した。
・しかも中国で毎年輩出されるエンジニアの数は、アメリカの10倍以上だという。必ずしもエンジニアが多ければいいわけではないが、イノベーションを起こす力は高いと見ている。
私が注目しているのは、これから中国が国を閉じていくのか否かである。
<サウジアラビア――次々と巻き起こる驚くべき変化>
<石油依存からの脱却>
・サウジアラビアは、現在、驚くべき変化を遂げている国である。
・サウジアラビアは、よく知られているように豊富な石油資源を中心に発展してきた国である。
<閉鎖的な国から、オープンな国へと激変>
・サウジアラビアが変化している理由の一つとして、多くの若者が海外で教育を受けるようになったことが挙げられる。
・抑圧的で閉鎖的な社会から、よりオープンな社会に移行すれば、その国はたいてい成功を収めることができる。サウジアラビアが発展すれば、世界経済にも良い影響を与えるだろう。
<観光業の発展を目指す>
・現時点で、サウジアラビアは「良い方向に変化しつつある国」という表現が適切であり、資産も豊富であるから、成長国リストに入る資格は持ち合わせている。2030年、そしてそれ以降もサウジアラビアは、素晴らしい投資先となる可能性を秘めている。
<ウズベキスタン――順調な経済発展を実現>
<社会主義国家から資本主義国家へ>
・今、地政学的リスクを回避する目的で投資を行うなら、私はウズベキスタンを選ぶだろう。現に、私はウズベキスタンの投資会社に、いくつかの投資を行っている。
・世界銀行が発表した2020年版ビジネス環境ランキングによると、ウズベキスタンは69位にランクインしており、12年の166位と比較すると大きく飛躍していることがわかる。
<ウズベキスタン経済を支える柱>
・ウズベキスタンは、私にとって魅力的な投資対象国の一つとなっている。
地図を見れば明らかだが、ウズベキスタンが中国に地理的に近いというのも好条件といえる。
<観光業のポテンシャル>
・それ以外に特徴的なのは、魅力的な観光地を持っていることである。
・観光業の振興は、今すぐ実行することができるという意味で、魅力的な選択肢だといえる。
<ルワンダ――内戦を乗り越え、経済成長を実現>
<ルワンダ経済の過去と現在>
・ルワンダでは、1994年に「ルワンダ虐殺」と呼ばれる、悪夢のようなジェノサイドがあった。
・世界銀行の「投資環境ランキング2020」では、世界190ヵ国・地域中38位、アフリカ諸国の中では2位という順位につけている。
<天然資源と労働力が豊富なアフリカ>
・現実にアフリカが発展しているのは事実であるが、成功しているのは一部の個人であり、国家レベルで大成功するには至っていない。
<ベトナム――テックハブとして台頭>
<「低価格」と「高品質」を両立>
・さらに、1960年代前半から70年代半ばにかけて対アメリカ戦争と、長い戦争の時期を過ごしたことになる。
・ベトナムは人口が多く、教育を受けた若い世代も多い。
・また、ベトナム人は向学心が強く、外国語を身に付けている者も多い。魅力的な国の一つといえるだろう。
<コロンビア――内戦から復興へ>
<内戦の終結は大きなチャンス>
・コロンビアは共産主義ゲリラの蜂起をきっかけに、1964年から約50年にわたる大規模な内戦を経験してきた国だ。
・経済成長の背景にあるのは、豊富な天然資源であり、コロンビアでは石油、石炭、ニッケル、金、エメラルド等が産出されている。
<世界的投資家が予測するこれから10年で「沈む国」>
<「沈む国」「伸びる国」はここで決まる>
<国の「バランスシート」に着目する>
・ここから10年で「沈む国」「伸びる国」を予測するにあたり、一つの指標となるのは債務である。
重要なのは、その国がどれだけ資産を持っているか、そして負債がどれだけあるかだ。
・歴史的に見て、重い債務を抱えている国は、没落を余儀なくされることになる。
・つまり、貿易収支は国の経済を良くも悪くも大きく変化せるファクターなのだ。
<債務は国の成長の足かせになる>
・アメリカの債務は右肩上がりで増えており、20年前と比較して4倍以上にまで膨れ上がっている。
・今、世界を見渡すと、ほとんどの国が部分的には成功しているように見えても、少なからぬ債務を抱えている。IMFの最新報告書によれば、2年連続で世界全体の債務が減少しているものの、パンデミック前の高水準をまだ維持している。
<「伸びる国」の条件>
・債務がある国が増税で問題を解決しようとするのは間違っている。
日本では、財政破綻を心配して増税をやむを得ないものと受け止める人が多いが、それは賢い選択肢とはいえない。
・国が経済的に成長するための重要な条件は、大きく分けて二つある。
一つ目の条件は、世界が必要とするものを手に入れ、それを供給するということである。
わかりやすい例を挙げれば、天然資源の開発だ。
・そしてもう一つの条件――成長に重要となるのは労働人口だ。
・日本の生産年齢人口(15~64歳)は、1995年をピークに減少を続けており、2050年には5275万人まで減少することが見込まれている。ピーク時の8716万人と比較すると、実に40%近い減少率である。
・私がある国の将来を考えるときには、①人口が増加しているか、②生産年齢人口が充実しているかを常に確認するようにしている。
<労働人口は国の成長の鍵>
・移民の受け入れも、労働人口を増やす重要な手段である。
・だから、移民に対してかたくなに門戸を閉ざそうとすることには反対である。
・ドイツでは移民排斥を訴える極右政党が一定の支持を集めているが、これは急激に移民を受け入れた反動だろう。
・これから伸びていくのは、上手にコントロールしながら移民の受け入れに成功した国ということになるだろう。
<法規制で読み解く経済発展>
・「伸びる国」になるための条件の三つ目は法規制だ。
・もちろん、前述したように国が起業家の活動を奨励する環境があれば、ビジネスはよりうまくいきやすい。
<アメリカ――覇権国家の座を譲る日は近い>
<史上最大の債務大国>
・今日の世界ではアメリカが覇権国家の座を維持しているが、いよいよその覇権も揺らぎつつあるように見える。
現在のアメリカは、有史以来、最大の債務国である。
・衰退を始めている国家は、衰退が進みつつあることを自覚しにくいものであり、それはアメリカも同様である。
・かつて世界のトップだったイギリスがアメリカに取って代わられたように、アメリカがトップでなくなる日がくるのは時間の問題である。
<米ドル離れが加速する世界>
・現在、世界の基軸通貨は米ドルであるが、いずれは違う通貨になることだろう。
・これからの投資家にはドルを売るタイミングをより慎重に見極める力が求められるだろう。
<米中貿易戦争がもたらすもの>
・アメリカはファーウェイを攻撃することで、アップルやほかのアメリカ企業を守ろうとしている。
・私は自由貿易と市場開放に賛成しているが、アメリカは状況が悪化すればするほど市場閉鎖に走ろうとするに違いない。
<イギリス――かつての覇権国に待ち受ける現実>
<英国病で衰退したイギリス経済>
・第2次世界大戦後の1960~70年代、イギリスで起きた長期的な経済の低迷を「英国病」という。
・経済の停滞から抜け出せないまま、オイルショックの影響による物価上昇もダメージとなり、1975年にはIMFから融資を受ける事態にまで追い込まれた
<EUからの離脱がもたらしたもの>
・イギリスは1980年以降、原油を輸出するようになったことで外貨を獲得し、英国病を克服することができた。
・現在、イギリスはドイツに次ぐヨーロッパ第2位の経済規模を持っている。しかし、私は将来のイギリスをやや悲観的な目で見ている。
・だが、今のイギリスには外国に輸出できるものがほとんどなく、ポジティブな要素を見つけ出すのは難しい。
<ヨーロッパが抱える諸問題>
・現在、ヨーロッパのほとんどの国では人口が減少している。
・特にルーマニアでは約30年で総人口の約20%が流出しているとされ、大きな経済損失を被っている。
・また、ヨーロッパ諸国では金融の豊かさや安定性も低下している。
・ヨーロッパの国々の多くが、似たような問題に直面しており、改善への道筋は見つかっていない。
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