健康長寿を願うなら、からだを「適度に」動かすこと。これ以上の黄金則はありません。怠けすぎず、頑張りすぎず。そんな“塩梅”を見極める眼力こそ、大人に必須の力です。(2)

(2025/3/11)

『100年長生き』

予防医学で健康不安は消せる!

健康本ベストセラー100冊がたった1650円で読める本

森勇磨 ワニブックス  2024/5/27

<いくつになっても若くて元気な人 そうでない人の違いはどこにある?>

・認知症や病気を遠ざけ、人生の質を底上げしてくれるのは、小さな健康習慣の積み重ねと「老い」を怖がらない心構えです。

 本書は健康不安を抱えるすべての人のために、ベストセラー100冊から不老長寿の智恵を1冊に凝縮!

<はじめに>

<「幸せな長生き」とはいつまでも自分らしく生きられること>

・この本は、100年でも、それ以上でも、心も体も健康に生きるためには何が大切なのか、100冊のベストセラー健康書をひも解き、健康長寿の秘訣をまとめようというものです。

・一般的に「歳のせい」と思われているような不調でも、実は何歳からでも改善できるものは少なくありません。

 わかりやすいのが、筋肉です。歳をとると筋肉が衰え、足腰が弱まりやすいのは真実ですが、筋肉はいくつになっても鍛えられます。

・ちなみに、健康法にはヒットとホームランがあります。エビデンスは“平均値”であって、エビデンスのある健康法はいわば“ヒットを打てる確率が高いもの”です。一方で、ホームランが打てるものは、実はエビデンスのないもののなかに隠れていることがあります。

・特に、体の健康を保ち、病気を防ぐ健康習慣は、豊富なエビデンスをもとに正解がだいたい決まっています(加工肉の食べすぎが一部のがんを増やすのは確実など)。なおかつ、「これさえやれば大丈夫」というものはないのでヒットを積み重ねる意識が大事です。

・一方、メンタルケアや睡眠改善法などはそもそも正解が一つではなく、相性が大きい分野です。

<健康寿命を延ばす「メンタルケア」>

<長寿の真実 心の不調は体の不調を引き寄せる>

<ストレスは体と心のバランスを崩す>

・ストレスは体の不調も引き寄せ、この本のテーマである、「100年長生き」にもかかわるのです。

・私たちの体は、交感神経と副交感神経からなる「自律神経系」、ホルモン分泌にかかわる「内分泌系」、体内に侵入する異物を排除する「免疫系」の3つがある程度自律的に働き、ちょうどよい状態を保っています。

 ところが、ストレスがたまった状態が続くと、この微妙なバランスが崩れてしまい、自動的には立て直せない状態になってしまう。

・このようにストレスが一定の閾値を超えると体の症状として出てくることは「心身症」と呼ばれ、よくあることなのです。

<ストレスを「悪」と考える人ほど死亡リスクが高いと証明されている>

・疲れているのになかなか寝つけない「入眠困難」や、何も異常はないのになぜか喉が詰まっているような感じがする「ストレスボール」、腸の病気がないのにお腹の不調が続く「過敏性腸症候群」などが、ストレスで起こりやすい症状として紹介されています。

・一定以上のストレスがかかったときにどういう症状が起こりやすいのか、自分のストレスのサインを知っておくと、「あ、頑張りすぎているな」「体に負荷がかかっているな」と早めに気づくことができます。

・その上で、「ストレス=悪」と考えることでストレスレベルが高まる、「ストレス=学び」というマインドセットを持つことでストレスレベルが低下するという研究結果が出ていることを紹介します。

<長寿の真実 対人ストレスは自分を変えて対処する>

<ストレスの多くは人間関係のなかで生まれる>

・日常生活のなかでストレスがたまる一番の原因が、人間関係のモヤモヤではないでしょうか。

・「人生の喜怒哀楽の多くは、人間関係の中で生まれます」

・人の心は、目に見えません。そのため、人の心の内が理解できず、人を傷つけたり、相手の言葉に傷ついたりすることも数多くあります。心は見えないために誤解が生じやすい、ということですね。

<「いい人」「悪い人」は自分にとって都合のいい人・悪い人>

・「僕たちは、人間関係を無意識に加工している」と、人がやってしまいがちな“加工”として次の4つを紹介します。

① 投影:相手も自分と同じ感情を抱いていると考えること

② 転移:自分の過去の体験を相手に重ね合わせてしまうこと

③ 逆転移:相手の感情を自分の感情だと勘違いしてしまうこと

④ 投影同一視:自分の感情を他人に押しつけること

・投影、転移、逆転移、投影同一視の4つに共通するのは、自分が無意識に感じていることによって周りが歪んで見えるということ。シンプルにいえば、自分の捉えかた次第ということです。

・他人を変えるのは膨大なエネルギーが要りますから、自分の捉えかたを変えるほうが得策だと思います。ただ、その方法論には合う合わないがあります。

<長寿の真実 自分の価値を自分で認める>

<感情はコントロールできない でも、行動はコントロールできる>

・人生は長さだけでなく、質も大事にしたいもの。その意味では「自分の人生、悪くないな」と肯定的に捉えられるかどうかは大事なポイントです。

・同じように、他人の言動、過去の出来事、それにともなうつらい記憶も自分でコントロールすることはできません。でも、「それにどう反応するか」はコントロールでき、「感情的な行動を抑えることはできる」と。

・心理療法ACTは、絶えず湧いてくる感情や思考から距離を取り、それらを受け止めた上で、心の声に惑わされずに、自分が大切だと思うことを実行できるような“しなやかな心”を育てていくための心理療法です。

<「私なんてダメだ」と不安になったときのとっておきの方法>

・また、「自己肯定感が高い=ポジティブ」と思うかもしれませんが、「ネガティブな自分も、弱い自分も、受け入れられるのが自己肯定感」「ダメな自分もOK!」と気楽に認められると、心はしなやかに、強くなります。

・自尊心は、自分の信念をもとに自分の生き方を選択、行動し、責任を負うという一連の流れのなかで手にする「内面の力」だ。

<長寿の真実 人に話を聴いてもらうにもコツがいる>

<パッと浮かんだ解決策は自分になじみのある方法>

・いずれにしても、夜は頭のなかで不安感が増幅されやすい時間帯と心得て、早く寝ることをおすすめします。

・自分一人ではどうすることもできないときには、

(1) 他の人の力を借りて、一緒に取り組めば解決できるかもしれない

(2) 他の人に相談すれば新しいアイディアが出てくる可能性があるかもしれない

 と考えると、気持ちが楽になります。

・従来の方法だけではなく、多くの方法を検討したほうが当然解決の可能性は上がるので、そのためにも人に相談することは有益なのです。

・「話をさえぎらずに、じっくりと耳を傾けてくれる人に聞き役をお願いしましょう」

<アドバイスは明確でわかりやすいが合う合わないがある>

・「自分の余計な思考をなくして相手の現在に集中して話を聴く」「何か思考が浮かんできたら気づく。その思考を脇に置く」

・聴いたことをすべて受け入れたり、肯定したりする必要はなく、いったん聴いてみる。いろいろな考えかたを聴いてみて、そこから何を選ぶかは自分次第です。

<長寿の真実 「その場しのぎ」が長生きのコツ>

<その場で心の落ち着きを取り戻す方法 「セルフ・スージング(自己鎮静)」を身につけよう>

・でも、一度にいくつもの問題を解決しようとせず、解決可能で自分にとって重要なものから取り組むことが大事。

・人には、できることとできないことがあります。できないことまでいっぺんに片づけようとすると、無理が出てきます。できないことを受け入れる勇気をもつことも大切です。

・「嫌なことやストレスがたまっているときには、ジョギングをすると気持ちが向上していく」

・でも、気分の向上に体を動かすことが役立つのは確かです。

・つらい感情を経験しているときに安全に感じ、気持ちをなだめる「セルフ・スージング(自己鎮静)」の方法の一つとして、体を動かすことをすすめています。

・体を動かす以外にも、温浴、安らぎを感じる香り、温かな飲み物、信頼できる人とのおしゃべり、心を落ち着かせる音楽などもセルフ・スージングになるとすすめます。

 問題や心配事自体は解決しなくても、心を落ち着かせるにはその場でできることがたくさんあるということです。そして、心が落ち着いたら解決できるものから取り組むといいでしょう。

・不確実なことの多い時代だからこそ、「その場しのぎで毎日をつないでいく」ような感覚でいい、と提言します。そして「今日一日を乗り越えれば、明日は勝手に来る」とも、いい言葉ですね。

<長寿の真実 ストレスを意識の外に出せば勝手にラクになる>

<ストレスのもとに気づき、書き出す それだけで心は回復する>

・やるべきことをいつも書き出しています。脳のなかにため込んでいくと、どんどんキャパオーバーになっていくので、意識的に外に移しているのです。これは、ストレスケアにもおすすめです。

・ちなみに、ストレッサーとは、“ストレスのもと”のことです。

「ストレッサーを日々観察し、書き留めるだけでセルフケアの効果がある」ことが心理学で確かめられているからです。

・その上で、「すべてのストレス反応は自分を守るための正常な反応」であり、「そういう反応が自分に起きているのだ」とまずは認めて受け入れることが大事、と言います。 次に、自分にとってのストレッサーや心身のストレス反応に気づき、受け止める練習となるのが「マインドフルネス」です。

・マインドフルネスは、「今、ここ」に100%の意識を向ける心のありかたです。そうしたマインドフルネスの状態に達する手段の一つが、瞑想です。

目を閉じて座って「吸う」「吐く」という呼吸に集中する方法が最もポピュラーです。

・マインドフルネスは、ストレス緩和だけでなく、腰痛改善や高血圧対策に効果があるとのエビデンスもありますので、試してほしいと思います。

<長続きしない幸せに惑わされない>

・脳内でドーパミン、セロトニン、オキシトシンが十分に分泌されている状態が「幸せ」であり、これらの幸福物質を出す条件が「幸せになる方法である」と定義しています。

・「起床瞑想」。朝起きたときに1分でもいいので、今の自分の心と体の状態に向き合うこと。毎日続けるうちに「自分の好調、不調に『気付く能力』がトレーニングされる」

・また、寝る直前に「今日あった楽しい出来事」を3つ書くという「3行ポジティブ日記」も、セロトニン的幸福を手に入れる方法の一つとのこと。被験者に1週間毎日「3つのよいこと」を書いてもらったところ、幸福感が上がり、うつ傾向も改善したなど、効果が多数報告されているそうです。ところで、幸福そのものを研究する「幸福学」という分野もあります。

・健康であることが幸福に強く影響する以上に、「自分は健康だと思っていること」がより強く影響する。

・幸せな人は健康であるのみならず長寿である傾向が高い。

 本書のテーマである「健やかな心」は人生の質だけではなく、長さにもかかわる可能性があるということですね。

<COLUMN 腸とストレスの意外な関係>

・脳と腸はお互いに作用し合っていて、腸を整えれば脳にもよい影響があるのではないか、と期待されています。腸活といえば人気なのがヨーグルトです。ヨーグルトには善玉菌の乳酸菌は含まれていますが、実は大腸菌で圧倒的に多い善玉菌はビフィズス菌のほう。ビフィズス菌は乳酸に加え、

腸内によい働きをする短鎖脂肪酸の酢酸をつくります。腸活のためにヨーグルトを食べるなら、ビフィズス菌入り、かつ糖分の少ないものを選びましょう。

<100歳まで自力で歩く! 『動ける体』のつくりかた>

<長寿の真実 50歳を境に増える「足の不具合」に備える>

<年1%ずつ筋肉は減っていく だから、太りやすくなる>

・いくつになっても自分の足で自由に歩きたい。これぞ万人共通の願いではないでしょうか。

・歳を重ねるにつれて、太りやすくなったと感じていませんか?それは、「中年になると基礎代謝が低下して、必要な栄養素をエネルギーとして燃焼する能力が次第に衰えてくる」からであり、「加齢によって生じる基礎代謝低下の大きな原因は、筋肉の衰えによるもの」

・30代からすでに筋肉は減り始めるものの、40代になるとさらに加速するのです。その先、60歳以降になると、運動習慣のない人は1年で1%の割合で筋肉量が減っていくと言われています。高齢者が入院すると、たった2週間ベッドで横になっていただけで足の筋肉は2割減少すると言われるほどです。

 加齢とともに筋肉量が減り、筋力が著しく低下することを「サルコペニア」といい、サルコペニアになると死亡リスク、介護リスクが上がり、がんになったときの生存率は下がり、手術時の死亡率は上がることがわかっています。

・このように動ける体を保つことは長生きに直結しているので、40歳になったら老後の貯金だけでなく、“筋肉貯金”を心がける必要があるのです。

・「目安の一つが、簡単に確認できる握力。握力が低下してきたら要注意」

・握力の話に戻ると、握力が低下している人は、手だけではなく全身の筋力も低下していると考えられます。だから、「最近、ペットボトルの蓋が開けられなくなった」といった人は全身の筋力が低下している危険性大なのです。

 ただし、動ける体ということを考えると、より大事なのが「足」です。

<コスパのよい筋トレはスクワットとランジ>

・そして、何より大事なのは歩くことです。歩く力を保つには、やっぱり歩く習慣を持つこと。その上で筋力を保つために筋トレをプラスしてほしい。私がよくおすすめしているのは「スクワット」と「ランジ」です。

<長寿の真実 「歩ける体」には背中の筋肉も必要>

<たった1回の転倒が人生の分かれ道になる>

・長生きを目指すには、なぜバランス力を鍛えたほうがいいのでしょうか。

 最大の理由は、バランス力の衰えは転倒リスクにつながるからです。高齢になって転倒すると、太ももの付け根などの骨折を招き、車椅子生活になったり、寝たきりになったりと、人生の大きな分かれ道になりかねません。

・片足立ちが1分間できない人は筋力と骨量が低下しているとわかりました。さらに、脳が委縮しており、認知症の前段階になっている可能性があることもわかりました。ほかにも、脳卒中になって、突然倒れるリスクもあります。こうしたあらゆる病気のリスクを回避するカギになるのが「バランス力」なのです。

・バランス力を保つには「筋力」や「骨量・骨密度」だけではなく、全身に酸素と栄養を送る「血管」、脳からの命令を伝える「神経ネットワーク」の働きも必要だと言います、

・片方の足を浮かせて立つ「片足立ち」はバランス力のチェックにも、バランス力の改善にも役立つ。確かに歩くだけではバランス力はあまり鍛えられないので、片足立ちはとてもよいエクササイズだと私も思います。

・いかに転ばないで、骨折しないか。それが長生きの秘訣となります。そのためにはやっぱり同じ姿勢をしない、姿勢を変えることだ大事なのです。

<猫背を治すにはまず背中をほぐす>

・猫背になる大きな原因は、背中の筋力の低下。

・そのため、「ストレッチによって土台となる背骨のいちばん下の腰椎からしなやかにしていく」必要がある。

・つまり、まずは背骨の柔軟性を高め、その上で背中の筋肉をつけることが大事なのです。

・「正しい姿勢をスタンダードな状態にするには、実は背中の柔軟性がとても重要」と、背中をほぐすことをすすめています。

・大腿四頭筋、殿節、腹筋、背筋というのは、立ち上がって、歩いて、自分の体を思ったところまで移動させるという観点でも重要な筋肉ですので、これらの筋肉が衰えると、姿勢が変化して、やがてロコモになるという言い方もできるわけです。

 ちなみに「ロコモ」とは、骨や関節、筋肉などが衰えて、立つ・歩く力が低下している状態のこと。いくつになっても歩ける体をキープするには、足の筋肉だけではなく、忘れがちな背中も意識しましょう。

<長寿の真実 たんぱく質は摂りすぎと偏りに注意>

<世界一のエビデンスある健康食はたんぱく質が少ない>

・筋肉が大事といえば、「たんぱく質を摂らなきゃ」と思う人も多いかもしれません。ただ、「たんぱく源として積極的に肉を食べましょう」という考えは、医師としてはあまりおすすめできません。

・地中海食は他の食事に比べて、タンパク摂取が少ないのも特徴です。

ちなみに地中海食とは、地中海沿岸の人々が食べている伝統的な食事で、心血管疾患や脳卒中、肥満、糖尿病、高血圧、一部のがん、アレルギー疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病などの予防効果が報告されています。つまり、エビデンスのある健康食です。その地中海食の特徴として、魚はほどほどに食べるものの、赤い肉(牛肉、豚肉など)や加工肉は週1回以下なのです。

・腎臓病の患者さんは、たんぱく質も体に悪影響を及ぼす。

<糖質制限は「何を増やすか」で健康効果が真逆になる>

・これによると、たんぱく質はまず一般の人は「体重1㎏あたり1g」が目安。つまり、体重60㎏の人は1日60gということです。一方、高齢者は「一般人よりもちょっと多めの体重1㎏あたり、1.2g程度が目安」とのこと。

・医学的な観点から補足すると、動物性のたんぱく質は摂りすぎると健康によくないというエビデンスが出ています。ですから、たんぱく源として肉ばかり食べるのはよくありません。大豆や大豆製品など、植物性のたんぱく質を意識して選んでほしいと思います。ただし、動物性とはいえ、魚はやっぱりおすすめです。

・最後にもう一つ大事なことを、どんなにたんぱく質を摂っても、運動をしなければ筋肉はつきません。くれぐれも忘れないでください。

<長寿の真実 歳を取るほど外へ出よう>

<人付き合いが苦手でも孤独はリスク 野菜嫌いでも野菜は食べたほうがいいように>

・「深く生きた人は長く生きた人でもある」

・つまり、動ける体を保つことは社会とのかかわりを保つことにもつながるということ。

・なぜなら、社会的孤立は、認知症や健康寿命のリスクになるから。人とかかわることで脳への刺激が確保できるのです。

・それと同じで、たとえ人とかかわるのが苦手でも健康のためには人とかかわり続けたほうがいいですよ、ということです。

・これからの人生は評価を求めるよりも、人の役に立ちましょうと語りかけます。

<COLUMN  長寿に必要なのは西洋医学か、東洋医学か>

・医師という立場からいえば、漢方薬も西洋薬も特に区別はありません。どちらも科学的に検証されたエビデンスある薬という意味では同じなのです。なおかつ、漢方薬にも副作用があります。西洋医学か東洋医学(漢方)かではなく、両方を境目なく使うのが賢い使いかたです。

<本当に正しい 『健やかな脳』の保ちかた>

<長寿の真実 「脳の衰え」は誰もが避けられない問題>

<一人ひとり違う認知症の世界 治す薬はまだ存在しない>

・「認知症とは、『認知機能が働きにくくなったために、生活上の問題が生じ、暮らしづらくなっている状態』のこと」

・ところで、なぜ認知機能が働きにくくなるのでしょうか。認知症のなかでも最も多いアルツハイマー型認知症の場合、アミロイドβと呼ばれる“脳のシミ”が沈着することが原因ではないか、と言われています。

・現状では、すでになってしまった認知症を治す方法は見つかっておらず、認知症の治療に使われている薬はすべて進行を遅らせるためのものなのです。

<「もの忘れが増えてきた」は脳を思いやるタイミング>

・認知症の治療が難しい理由の一つに、薬が脳に届きにくいということがあります。脳には「血液脳関門」と呼ばれるしくみがあり、有害なものが脳に入り込まないように取り締まっているのです。

・脳につながる血管には、脳に余計なものが入らないように監視し、侵入を拒むしくみがあるのです。したがって、ほとんどの薬は脳に届きません。その一方で、アルコールやカフェイン、ニコニン、覚醒剤といった危険な薬物など、脳に溶けやすい性質を持つ小さな物質は血液脳関門をすり抜けてしまいます。

・今のところ、認知症を治す手立てはないとすると、どうするか――。「認知症は生活習慣を妨げる」

・アルツハイマー型認知症に次いで多い血管性認知症は、高血圧や糖尿病、過剰なコレステロール(脂質異常症)、喫煙などによって血管が傷むことが原因です。いうなれば“脳の生活習慣病”なので、確かに生活習慣で防げます。

・睡眠の大切さを指摘します。つまり、睡眠中に脳内の水が入れ替わることで脳内が掃除されているかもしれない、ということです。

・では、いつ頃から認知症予防を意識すべきでしょうか、早ければ早いに越したことはありませんが、一つの目安となるのはMCI(軽度認知障害)の段階です。MCIは認知症になる手前の段階で、MCIのうちに気づいて対処すれば、半数の人は健常な認知機能に回復することがわかっています。

・「もの忘れが多くなってきた」は絶望のサインではなく、生活習慣を見直すサインと前向きにとらえましょう。

<長寿の真実 ボケ防止には脳への刺激が欠かせない>

<手書きの手紙は脳にとってダブルの効果>

・それは、90代でも筋トレで筋肉が増えるように、いくつになっても認知機能を高める、衰えないようにすることはできるということです。

・「脳は死ぬまで成長を続ける」。他の細胞と同様、脳の神経細胞も年々減っていき、年齢を重ねるごとに老化していきます。しかし、この神経細胞は複数の脳番地をネットワークでつなぎ、そのネットワークは年々成長していくことがわかりました。たとえ老化によって細胞が減っても、脳番地の連携が進めば、神経細胞同士のつながりが強くなるため、脳の機能は強化されていきます。

・それぞれの脳番地を鍛えるには特別な器具や準備はいらず、日常生活をほんの少し見直して新しい経験をつくりだすだけでいい。

・手で文字を書くことです。手書きは、視覚、筆記の音、感触など、五感から刺激が入るため、記憶の定着に効果的なのだそう。

<脳を鍛えるなら脳トレよりも対人ゲーム>

・朝、10人ほどの認知症の患者さんに電話をかえるのが日課という医師。

・認知症予防の大きなカギは「血のめぐり」と言い、脳の血流を増やして認知症を防ぐ方法の一つとして読書を挙げます。読書のジャンルはなんでも。

・その新井さんが脳トレよりもおすすめと話すのは、トランプ、囲碁、将棋、マージャンなどの対人ゲームです。

・また、体を動かす習慣がなく、家で脳トレばかりをしているとしたら、かなり残念な過ごしかたです。認知症予防には頭を働かすだけではなく、体を働かすことも大事なのです。

 

<長寿の真実 運動は「ほどほど」が一番脳にいい>

<脳が喜ぶ“栄養”を増やし認知症リスクを半減させるとの報告も>

・脳を若々しく保つために一番大切なことは何でしょうか?この問いに「運動」と断言。

・運動がもたらす効果はさまざまありますが、その第一の目的は「脳を育ててよい状態に保つためだ」

・運動は、脳の回路が結合を増やし、成長するきっかけを与える。血液の量を増やし、燃料を調節し、ニューロンの活動と発生を促すのだ。老いた脳はダメージに対して弱いが、だからこそ、脳を強くするためになにかをすれば、若いときより効果が大きい。私も、「脳を鍛えるには運動が一番」という考えには賛成です。

・筋トレも大事ですが、脳だけではなく全身の病気を遠ざけてくれるのは、なんといっても有酸素運動です。その代表が、ウォーキング。

・「ウォーキングには認知症のほか、寝たきり、うつ、心疾患、脳卒中、がん、動脈硬化、骨粗しょう症、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームを予防する効果がある」と紹介します。長生きを目指すなら、ウォーキングをはじめとした有酸素運動が欠かせません。

<コスパのいいウォーキングは1万歩よりも8千歩>

・ほどほどの運動こそが万能薬、と言います。「ほどほど」の指標は「1日8000歩、そのうち中程度の運動が20分」、つまり、1日の歩数が増えれば増えるほど健康効果が高まるわけではない、ということです。

 ほかの国内外の研究結果を見ても、1日8千歩まで歩けば歩くほど寿命が延びるのですが、8千~1万歩で健康効果は頭打ちになっています。

・もっと健康効果を高めたいと思ったら、時間をかけて歩数を増やすより、強度を上げることです。ウォーキングであれば、ちょっと汗ばんで、隣の人と会話ができないぐらいのスピ―ドを目指しましょう。

・認知症予防のために開発された運動プログラム「コグニサイズ」でも、10カ条の一つとして「『ややきつい』と感じられるくらいの運動を行う」を掲げています。

・コグニサイズとは、ステップ台を上り下りしながら引き算をするなど、体を使う運動課題と頭を働かせる認知課題を同時に行う運動です。

・「傷むから」といって運動量が減り、太ももの筋肉が衰えれば、膝を支える筋肉がなくなり、さらに膝が痛むようになります。膝が気になり始めた人ほど、本当は運動をしてほしいのです。

・「膝や腰などに痛みを感じたら、その運動はやめること」と書かれています。

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