私が100歳を超えてぼけずにいるのは、普段からさまざまな工夫をする癖がついていたからではないかと思う。もちろん、物をよく噛む、というのも、脳の活性化に深く結びついた習慣だろうと思うが。(3)

<体のあら探しはしない>

・医師は「ここからここまでが正常、これを外れると異常」という基準を作り、国民の健康を管理してきました。

・健診(健康診断)での基準値が個人を判断するすべてになってしまったのです。正常値から少し外れたからと言って、すぐに影響が出るわけではありません。

・善玉と呼ばれるHDLコレステロールを増やすには、ジョギングやウォーキングなど、適度な有酸素運動がお勧めです。

【「正常という病」に取り憑かれない。】

<「良い数値」は人によって違う>

・健康診断などで、いわゆる“正常値”から外れているからダメだと落ち込む必要はまったくありません。

・ほんの少しの環境変化で、人体の数値はコロコロと変化します。日常で変化するものを、ある一時点だけで評価することに無理があります。

 この血圧ですが、実は正常値の解釈がバラバラです。

・しかし個人の体質によって血圧の意義は異なります。

・だからこそ、ある一定の数値に固執して重箱の隅をつつくような議論はしなくて良いのではと思います。妥当性の判断は単純ではありません。

【自分にとって適切な状態がわかればいい。】

<がんは「気づきを与える病」と言う人もいる>

・がんについて、むやみに怖がらなくて良いと思います。

 今や国民病などと揶揄されるがんですが、毎年86万人の日本人が何らかのがんになり、亡くなる人の3分の1は、がんが原因です。医療名は、悪性新生物、上皮内新生物、などと呼ばれます。

 がんは、どこか外からやって来て体内に住み着く微生物のような存在ではなく、私たちの体の細胞が変異したもの。さまざまな要因で生じます。

 この変異(つまりがん化)ですが、実は毎日のように私たちの体内で大量に発生し、毎日のように大量に消滅しています。

【がんは「この世の残り時間」を教えてくれるものと考える。】

<自律神経のバランスが良いと免疫力が上がる>

・自律神経が働くことで、私たちは生きていられます。

(自律神経をコントロールするにはこうした違いを把握しながら、)

・食事(食べ過ぎ、早食い、偏食などをやめる)

・生活習慣(リラックス時間を増やす、睡眠をちゃんととる、体を適度に動かす)

・五感(視覚、臭覚、聴覚、味覚、触覚を研ぎ澄ます)

・人体は複雑です。偏ると健康的な生活はできません。自律神経のバランスが良いと免疫力が上がります。そのためにも、この三点にくれぐれもご留意ください。

【食事、運動、休息、自分を大切にする暮らしが健康を作る。】

<医学に対して、否定も依存もしない>

・東洋医学は最近、慢性期医療で注目され始めています。

・闘病という言葉にも違和感があります。なぜ自分の体と闘うのでしょうか?気遣う、生活習慣を見直すことで「体を労(いたわ)る」のならわかります。こうした西洋医学による善悪論を軸とした思想に違和感があります。

・一番良いのは、西洋医学と東洋医学の両方をとり入れること。現実的なプロセスとしては、西洋医学で診断(初期治療)してもらい、東洋医学でサポートしてもらう、という方法です。

【西洋医学は急性期の治療に、東洋医学は長期的な体質改善に役立つ。】

<安心してひとりで死ぬための努力と準備を始める。>

<死を心配する人へ>

・私は「あの世」の存在を認知しています。私たちのいる世界とは別の世界(次元)です。簡潔に言えば、私たちはそこから意図(魂の計画)を持ってやって来て、肉体の限界(肉体死)を迎えたら、故郷、つまりその世界に帰還します。これを何度も繰り返すことを、一般に輪廻とか輪廻転生と呼んでいます。

・あの世が存在する事実を理解できれば、実は「死ぬことに対する恐怖」を含めたこの世の問題、人生の多大なストレスが、ほぼ解決できます。

【肉体の死に執着しない。魂が本体では肉体は乗り物。】

<孤独死は悲しい最後ではない>

・つまり、自由意思を持って、世間や周囲が何と言おうと自分で心地良いほうを選択していけばいいのです。

【一人で死ぬことの何が悲しいのか。孤独は悪いと決めつけない。】

<独居を心から楽しむ>

・人口は減っていますが、65歳以上の単独世帯数(いわゆる独居数)は急増しており、この状況は今後も長く続くと言われています。

 だからと言って独居の高齢者が惨めで悲しい思いをしていると考える必要はありません。一人暮らしを満喫する人が私の周囲に数え切れないほどいます。

 出生数も結婚する人も減るので、むしろ今から独居を楽しむ準備に入るほうが賢明ではないでしょうか。私も独居を心から楽しんでいる一人です。

・ロボットやAIなど多様なテクノロジーが開発されているので、今後はそれらを活かした「見守り」や「看取り」の仕組みが役立ちます。

【独居で死ぬ準備は元気なうちにしておく。】

<安心して一人で死ぬための支援はたくさんある>

・何かあったら診てくれる医師(かかりつけ医)も、いないよりいたほうが良いでしょう。

・かかりつけ医者の良い点は、たとえ臨終に立ち会っていなくても死亡診断書を書いてくれる点です。

(自治体も終活を支援しています)

・神奈川県の横須賀市は、「わたしの終活登録(正式名称、終活情報登録伝達事業)」という制度を、同市民向けに2018年5月からスタートしました。

・無縁仏を減らす効果が見込めますが、独居が増える今後を見据えると、まずは安心して独居できる環境への行政支援と言えそうです。同県大和市も終活支援に乗り出しています。

 こうした一部の自治体だけでなく、この仕組みが全国の自治体に採用されれば孤独死のイメージが変わること請け合いです。

【準備さえすれば、誰だって安心して死を迎えられる。】

<「平穏死」を目指す>

・安楽死という言葉も、最近たまにメディアに登場していますが、批判を承知で言わせていただくと、私の見解は次の通りです。

「死を他人に頼むな」

 安楽死したいと公言する人もいますが、心得違いしないようにしたいものです。

・私たちは魂の計画を持ってこの世に降りました。なぜ生まれてきたかと言えば、この世界で多様な経験をするためであり、その経験を持って魂を向上させるためです。この世で活動するために乗り物として肉体をお借りしているのでなるべき傷つけることなく、魂があちらの世界に戻るときにお返しする。これがルールです。

・余計な医療を受けず、自然に任せて死ぬことを「平穏死」と呼びます。延命治療はとくにしません。代わりに緩和ケアが行なわれます。

【平穏に、静かにこの世を去る。肉体は傷つけずにお返しする。】

<お墓を手放すという提案>

・それでもやはり自分の死が、家族や親族、友人、パートナーに、つまり身近な誰かに迷惑をかけてしまうのではと悩む人は多いでしょう。その最もたるものは、お葬式ではなく、「お墓」です。

・墓終(じま)い(お墓を閉じて別の場所に引っ越すこと)も一つの方法です。そこでの引っ越し先は、共同霊園、樹木葬、散骨など、さまざまです。

・献体希望者も増えています。私もある大学に同意書を提出、登録済みです。

【献体という、死んだあとにお役に立つ方法もある。】

<ピンピンコロリには努力が必要>

・死に方に理想を言ってもしょうがないかもしれません。

 あえて言えば、快適なのはピンピンコロリです。昨日まで元気だったのに今日の朝には死んでいた。これが個人的には理想です。

 そのためにも残った人が困らないよう、先ほどから述べているように、普段のコミュニケーションとか、事後に必要な手続きを、ぬかりなくやる。

・強い嗜好性のある、薬物摂取、喫煙、あるいは程度を超えた飲酒などは自分の心身を蝕み、周りへも悪影響を及ぼすのは今さら言うまでもありません。

・ピンピンコロリするには、適度な食事、適度な運動、適度な休息、です。それに加えて重要なのは、心身一如、身土不二、という考え方。

 いずれも「切り離せないもの」という意味が含まれています。心と体は切り離せない、体と土(大地)も切り離せない、ということです。

・ちょっと大きなことを言いますが、理想は「介護ゼロ社会」です。介護される人が減ると情勢も変わります。ピンピンコロリも増えます。まさに安心して死ねる社会です。

【適度な食事、運動、休息。ピンピンコロリを目指して、体と心を大切にする。】

<未来のお金の心配は取り越し苦労>

・この「いくら必要」という喧伝に、くれぐれも気を取られないように。

・わざわざ運用や貯蓄などをしなくても、入ってきたお金の中から最低限を使えば、当然それ以外は余るのですから、ちょっと入り用のときも事足ります。今を余力で生き、今を大切にする。未来はお釣り程度に考える。現在が主で、未来はおまけ。そんなイメージです。

 あと、普段から月ペースと年ペースで「自分の収支」を把握しておくと良いと思います。

・私は資産運用や貯蓄に励まないと述べましたが、物もあまり買いません。

・お金は天下の回りもの、そして天下で回すもの。その原則は忘れておりません。

【必要以上に貯めず、天下で回す。】

<10年後も、明日も、生きている保証はない>

・「人生に定年はないと知り、好きなことをしながらも、ある程度の準備をしておけば、一人で暮らすことも一人で死ぬことも、心配いらない」

 勝手ながらそう展開してきましたが、ご理解のほどはいかがでしょうか?

・人生100年時代などと言われています。

・私が「今を楽しみましょう」と何度も口にするのは、先がどうなるかわからないからです。今まで元気だったのに救急外来に担ぎ込まれ、あっという間に亡くなる人を大勢見ました。未来は不確実性に満ちているのです。

・でも、活力になるのは夢や心配ではありません。

・人間は想定外のタイミングで死んだりします。だからこそ今を楽しむこと。

【将来の不安は、今の活力にはならない。今を楽しむ。】

<自分の寿命を受け入れ、人生に感謝する>

・寿命や余命は人それぞれであり、比較してもしかたないのです。

 最も大切なのは、生きた年月ではなく、いかに生きたかということ。その人が、何を体験し、何を学んだのか。そこに尽きます。

・地位、名誉・名声、資産、学歴、それらは私たちの故郷に持って帰れません。すべてこの世の夢、浮世の露。故郷に持参できるのは自らが得た学びだけです。だから、できるだけ執着を持たないようにしたいものです。

・たまに「生への執着」という言葉でも表現されます。医学の進歩・発達で、多くの人が助かっているのは事実ですが、その反面、人が寿命を受け入れる気持ち(覚悟)がうすれました。

・医学、医療が進歩しても人はいつか必ず死ぬという事実を知って欲しいのです。突然死ぬ人、死因はさまざまですが結局のところその人のもって生まれた寿命なのだと思います。

・心配要りません。人は全員、いつかちゃんと死ねます。死なない人は一人もいません。

【人は事故や病気で死ぬのではなく寿命で死ぬのです。】

<最期の日まで、いい顔で生きるために……>

□自分の役割は、自分から求める

役割は他人や社会が決めてくれるものではない。

□「あと何年」と逆算的に考えて生きない

明日生きているかもわからない。逆算してもその通りになる保証はない。

□自分の暮らしの面倒は自分で見る

機械や他人に任せることに慣れない。自律する。

□体を動かす習慣を日常生活にとり入れる

家事のついでに運動する、なるべく歩くなど、できる限り体を動かす。

□体の声を聴き、無理はしない

病気になったら体が「休みたい」と言っている。

□死ぬときは寿命に任せる。生きている限り今を楽しむ

寿命にあらがわず、生きることに執着しない。余計な心配をせずに、今を楽しむ。

2016/9/22

『100歳まで元気でぽっくり逝ける眠り方』

大谷憲 片平健一郎   あさ出版  2013/11/11

<いい生き方・いい死に方を決める鍵は「眠り方」にある」

・あなたが、いかに健康で楽しい人生を送り、苦しまない最期を迎えられるかは、「眠り方」にかかっています。

・ご長寿国家日本では、「平均8年間寝たきり」の現実が

・100歳まで健康か病気がちかを分けるのは、「眠り方」だけ

・人生の3分の1を費やす睡眠が「一生の質」を決定づける

・なぜ、私は、数ある健康法のなかでも「眠り方」にたどり着いたのか。これにはいくつか理由がありますが、いちばん大きな理由として挙げたいのが、「どんな人でも寝ることはできる」ということ。

 人間は生きていれば必ず睡眠をとります。たとえ病人であっても、寝たきりになったとしても、「寝ること」だけはできるはずです。

<ぽっくり死ぬためのキーワードは「血流」と「睡眠」>

<郷ひろみさんの血管年齢は20代>

・たしかに、郷さんは日々ジムなどに通って、肉体のトレーニングを欠かさないからこそ、激しいダンスやパフォーマンスでファンを魅了できるのでしょう。

・なんと、「血管年齢が20代よりも良好」と判定されていたのです。番組によると、中性脂肪、血糖値、コレステロールなどが、すべて20代平均よりもよい数値でした。

 私たちは、仕事柄たくさんの人の血管を見てきていますが、郷さんの結果は奇跡的といっても過言ではありません。過度のストレスや不規則な生活をしている現代人の多くは、実年齢よりも血管年齢のほうが上であることが多いからです。

・その番組の中では、郷さんの1日の生活習慣を紹介したうえで、若さの秘訣は、「自律神経のバランスをうまくとっていることにある」と結論づけていました。

<交感神経と副交感神経のバランスが健康の秘訣>

・自律神経とは、簡単に言えば、呼吸や血液の循環、消化、代謝など生きるために大切な機能をつかさどる神経のこと。

 その名の通り、人の意思とは関係なく自律的に働いている神経で、たとえば、人が眠っているときでも呼吸を続けられるのは、自律神経のおかげです。

 自律神経はさらに「交感神経」と「副交感神経」の2つに大きく分けられます。

 交感神経はストレスがかかっているときに優位に立つ神経で、たとえば、スポーツなど活動しているときや興奮時に優位になります。副交感神経はリラックスしているときに働く神経で、夕食後など休憩時やリラックスしているときに優位になります。この2つがうまくバランスをとることで、体が正常に機能しています。

<あなたの快眠度セルフチェック>

Q・あてはまるものをチェックしてください。

1、 寝つくまで1時間以上かかる。

2、 ひと晩に2回以上目が覚めて、その後なかなか寝つけない。

3、 朝の目覚めが普段より2時間以上早く、目覚めたあと眠れない。

4、 日中に過度な眠気があったり、居眠りしてしまったりする。

5、 寝言、いびきが多い。

6、 ぐっすり眠ったという実感がなく、寝足りなさが常に残る。

7、 トイレに二度以上起きる。

8、 夢ばかり見る。

9、 朝目覚めが悪く、気だるい。

10、 「睡眠中に無呼吸になることがある」と言われたことがある。

11、 朝、顔がむくんでいる。

12、 物忘れがひどい。

13、 吹き出物ができやすい。

14、 寒がり、冷え性だ。

15、 風邪をひきやすく、治りにくい。

16、 首、肩が凝る。

・チェックが5個以上 慢性不眠、あなたの睡眠は危険水域!すぐに改善を!!

3~4個  不眠気味かも!?気をつけましょう。

2個以下  比較的よい睡眠がとれています。できるだけ維持を。

<ポイントは「毛細血管」の血流>

・血流とひと口で言っても、特に大事なのは「毛細血管の血流循環」ということ。毛細血管は、動脈と静脈をつなぐ細い血管のこと、血管はなんと、髪の毛の直径の10分の1ほどの細さです。

 心臓から送り出された血液は、動脈から毛細血管に流れ、静脈を通って心臓に戻ります。

 人間1人の血管をすべてつなぎ合わせると、約10万キロに達すると言われていますが、これは地球を2周半するほどの距離です。

 そしてその血管のうちの実に95%以上は、毛細血管と言われています。こうした毛細血管が、体中に張りめぐらされています。

 人間の体は、60兆個の細胞で構成されていますが、毛細血管はこれらの細胞に栄養や酸素を運搬するという大切な役割を担っています。

・末梢の毛細血管まで血液が十分にまわらないと、細胞はその役割を果たすことができませんが、十分な血液によって活性化した細胞は再生能力が高まり、免疫機能も上がります。

・郷ひろみさんが若々しく健康的なのは、血管年齢が若く、血流がよいことが大きく影響していることが想像できますよね。

 ぽっくり逝きたければ、昼は活発に活動し、その中でストレスを感じたら、副交感神経を優位にできる時間を確保する。そして夜は副交感神経を優位にすることです。それが毛細血管の血流循環をよくする秘訣です。

・しかし、忙しい現代人は夜になっても緊張から解放されず、交感神経が高ぶったままなかなか寝つけない人が増えています。夜に副交感神経を優位なコンディションにすることができる生活スタイル、テクニックが求められます。

 睡眠前に、毛細血管まで血液がスムーズに流れていると、体温が高くなり、リラックスした心地よい睡眠をとれるようになります。

 血液と睡眠は、実は、健康を保つうえで密接に関係しているのです。

<ぽっくり逝きたいならいい睡眠をとりなさい>

<睡眠中は体の温度は低くなる>

・子どもを育てたことがある方ならご存じでしょうが、子どもは眠くなると、手のひらから足先まで熱くなってきます。人間は眠りに入り始めると、毛細血管がゆるんで、心臓から遠い手足の毛細血管まで血液が流れ込むからです。

 しかし、眠っているとき、人の体温は下がっています。

 矛盾したことを言うようですが、皮膚の表面温度が上昇する代わりに、深部体温(脳や内臓などの温度)は、放熱して1~1.5℃下がっていきます。

 睡眠中は血液を手足の毛細血管に移動させることにより、体温を下げ、基礎代謝能力を下げて、脳と体を休ませようとしているわけです。

 反対に、頭や心臓が活発に働く日中は体の中心温度が高く、手足の体温が低くなります。

 ここ最近、「手足が冷えて眠れない」と悩んでいる人が増えています。こういった悩みのほとんどは、低体温で血流が悪いことが原因です。

・もともと体温の低い人は、体の中心部の温度を冷やさないように血液が極力皮膚を通らないようにするため、毛細血管の血流が悪くなり、手足が冷えてしまいます。いざ眠ろうとしても、手足に血液が流れないので、深部体温が下がらず、体がなかなか眠る状態にならないのです。

 問題は寝つけない事だけではありません。毛細血管まで十分な血が回らず、皮膚の表面温度が下がったままだと、「体が覚醒している」と勘違いしてしまいます。そのため、脳と体を十分に休ませることができないのです。

<質の悪い睡眠は万病のもと>

・質の高い睡眠がとれないと、心身ともに悪影響が出てきます。

・十分な睡眠をとらないと、脳細胞が死んでしまい、学校の成績や作業効率に影響します。

 また、風邪などの病気にかかりやすくなるだけでなく、がんなどの病気も誘発します。肥満の原因にもなったり、自律神経のバランスが崩れてうつ病になる人もいます。認知症の原因になるとも言われています。

 さらに、最近の研究では「6時間以下の睡眠で1週間を過ごした人は、炎症や免疫系、ストレス反応に関連する711の遺伝子の発現に影響が出た」という結果が出ました。また、睡眠不足の人たちの遺伝子は、概日リズム(睡眠・覚醒などの1日周期のリズム)が不規則になることも報告されています。つまり、質の悪い睡眠は、遺伝子レベルでも人間の健康を阻害することになるのです。

・一方で、質の高い睡眠をとれば、自律神経のバランスを保つことができます。それは、毛細血管への血流循環に好影響をもたらし、ますます健康になっていきます。

 つまり、「血流をよくすること」と「いい睡眠をとること」は、互いに相乗効果をもたらし、ぽっくり死の実現に大きく貢献してくれるのです。

<「あたため睡眠」が日本を救う>

・「長生きの秘訣」の1つ目は 「いつまでも夢を持つこと」。

・2つ目は「自分でできることは自分ですること」。

・日本人1人ひとりがこの2つを実践できれば、100歳まで元気でぽっくりと逝くことができ、よりよい社会を構築できる。

・私の祖父は83歳のときに脳梗塞で倒れたあと、肺炎、心不全、白内障、糖尿病で足先の切断、閉塞性動脈硬化症、腎不全、胸水を経て10年後にうっ血性心不全で永眠しました。

 その後、祖母が脳梗塞となり、介護生活6年目を送っているところです。祖母と同居している私の両親の介護生活は壮絶なものです。病気になるとか誰かのお世話にならなくてはなりません。自分自身だけの問題ではないのです。

 国や市町村の財政が、医療費や介護費に圧迫され財政難に陥っています。だからといって、どの行政も削減するわけにはいきません。

 一人ひとりが健康になり、生産人口を増やすことです。それが誰とも対立しない建設的な提案です。日本の最重要課題はここにあります。

・本書で提案した「あたため睡眠」を実践していただくことで健康問題以外への波及効果も生まれます。睡眠障害による交通事故や消失の件数を減らすことができるのでしょう。子宝にも貢献し、子どもは学力が向上します。脳が明晰になり、能力も向上します。「睡眠の質を高める」「自律神経が整う」ということはそういうことです。

・人によって寿命が違う理由は、「寿命=実年齢」ではないのです。日本人の死亡原因を分析した結果、血管年齢の老い具合によって寿命が決まるのがわかっています。寿命は血管年齢と関係しています。私たちの健康法を実践している人は、みなさん血管から若返ります。

 本書に書かれている内容は、今日からすぐに実践できます。本書を読まれた皆さまは、ぜひ死亡原因4.2%の中に入ってください。そして、4.2%の割合を増やすことができれば、日本には明るい未来が待っています。

『歩く人。』 長生きするには理由がある

土井龍雄、佐藤真治、大西一平  創英社/三省堂書店   2013/6/20

<健康に長生きする人>

・正しく歩きつづけることで、いつまでも健やかに暮らせます。歩くことは、健康増進や生活習慣病予防に役だちます。

<歩くことの大切さを科学的に検証する>

<データが示した「よく歩く人は長生きする」>

・私が積極的にみなさんに、歩くことをすすめるようになったのは、ある論文との出会いがきっかけでした。

 それは、私の恩師(矢野勝彦先生)が関わった論文で、ハワイに移住した日系人707人を対象に12年間、彼らの健康状態を調査したものでした。驚くことに、日ごろからよく歩いている人と、あまり歩いていない人の死亡率に、なんと倍以上の差が出ていたのがわかったのです。

 1日に歩く距離が、1マイル(約1.6キロ)未満とほとんど歩かない人と、1~2マイル歩く人、2~8マイルと比較的よく歩く人の3タイプに分けて、12年間追い続けて調査した結果が表1です。

 2年目を過ぎるあたりから、ほとんど歩かない人の死亡率は高くなり、4年目を過ぎると、よく歩いている人の死亡率が明らかに低くなっていることがわかります。

・1マイルを歩くのに20分かかると考えると、1日に20分以下しか歩いていない人の死亡率は、6年目で約18%、12年目で約43%でした。一方、1日に40分以上歩いている人は、6年目で約9%、12年目で約21%と、あまり歩いていない人とは2倍以上の差があることがわかったのです。この結果は、歩くこと以外の因子を加味しても同じだったと述べられています。

・論文では、死亡率に大きな差が出た要因として、よく歩いている人は動脈硬化の進行が抑制されていたことを指摘しています。動脈硬化の進行が抑えられると、心筋梗塞や脳卒中などの慢性疾患である生活習慣病が予防できます。その結果、死亡率が低く抑えられたのです。

<動脈を鍛えて動脈硬化の進行を抑制する>

・私は、心臓病や糖尿病の運動療法に長くたずさわっています。この経験から確証を得たことは、“運動は動脈硬化の進行を抑制し、生活習慣病を予防できる”ということです。

そしてそこには、3つのメカニズムが働いています。

 ひとつは、「動脈そのものに対する効果」、それから「筋肉に対する効果」、そして「自律神経に対する効果」です。

 ひとつずつ説明しましょう。まず、「動脈そのものに対する効果」です。

 もともと運動が動脈硬化の危険因子(糖尿病、高血圧、肥満等)を改善することは知られていました。最近になって、これらに加え、血管内皮細胞に対する効果が注目されています。

・動脈硬化の進み方にはいくつかのパターンがありますが、いずれの場合もファーストステップは血管内皮細胞の機能の障害です。すなわち、血管内皮細胞の障害を抑え、その機能を保持することができれば、動脈を動脈硬化から守ることができるのです。

 血管内皮細胞の機能を鍛え、保持するのに効果的だといわれているのが、歩くこと、運動することです。

 その理由を、具体的に説明しましょう。

 運動をすると血流が盛んになります。この血流の変化により、血液が血管をこする物理的な力が働きます。この力を「ズリ応力」というのですが、この「ズリ応力」が血管内皮細胞を刺激し、その機能を鍛えるのです。

・若いうちは、血管内皮細胞の機能は運動をしなくても保たれています。歳をとるごとにどんどん機能は低下していきますが、定期的に運動をすることにより、血管内皮細胞の機能は若者と同等に保たれます。歩くことで、血管内皮機能が若者並みに保たれるというのは、とても魅力的ですよね。

 

・この「ズリ応力」、血管内皮細胞を鍛える以外にも、別のメカニズムを介して動脈硬化を改善します。

 血管内皮細胞の機能が弱まると、血管内に脂の侵出を許してしまいます。血管内に入った脂はプラークという炎症を伴う固まりになり、これが破たんすると血栓が生じます。心筋梗塞や脳梗塞は、この血栓によって動脈が詰まることが原因です。

・実は、運動によって生じる「ズリ応力」は、この血管内のプラークを小さくすることも期待されています。ある糖尿病患者さんは、ほぼ毎日4キロメートル歩くことで、プラークを小さくすることができました。同様の効果は、心筋梗塞後の患者さんでも観察されています。

「ズリ応力」は、血管内皮細胞を鍛えるだけでなく、血管内の脂の掃除もしてくれる頼もしい味方です。

<ミトコンドリアを活性化させ糖尿病を予防する>

・次は「筋肉に対する効果」です。

 ご存知のように、運動は筋肉の形態や機能にさまざまな作用を及ぼしますが、ここでは筋肉細胞内に存在するミトコンドリアに対する効果について解説します。

 ミトコンドリアというのは、われわれの身体の60兆の細胞一つひとつすべてに存在している小器官で、発電工場のような働きをしています。そして特に、筋肉細胞内には多く存在します。

 われわれは酸素を取り入れて、脂肪や糖質からエネルギーを得るのですが、そのエネルギーを生みだす役割を果たしているのがミトコンドリアです。生命活動を維持するのに、なくてはならない存在です。

 このエネルギーを生みだす発電機能がしっかり働けば、充分な活力が生み出されますが、機能の働きが悪くなると、さまざまな弊害が生じます。

・例えば、ミトコンドリアの機能が低下すると、エネルギーの素となる脂肪が消費されにくくなります。

 消費されない脂肪は行き場を失い、筋肉の中に留まりはじめます。脂肪が蓄積されてくると、筋肉は本来の機能である、糖質を蓄えるという機能が鈍くなってきます。

 すると、筋肉に取り込まれなかった糖質が血液中に長くとどまることになり、それが高血糖、ひいては糖尿病の原因となります。

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