中国の最大の問題は、政治面にしても経済面にしても都合の悪い事実は政府が覆い隠すので、問題の大きさや事態の深刻さが正確に把握できない点にある。(2)

(2023/11/6)

『世界と日本経済大予測   2023-24』

渡邉哲也    PHP研究所  2022/11/18

・自分の不遇を周囲や社会のせいにしていたら、状況は何も変わらない。しかし、どんな悩みや不安がなくなれば、さまざまな解決策を見出せる。ネガティブな考えは何も解決しないし、意味がない。

 そのためにもデフレマインドをまず、やめること。そして、自分の思考をこれから発展できるような創造的な方向に変えていくことが重要になる。

<ピンチをチャンスに変えよ>

・2022年7月、日本は安倍晋三という優れた政治家を失った。

 7年8か月、一度目の政権の1年も入れると8年8か月、日本の憲政史上最長の期間において総理大臣職にあった。

・そしてついに、グローバリズムは失敗に終わったことが明らかになった。今、「東西新冷戦」が始まろうとしている。

<ロシア・ウクライナ戦争はまだ終わらない――「東西新冷戦」の行方>

【リスク1 ロシアvs.ウクライナ  「泥沼化」のまましばらく続く】

・(リスク チャンス)飛び地領からのロシア軍撤退による「ロシアの弱体化」

・当然、西側諸国とロシア、ベラルーシ、さらには間接的に支援する中国との対立が先鋭化した、第三次世界大戦につながる大きな軍事衝突が、いつ発生してもおかしくない危険な状態である。

【リスク2 うごめく民間軍事会社 正規軍が大きいだけでは勝てない】

(リスク チャンス)民間軍の増強・拡大を見逃すな

【リスク3 ロシアの核兵器 使わなければプーチンのメンツが潰れる】

(リスク チャンス)プーチン大統領の発言に注目

・だとすればかえって、「今の時代、核兵器など使うはずがない」という考えは楽観的すぎるだろう。核兵器を使うと公言しておいて結局使用しなければ、「プーチンは口だけだ」と世界から見くびられるし、核のスイッチを押さなければ、通常兵器の戦いがズルズルと続き、決定的な敗北を喫するのは目に見えている。

 わざわざ「ブラフではない」と言ったのは、自らが死ぬ運命になっても構わない、本当に使用するという考えがプーチンの心中にあると考えていい。

【リスク4 ウクライナ戦争の思わぬ収穫 G7による制裁プログラムができた】

(リスク チャンス)対ロシア制裁モデルで「第2のウクライナ戦争」を防ぐ

【リスク5 対ロシアの経済制裁  {SWIFTからの締め出し}が効いた】

(リスク チャンス)SWIFTからの締め出しは、対外諸国との取引を封じる「切り札」

【リスク6 停滞するロシア経済  大好きな日本の中古車が買えない】

(リスク チャンス)ロシアで自動車や航空機の生産ができないぶん、他国の生産に回る

・そもそもロシアの経済規模は名目GDPで世界11位で。10位の韓国以下である。世界有数の軍事大国ではあるが、経済面では米欧から見れば吹けば飛ぶような存在でしかない。経済制裁を受ければ決定的な痛手を負うのは確実で、軍事侵攻の解決が遅れればそれだけ傷も大きくなる。

【リスク7 ルーブル下落  もはや欧州の資源対策次第】

(リスク チャンス)各国がロシアから石油を買わなければ、ルーブルの価値は下がる

・ロシア経済は完全に資源頼みである。輸出のほぼ70%を資源が占めており、原油価格を見れば、ロシアの健康状態がわかる。

・ロシアへの経済制裁が効いてくるのは、これからが本番と言えるだろう。もはやプーチン大統領のメンツを潰さずに、ロシアがウクライナ問題を解決できる見込みは薄く、プーチン政権は正念場を迎えることになる。

<円安・物価高騰の元凶は「バイデン政権」――「トランプ再選」で変わる世界>

【リスク8 世界的インフレ 米国ではまだまだ利上げは続く 】

(リスク チャンス)利上げにより国民の資産が守られる

【リスク9 円安の行方  エンドレスな下落はない】

(リスク チャンス)円安によるメリットだけでなく、デメリットに備える

【リスク10 ユーロ危機  ウクライナ戦争が続けば深刻化】

(リスク チャンス)ポイントになるのは、ドイツのエネルギー不足

・ウクライナにおける戦火がさらに拡大すれば、EUのエネルギー不足は深刻なものとなる。そうなればドイツの工業生産は、かなり落ち込んでくるはずで、ユーロ安はもう一段進む可能性もある。

【リスク11 半導体不足  これから世界的に余る】

(リスク チャンス)「半導体リスク」の情報に騙されない

【リスク12 SDGs  「緩やかな自殺行為」に過ぎない】

(リスク チャンス)「やっているフリ」でごまかす国が賢い

・つまり、SDGsは環境保護のために豊かさを犠牲にするものに過ぎず、持続可能な開発どころか、「緩やかな自殺行為」でしかないということだ。

【リスク13 2024年米国大統領選挙   バイデン再選はない】

(リスク チャンス)トランプ政権復活の可能性は高い

・一方、民主党は連邦最高裁の人数を増やすことで保守派色を薄めようとしているが、これも中間選挙までにできることではない。そのため、どう頑張ってもトランプに法廷で勝つことはできない。それに対する民主党政権のイメージ戦略として嫌がらせは続くかもしれないが、嫌がらせのレベルでしかないだろう。

【リスク14 台湾有事  バイデン大統領の電撃訪台はありうる】

(リスク チャンス)台湾有事に対する米国の動きに注目

【リスク15 テスラのツイッター買収  トランプ再選のカギを握る】

(リスク チャンス)大統領選にも、ツイッター社の命運もイーロン・マスクの胸一つで決まる

【リスク16 GAFAMの行方  バブルは完全にはじけた】

(リスク チャンス)GAFAMのなかでアップルだけは安泰

【リスク17 映像配信の過当競争化  頭一つ抜け出すアマゾン 】

(リスク チャンス)映像配信サービスは淘汰されていくので見極めが重要

<「中国とどう付き合うか」問題が世界経済を二分する――習近平の野望と台湾危機>

【リスク18 習近平独裁体制  「巨大な北朝鮮」が誕生する】

(リスク チャンス)中国の法律とは何でも入れられる「容器」のようなもの

・中国は「集団指導体制」から、習近平の「個人独裁体制」へ大きく変化する。いわば「巨大な北朝鮮」が誕生することになり、世界の分断はさらに進むのは間違いない。

【リスク19 海外上場規制  中国企業はマーケットに適さない】

(リスク チャンス)中国企業が米国で上場しても安心してはならない

【リスク20 中国の半導体不足  「世界の工場」の座が危ない】

(リスク チャンス)中国が半導体生産を強化するほど、日本の精密機械の需要が高まる

・ここに来て米国の締めつけは厳しく、日米のコントロール下に入らない限り中国は製造機械も検査機械も作れない状況になった。これまでのように中国が「世界の工場」として稼働することは難しいと言わざるをえない。

・中国経済は、共産党政権の屋台骨を揺るがしかねない弱点を抱えているのだ。

【リスク21 「債務の罠」 中国のアフリカ進出の楔を打ち込んだ安倍元首相】

(リスク チャンス)国際的な枠組みで「債務の罠」は解決に向かう

【リスク22 不動産バブルの崩壊  中国経済の生死がかかる】

(リスク チャンス)不動産業界が儲からないと、中国当局の財源が枯渇する

・中国では多くのデベロッパーが、倒産“状態”にある。デフォルトしたものの会社更生法の申請をしないので、倒産にはなっていない。

・また、中国の不動産の時価総額は1.2京円(1200兆円の10倍)規模で、不動産価格はローンの支払い能力からみた正常値の4倍以上。単純計算で、支払い能力に対して約9000億兆円も評価が高いことになる。

・中国の不動産建設関連業はGDPの3割近くを占めており、都市住民の4人に1人は建設不動産関連に勤めている。建設業や設備業などがなかなか破綻しない理由として、国有企業を中心に銀行が支えているからだと考えられる。

 ただし、この状況をいつまでも継続できるわけもなく、どこかで大規模な構造転換が必要となる。

 それはすなわち、巨大な不動産デベロッパー国家・中国の崩壊を意味する。中央と地方政府の財源の半分以上は不動産の国有地の販売であり、巨大な消費も不動産バブルが呼び込んだものだからだ。

【リスク23 中国の少子高齢化 中国の人口は、実は11億人?】

(リスク チャンス)中国人観光客に頼らないインバウンド対策

【リスク24 中国の学術研究  「科学論文世界一」は本当か?】

(リスク チャンス)国独自の製造フローで勝負する

【リスク25 台湾危機  中国は絶対に手放さない】

(リスク チャンス)台湾と中国の対立はこれからも続く

・このように中国の台湾侵攻は本来正当な理由はないのだが、中国としては「台湾が太平洋の出口を生み出す」「台湾という別の国を自国のものにする」「二つの国を支配することで習近平の皇帝としての正当性を持たせる」といった理由があり、絶対に諦めない。

<米中対立激化で「お金」の動きも変わる――翻弄される韓国とEU>

【リスク26 尹錫悦韓国大統領  支持率はまもなく下落する】

(リスク チャンス)韓国は「民主主義国家の失敗作」と理解し、冷静に付き合う

【リスク27 サムスン不振  半導体事業の行き詰まり】

(リスク チャンス)韓国に向けた精密機械の需要は増える

【リスク28 韓国の不動産バブル  はじければ中国と同じ運命に】

(リスク チャンス)韓国の不動産価格に踊らされてはいけない

・韓国も中国と同様に不動産バブルを抱えている。ソウルで一軒家を建てる土地の価格が、平均年収の約30倍になっている。

・ここまで不動産価格が上昇するのは、チョンセという韓国独自の制度が関係する。

・ちなみにチョンセに向けたローンも存在する。大家が不動産価格の8割ほどの保証金をもらい、それを次の不動産の買い入れに充て、そこでまたチョンセを行ない、さらに別の不動産を購入する信用2階建て、3階建て………という状況が生じる。

 信用の上に信用を重ねていくシステムは、不動産価格が下落に転じると、一気に崩落する。今まで消費の下支えになっていた不動産バブルがはじければ、中国経済と同じ構造で、消費の原資を失う。バブルが弾けた韓国経済は坂道を転がるように地に落ちていく。

【リスク29 韓国の少子化 日本を上回るスピードで人口が減る】

(リスク チャンス)「少子化の先輩」韓国にその教訓を学ぶ

【リスク30 韓国の半導体業界  供給過多により価格が下落】

(リスク チャンス)半導体バブルを見極めて戦略を立てる

【リスク31 北朝鮮によるミサイル発射 ロシアへの派兵に備えよ】

(リスク チャンス)ウクライナ情勢と北朝鮮の動きはリンクして捉える

【リスク32 ルソン島にスービック基地復活  フィリピンの英断で、中国包囲網が完成する】

(リスク チャンス)フィリピンとの関係が対中のカギになる

【リスク33 EUの不協和音  ウクライナ侵攻で弱点が露呈した】

(リスク チャンス)EUが米国の力を借りずに、ロシアと対抗できるようになる

【リスク34 信用できないドイツ  ロシアべったりのエネルギー戦略】

(リスク チャンス)ドイツに依存する生産体制からの脱却

【リスク35 迷走する新しい英国  スナク新首相は、「英国ファースト」を貫けるか】

(リスク チャンス)新しい国のあり方を示せるかどうかはスナク首相次第

【リスク36 中東諸国の思惑  ロシアに接近するイラン】

(リスク チャンス)ロシアに接近する国々(イラン、中国、北朝鮮)を制止せよ

<デフレマインドを変えれば景気は上向く――2023-24日本経済再始動>

【リスク37 大倒産危機 「退職予備軍を抱えるブラック企業」のような日本経済】

(リスク チャンス)潰れそうな企業を見極める

【リスク38 チャイナ・リスク  日本完結の生産フローはもはや限界】

(リスク チャンス)有事に備えて国際的分業体制を確立せよ

【リスク39 電力不足  原発抜きで世界とは戦えない】

(リスク チャンス)小型原発を開発し、輸出する

【リスク40 世界に売り込む力  内燃機関技術は日本の強み】

(リスク チャンス)デフレマインドから脱却せよ

【リスク41 自動車メーカーの未来  トヨタのEVシフトは当面ない】

(リスク チャンス)官民一体のインフラ投資は不可欠

【リスク42 ネガティブ報道  「清貧の思想」を捨てよ】

(リスク チャンス)新聞の報道を反面教師にする

・福島第一原発事故の後は、電力事情も考えずに「原発を止めろ!原発は敵だ!」という感情論に国全体が押し流され、その結果、米国に比べて3倍、中国や韓国に比べて2倍高い産業用電力を支払わされている。産業用電力が高いと一物一価の国際競争のなかでは、コストの上昇をカバーするために、まず賃金というコストを下げる。ここで賃金を上げる要素を失わせてしまった。

・経済なら、『日本経済新聞』の報道と逆のことをやれば大抵は成功すると言われる。株式投資のスピ―ドを考えれば、経済紙に載った情報は、ほとんど「賞味期限切れ」に近い。投資家は積極的に情報を集めているから、メディアが紹介する頃には、ほとんどの人が投資を終えている(そうでなければ長年投資を続けられるはずがない)。

 それが一般のメディアで紹介され、新聞やテレビで知った一般の人が「これからこういう産業が発展するんだ」と投資する。この時点では機関投資家は売り逃げている。

 そのため、『日経新聞』やテレビニュースを見て投資してもあまり儲からない。「儲ける人たちのシナリオ」にはめ込まれないように、「書いてあることの逆をしろ」というのは、あながち間違っていない。

・政治・社会なら『朝日新聞』のメッセージと逆のことをすればいい。前述のとおり、「脱原発、反原発!」と『朝日新聞』などが煽った結果、経済に致命的な打撃を被ることになった。そもそも「脱原発」、「反原発」などの活動はビジネスでやっている団体が多い。

【リスク43 ソフトバンクショック  兆レベルの赤字企業の未来】

(リスク チャンス)ソフトバンクグループの企業群の動きに注目

【リスク44 中国企業の誘惑  チャイナデカップリングは可能か】

(リスク チャンス)中国と分離した後のビジネスモデルを考える

【リスク45 インバウンド幻想  中国人観光客には期待するな】

(リスク チャンス)外国人旅行者には高付加価値のサービスを

【リスク46 メディアの終焉  いよいよテレビ広告が入らなくなる】 

(リスク チャンス)ネットコンテンツへの鞍替えは急務

【リスク47 世界的なソフト不足 つまらないタイアップ番組の横行】

(リスク チャンス)企業自らがメディアを作る時代

【リスク48 新しい都市交通システム 技術成長に追いつかない法整備】

(リスク チャンス)成長が見込めるインフラ投資関係

【リスク49 日本の不動産バブル  アジアの富裕層が東京のマンションを買いあさる】

(リスク チャンス)日本の不動産ニーズはまだまだ膨れ上がる

【リスク50 銀行不要の時代  銀行は半分以下になる】

(リスク チャンス)新たな地銀ネットワークによりサービス向上を実現

<ビジネスパーソンに贈る生きるヒント>

・何もかもが不確実な時代であり、来年はどうなっているかは誰にもわからない。

・そういう時代に生きるうえで心に留めておきたいのは、負け組の視点に立たないことだ。

・日本の万年野党と同じで、自分の不遇を周囲や社会のせいにしていたら、状況は何も変わらない。

・ネガティブな考えは何も解決しないし、意味がない。そのためにもデフレマインドをまず、やめること。そして、日本のボトルネックである電力不足を解消すること。

・本書でも述べたが、世間に同調して無難に生きようとするのでは、あえて新聞やメディアが言うことの逆をやるぐらいのほうがいい。それだけで次の1年、2年が全く違ったものになるはずだ。

『週刊東洋経済』  2014.12.27

「危機  著名投資家ジム・ロジャーズ」

<世界規模の破綻が2020年までに来る>

<行きすぎた紙幣増刷は世界に何をもたらすか>

(――東京オリンピックまでの世界経済をどう見ていますか。)

・安倍晋三首相がおカネを大量に刷らせているから、日本経済は当分の間、景気がいいでしょう。しかし、東京オリンピック前に状況が悪化し始め、日本のみならず、世界のほぼ全土で経済が破綻するでしょう。2020年までに、少なくとも1回は世界規模の破綻が起こります。米国や欧州など多くの国々で、今後6年の間に問題が起こるでしょう。正確な時期はわからないが、たぶん16年か17年でしょう。

(――つまり国債が暴落すると?)

・そうです。国債が大暴落し、金利があがります。株価も暴落します。今すぐにというわけではありませんが、20年までに起こるでしょう。世界規模の経済問題が発生し、ほぼすべての人が影響を被るでしょう。

<安倍首相は円安誘導で日本を破滅に追い込む>

(――なぜ破綻が起こるのですか。)

・大半の国々では4~6年ごとに経済問題が発生しています。だから、もうじき、いつ起こってもおかしくない状態になります。

 今の景気浮揚は、日本や米国、英国など欧州の国がおカネを大量に刷ったことによる人為的なものです。

(――破綻を回避する道は。)

・今のところ、防ぐ手立てはありません。(何をしても)非常に悪い状態になるか、少しましなものになるかの違い程度でしょう。いずれにせよ、世界経済は破綻します。

・日本は減税をし、大型財政支出を打ち切るべきです。人口問題対策も

講じなければなりません。どうせやらないでしょうがね。仮にやったとしても、問題は起こります。しかし、(何もしないと)16~18年に事がうまく運ばなくなったとき、問題が表面化するでしょう。

・安倍首相は、「日本を破滅させた男」として、歴史に名を残すでしょう。投資の世界の人たちや、(金融緩和)でおカネを手にしている人たちにとっては、しばらくは好景気が続くでしょうが、安倍首相が過ちを犯したせいで、いずれはわれわれ皆に大きなツケが回ってきます。

(――日本は、東京オリンピックがあるから、少しはマシ?)

・いや、逆かもしれません。オリンピックで大量におカネを使い、債務が増えていくため、状況が悪化する可能性があります。1億2000万人強の日本の人たちを、オリンピックで救うことはできません。

(――円安誘導が間違っている?)

・最悪です。短期的には、一部の人が恩恵を受けますが、自国通貨(の価値)を破壊することで地位が上がった国はありません。この2~3年で、円は対ドルで50%も安くなりました。このことが日本にとってよいはずはありません。

<『日本を破滅させた男』として安倍首相は歴史に名を残すでしょう。>

(――以前「米国は世界の警察をやめるべき」と言っていました。オバマ大統領は実際そう宣言しました)

・米国がおカネを大量に刷るのをストップし、(世界の)人々に対し何をすべきか、あれこれ言うのをやめるとしたら、世界にとっても米国にとっても素晴らしいことだと思います。しかし、私はオバマ大統領のことは信じません。

・多くの米国人は「米国が他国にあれこれ指図すべきだ」と思っています。私は、そう考えない少数派の一人です。「米国の言うことを聞くべきではない」と考える人たちが世界中に増えているのに、大半の米国人は今でもそう思っています。

 日本でも「米国に指導してもらうべき」だとみんな考えているのでしょうが、それは間違い。自分で考えるようにしなければなりません。

『自民党ひとり良識派』

村上誠一郎   講談社   2016/6/15

誰よりも自民党を愛するからこそ覚悟の正論!

<日本をおかしくした5つの法律>

・私は最近の自由民主党の方向性を非常に心配しています。

 昔と違ってなぜ自由闊達な議論のできない「不自由民主党」になってしまったのか。

・私の自民党衆議院議員生活30年間、自民党が国会に提出した法案で、私が猛然と反対を表明した6つの法案があります(うち一つは廃案)。

1987 スパイ防止法(廃案)

1993 小選挙区比例代表並立制

2005 郵政改革法案

2013 特定秘密保護法

2014 公務員法改正案

2015 集団的自衛権の行使容認

 これらの6つの法案によって自民党は徐々に変容し、現政権による集団的自衛権の行使容認」という、解釈改憲、立憲主義の否定に至るのです。

<小選挙区制導入で劣化した議員の質>

・国民の支持率が高いあいだは官軍ですから、政権の言いなりになって、ウケのいい政策だけを言っている方が楽ではないでしょうか。自らあれこれと政策を考える必要がない。ただ、党の言うことに、従っていればいい。

 逆に従っていないと、次の選挙では公認はもらえないし、比例代表では、よい名簿順位をもらえなくなります。

 小選挙区比例代表並立制とはそのように政治家が選挙とポストだけを考えてしまうようになる制度なのです。その結果、選挙とポストのすべてが官邸や党幹部次第ということになるのですから、時の権力者の言いなりになってしまう危険性をはらんだ選挙制度だと私は思います。

<言うことを聞けないのなら自民党を辞めろ!>

・「自民党をぶっ壊す」

 というのが、その時のセリフですが、実は特定郵便局というのは、自民党田中派以来の経世会の有力な支持母体です。「自民党の経世会支配をぶっ壊す」というのを感じました。

 ともかく、小泉政権の郵政選挙で「郵政民営化」に反対した自民党の政治家はすべて公認を取り消され、その上に刺客まで送り込まれました。

 郵政民営化反対を言ったら政治家が政治生命を奪われたのです。「俺の言うことを聞けないのなら自民党議員を辞めろ!」と。

<小選挙区比例代表並立制は即刻廃止せよ!>

・小選挙区制はできるだけ早く見直すべきだと思います。

 小選挙区制が政権交代で民主党中心の連立政権をもたらして失敗、さらに解釈改憲を許す遠因となったわけですから。

 衆議院選挙制度の抜本改革を目指す議員連盟は2011年に発足しています。中選挙区制の復活を議論する議連で、選挙制度に欠陥があるというのは、今や自民党、民進党はもちろん、社民党や共産党など各政党すべての共通認識なのです。

・そもそも、私が最初から反対していたように、斡旋利得罪と連座制の強化を行っていれば、選挙制度を中選挙区制から小選挙区制にしなくても、金のかからない選挙ができたのです。

 ちなみに、私が考える選挙制度改革は、150選挙区定数3人は良いとしまして、実現は難しいでしょうが、一人2票制にするのはどうかと考えています。

 義理やしがらみで1票を投じる有権者も多いでしょうが、残った1票は、政党なり政治家の政策に対して投じてもらいたいのです。もちろん、2票とも、継続的に支持している議員に投票しても構いません。

 これによって、個々の政治家の政策の継続性がある程度、担保されますし、人の顔色、雰囲気、風頼みといった、およそ政策とは無関係な事柄が政治活動に悪影響を及ぼすことを排除できるのではないでしょうか。

<派閥崩壊がもたらしたもの>

・中曽根首相から、2回連続の当選の重要性を指導していただいたというわけです。

 さらに、中曽根首相自身が、初当選後からずっと、日本の今なすべき政策は何かを考え続け、これと思う政策や提言には真摯に耳を傾け、重要だと思う政策等はすべて大学ノートに書き留めてきたという話がありました。

 私は中曽根元総理の精神を取り入れ、今も政治活動のため収集した資料や、制作をパワーポイント化して、国政報告、講演の場ではすべてパワーポイントを使って説明することにしています。

<河本派に所属した理由>

・このような環境の中で育った私は、東大に進学したあと、司法試験を目指していました。ある日、農林大臣、郵政大臣、三木内閣の官房長官を歴任した、当時、三木派の重鎮だった井出一太郎先生が私に会いたいと言ってきました。

 井出先生は、私の顔を覗き込むようにしてこう言いました

「君は票が取れそうな顔をしているな」

・「政治家には休みはありません」

 そのときに河本先生からは、座右の銘が“政治家は一本の蝋燭たれ”だということなどを伺いました。蝋燭は、わが身を焦し周囲を明るくするのだ、と話されました。

私は、この先生についていこうという決心をしたのです。

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