健康長寿を願うなら、からだを「適度に」動かすこと。これ以上の黄金則はありません。怠けすぎず、頑張りすぎず。そんな“塩梅”を見極める眼力こそ、大人に必須の力です。(3)

<長寿の真実 目、口、耳の機能低下を防ぐ!>

<聞こえも飲み込む力も意識して使えば鍛えられる>

・情報の9割が目から入ると言われており、目が悪くては、ましてや失明してしまってはせっかく長生きしても充実した人生は送れないでしょう。脳の機能が落ちて認知症になる可能性も高まりますから、目を守ることは認知機能を生涯にわたって正常に保つことにもつながります。

・近くを見る作業をするときは、「少なくとも1時間に1回は(パソコンの)モニターから目を離し、目を閉じて休憩しましょう」

・目の病気の怖いところは自覚症状に乏しいということです。異常を感じていなくても、40歳を過ぎたら定期検査を受けましょう。

・人は必要のない情報を無意識にシャットアウトするため、意識して音を聴かなければ脳への刺激が減ってしまう、と言います。そこで、耳をすまして音を聴き、耳を鍛えることで脳を鍛えようというのが、この本です。

 歳をとれば耳が遠くなるのは仕方がないと思うかもしれませんが、難聴は認知度のリスクを高めます。

・「食べ物が飲み込めなくなったのをきっかけに認知症になってしまう人や、飲み込めなくなったとたん寝たきりになってしまった人も」見てきた、と言います。

 食事中にムセることが増えた、大きめの錠剤を飲みにくく感じるようになったなどは、飲み込み力低下のサイン。特に男性のほうが、のどの機能は衰えやすいそうです。理由は、一説には、女性のほうがおしゃべり好きな人が多いから、とか。そのため西山さんは、男性は特に「定年後に会話を減らさないこと」とアドバイスします。

<COLUMN  今すぐ止めたい脳に悪い行動>

・血糖値が急上昇する食べかたが体に悪いのは血管を傷めるから。脳を疲れさせるNG行動として「甘いものを一気に食べること」を挙げています。それから喫煙と飲酒。これらが体内で「大量の活性酸素を発生させる」と指摘します。

<寿命をどこまでも延ばす! 『最強の健康管理』>

<長寿の真実 中高年以降は魚ファーストに切り替える>

<1日1切れの魚が死亡リスクを下げる>

・だからこそ、50歳からは食習慣を変えてほしい。たとえば、中性脂肪やコレステロールの代謝が悪くなる「脂質異常症」は、女性は更年期頃から、男性は30代あたりからどっと増えます。といっても、コレステロールも中性脂肪も本来は体にとって必須なものです。

 ただ肝臓でつくられたコレステロールは「LDL」に乗って全身に運ばれ、これが多すぎると血管の壁にたまり、動脈硬化を進めてしまう。そこで、たまったLDLを血管の壁から回収してくれるのが「HDL」です。そのため、LDLは悪玉、HDLは善玉と言われるのです。

・ということで、50代になったら、食生活をちょっと変えてほしいのです。ずばり、数多くの信頼できる研究によって健康に悪いと考えられている食品は、①赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない)と加工肉(ハムやソーセージなど)、②白い炭水化物、③バターなどの飽和脂肪酸の3つである。

 逆に健康に良い(=脳卒中、心筋梗塞、がんなどのリスクを下げる)と考えられている食品は、①魚、②野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類の5つである。

・67万人のデータから導き出された研究結果として、魚の摂取量の多い人ほど死亡リスクが低く、1日60gの魚を食べていた人は全く食べていない人に比べて12%死亡率が低かったことを紹介しています。

 スーパーなどで売られている鮭や白身魚などの切り身1切れが80g前後ですから、1日1切れで60gはクリアできます。刺身であれば3、4切れでしょうか。それだけで死亡リスクを下げられる可能性があるのです。

<脂質異常も高血圧も高血糖も“無言” 突然、命にかかわる病がズドンと来る>

・「『心臓の健康』といったらコレ!」とEAPとDHAを挙げます。EPA,DHAは、アジ、イワシ、サバといった青魚に多く含まれる油です。

 EAPは抹消血管をしなやかに開いて、血小板の活性を抑え、血流をよくしてくれる働きがあり、DHAは脳に働きかけて、うつ病や認知症の予防に役立つ可能性がある。

 さらに、EPA、DHAには中性脂肪やLDLコレステロールを減らし、HDLコレステロールを増やす働きもある、とも。実際、中性脂肪値の高い人に使われる「ロトリガ」という薬の主成分は、EPAとDHAなのです。

 魚がいかに大事か、わかっていただけたでしょうか。ただ、肉を食べたほうがいいシチュエーションとしては、貧血があるときです。肉は、鉄分の摂取減としては非常に優秀。

・一般的には、中高年以降の健康を守ってくれるのは、断然、肉よりも魚。ぜひ魚ファーストの食生活に切り替えましょう。

・それは高血圧や糖尿病も同じで、自覚症状がないからといってほったらかしていると、じわじわ動脈硬化を進め、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中などをズドンと引き起こすのです。

 “ズドン”のまえに中間警告をハッキリしてくれるのは、尿酸値ぐらいです。

<長寿の真実 肝臓の健康なくして長寿なし>

<肝臓にたまった脂肪 放置すれば肝臓がん、脳血管障害へ>

・脂肪肝はなぜか軽んじられがちですが、放置すれば肝臓で炎症を起こし、肝臓の細胞を壊し、やがては肝硬変や肝臓がんといった死に至る病にも。

 なおかつ、脂肪肝の人は中性脂肪値も高かったり、糖尿病や糖尿病予備軍の人も多かったりと、「糖尿病や脳血管障害などの生活習慣病の始まり」でもある。

・肝臓は“沈黙の臓器”とも呼ばれていて、肝硬変の末期まで黄疸や腹水といった症状はほとんど出ません。だから、検査の数値が重要な手がかりなんです。

 つまり、健康診断で「AST」「ALT」「γ-GTP」という項目が悪かったら放置してはいけないということ。

<肝臓に脂肪をたくわえる犯人は脂質ではなく、糖質>

・ところが、脂肪肝を治す薬はありません。でも、安心してください。食事と運動というシンプルな方法で脂肪肝はよくなります。非アルコール性脂肪肝の場合、一番の原因は肥満です。食事と運動でやせれば、肝臓の脂肪も自然と落ちていきます。

・「控えるのであればまずは炭水化物」、「少なくともお酒を飲んで赤くなる人はあまり飲まない方がいい体質」、「毒性物質の代謝に肝臓がパンクしてしまう危険がある」

・「一滴も飲まないことが健康に一番」が結論で、酒飲みの私には耳が痛い話です。お酒は、口や喉のガン、食道がん、肝臓がん、乳がん、大腸がんなど、多くの臓器のがんを増やします。

・脂肪肝、特に非アルコール性脂肪肝の増加は医療界でもホットなトピックです。日本人成人の3人に一人が脂肪肝と言われるほどですから、他人事と思わず、気にかけてほしいと思います。

<長寿の真実 一番簡単な認知症予防対策は「正しい歯みがき」>

<歯の平均寿命は60年 予防を間違うと歯を失う>

・日本人の平均寿命は、2023年現在男性81歳、女性87歳。100歳以上の方も9万人超に達し、「人生100年時代」という言葉もすっかり市民権を得ています。ところが、歯の寿命は60年。

・過去の統計から、年齢が上がるにつれて歯を失う割合は増え、その一番の原因は「歯周病」で、どの年齢にも多い抜歯の原因は「むし歯」であることがわかっています。

・つまり、歯周病とむし歯を予防すれば歯を失う確率は格段に減らせるのです。「歯を守ることは脳を守ること」

<30代からは歯周病に注意 正しい歯みがきとプロケアが歯を守る>

・アメリカのマスコミから「フロスか、死か」という発信がされ、世界中にセンセーションを巻き起こしたことがありました。これは、フロスなどを使って歯間清掃をしなければ、歯周病になってさらに認知度や全身疾患リスクが高まることを端的に言い表したコピーです。

・歯周病は歯を失う第一の原因であるだけではなく、全身の病気と関連があることがわかってきています。「歯周病は『全身に炎症が継続している病態』として捉えるべき疾患」

・さらに恐ろしいことには、歯周病の原因菌そのものが、毛細血管から血管へと侵入して全身を駆け巡り悪さをすることも指摘されています。

・具体的には、「歯周病を治療することで、糖尿病が好転する」「歯周病に由来する慢性的な炎症が、アルツハイマー型認知症の原因である脳の炎症を増強する」といった可能性が指摘されています。

 歯を大事にすることは脳や体の健康にもつながるということ、わかっていただけたでしょうか。

<長寿の真実 加齢による目の病気は40代から手を打つ>

<白内障は誰もが通る老化現象 老眼と間違えられやすい>

・「歯の寿命は60年」「眼の寿命は65~70年」。年齢が上がるにつれて誰もが失明につながる目の病気を抱えるリスクを負う。だからこそ、早期診断、早期治療で失明を防いでほしい。

・「白内障は加齢とともに誰にでも起こる病気であり、若い人に起きることもある」。見えにくさを「年のせい」で片付けていたら、実は白内障を進行させてしまっていたということがあるわけです。「白内障は、適切な時期に手術をすれば視力の回復も期待できる病気です」

<緑内障も生活習慣病 サプリよりも血管を守る生活を>

・一方、緑内障は目と脳をつなぐ視神経がダメージを受けて、だんだん視野が欠けていく病気です。治療の基本は目薬で眼圧を下げることで、病気を根本的に治す治療はありませんが、緑内障の進行を遅らせることで、失明から守ることはできます。

・40歳を超えたら視力検査だけではなく、眼圧検査、眼底検査もぜひ受けましょう。というのは、緑内障は決してまれな病気ではないからです。

・国内で行われた緑内障の疫学調査では40歳以上の5%、すなわち20人に一人に緑内障が見られた、と紹介しています。しかも、この調査では、緑内障を発症している人の9割は自分では気づいていなかったそうです。

・それよりも、目に酸素と栄養を送り届けているのも血管で、目も血管が支配している臓器ですから、結局は、生活習慣病対策が目の健康も守ります。

 何かと体に悪い喫煙は、緑内障を進行させ、白内障のリスクも上げることは確実です。糖尿病も、細かい血管がダメージを受けることで網膜症という、これまた失明につながる病気を起こしやすく、それが緑内障を引き起こすこともあります。それから、緑内障や白内障のリスクがもともと高いのが、近視の人です。

<長寿の真実 睡眠は歳をとるほど「時間よりも質」>

<夜中のトイレに悩んでいる人は日中“足”を使うこと>

・でも、質のよい睡眠は、病気を遠ざけ長生きするためには、食事、運動と並んで三大必須事項です。どんな調査でも、睡眠時間が7~8時間の人は一番寿命が長いということです。

・国内の研究では、夜間排尿の回数が一晩で2回以上ある高齢者は、夜間排尿の回数が1回以下の高齢者に比べて、死亡率が1.98倍であることがわかりました。

・コーヒーや緑茶など利尿作用のある飲み物を夕方以降は控えるといったことはその代表ですが、意外にも大事なのが、「下半身の筋肉を使う運動」です。下半身の筋力が衰えると、血液を全身に巡回させるポンプ機能が弱まり、足に水分がたまりやすくなります、すると、いざ寝ようと横になると、足にたまった水分が重力から解放されて全身をめぐり、トイレに行きたくなるのです。これを避けるには、足に水分をためないこと、つまり、日中にしっかりと足の筋肉を動かすことです。ランジ、スクワットは夜間頻尿対策としてもとても優秀です。

・夜間頻尿対策として足の運動のほか、腹巻きでお腹を温めることをすすめています。

<寝る前のルーティン、魔法のフレーズが安眠のスイッチを入れる>

・ルーティンとしては、「風呂に入る、パジャマに着替える、歯を磨く、本を読む、など一連の行動を毎日繰り返すことが重要」

・ほかにも、落ち着く音楽やリラックスする香りなど、方法は何でも構いません。エビデンスも大事ですが、睡眠に関しては相性も大きいので、寝られるならどんな方法でもいいのです。

<長寿の真実 夜の呼吸に気をつける>

<寝ながら呼吸が止まる「無呼吸症候群」 その脂肪があなたの呼吸を止めている ⁉>

・睡眠の質を下げるものといえば、寝ている間に、人知れず息が止まっている人がいます。「え?」と思うかもしれませんが、それが睡眠時無呼吸症候群という病気です。息が10秒以上止まることを無呼吸と言い、寝ている間に何度も無呼吸状態あるいは、息の浅い状態が繰り返されるのです。

・気づかずに寝ているからいいのかといえば、決してそうではありません。無呼吸状態が繰り返されると、交感神経がアラートを鳴らし、寝ている間に血圧が上がりやすくなります。すると、さまざまな生活習慣病のリスクも上がるのです。

・まず、昼間の眠気によって、無呼吸の人は交通事故を起こすリスクはおよそ7倍になるとされている。

・大きないびきをかいて寝ている人、いびきの回数が多い人、日中に眠気やだるさ、イライラを感じる人は要注意です。特に肥満の人は首周りについた脂肪が気道を圧迫して睡眠時の無呼吸を引き起こしやすい。ドミノのように生活習慣病をバタバタと引き起こす前に、早めの検査をおすすめします。

・一つは、横向きに寝ること。仰向け寝はいびきをかきやすいのです。もう一つは、肥満の場合はやせること。

・ところで、呼吸に関する本も多いですねよね。ゆったりとした呼吸は副交感神経を優位にして心と体をリラックス状態に導きます。

<COLUMN  世の中は嘘だらけ>

・私が「予防医学ch」というYou Tubeチャンネルを始めたのは、間違った健康法にすがって、がんなどの病気を進行させてしまった人に救急の現場でたくさん出会ってきたからです。

<100歳までしたたかに図太く生きる! すごい『考えかた』>

<長寿の真実 「病気になってから考える」では遅すぎる>

<病気の“質”が変わった現代 1対1の治療では完治できない>

・大学病院の救命救急病棟で働いていた頃、すっかり病状を悪化させてから病院にかかり、後悔の念に苦しむ患者さんたちをたくさん見てきました。

・現代社会が対峙する疾患群においては、生活のあらゆる側面が誘引となるため、原因をひとつに帰着させることが難しい。

・病気を発症してから治療をしても治らないかもしれませんし、後遺症が残るかもしれません。あるいは、生活習慣病であれば、一生薬を飲みつづけなければいけないかもしれません。だから、“治療では遅すぎる”のです。「認知症は予防が9割」

<人が最期に後悔することは? 「健康を大切にしなかったこと」>

・今、日本では65歳以上の高齢者の割合はなんと29%にまで達しています。全人口の3人に一人が高齢者という世の中に、だんだん近づいているのです。

 さらに、今後10年以内に認知症の人が700万人を超え、高齢者の5人に一人が認知症という時代がやってくるとされています。

・「私たちが『元気な高齢者』になることが非常に重要なのです」

・すでにお伝えしたとおり、現代の医学では認知症を治すことはできません。予防はできます。認知症に限らずですが、人生の経験にさしかかったときになるべく後悔のないように、健康なまま長生きできるように、今のうちから予防に努めてほしいと思います。

・だからこそ、「健康なうちから健康を大切にすること」、つまりは「病気を早期発見し、それを是正しようとすること」が、後悔の少ない最期を迎えるための第一の提案。

<長寿の真実 早いうちから検査に行く>

<がんのトップ3はそれも早期発見できるがん>

・罹患数のトップ3は、大腸がん、肺がん、胃がんで、死亡数のトップ3は、肺がん、大腸がん、胃がんです。罹患数1位、死亡数2位の大腸がんが増えている主な原因は、食生活の欧米化だと言われています。

・食生活ともう一つ、がんで死なないために欠かせないのが早期発見です。幸いにも、罹患数・死亡数ともにトップ3に入る大腸がん、肺がん、胃がんはいずれも“早期発見できるがん”なのです。

・さて、がんに次いで多い死因が心臓病です。心臓病は突然死の原因にもなりますが、心臓病は「突然に起こる疾患ではなく、ほとんどが生活習慣に起因する」と言います。つまり、心筋梗塞や狭心症などの怖い病気を起こす前に、生活習慣で防ぐことができるということ。

・その一つとして、「高血圧が続くと心不全になる」「『糖分』は血糖値を急速に上げて心臓を弱らせる」「悪玉コレステロールは絶対に下げる」と、血圧、血糖値、コレステロール値のコントロールの大切さを説きます。これらの問題を発見するのが、特定健診、いわゆるメタボ健診ですよね。

<認知症の一歩手前は「ちょっと変」家族の気づきが予防につながる>

・認知症も早期発見が大事です。認知症の一歩手前、MCI(軽度認知障害)の段階であればまだ挽回できるからです。

・「MCIの患者さんの特徴をひと言でいえば、『ちょっと変』」と表現します。「ちょっと変」を見逃さないことが、MCIの段階で見つけるコツなのです。「ちょっと変」の正体が、認知症ではなく、うつ病気だったということもあります。

・高齢者の場合、心と体の結びつきが若い人よりも強く、体を病むと心を痛みやすく、心を痛むと体にも悪影響が出やすい。

<長寿の真実 ピンピンコロリを目指さないでいい>

<ピンピンコロリは“事故”以外にはないと心得ましょう>

・ピンピンコロリと逝きたい――。そうよく聞きます。でも、昨日まで元気でピンピンしていた人が突然コロリと死ぬということは、心筋梗塞や大動脈解離、窒息といったなんらかの“事故”が起きない限り叶いません。たまたまそういう最後になって「ピンピンコロリの人生だったし、よかったね」と周りの人が受け止めることはいいと思いますが、目指す者ではないのでは、というのが正直なところです。現実は、平均寿命と健康寿命の差を考えると、10年前後、介護が必要になったり寝たきりになったりする期間があるのが平均的な人生のしまいかたです。ピンピンコロリの間の要介護期間が多少はあると想定しておいやほうがいいでしょう。ただ、その期間を短くすることは可能です。

・一方、介護が必要になってきた晩年をいかに有意義に過ごすかも大事で、そのために、最近では「人生会議」と呼ばれるように、元気なうちから家族をはじめとした周りの人と話し合っておいてほしいと思います。

・「僕の死は、自分にとってではなく家族にとっての問題なんです。僕は死んでいる。何もできない。家族は生きている。だから委ねる」、「死を自分の問題としている人が多いのですが、本人には問題ではありません。だって死んでしまうんだから」

 私も、死にかたに善し悪しはないと個人的には思っています。あえていうならば、周りの人になるべくスムーズに受け入れてもらえるような形で準備しておくといいですよね、ということぐらいです。「人生は長さを競うものではない」

<人生の大先輩から学ぶ「今を大切に」「メリハリのある毎日を」>

・認知症は予防が大事という話をしましたが、これまでに出会った患者さんたちを思い浮かべると、長生きこそが認知症のリスクであることも否めません。ただ、認知症になっても変わりませんよ、決して怖いものではありませんよ、と教えてくれるのが長谷川和夫さんです。

・長谷川さんは本の最後に「生きているうちが花」と思いながら、「『いま』という時間を大切に」、「社会や人さまのお役に立てることを、自分ができる範囲でやっていきたい」と綴っています。

・さて、本書を読んでいただくとわかるように、結局は適度な運動とバランスのよい食事で生活習慣病を防ぐことがすべてに共通する最適解です。

・「毎日規則正しく生活し、午前中の仕事と午後のお楽しみというメリハリがあり、運動のかわりに階段の上り下りをしている。そんな毎日の生活が私の健康を支えているのかもしれません」

 健康を支える習慣をまさに端的に表しています。予防のためにできることをやり、晩年に向けた心構えもしておけば、あとは「人事を尽くして天命を待つ」で十分でしょう。死にかたまできれいに仕上げようとアレコレ心配するよりも、今という時間をめいっぱい楽しみましょう。

2016/9/22

『100歳まで元気でぽっくり逝ける眠り方』

大谷憲 片平健一郎   あさ出版  2013/11/11

<いい生き方・いい死に方を決める鍵は「眠り方」にある>

・あなたが、いかに健康で楽しい人生を送り、苦しまない最期を迎えられるかは、「眠り方」にかかっています。

・ご長寿国家日本では、「平均8年間寝たきり」の現実が

・100歳まで健康か病気がちかを分けるのは、「眠り方」だけ

・人生の3分の1を費やす睡眠が「一生の質」を決定づける

・なぜ、私は、数ある健康法のなかでも「眠り方」にたどり着いたのか。これにはいくつか理由がありますが、いちばん大きな理由として挙げたいのが、「どんな人でも寝ることはできる」ということ。

 人間は生きていれば必ず睡眠をとります。たとえ病人であっても、寝たきりになったとしても、「寝ること」だけはできるはずです。

<ぽっくり死ぬためのキーワードは「血流」と「睡眠」>

<郷ひろみさんの血管年齢は20代>

・たしかに、郷さんは日々ジムなどに通って、肉体のトレーニングを欠かさないからこそ、激しいダンスやパフォーマンスでファンを魅了できるのでしょう。

・なんと、「血管年齢が20代よりも良好」と判定されていたのです。番組によると、中性脂肪、血糖値、コレステロールなどが、すべて20代平均よりもよい数値でした。

 私たちは、仕事柄たくさんの人の血管を見てきていますが、郷さんの結果は奇跡的といっても過言ではありません。過度のストレスや不規則な生活をしている現代人の多くは、実年齢よりも血管年齢のほうが上であることが多いからです。

・その番組の中では、郷さんの1日の生活習慣を紹介したうえで、若さの秘訣は、「自律神経のバランスをうまくとっていることにある」と結論づけていました。

<交感神経と副交感神経のバランスが健康の秘訣>

・自律神経とは、簡単に言えば、呼吸や血液の循環、消化、代謝など生きるために大切な機能をつかさどる神経のこと。

 その名の通り、人の意思とは関係なく自律的に働いている神経で、たとえば、人が眠っているときでも呼吸を続けられるのは、自律神経のおかげです。

 自律神経はさらに「交感神経」と「副交感神経」の2つに大きく分けられます。

 交感神経はストレスがかかっているときに優位に立つ神経で、たとえば、スポーツなど活動しているときや興奮時に優位になります。副交感神経はリラックスしているときに働く神経で、夕食後など休憩時やリラックスしているときに優位になります。この2つがうまくバランスをとることで、体が正常に機能しています。

<あなたの快眠度セルフチェック>

Q・あてはまるものをチェックしてください。

1、 寝つくまで1時間以上かかる。

2、 ひと晩に2回以上目が覚めて、その後なかなか寝つけない。

3、 朝の目覚めが普段より2時間以上早く、目覚めたあと眠れない。

4、 日中に過度な眠気があったり、居眠りしてしまったりする。

5、 寝言、いびきが多い。

6、 ぐっすり眠ったという実感がなく、寝足りなさが常に残る。

7、 トイレに二度以上起きる。

8、 夢ばかり見る。

9、 朝目覚めが悪く、気だるい。

10、 「睡眠中に無呼吸になることがある」と言われたことがある。

11、 朝、顔がむくんでいる。

12、 物忘れがひどい。

13、 吹き出物ができやすい。

14、 寒がり、冷え性だ。

15、 風邪をひきやすく、治りにくい。

16、 首、肩が凝る。

・チェックが5個以上 慢性不眠、あなたの睡眠は危険水域!すぐに改善を!!

3~4個  不眠気味かも!?気をつけましょう。

2個以下  比較的よい睡眠がとれています。できるだけ維持を。

<ポイントは「毛細血管」の血流>

・血流とひと口で言っても、特に大事なのは「毛細血管の血流循環」ということ。毛細血管は、動脈と静脈をつなぐ細い血管のこと、血管はなんと、髪の毛の直径の10分の1ほどの細さです。

 心臓から送り出された血液は、動脈から毛細血管に流れ、静脈を通って心臓に戻ります。

 人間1人の血管をすべてつなぎ合わせると、約10万キロに達すると言われていますが、これは地球を2周半するほどの距離です。

 そしてその血管のうちの実に95%以上は、毛細血管と言われています。こうした毛細血管が、体中に張りめぐらされています。

 人間の体は、60兆個の細胞で構成されていますが、毛細血管はこれらの細胞に栄養や酸素を運搬するという大切な役割を担っています。

・末梢の毛細血管まで血液が十分にまわらないと、細胞はその役割を果たすことができませんが、十分な血液によって活性化した細胞は再生能力が高まり、免疫機能も上がります。

・郷ひろみさんが若々しく健康的なのは、血管年齢が若く、血流がよいことが大きく影響していることが想像できますよね。

 ぽっくり逝きたければ、昼は活発に活動し、その中でストレスを感じたら、副交感神経を優位にできる時間を確保する。そして夜は副交感神経を優位にすることです。それが毛細血管の血流循環をよくする秘訣です。

・しかし、忙しい現代人は夜になっても緊張から解放されず、交感神経が高ぶったままなかなか寝つけない人が増えています。夜に副交感神経を優位なコンディションにすることができる生活スタイル、テクニックが求められます。

 睡眠前に、毛細血管まで血液がスムーズに流れていると、体温が高くなり、リラックスした心地よい睡眠をとれるようになります。

 血液と睡眠は、実は、健康を保つうえで密接に関係しているのです。

<ぽっくり逝きたいならいい睡眠をとりなさい>

<睡眠中は体の温度は低くなる>

・子どもを育てたことがある方ならご存じでしょうが、子どもは眠くなると、手のひらから足先まで熱くなってきます。人間は眠りに入り始めると、毛細血管がゆるんで、心臓から遠い手足の毛細血管まで血液が流れ込むからです。

 しかし、眠っているとき、人の体温は下がっています。

 矛盾したことを言うようですが、皮膚の表面温度が上昇する代わりに、深部体温(脳や内臓などの温度)は、放熱して1~1.5℃下がっていきます。

 睡眠中は血液を手足の毛細血管に移動させることにより、体温を下げ、基礎代謝能力を下げて、脳と体を休ませようとしているわけです。

 反対に、頭や心臓が活発に働く日中は体の中心温度が高く、手足の体温が低くなります。

 ここ最近、「手足が冷えて眠れない」と悩んでいる人が増えています。こういった悩みのほとんどは、低体温で血流が悪いことが原因です。

・もともと体温の低い人は、体の中心部の温度を冷やさないように血液が極力皮膚を通らないようにするため、毛細血管の血流が悪くなり、手足が冷えてしまいます。いざ眠ろうとしても、手足に血液が流れないので、深部体温が下がらず、体がなかなか眠る状態にならないのです。

 問題は寝つけない事だけではありません。毛細血管まで十分な血が回らず、皮膚の表面温度が下がったままだと、「体が覚醒している」と勘違いしてしまいます。そのため、脳と体を十分に休ませることができないのです。

<質の悪い睡眠は万病のもと>

・質の高い睡眠がとれないと、心身ともに悪影響が出てきます。

・十分な睡眠をとらないと、脳細胞が死んでしまい、学校の成績や作業効率に影響します。

 また、風邪などの病気にかかりやすくなるだけでなく、がんなどの病気も誘発します。肥満の原因にもなったり、自律神経のバランスが崩れてうつ病になる人もいます。認知症の原因になるとも言われています。

 さらに、最近の研究では「6時間以下の睡眠で1週間を過ごした人は、炎症や免疫系、ストレス反応に関連する711の遺伝子の発現に影響が出た」という結果が出ました。また、睡眠不足の人たちの遺伝子は、概日リズム(睡眠・覚醒などの1日周期のリズム)が不規則になることも報告されています。つまり、質の悪い睡眠は、遺伝子レベルでも人間の健康を阻害することになるのです。

・一方で、質の高い睡眠をとれば、自律神経のバランスを保つことができます。それは、毛細血管への血流循環に好影響をもたらし、ますます健康になっていきます。

 つまり、「血流をよくすること」と「いい睡眠をとること」は、互いに相乗効果をもたらし、ぽっくり死の実現に大きく貢献してくれるのです。

<「あたため睡眠」が日本を救う>

・「長生きの秘訣」の1つ目は 「いつまでも夢を持つこと」。

・2つ目は「自分でできることは自分ですること」。

・日本人1人ひとりがこの2つを実践できれば、100歳まで元気でぽっくりと逝くことができ、よりよい社会を構築できる。

・私の祖父は83歳のときに脳梗塞で倒れたあと、肺炎、心不全、白内障、糖尿病で足先の切断、閉塞性動脈硬化症、腎不全、胸水を経て10年後にうっ血性心不全で永眠しました。

 その後、祖母が脳梗塞となり、介護生活6年目を送っているところです。祖母と同居している私の両親の介護生活は壮絶なものです。病気になるとか誰かのお世話にならなくてはなりません。自分自身だけの問題ではないのです。

 国や市町村の財政が、医療費や介護費に圧迫され財政難に陥っています。だからといって、どの行政も削減するわけにはいきません。

 一人ひとりが健康になり、生産人口を増やすことです。それが誰とも対立しない建設的な提案です。日本の最重要課題はここにあります。

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