非民主国家が日本の周りに三つも存在して、しかもそれが束になってかかってくる恐れがあるわけだから、どうしてもGDP比3%の防衛費をつぎ込んで国を守らなければいけない。(1)
(2025/4/3)
『高橋洋一のファクトチェック』
2024年版
高橋洋一 ワック 2024/3/25
<国内政治編 派閥解散も政局である!>
<財政健全化推進本部は財務省による政権支配への足固め>
・財務省は「健全化」と言うけれど、はっきり言えば緊縮財政と増税を虎視眈々と狙っているだけだよ。
・IMFは2018年から、パブリックセクターバランスシートというきちんとした世界何十ヵ国の統計を出し始めた。
・ちなみに資産超過8%、確か8~9%と書いてあったけれど、これはG7の中では2番目にいい数字です。1番はカナダですけどね。だから日本の財務状況はかなりまともですよ。
・ほら森永卓郎さんの『ザイム真理教』という本が話題になっているでしょう。「日本は財政赤字で大変だ」というのは財務省の大ウソで、国民は洗脳されているだけだという内容だから、大手出版社から軒並み出版を断られたらしい。
<私がこれほど財務省に嫌われているとは思わなかった>
・そこら辺の話をちょっとすると、安倍さんに「官邸参事官の霞が関公募に応募して官邸に来てよ」って言われたわけ。そうしたら、財務省が「ダメだ。絶対に行かせない」って反対するんだ。そうしたら安倍さんが「じゃあ僕のところへ書類を持って来なさい」って言うから、安倍さんのところへ直接、応募書類を持って行った。それで財務省もどうしようもなくなった。そういう経緯があるんだ。
【――就職先がなくなるとか?】
・それ以上に、社会的に貶められることが山ほどあるんだよ。でも、いまはありがたいことにこういうYou Tubeチャンネルがあるから、自分の主張を発信できる。いくらやられてもYou Tubeで反論できるからね。昔はそういう手段が全然なくて大変だった。
<総理があわてて被災地視察に行ってもハタ迷惑なだけ>
【――岸田総理が能登半島地震の被災地入りしましたが、行くのが遅いと批判している人たちがいます。】
・震度7クラスの大震災というのは過去にさかのぼって見てみると、関東大震災がいまからちょうど100年前の1923年に起こっている。それからはずっとなかったのに、1995年の阪神淡路大震災以降は、頻繁に発生しているんだよ。2004年の中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、そして今回だ。
<23年ぶりに代表交代! 日本共産党の「民主集中制」って何?>
・世界の共産党の中でも23年間トップを続けるというのはあまり例がない。すごいね。でも志位さんはたぶん院政を敷くと思う。
・共産党内で党首の公選制導入を訴えた人がいたでしょう。公選制って選挙だよね。共産党で選挙はないよ。選挙なんかしたら共産党じゃなくなっちゃう。だから、その人は除名になってしまった。
・民主集中制でやると、こういう党代表を選ぶ時も自由に立候補できないんだ。
・そういう人が一定数いることは間違いない。ただ、世界の中で共産党がいまも残ってちゃんと活動している国は確か5ヵ国くらいしかないからね。多くの国では共産党自体が禁止されているんだけれど、日本は優しい国だから共産党は残っている。
・共産党は思想が過激すぎるから禁止している国もけっこうある。
<国内経済編 日本経済の復調を阻害する輩>
<日本のGDPがドイツに追い抜かれたおバカな理由>
【――日本のGDPが世界4位に転落、55年ぶりにドイツを下回るというニュースは、ちょっとショックでした。ドイツに追い抜かれた原因は何でしょう。】
・この30年間、デフレが続いて給料が上がらなかった結果ですね。20年以上も給料が上がらないと、さすがに苦しい。とくに、1990年から2010年末まではほぼ横ばいだったからね。それ以降はアベノミクスで少し上がったけれど、なかなか追いつかなかった。でも、円安が続けばGDPは上がる。
・ただし、こういう時はいろいろな原因を考えて、それを考慮して数字を補正して再計算してみるといい。日本の場合、もしもデフレがなかったらどうだったか、ものすごく少ない政府投資が普通に行われていたらどうだったか。
・政府投資は「社会的割引率」と密接な関係にある。社会的割引率というのは政府内の金利と考えてもらっていい。金利が下がっている時は投資が伸びるでしょう。だけど、社会的割引率(金利)を高めに設定すると投資が落ち込む。その単純明快なメカニズムが、失われた30年のうちの20年を支配していたんです。
社会的割引率が4%というとんでもなく高い数字に設定されていて、普通の金利が1%になってもそれは変わらなかった。だから、政府投資が伸びず、それにデフレが加わった。日本のGDPがずっと横ばいを続けたのは、この二つが大きな要因だったと私は思います。それさえなければ、タラレバで日本も3倍くらいにはなっていた。
【――4%という数字はどこから? そのまま変わらないのはなぜですか。】
・4%と決めたのは30年前。その時の金利が4%だったから同じにしたんです。ただ、「これは金利に応じて適宜見直すものとする」という注釈を付けたのに、その後、見直されることはなかった。それは、4%のままなら公共投資は増えないから、財務省と国交省にとって好都合だったからだとしか私には思えない。
・岸田政権になってから、ついに「4%を変える気はありません」という本音をむき出しにした報告書が出ました。それが「公共事業評価手法研究委員会における議論」です。
「過去との比較・継続性の観点から社会的割引率を4%として維持することは妥当」「制度策定から2年経ち、4%が固定観念化してしまったことが問題」……と言いつつ直さない。20年間やりあった最終的な答えがこれ。
【――どういうことですか?】
・直したくないってことだよ。社会的割引率を下げると公共投資が2倍3倍に膨れ上がる。それでいいじゃないかという私のような人と、国債が2倍3倍に膨らむのは嫌だという勢力との争いなんだよ。
【――国債が増えるのが嫌なんですか。】
・公共投資は国債でやるから。国債を増やして公共投資をするのがいいか、国債を抑えていまのまま公共投資を少なくしたいかという争いなんだ。私に言わせれば、公共投資が抑えられたために災害復旧がものすごく遅れて、それが経済にも悪影響を及ぼしています。
【――この「公共事業評価手法研究委員会」の報告書は、ずっと4%でいくという宣言?】
・そうでしょう。反対勢力が声をあげないとね。
【――でもIMFは、日銀に対して段階的に政策金利を上げろと言っていましたが?】
・あれはIMF協定第4条に基づいて加盟国の経済情勢を審査するという政治的な協議の結果で、パブリック・セクター・バランスシートのような技術的なものとは別なんだよ。
・とはいえ、ドイツが日本を追い抜いたのには、特殊な事情もある。実は、EUの中で、ドイツだけに圧倒的なアドバンテージがあるんだ。そのことは、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデルが提唱した「最適通貨圏理論」で説明できる。
EU加盟国のほとんどはユーロという同じ通貨を使っているよね。すると経済力によって、すごく有利になる国と不利になる国とが出てくる。ドイツのような経済力のある中心国が有利になって、経済力の弱い周辺国は不利なんだ。だからイギリスとかスウェーデンのように賢い国はEUには加盟してもユーロには参加しなかった。
【――あと一押しというより、円安とインフレを是正しろという論調が多いようです。】
・それは逆だよ。インフレは、それが給料に反映すればいいわけだし、円安のおかげで海外で儲けさせてもらえるんだから。
外為で30兆円以上も儲かって日本政府は大喜びしている。その一方で、民間では損している人もいる。だから、日本国全体を考えれば、政府の儲けをすべて吐き出すべきなんだ。
<なりすましにご注意! 本当のタカハシ流株式講座 >
・ただし私のポリシーとして個別株の話はしません。日経平均とか全体の話だけにします。そのうえでお話ししますよ。
よく聞かれるのが、最近の株の上がり方はどうですかということです。
株高と言われていますが、何のことはない、株価がやっと30年前と同じになったというだけで、これはひどい話です。
・1980年くらいまでは理論株価通りだったけれど、1980年から90年は理論株価より実際の株価がずっと上になっていて、これがバブルですよ。理論株価をかなり上回っていて2倍くらいになっている。
【――企業の成長率を高めるには?】
・規制緩和をして、これまでできなかったことをできるようにすると企業の成長率がグッと高まる。規制緩和で企業の成長率を高めて金融政策で金利を下げると株価は上がりやすい。
【――高橋さんの言う規制緩和は、何でもいいからまずやるということですか。】
・何をやっていいかわからない時には関係業界に要望を聞けばわかる。それで規制が合理的かどうかを判断して規制緩和をしてあげるとその産業の成長率は高まるからね。
【――各省庁でいくつずつ出しなさいみたいに指示すれば出てくる?】
・山ほど出てくるよ。こっちが選んでやるよりは業界の人に聞いたほうが話は簡単だからね。聞けばたくさん出てくる。
【――なりすましのXはすごいですね。高橋さんと同じアイコンを使って、「私は全力サポートし、週間利益率が10%から30%になる銘柄を無料でおすすめします。以下のリンクから申請してください」って、これは完全な詐欺ですね。】
・本当だよ、私はお金なんて取らずに理論的な話をして、投資判断は投資家それぞれの自己責任に委ねますから。
【――皆さん、なりすましにはくれぐれもお気をつけください。】
<30年もかかった株価最高値で大騒ぎする方がおかしい>
【――日経平均株価がバブル期以来の3万5000円回復。株価が絶好調なんですが。】
・バブル期以来って、これ30年ぶりぐらいの話でしょ。それをすごいって言うより、30年間ずっとそれ以下だったほうがおかしいんだよ。
【――30年前にやっと戻ったということですか。】
・ひどい話だよ。30年間何も進歩がなかったということだから。喜ぶような話じゃない。この間の世界では、普通の政策をとっていれば株価は上がったんだから、日本が普通じゃなかったということですよ。
・だから日本のバブルなんて世界的に見れば大したことはなかった。それなのに財政政策、金融政策ともに引き締めを猛烈にやりすぎてしまったのが失敗だった。
それで「財政状況もそんなに悪くないし、金融だって別に引き締めることはないのだから」というのでやったのがアベノミクスなんだよ。アベノミクスをやっている限り株価は上がると私は思っていた。現に上がったんだけれど、その後に民主党が決めていた消費増税がガツンときて、強烈パンチを食らった。
いくらかでもダメージを減らそうとして、安倍さんが実施時期を少しずらしたけれど、二度目の増税がある。たまらないよね。戦艦大和が魚雷を2発食らったようなものだからね、本当にヘトヘトになったけれど、なんとか持ちこたえて、これで大丈夫かなと思っていたら、今度はコロナ禍。魚雷を3発も食らってよく沈まなかったと思うよ。
【――株価が上がっても生活が楽にならないという不満をよく耳にしますが。】
・株式市場だけが儲かって、株を持っている人はいいけど、持っていない人の懐は温かくならないという話ね。これはものごとには順番があるということですよ。株価が上がると次に少し遅れて雇用者所得が上がることがわかっている。株価というのはどちらかという資本家サイドの話だから、そちらが先に上がるだけ。就業者数とか雇用所得というのは後から上がる。
・それで待っていると、株価が上がって半年くらい良い状態が続くと、まず名目賃金が上がる。いまはインフレ率が高いけれど、そのうち名目賃金がインフレ率を追い越すから実質賃金が上がるようになって、失業率が2.5よりちょっと下くらいでずっと張り付く。こういう状況になるともう賃金はグーンと上がっていくよ。
だから、ものは順番で、株価上昇はその最初に出てくる現象なんだ。
【――じゃあ落ちる時もそういう順番で落ちていくということですか。】
・資本家のほうが先に下がるのが一般的なんだよ。雇用労働者の賃金は下方硬直性があるのでけっこう保護される。資本家の配当所得とかはすぐ下がるけどね。
【――給料というのはそう簡単に下げられませんからね。】
・そう。だから労働者は賃金が上がるのも遅いけれど、下がるのも遅い。
<経団連が大喜びで自民党に献金する理由>
【――自民党に毎年24億円献金、経団連会長「何が問題なのか」と発言、というのがニュースになっていましたけれど。】
・献金するかわりに、租税特別措置法にしたがって税金をできるだけ免除してもらうよう経団連として働きかける。その額は1兆円近いからね。それだけ払わないですむんだから、24億円献金したって租税特別措置が維持できるなら安いものだとしか言いようがない。
【――費用対効果がメチャクチャいいですね。】
・いいどころか400倍だよ。これはやめられないよ。国民としては租税特別措置で1兆円のしわ寄せがどこかにきていると考えたら腹が立つ。そもそも、そのためにおよそ1兆円が国の減収になっていることはあまりに知られていないから、まずその事実を知ったほうがいい。
これを租税歳出というんだけれど、ふつう歳出というとただ補助金をもらうだけだと思うかもしれない。でも実は減税を受けるのも歳出なんだよ。租税特別措置だと恩恵を受けるのは経団連に属している大企業ばかりですよ。
【――大企業であればあるほど、その傾向がある?】
・うん、租税特別措置をうまく使ってね。たとえばトヨタとかソフトバンクは法人税を払っていないこともあった。
【――財務省としてもそこに手を突っ込まれるのは嫌なんですか。】
・経団連を味方につけているほうが有利だと思っているからね。消費増税に賛成してくれるなら1兆円くらいどうってことはない。
【――それはどうやったら変えられるんですか。】
・自民党税調がやっているからなかなか難しい。利権の巣窟だからね。財務省がそこを仕切っていて、特定のところに恩恵を与える見返りとして、消費増税とかの時に賛成してくれれば元が取れる。そういう仕組みなんだよ。
<修理もできないEV車は使い勝手が悪い!>
【――トヨタが2026年にヨーロッパの新車販売の2割を電気自動車にするという記事を読みました。EVは今後、自動車産業の主流になるのでしょうか。】
・欧州はいまやEVが中心だから、トヨタもビジネスということではやむを得ないんでしょう。率直に言うと私もEVに興味があることはあるんですよ。ただ、現状だとEVは故障した時に修理ができないというのが気になるんです。
はっきり言うとEVは巨大なスマホみたいなものだから、直すといっても、地元のディーラーにはできませんよ。部品を修理・交換というわけにはいかないでしょう。どこか調子が悪いと、すべて新しくしなければならない。全取っ換えですよ。そこがいつもちょっと気になっている。
だから、いくら補助金が出たって中国のEVを買うつもりはいまのところ、まったくないよ。
<なぜ世界的IT企業は日本で育たない? 金融業界のIT化は?>
【――ネットでもよく話題になるのですが、日本から世界的なIT企業が生まれないのはなぜなんでしょう。】
・日本はそういう先進的な分野に弱いとは思えない。そこそこ面白いアイディアもあるからね。たぶん、社会の仕組みや教育のせいもあるんじゃないかな。「みんな同じがいい」とか「出る杭は打たれる」とかいった日本的な社会の傾向があるように思うね。もっと自由にやらせていればずいぶん変わっていた可能性がある。
【――アメリカでそうならないのはなぜでしょう。】
・自由闊達で、下剋上の世界だとみんな割り切っているから、既得権がない。アマゾンもグーグルも新興企業でしょう。経団連のようなものもないから、昔の企業なんかあっという間に潰れる。規制というのもあまりないから、規制緩和をめぐる議論をすることもなく、自由にやっていいという発想がある。そうすると新しい人は伸びやすい。
日本の場合は既得権にどっぷり漬かっている人たちが規制緩和に大反対している。規制緩和が嫌いな人って、みんな既得権に結びついているんだよ。
【――もう一つお聞きしたいんですけど、今後クレジットカード会社はどうなりますか?】
・金融業界も規制の塊の世界でね。たとえば銀行は昔、クレジットはあんまり綺麗な仕事じゃないからというのでぜんぶ子会社か関連会社にやらせていたんだよ。だからクレジット会社は利ザヤで儲けていたんだけれど、銀行の本業のほうがなかなか大変になってきて、背には変えられないから、どんどんクレジット業務を浸食し始めた。そうすると従来のクレジット会社は苦しくなると思うよ。
【――QRコード決済のPayPayのようなサービスはどうでしょう。】
・銀行の決済がちょっと高かったり不便だったりすると伸びる可能性はある。でもあれは融資じゃなくて決済だから、デジタル通貨が普及したらなくなるよ。そもそも間に立つ意味がなくなる。みんなアプリで終わっちゃうもの。究極的には、中央銀行がデジタル通貨を発行すると金融業界はすべて要らなくなるよ。
【――逆に言うと、デジタル通貨はなかなか普及しないということですか。】
・金融業界も生きていきたいから、既得権者たちが中央銀行のデジタル通貨発行に猛反対する。中央銀行が本格的に進出したら、デジタル通貨関連業者は全員討ち死にですよ。
【――地銀でまとまって都市銀行みたいになるようなことはないんですか。】
・いまさら割り込めないでしょう。信用金庫は地元の商店街と昔ながらのやり方を維持して生き残ると思うけれど、地方銀行にはこれからイバラの道が待っているよ。金融業界もいよいよIT化が進むからついていけないところも多いだろうしね。
【――IT化でだいぶ様変わりしそうですね。】
・クレジットカードだって昔なら暗証番号を入力すればそれで終わりだったけれど、いまは本人認証サービスの3Dセキュアとかワンタイムパスワードみたいに複雑になっているでしょう。そのうち目の認証だけですむようになるかもしれないけれど、手にチップを埋め込むみたいな形も考えられる。そういうものにも対応しなければならないしね。
SFの世界がやがて現実のものになる。資本力のないニッチなところは少しずつ脱落していくことになるよ。
<中国問題編 「独裁」と「親中」という病>
<中国恒大に清算命令でスプラッター映画のような光景が現出する>
【――ついに香港高裁が中国の大手不動産会社、恒大集団に清算命令を出したというニュースが流れましたね。】
・ただ問題はこれが氷山の一角だということ。恒大だけじゃなくて、危ない不動産関連企業は山ほどあるからね、これを全部こういう形で破綻認定をしていくかどうかがポイントだよ。
・だから先進国ならどこの国でも、裁判所に財務諸表を持っていって債務超過ですと言えば破産認定してくれる。それなのに中国の裁判所はなかなかそれに応じなかった。
・今回の恒大だけで50兆円というレベルの話だから大きいよ。日本の場合は不良債権ぜんぶ合わせて100兆円、GDP比に換算すると20%だった。中国は民間の不動産関係だけじゃなくて、地方政府の子会社みたいな第3セクターもあるから、それをぜんぶ足し算すると3000兆円。GDP比200%だ。
・いずれにしろ中国経済を揺さぶることは間違いないよ。習近平さんがどこまで許すだろうかと思います。
・こういう話は、手を着けるのが遅くなればなるほど損失が大きくなるの。
もっと前にやっておけばよかったのにと言うしかない。恒大のように潰れそうなところはほかにもたくさんあるはずだから、中国経済もいよいよお先真っ暗だね。
【――中国の経済活動は先細りになっていく?】
・もうすでに下り坂になっている。中国のGDPの30%は不動産関係なのに、不動産取引はすでにほとんど行われていません。
【――軍事費に回すお金がなくなるというところまでいきますか。】
・最終的にはそうなるはずなんだけどね。やはりGDPの200%の処理というのは前代未聞だよ。世界のバブルの標準というと、まあGDP比20%ぐらいのバブル崩壊はよくあるけれど、200%の崩壊というのは見たことがない。これはまともに処理しようとしたら国家が破綻するというようなレベルですよ。
<不動産会社に続いてシャドーバンクまでゾンビと化した>
【――「中国シャドーバンク大手『中植』が破産申請。不動産危機で急転落」という記事が出ていました。】
・いよいよ不動産会社から、そこに資金を出していたシャドーバンクに話が及んだね。
・ここ(「中植」)は大手のシャドーバンクで、けっこう有名なんだけれど、正直に言うと、シャドーバンクの実態は、データも何もないから、よくわからないんだよ。中国政府が公表しないしね。
・日本で言うと地方自治体が第3セクターを作って、そこで資金調達をして、どこかにお金を流す、そんな仕組みに近いね。
【――そんなのアリなんですか】
・まず、根っこにある不動産会社の破産をきちんとやる。そうすると、それに応じて融資していたところも破産する。そうするとシャドーバンクが破産して地方融資平台も破産する。そういうことにならざるを得ないよ。
【――破産を認めたらとんでもない数になるから習近平は嫌がっているんですか。】
・そうなんだろうね。でも、もはやそうするしかないんだから、ゾンビを倒すか倒さないかだけなんだ。もともとの人間には戻れないと諦めさせられるかどうかだよ。
【――経済が破綻したら、その規模は日本のバブル崩壊の比ではない?】
・でも中国の場合は、このシャドーバンクと地方融資平台を合わせて3000兆円と言われている。そうすると中国のGDPは1500兆円。この数字はインチキかもしれなくて本当はもっと小さいかも知れないけど、これを正しいと仮定すると、それでも損失はなんとGDPの2倍になる。
・さすがに、世界でもこれだけ大きなバブル崩壊はないね、これは。どこの国だってだいたいGDPの2割程度だからケタが違う。中国はその10倍だから、凄すぎるよ。
【――進出している日本企業はどうすればいいのでしょう。】
・早く逃げなければゾンビに取り囲まれておしまい。ゾンビの群からどこまで逃げられるか。それくらいしかないね。
<民主化なしに経済発展はない……なんて言ったら即逮捕!>
【――2023年12月15日に「『中国衰退論』摘発を示唆。国家安全部門が経済でも強権」というニュースが報じられました。】
・この反スパイ法が恐ろしいのは、中国の国外にも「域外適用」されるということです。日本でそういう話をしても違反になる。もちろん、私のYou Tubeの番組も完全にアウト。高橋洋一がYou Tubeを使って「中国衰退論」を世界中に広めたというので、中国に行ったら拘束される可能性が大いにあります。
・現実に中国はこれまで1人当たりのGDPが長期にわたって1万ドルを超えていないから、中国経済が発展を続けていても、私の理論とはまったく矛盾しないんだよ。
・逆に私はすごく早い段階から「中国崩壊論」に対して「中国経済はまだ伸びる。ただし1人当たりのGDP1万ドルという天井があるから、そこでストップする」と言ってきた。それがいま現実のものになってきているわけです。
そこで、私のその主張がどういう理論に基づいているかを説明しておきましょう。政治的な自由のない非民主主義国家では経済が発展しない、つまり「政治的な自由がないと経済的自由も失われる」というミルトン・フリードマンの理論がある。「民主主義指数と1人当たりGDP」というグラフはそれを数値化したものです。
・私のこの話に中国の周辺国の人たちがけっこう関心をもってくれていて、ちょっと教えてくださいという学者や研究者からの問い合わせも多いんだよ。
【――今後も中国のGDPは1万ドルの手前でずっとそのままですか。もしかしたら下がるかもしれない?】
・自然科学じゃないから、それはわからないけれど、グラフ上の1万ドル上限ラインを超えることはあるでしょう。でも、一瞬超えるとしても長続きせずまたもとに戻る。その繰り返しだろうね。
グラフを見てもらうと、民主主義指数が低いのに1人当たりのGDPがすごく上にある国があるけれど、それはすべて産油国なんだよ。
【――あの国は自由を認めると大混乱に陥るのではないでしょうか。】
・そうかもしれない。でも一時的に混乱しても自由を与えたほうが長期的に見れば経済成長の面では絶対にプラスのはずですけれど、でも、その時にはもう共産主義体制ではなくなっている。一党独裁が崩壊して、中国はバラバラな国に分かれるでしょうね。
・日本政府からも「行ったら危ない」と言われているし。香港だって国家安全法が適用されたからね。
<中国への海外投資もマイナス、もう経済崩壊は隠しきれない!>
【――中国への外資の投資が、2023年7~9月期はマイナスになったというのですが、これはいよいよヤバくなったということですか。】
・中国の国内経済自体が怪しくて、投資の対象としてだんだんヤバくなってきたということでしょうね。国内経済が伸びているのなら中国への投資もそれなりにあったはずだけれど、成長が鈍化しているのが明らかになってきたからね。とくに不動産不況がはっきりしてきた。
【――外貨投資がマイナスになったことは中国国家外貨管理局という役所が公表しているんですが、これはもう隠しきれなくなったということでしょうか。】
・そうでしょうね。実際はもっとひどいことになっているかもしれない。もともと中国の外資規制では、いったん投資した人間はそう簡単に逃げ出せないようになっているのです。それでも、みんな逃げ出し始めているということだからね。民主国家だったらありえないことだけれど、投資家が逃げ出さないように共産党政府が統計をごまかしたとしても、それでも100%嘘はつけない。
【――発表では1兆7700億円のマイナスだということですが、もっとあるということ?】
・あるかもしれないよ。中国の場合、統計はすべてインチキだから、はっきりしたことはわからない。李克強さんは、正確なGDPがわからないから、電力消費と鉄道輸送、それに銀行融資の額を見てその時々の経済状況を判断していた。これを李克強指数というんだけれど、私が見る限り、李克強さんがその話をしたとたん、国家統計局がその数字をも操作するようになってしまった。
電力だけは隠しきれないにしても、銀行融資額なんかどうにでもできるし、鉄道輸送も鉄道をすべて追っていかないとわからない。唯一、電力だけは夜間の明かりでけっこうわかるんだよね。それを衛星写真でずっとウオッチしている人がいてね、中国はGDPを3割がたごまかしているという研究がありますよ。
<メディア編 国民をミスリードする不勉強な左巻き>
<私のあとは“AIタカハシ”に任せようかな>
【――EUが生成AIの規制をするというニュースが入っています。今後AIはどうなっていくのでしょうか。】
・AI規制をするというのは、それによって労働者をどのくらい守られるかということだと思う。
・2023年11月に全米映画俳優組合がストライキを起こしました。AIを規制しないと、俳優の肖像をスキャンするだけでいくらでも映像ができてしまう。そうなると、これまでのような雇用が維持できなくなる恐れがあるというわけです。
AIが人間の代わりになる未来に欧米人は強い危機感を持っている。日本人はあまり気にしていないみたいけれど、その懸念は当然でしょうね。AIの普及によって奪われるのはどんな職業かというようなことを私もよく聞かれるんだけれど、はっきりしているのは、ルーティン的なもので、単純かつ規制によって守られている職業が危ないということです。
その典型が“サムライ業”つまり武士の「士」がつく職業。たとえば税理士とか弁護士です。
・税理士の仕事だって税法とデータを入力すればあとはAIがやってくれる。ちなみに私の会社ではDX化がほとんど終わっているから、国税庁御用達ソフトにデータを突っ込んでしまえば、税理士よりはるかに間違いは少ない。しかも国税庁の御用達だから、たとえ間違っていてもこちらの責任じゃない。
【――国税庁の責任だから追及されることはない。】
・そうそう、だから下手に税理士に頼むより税務申告が簡単なんだよね。もちろんDX化が完璧にできていることが前提だけれど、そうすれば税理士に限らずサムライ業の人はほとんど要らなくなってしまう。
弁護士もそうです。極端なことを言えば、過去の判例を検索して似たような事例を探すだけの仕事だからね。過去の判例を見ればだいたいの相場感がわかるじゃないですか。
・過去の判例をいろいろとあげながら弁護するのが腕の見せどころだったけれど、いまはもう最高裁で判例をすべて公開しているから、ネットで検索すれば誰だって調べられる。
【――そういう中で生き残っていけるのはどういう人でしょう。】
・もちろんAIが100%何でもできるわけじゃないから、たとえばすごくDXに詳しくて、AIの限界がわかる人は生き残れると思う。
【――そうなるとAIが使いこなせる人のところに仕事が集中するのではありませんか。】
・DX化がどんどん進めば、それに応じてAIの活躍度も変わる。そのDX化自体を進めるのは人間だから、DXに詳しい人はAIに対抗できるけれど、DXがわからないと、アッという間に淘汰されてしまう感じがするね。
【――それは一般のサラリーマンも変わりませんね。】
・私自身、データ分析が考え方の基礎になっているから、発想や思考パターンがAIに近いんだよ。だから、まともにぶつかったら私がAIに負ける可能性もある。この年になると、もうどうでもいいんだけれど、どうせなら、電子化されている私の著作すべてとYou Tubeのアーカイブをもとにして“AI高橋”を作ってもらいたいね。
【――高橋洋一さんの後継者を育てないのかという質問がよく来るんですが……。】
・これがいちばん速くて簡単な気がするね。私の著作は確か300冊近くあるんだよ。それと映像とをすべて読み込ませてデータ化すれば、思考パターンはすごく単純だからいろいろな問題に対応できるんじゃないかな。新たに起きた問題についても“AI高橋洋一”がパパッとしゃべるんじゃないの。
<映画『沈黙の艦隊』は現実の核の脅威を描いている>
【――金正恩がロシアを訪問しました。北朝鮮とロシアが手を結んだのは大問題ではありませんか。】
・プーチンがほしいのは言うまでもなく砲弾・弾薬。そして最終的には兵隊を貸せということです。それに対する金正恩の交換条件は明らかに軍事技術ですよ。
【――核ですか。】
・北朝鮮とロシア、中国が連携することになったら、日本は大変な状況に直面するよ。
これまで日本はずっとGDP比1%の防衛費ですんでいた。ところが、ロシアがウクライナに侵攻したのを見て、「三正面作戦」がにわかに現実味を帯びてきた。「敵の敵は味方」というわけのわからないロジックを持つ非民主国家が日本の周りに三つも存在して、しかもそれが束になってかかってくる恐れがあるわけだから、どうしてもGDP比3%の防衛費をつぎ込んで国を守らなければいけない。
これはもう現在の世界情勢では不可避で、この流れは変えようがない。日本だけいくら抗ったってどうしようもありません。
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