泉さんが、いわば「正規軍」をつくろうとしているのに対して、私がいまやっているのは「ゲリラ戦」だ。ゲリラ戦に取り組む理由の一つは、私が終末期のがんであることも影響している。(1)

(2025/5/5)

『ザイム真理教』

それは信者8000万人の巨大カルト

森永卓郎 フォレスト出版 2023/5/22

<はじめに 森永卓郎>

・泉さんが、いわば「正規軍」をつくろうとしているのに対して、私がいまやっているのは「ゲリラ戦」だ。ゲリラ戦に取り組む理由の一つは、私が終末期のがんであることも影響している。

・だから、私の役割は、救民内閣構想が確実に歩みを進められるように、単独ゲリラとして、既得権益者たちに先制攻撃をかけることだと考えている。

<政治主導で健全な財政を取り戻す>

<国民負担を抑えるための財政政策とは>

・方法は1つではありません。今は給料が上がらない一方で税金が上がり、社会保険料が上がり、各種負担が上がり、物価まで上がる。その結果、国民は使えるお金がどんどん目減りしている状態です。

<「もっと国民負担率が高い国もある」という欺瞞>

・海外の税制度で日本の消費税に相当するのが、商品やサービスの取引にかかる付加価値税などですが、食料品など生活関連への税率は軽減税率を設けるか、そもそも課税対象にしないのが標準です。日本のように一律に近い形で取っているほうが極めてレアなんですよね。

<プライマリーバランスのための政治ではない>

・財務省が教義のようにふりかざす「財政均衡主義」の圧力は徹底しています。「プライマリーバランスの大きな赤字は日本経済を破滅させる」として、それを黒字化させようと、徹底した緊縮財政を押しつけてくるわけです。

<歯向かうと、もれなく税務調査がやってくる>

・そこは本当の意味で政治主導が必要になるのではないでしょうか。これまでは政治主導といいながら逆転してしまい、かえって悪い方にいっているわけです。

<世にも恐ろしい「毒まんじゅう」の正体とは?>

・だいたい官僚の人たちは「毒まんじゅうで殺される」と言うんです。毒まんじゅうというのは、中身のあんが「カネ」、皮が「女」でできていると。それでみんなやられてしまうそうですが、泉さんは大丈夫そうですね。

<医療や農業も広い意味でセーフティネットになる>

<貧乏人は病気にもなれない時代?>

・国の一般歳出の中で最も大きいのは社会保障費です。たとえば医療・介護に関して、泉さんはどのようなプランをお持ちなのか、伺いたいのですが……。

<老後資金はいつまで貯めればよいのか>

・医療・介護とお金の問題は、老後資金や年金制度にもつながりますし……。

<食料安全保障の問題は喫緊の課題>

・ウクライナ戦争において、長期にわたりウクライナがロシアに抵抗できている理由の中には、世界有数の穀物の生産国だったことがあります。穀物限定でいうと400%くらいの自給率があったこともあるでしょう。それに比べ、日本の自給率は38%しかありません。

<第一次産業が食い物にされている ⁉>

・農業や漁業などの第一次産業は国家の根本に位置づけて、一定程度の補助を与えることも含め、お金に苦労しない、続けられる仕事にしていかないといけない。

<心豊かに暮らすには教養が欠かせない>

・明石は、電車でちょっと行けば大阪や神戸の都会にも行けるし、自然にも触れられて、都会の良さと田舎の良さの両方が感じられますね。

<原発はリスクもコストも高い>

・原発には隠されたコストがあります。それは例えば事故であったり、一番目に問題なのは使用済み核燃料の最終処分の方法も、処分地も決まっていないことです。

<タブーなき社会への道筋>

<日本はアメリカ追従を脱することができるか>

・大きな路線でいくと、基本的には現実政治である以上、急転直下の方針転換は簡単ではないというスタンスです。

<どこまでタブーに切り込めるか>

・命をかけて出された森永さんの本は各地で評判になっていますが、いわゆる大マスコミはなかなかこうしたテーマを取り上げない。タブーに踏み込まないですね。

<牙を抜かれたメディアの「いま」>

・多分、ザイム真理教の教えに屈してメディアも“入信”させられちゃった。

<現実を知らない官僚たち>

<私が官僚の“奴隷”だった頃>

・官僚になれる人というのも、ごく一部の限られた人ですからね。それでも、入省するときは、それなりに気概を持っていたとしても、やがて洗脳されていくのだと思います。

<働き方改革が導入された本当の理由?>

・もう1つは、安倍政権あたりから官邸主導・政治主導になって、官僚が一番の生きがいに感じていた「天下国家を動かす」という役目を奪われてしまったんです。

<子育て支援と少子化対策は違うもの>

・私は、「子ども施策」「子育て支援策」「少子化対策」、この3つはそれぞれ違うものだととらえています。

<官僚の頭の中では共働きが前提>

・見直しにあたり、現在は男女とも働く共働き世帯が中心として、配偶者と死別後も就労継続が可能だとする社会背景をもとにしているといいます。

<性差も誰も意識しない社会へ>

・官僚にも女性が増えたことはよいことだといえますが、それでもまだ日本は国際的に見て、女性の活躍度が低いといわれています。

<東京一極集中をどうするか>

<集中を緩和するための手立てとは>

・それを統一国家として成り立たせ、欧米に追いつけ追い越せと急いで近代化するために、中央集権制度を取り入れ、税制や教育制度なども必要に迫られて作った。同じ時期に、都道府県のしくみもつくられました。

<「廃“県”置“圏” 」で地域をもっと蘇らせる>

・私の言葉で言うと、廃藩置県ならぬ「廃“県”置“圏”」にする。つまり「県」をなくして、ブロックとしての「圏域」を設け、そこに権限と財源を付与して責任を持たせるのです。

<地方行政を問い直す道州制の是否>

・わざわざ組織体として「道州」を作らなくとも、権限を持った「圏」同士が、テーマと必要に応じて、広域の課題を議論し、調整をすればいいと私は考えます。

<魅力的な5つのブロック拠点をつくる>

・具体的には、北海道の札幌市、東北の仙台市、東海の名古屋市、関西の大阪市、九州の福岡市を重点都市化して、そこをブロック拠点として魅力的な街にしていくのが現実的ではないかと思うんです。

<日本を連合国にする ⁉>

・それは何かというと、「関西共和国」構想です。道州制に近いのですが、こちらは「独立」をイメージしています。関西共和国とか九州国、北海道国、琉球王国と、それぞれが独立を促すような形をとる。

<大阪万博は縮小・コンパクト化を検討すべき>

・万博は橋下氏のアイデアが元になっていますよね。私は万博について明確に、反対の立場です。

<諦めを希望に変える救民内閣構想>

<ステップ1は各選挙区で与党候補をつぶす!>

・最近はいろいろなところで話していますが、国民を救うための「救民内閣構想」と名付けました。実現する道筋について、かなり具体的に考えています。

<5回の選挙を勝ちきって法律改正へ!>

・そこでは「国策捜査」も行われるかもしれない。つまり、マスコミと検察の餌食になってしまうのです。

<国会で勝って終わりではない>

・これまでの古い政治に漬かっている方々は、かなりの方がザイム真理教に染まってしまっています。

<ステップ2で行政の構造を変える!>

・先に述べたように、都道府県と市町村の枠組みを変えることでコストが浮く、ということを述べました。

<20年分のシナリオを書ききりたい>

・私はその中央省庁の再編も含めて、「令和の大改革」に挑むシナリオを書きたいと考えているんです。

<国民の声を聞き、国民の力を活かす>

・明石では、無名の新人が圧勝できるところまできました。それを国レベルまでもっていくのが自分の役割です。

<諦めを希望に変えるために>

・これに対して、現在の「永田町の住民」は、現時点の権力者や身内ばかり見て、ほとんど国民に関心を払っていない。本当に日本を背負う国会議員かと、不思議でなりません。

<政治の力を信じるために>

<方針・予算・人事の権限を取り戻す>

・和泉さんの功績は、子育て政策の成功はもちろんですが、それが地域の経済活性化につながったことですね。

<地域に応じた改革案を>

・その事実がだんだん広まるにつれて、明石市からいったん出た人でも、子どもとともに帰ってくるケースが増えたんです。

<状況を読み、合理的に判断する>

・政策決定とか、物事の流れを読むときに、詰め将棋の思考法はすごく役に立つんです。

<市長の経験を全国に広げる>

・もともと私は2023年4月に12年の市長勤めを終えて今後を考えたとき、明石市でできた政策は、首都圏も含め、他の自治体でもできるということを、ぜひ証明したいと考えていました。

<選挙は市民こそ力を発揮できる>

・ごく普通に暮らしている市井の人々のほうが、特権的な立場にいる人より数の上では多いのです。だから、市民のほうを向いて、市民のための政治をすると決めて、きちんと語りかければ、わかって貰えます。

<政治主導が必要な理由>

・官僚主導がなぜいけないのか。それは官僚が、国民に選挙で選ばれた存在ではないからです。

<日本も首相公選制を導入すべき>

・そしてその内閣総理大臣をどう生み出すか。私が強く訴えているのは、「首相公選制」の導入です。

<日本は本当に借金大国なのか?>

・日本は借金大国であると思わせ、積極財政を阻止しようとする財務省の姿勢に、国民をあざむいているとしかいえません。

・日本政府は通貨を生み出すという、政府にしかできない打ち出の小槌を持っています。通貨発行益が得られるので、お金がないなら紙幣を刷ればいいのです。その紙幣が市場で流通されるだけの信用力を持っているのであれば、何の問題もありません。

<アメリカの対等につきあうことはできるのか>

・日本はアメリカに対して、いつまで追従し続けなければならないのか。これについて私は本当に疑問です。

<緊縮財政から解放される方法>

・そして、そのために償還の財源を準備しなければいけないと思い込み、それを「財政再建元年」と呼んで至上命題のようにしてきたんです。

<次世代へのバトンタッチに際して>

<自分で調べ、考えて表現できる力を>

・私は2023年4月に明石市長の職を終えて、「これから何がしたいですか」と問われて、「3つのことがしたい」と言ってきました。それは何かというと、「横展開」と「縦展開」と「未来展開」だと。

<なぜ権力に執着してしまうのか>

・ぜひ泉さんには中長期の視点を持って、日本の政治を根底から改革するという仕事をしていただきたいと思います。

<新NISAは「買ってはいけない?」>

・9月に出版した『投資依存症』もそうでした。私はずっと新NISAには反対で、投資はギャンブルと一緒だと言ってきました。

・でも私は「バブルはいつかはじける、それは近いかもしれない」と言い続けています。

<やりたいことをとことんやり尽くす>

・この間、主治医が言っていました。「がんの余命宣告をされると、ほとんどの人が仕事を辞めて、今まで行けなかった温泉旅行や超高級レストランとか、海外旅行に生きたがると。でもあなたはそういう発想がないんですか」と。

<生前整理で一番つらく感じること>

・でも、妻に冷たくするのは本当につらいんですよ。40年間、一緒にいたわけですし、「死ぬときはいい人だと思われたい」という欲が、どうしても出てきてしまう。

<明石市長として最後に語ったことは>

・だから市長として最後の職員訓示でこう言ったんです。これまで12年間、「前例主義からの脱却を探り続けてきた」と。

<ずっと見てきた父の後ろ姿>

・私は親父の影響を一番受けていると思っているんです。繰り返しになりますが、家は漁師で、親父は13人兄弟の4男でした。

<困った時に手を差し伸べる行政に>

・私が12年間の明石市長時代に一番つらかったのは、子どもたちの「お腹の減り具合」が見えることでした。

<選挙は可能性の宝庫>

・私は、選挙というものはまさに可能性の宝庫であり、未来を変えていく入り口だと思っています。

<死を意識すると生が強くなる>

・「……官僚のほうが政策上のイニシアティブを握っている国というのは、私の知るかぎり先進国では日本だけである」と書いています。

<おわりに――憧れの森永さんの思いを引き継いで 泉房穂>

・闘いは闘いです。そこは勝たなくてはいけませんから。森永さんとは「王様が裸である」ことの認識は一致しているんです。

(2025/3/24)

『どうすれば日本経済は復活できるのか』

野口悠紀雄   SB新書  2023/11/7

<はじめに>

・本書は、日本経済の現状、過去、未来について論じている。

 日本経済は深刻な病に冒されている。世界各国が目覚ましく成長する中で、日本は停滞し、賃金は30年以上にわたって上昇していない。最近では、海外のインフレが輸入されて、日本の物価を著しく上昇されている。

・本書では、これらの問題を「付加価値」という概念を中心に説明していく。付加価値とは、経済活動によって生み出される価値のことで、一国の経済全体について合計したものを国内総生産(GDP)という。

・日本経済の不調の原因として、新しい技術に適応できなかったことが指摘される。これが「デジタル化の遅れ」である。これには、技術面だけの問題ではなく、日本の社会構造や組織構造が密接に関連している。

 日本経済は、今後さらに深刻な問題に直面すると考えられる。

・長期的には、高齢化が進行し、日本経済の成長にネガティブな影響を及ぼす。これに対処するため、外国人労働者の受け入れ拡大や、新しい技術の開発が求められる。

 直近の問題としては、スタグフレーションの恐れがある。海外からインフレが輸入されるが実質賃金は伸びないという「インフレと経済停滞の共存」だ。

・新しい技術への適応能力は、今後の経済活動に大きな影響を及ぼす。それは、個人や企業、さらには国全体の将来にも影響を与え、適応が不十分であれば、日本の遅れは決定的なものとなってしまう。

・為替レートとして購買力平価で評価すると、いまの日本の相対的な豊かさは、1970年代の水準にまで低下してしまった。

・日本経済停滞の基本的な原因は、中国が工業化に成功し、世界経済の中での地位を向上させたにもかかわらず、日本の産業構造を固定化してしまったことだ。円安政策のため付加価値が増えないので、賃金も上昇しない。製造業の比率が低下するにもかかわらず、それに代わる基幹産業が成長していない。

・大規模金融緩和は物価上昇率の引き上げを目的として行われたが、これは正しい目標ではなかった。仮に物価が上昇したとしても、それによって賃金が上昇するとは考えられないからだ。また、国債を購入するだけで物価が上がる保証もなかった。

・健康保険証を廃止しても、何もよい結果がもたらされているとは考えられない。マイナンバーカードの普及だけが目的となってしまっている。

<G7のトップから最下位へ>

<企業の新陳代謝で成長するアメリカ、それが進まず衰退する日本>

<ハイテク企業の時代は終わったのか?>

・アメリカの巨大IT企業で人員整理が続いていると報道されている。

<時価総額のトップは、依然として巨大IT企業>

・実際には、世界の時価総額ランキングのトップは、依然としてアメリカの巨大IT企業によって占められている。

<日本企業で100位以内は1社のみ>

・日本企業で世界の100位以内に入るのは、トヨタのみだ。

<日本の産業構造は古い>

・日本企業で時価総額の世界トップ100社に入るのが1社しかないというのは、由々しき問題だ。なぜこのような事態になるのか?

 その理由は、産業構造にある。古いタイプの製造業が産業全体で大きな比重を占めているからだ。

<注目すべきは医薬品産業>

・将来成長すると期待されるのが、医薬品産業だ。この分野では、全分野での上位100位に入る企業が、12社もある。

・そのため、現在の産業構造のままで日本が「新しい資本主義」を実現できないことは、明らかだ。日本が本当に「新しい資本主義」を実現したいなら、現在の産業構造を一変させなければならない。

<アメリカでは企業の新陳代謝が起きた>

・では、アメリカは、なぜ新しい資本主義を実現できたのか?

 それは、政府がハイテク産業に向けたビジョンを描き、企業を指導したり、補助金を出したりしたからではない。

 アップルは1970年代から存在していたが、当時は、小さなコンピューター製造会社にすぎなかった。

・アップルが成長したのは、iPhoneという製品を開発し、その生産において、ファブレス(工場なし)というビジネスモデルを採用したからだ。

<日本では企業の新陳代謝が起きていない>

・日本企業の大部分で、製造・サービスもビジネスモデルも、20年前と変わらない。いや、30年、40年にわたって、基本的には変化がない。そして、企業の新陳代謝が起きていない。そのため、経済全体が衰退している。

 2000年頃以降の円安政策は、古い企業の延命を助けることになった。製造業において、その傾向が顕著である。

・日本経済が停滞しているのは、企業が変わらないからだ。時価総額世界ランキングでの日本の地位の低下は、当然の結果だ。また、ここ数年の顕著な貿易赤字の拡大も、必然的な結果だ。日本企業の価値を高めない限り、日本の復活はない。復活には、新しい製品・サービスの創出と、ビジネスモデルの改革が不可欠だ。

<購買力平価で国際比較をすることの意味>

<中国はすでに世界一の経済大国?>

・GDPで見て、世界一の経済大国はアメリカであり、中国がそれに次ぎ、日本が第3位。これが一般的に考えられている世界像だろう。

・ところが、同じサイトには購買力平価によるデータもある。それによると、中国、アメリカ、インド、日本の順になる。

・日本の生産性は他国に比べて低いと、よく言われる。

<「購買力平価」とは何か?>

・国際比較を行う場合に最も分かりやすいのは、その時点における市場為替レートを用いることだ。ただ、多くの国際比較データで、これとは異なる為替レートが用いられている。それは「購買力平価」という概念だ。この概念を理解するのは、それほど簡単ではない。

<購買力平価は、為替レートのあるべき姿を示す>

・以下では、相対的購買力平価について述べよう。このようなレートが用いられる理由の一つは、GDPの将来予測などを行う場合に、将来の為替レートを予測できないからだ。

・なお、将来の実際の為替レートがその時点の購買力平価と一致するかどうかは、分からない。それを実現するような力がマーケットで働くと考えられるが、実際にそうなる保証はない。為替レートの決定メカニズムは極めて難しい問題なので、ここでは立ち入らないことにする。

<「実質為替レート」で見た豊かさは、70年代に逆戻り>

・仮に、ある時点を基準とする購買力平価が、1ドル=90円だったとする。このとき、現実の為替レートが1ドル=110円なら、購買力平価に比べて円安になっていることになる。つまり、基準年に比べて円の購買力は低下していることになる。

 これを表すのが、「実質為替レート」という指標だ。これは、現実の為替レートと購買力平価との比率だ。

・円の実質実効為替レート指数は、1970年代前半には100未満、後半には100~110台だった。

・ところが、その後の円安の進行で、2023年6月の実質実効レートは、74.18にまで低下してしまった。1970年1月が75.02なので、それより低い。95年5月には191.35だったので、それと比べるとあまりの低さに言葉も出ない。

<第1章のまとめ>

1、 2000年の沖縄サミットのときにG8で最も豊かな国であった日本は、現在ではG7で最も貧しい国だ。こうなったのは、日本企業が円安に安住して、技術開発や企業改革を怠ったからだ。

2、 日本病から脱却するためにまず必要なのは、なぜ日本病に陥ったのか、原因を明らかにすることだ。日本病の原因は人口高齢化なのか?そうであるのなら、なぜ金融緩和で物価を引き上げようとしたのか?

3、 世界競争力ランキングで、日本は世界の64カ国中、第35位だ。アジア太平洋14カ国中では第11位だ。1990年代の中頃に世界のトップであった日本がここまで凋落した原因は、経済政策の誤りにある。日本人の基礎的な能力は世界トップクラスなのだから、この状態を何とか変えなければならない。

4、 台湾、韓国の1人当たりのGDPは、日本とほとんど同じレベルになった。成長率が高いので、今後日本を抜くことはほぼ確実だ。中国をはじめとするアジア諸国と日本の1人当たりGDPの格差も縮小している。今後労働力不足が深刻化するにもかかわらず、日本は外国人労働力を得にくくなる。

5、 企業時価総額の世界ランキングで、上位がアメリカのハイテク企業によって占められる状況は変わっていない。100位以内の日本企業の数は、ヨーロッパに比べても見劣りがする。これは、アメリカで企業の新陳代謝が進んでいるのに対して、日本では進んでいないからだ。

6、 GDPや生産性、賃金などを国際比較する際に、購買力平価という指標が用いられることが多い。これには注意が必要だ。十分に理解しないで使うと、誤った結論を導いてしまうことがある。「実質為替レート」という指標もある。これで見ると、日本人の豊かさは70年代より低くなってしまった。

<なぜ日本経済は停滞したのか?>

<日本人の賃金は90年代以降上がっていない>

<90年代に生じた変化の本質>

・日本人の賃金は、1990年代の中頃までは順調に伸びた。

 財務省「法人企業統計調査」による従業員1人当たりの平均賃金(年収)を見ると、高度成長の期間に目覚ましく上昇した。しかし、1990年代の末に天井にぶつかり、それ以降はほとんど横ばいで現在に至っている。

 このこと自体はよく知られている。ただ、こうした現象がなぜ生じたかは、必ずしも明らかにされていない。

 しばしば言われるのは、バブルの崩壊が原因だ、という考えだ。

<「付加価値」の推移に着目>

・以下の分析で重要な役割を果たすのは、「付加価値」という概念だ。

 これは、売上高から原価をひいたもので、会計学では「粗利益」と呼ばれている。付加価値は、賃金・報酬と企業の利益などに分配される。

・したがって、「従業員1人当たりの付加価値が増えれば賃金が上昇し、増えなければ賃金は上昇しない」ということになる。

 従業員1人当たりの付加価値は、従業員1人当たりの売上高と、売上高に占める付加価値の比率の積として表すことができる。

<付加価値が基本的な指標>

・企業などが生産する付加価値を合計したものが、GDPだ。これは、国全体の経済活動を測定する最も基本的な指標だ。

・しかし、企業活動そのものを見るには、利益関連の指標よりも、その元となっている付加価値を見るほうが適切だ。

 特に、賃金・給与の動向を知るためには、付加価値を見ることが重要だ。

<製造業の就業者が減り、非製造業の従業者が増えた>

・状況は製造業と非製造業とでかなり違うので、これらを区別することが必要だ。

・1993~1994年頃には、「就職氷河期の始まり」と言われた時期である。日本企業はそれまで新規採用を増やし続けてきたのが、急激な新規採用の絞り込みを始めたのだ。

 これは、1990年代に、中国工業化によって日本の製造業が深刻な打撃を受けたことの影響だ。それに対処するため、バブル崩壊をきっかけとして、日本の製造業は「人減らし」政策に転換し始めたのである。

 

・その結果、1960年代では製造業より少なかった非製造業の従業員数は、2020年度には製造業の3.5倍となっている。

・非製造業が雇用を増やしたため、製造業の「人減らし」にもかかわらず、失業率の上昇を抑えることができた。ただし、増加した雇用のうち、かなりの割合が非正規だったと考えられる。

<古いタイプの重厚長大型製造業が維持された>

・製造業では、人減らしを行った結果、従業員1人当たりの売上高が2007年まで、ほぼ増大を続けた。

 ところが、売上高に対する付加価値の比率は、緩やかではあるが低下し続けてきた。これは、企業が新しいビジネスモデルや技術の開発を行わなかったことの結果だと考えられる。

 つまり、人減らしを行うことによってそれまでの製造業を維持しようとしただけであって、本来行われるべき技術開発やビジネスモデルの改革は行われなかったのだ。その結果、高度成長を支えた重厚長大型の製造業が、ほぼそのままの形で残ることになった。

・なお、経済政策においても、1990年代の後半以降、円安政策が取られた。2000年代になってからは、積極的な介入によって円安への誘導が行われた。これによって、重厚長大型の製造業が輸出を増やすことができた。

<非製造業では資本装備率が低下>

・対して非製造業においては、従業員が増加した反面、それに見合う投資が行われなかったため、資本装備率が低下した。

 非製造業における従業員1人当たりの売上高は、1980年代までは伸び続けてきたのだ、1990年度で急激に屈折し、その後も減少を続けた。

 これは、資本装備率が低下したためだと考えられる。

 他方で、非製造業は売上高に占める付加価値の比率が上昇を続けたことが注目される。

 これは、非製造業においてビジネスモデルの変革が行われたことを示している。

・こうした業種が雇用を増やすことによって、非製造業の雇用が増えたのだと考えられる。ただし、多くの従業員が非正規・パートタイムの形で雇用されることとなった。

<製造業の新しいビジネスモデルが必要>

・まず、1人当たりの売上高は、資本装備率と強く関連していると考えられること。

・製造業の場合には、「人減らし」を行ったので、1人当たり売上高は、結果的に上昇を続けた。しかし、新しいビジネスモデルや技術を開発しなかったために、売上高に対する付加価値の比率が低下し、その結果、賃金を上げることができなかった。

・反対に非製造業においては、対人サービスの分野でビジネスモデルの変革があったので、売上高に占める付加価値の比率を高めることができた。しかし、資本装備率が低下したため、1人当たりの売上高を増やすことができず、その結果として、賃金を上げることができなかった。

・一方、同時期に世界では、アメリカを中心としてファブレス(工場なし)という新しいビジネスモデルが開発され、製造業において売上高に占める付加価値の比率が急上昇した。しかし、日本の製造業は、こうした動向に対応することができなかったのだ。

<賃金が上がらないのは、付加価値が増加しないから>

<賃金は労使交渉で決まるのか?>

・2022年以降、物価が高騰したために、実質賃金が低下している。

・労働者と経営者の交渉が、現実の賃金決定に影響することは間違いない。しかし、そこで賃金がいかようにもなるというわけではない。交渉の場で決定されるのは、ごく限られた範囲のものだ。

 賃金の基本を決定するのは、労使間の交渉ではなく、以下に述べるような経済的・技術的な関係である。賃金の基本的な動向はその関係によって決まるのであり、自由に変えられるものではない。

 したがって賃金を上げたいと思うなら、その条件を変えなければならない。この点が一般に理解されていないように思われる。

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