コロナ禍がなくても、日本経済は、いわば「アベノミクス恐慌」ともいうべき不況局面に入りつつあった。(2)
(2022/6/21)
『マルクスの資本論 見るだけノート』
資本主義とお金のしくみがゼロからわかる!
白井聡 宝島社 2022/3/16
<『資本論』を知ることで、あなたの常識が180度変わる>
・今からおよそ150年前、「労働者が身を粉にして働くのが正しいことになるのか?」と、世の中に訴えたのが本書で紹介するマルクスの『資本論』です。
<唯物史観>
・人間はどんなに理想的な言葉を述べようとも、結局は食べて寝て遊ぶ存在。ただ、動物とは異なり、道具をつくり、自然に働きかけ、必要なものを自ら生産、すなわち経済的な活動をします。この生産する条件によって歴史が発展する、と見るのが唯物史観です。
<「万国の労働者よ、団結せよ」と訴えたマルクス>
・1848年に刊行されたマルクスの『共産党宣言』を締めくくる文言。この「労働者よ、団結せよ」という言葉は共産主義に関して最も有名なスローガンとなり、社会の歴史=闘争階級の歴史として、あらゆる労働者運動の礎となりました。マルクスは労働者の味方なのです。
<1,資本主義社会は商品と労働で溢れている>
<資本主義経済の解明は商品を知ることからはじまる>
・マルクスは世の中に溢れる商品の数々を、資本主義液剤を構成する主要な要素と見なしました。資本主義経済下の世の中では、すべての富が商品化されるということです。これが『資本論』の出発点になります。商品を、人間の欲望を充足させるだけでなく資本主義社会に特有の機能を持つものと定義したマルクスは、そうした商品を分析することが資本主義社会を知るための第一歩であると主張しました。
・資本主義社会を知るためには、その細胞たる商品を詳しく調べる必要があると考えたのです。
・資本主義社会は、さまざまな労働の組み合わせである分業によって成り立っています。
<資本主義社会の富は商品の集合体である>
・人が何かをしたいという、その欲望を満たすことで値段がつけられるのが、資本主義社会を構成する商品の位置づけです。
・すべてが商品となった社会では、富は「巨大な商品の集合体」として考えられるとマルクスは述べています。
<資本主義は分業によって成り立つ>
・商品は労働の組み合わせで生まれる。
・多くの人が協力することによって成り立つ無数の仕事があり、それが組み合わさって商品が生産され、社会に富が蓄積されます。
<使用価値と交換価値という2つの価値①>
・商品には人の欲望を満たす有用性(使用価値)と、商品同士を交換する際の交換比率(交換価値)があります。
・AをX個=BをY個という形で価値量を比較すれば、すべての商品をイコールで結ぶことができるのです。商品にはこれらの2つの価値があることから、商品の二重性とマルクスは考察しました。
<使用価値と交換価値という2つの価値②>
・商品が自ら価値を示すには、比較する対象がなければ成立することはないとマルクスは考察しました。
・商品は交換をもって価値を表現する。
<商品の価値はそこに費やされる労働量で決まる>
・有用性を持った商品を生み出すためには人間の労働が必要です。つまり労働が商品の価値を決定づけているのです。
・このように労働が価値を形成するという理論を経済学では「労働価値説」といい、マルクスが完成させました。
<労働にも二重性がある>
・使用価値を生み出す具体的有用労働と、交換価値を生み出す抽象的人間労働、両者を指して「労働の二重性」と呼びます。
・具体的有用労働は、何かをつくったり、何かのサービスに従事したりするなど、有用性をつくり出す具体的な労働を指しています。
あらゆる具体的有用労働には共通点があります。どんな種類の具体的な労働も、人が脳と筋肉を使って働くことに変わりはありません。マルクスはこの共通するものを抽象的人間労働と定義し、この2つの属性を「労働の二重性」と名づけました。
<労働価値は社会全体の平均で見る必要がある>
・商品の価値の大きさを決めるのは労働価値です。ただし個々の労働価値ではなく、平均的な労働価値を見る必要があります。
・マルクスは、個々の労働価値ではなく、社会全体の「平均的な労働価値」がその商品の価値を決めると考えました。
<他人に有用であることが商品であるための条件>
・有用であっても個人的なものは商品ではありません。商品であるために必要なものは、他人にとっての使用価値です。
・商品を生産するには、自分にとっての使用価値だけでなく、他人に対する使用価値を生産しなければならないというのがマルクスの主張です。
他人が欲しがったり交換したがったりする品とは、すなわち社会的使用価値がある品と言い換えることができます。
<労働力もまた商品である>
・商品を生み出す際に働く労働力。労働市場において売買されるため、こちらも商品だといえます。
・労働力という商品が商品を生産する。
・労働力も商品である以上、値段がつきます。いわゆる賃金の多寡です。優れた頭脳や技術といった使用価値が大きく希少な労働力商品には高い値段がつき、非熟練労働のように誰にでもできて使用価値が低い労働は、低い値段がつけられます。
<商品はどこからやってきた?>
・商品交換は金銭による等価交換です。お金と商品の交換だけで買い手と売り手の関係は完結し、人間としての関係は残りません。
・資本主義が発展するにつれて金銭による交換の領域が拡大することは、共同体世界の領域が狭くなっていることを示しているのです。
・たとえば、前近代的共同体の内部では貸し借りがあったとしてもそこに金銭は発生しません。
<2,商品から誕生した貨幣>
<布や塩が貨幣のはじまりだった>
・物と物との交換で成り立っていた時代では、どんな商品とも交換することができるものが貨幣の代わりでした。
・また、紙幣の「幣」は布からきているなど、布や稲がお金の代わり、すなわち一般的等価物になっていたことがうかがえます。
・さまざまなものが貨幣の役割を果たしていた。
<貨幣としての優位な地位を確立したのは金>
・金や銀はあらゆる商品とイコールで交換することができる「優越的な地位」を獲得しました。マルクスは、「金や銀は本来貨幣ではないが、貨幣は本来金と銀である」ともいっています。変わった表現ですが、これは商品のなかから貨幣が生まれたという見方を示しています。こうして商品経済が誕生し、それはやがて資本主義社会を生むことになります。
<この世界は商品―貨幣―商品の繰り返し>
・商品と貨幣の関係を示す交換過程の式は、商品が貨幣に変わり、貨幣が商品に変わり、それが繰り返される過程を表します。
・商品を売り、お金をつくる。
・「W(商品)-G(お金)-W」 は社会全体で行われた。
<商品の命がけの飛躍とは?>
・商品を売ることは難しい。マルクスはこれを「商品の命がけの飛躍」という言葉で表現しました。商品と貨幣には同じ量の価値があっても、両者の関係は対等ではないのです。
・商品を売ることで貨幣を手にするには、貨幣を渡す側にとってその商品が使用価値のあるものでなければなりません。まったく同じ商品が複数あれば買い手は値段の安いほうを求めるでしょう。商品を貨幣に変えるためにはあの手この手を使う必要があるのです。
<貨幣の機能>
・貨幣には「価値尺度」の機能が備わっています。まず、商品には値段がついています。また、「流通手段」も貨幣の役割の1つです。貨幣は商品を購入する際に売り手に支払うもの。
・商品が価値を持つのは人間の労働力があってこそ。結局、貨幣は労働の価値を表しているのです。
<なぜ人は金を欲しがるのか?>
・こうして貨幣によって価値を保存できるから、多くの人は、「貨幣はいくらあってもいい」という気持ちになります。言い換えれば、商品を売る立場よりも買う立場に立ち続けたくなります。より多くの金を欲することをマルクスは「黄金欲」といいました。
・貨幣は常に人から欲されるもの。お金が貯まれば欲しいものがたくさん買え、できることも増えます。だから人はお金を欲しがるのです。
<3,貨幣から誕生した増殖を止められない資本>
<資本=絶えざる価値増殖>
・マルクスは商品を生産して販売することで価値の大きさを変化させ、より大きな価値を得る運動を資本であると定義しました。
・剰余価値の生成は、資本主義の肝です。剰余価値を求めてより高い生産力が追及されることになります。
・つまり、資本主義社会には剰余価値を求めて絶えず生産力を増大させ続けなければならないという命題が内在しています。
<資本とは運動である>
・マルクスは、資本を、常に価値増殖を求める運動として定義しました。
・商品を生産して販売する際、利益、すなわち剰余価値を生み出そうとします。こうした流れこそが「資本」の本質であり、絶えず工夫を凝らし価値増殖に努める運動こそが「資本」というわけです。
<資本家は資本の人格化>
・資本家の道徳心は関係ない。
・マルクスは資本家の貪欲さを、単なる個人の道徳問題とは考えませんでした。資本家は資本の運動の担い手として、資本が人格化した存在なので、その貪欲さは、資本の無限の価値増殖に駆られてのものなのです。現に、資本が株式会社化や株式の持ち合いなどにより脱人格化されても、資本の貪欲さに変わりはありません。
・いつの間にカお金儲けが目的になる。
<不変資本と可変資本>
・生産過程の攻勢においてその「原料」の価値がまったく変化しない部分を「不変資本」といいます。このように不変資本部分だけで価値増殖が起こることはありません。しかし、「労働力」が加わってくると話は変わってきます。労働力は、消費すればするだけ価値が増えていくものです。
・労働力は生産物の価値を変化させる。
<剰余価値を生み出すのは労働力という特殊な商品>
・商品をつくるということは、労働者の持つ労働力を消費させる行為であるのと同時に、剰余価値を生む行為でもあります。マルクスは労働力が持つ特別な機能を「商品の使用価値自身が、価値の源泉」と表現しました。
<資本家が労働者を雇うのは剰余価値を得るため>
・資本家が利潤を目的として労働者を雇用して商品を生産しようとする結果、資本主義社会において生産過程=価値増殖過程となっていったのです。
<剰余価値を得たいがために労働者は搾取される>
・資本家は、商品を生産するために購入した労働力を給料分以上に働かせます。剰余価値を生み出すためです。
・剰余価値を生むためには剰余労働時間が必要。
<資本家は労働者を平等だと都合よく考える>
・資本家は労働力によって生み出される剰余価値を、自分の才覚と機械によって生み出されていると捉えがちです。これについてマルクスは、商品売買の原則は等価交換であるのに、労働力に関しては不等価交換が行われていると分析しました。
・つまり、資本家には剰余価値が労働者の搾取によって生み出されているという認識がまったくなく、ただ労働力と貨幣を等価交換しているだけだという認識なのです。
<4,資本による労働者の搾取>
<労働者の給料は労働力再生産の費用に等しい>
・資本家は、より多くの価値を生み出すために労働者から労働力を買いました。それは必ず労働者お搾取をともないます。
・剰余労働時間は給料に含まれていない。そこで、資本家は労働者の再生産を生む「必要労働時間」に、利益となる「剰余労働時間」を加えて雇用契約をします。マルクスはここに搾取を見出し、「労働力の価値は、すべてのほかの商品の価値に等しく、この特殊なる商品の生産、したがってまた再生産に必要な労働時間によって規定される」といいました。
<労働者は労働力しか売るものがない>
・自由は労働者の立場を弱くする。「自分の労働力を売ってもいい」といえる自由はありますが、「労働力以外に売る商品がない」ことは、資本家のもとで働くしかないことを意味します。
<生産物を所有することができない労働者>
・労働者は商品を所有できない。マルクスは、労働者の働き方には2つのことが課されると指摘しました。それは、「管理」と「所有関係」です。
労働者は、資本家に労働力を商品として売ります。ということは、労働力はそれを買った資本家のもの。つまり、労働時間中は資本家の管理に従わざるをえません。
<労働者は働けるだけ働かされる>
・絶対的剰余価値には限界がある。現在では法律により労働者を働かせることのできる時間に上限ができましたが、労働者が働けるだけ働かされるという側面に変化はありません。いまだ長時間労働が社会問題であることがその証拠です。
<労働日の延長>
・資本家は剰余労働をさせたがる。マルクスが「資本家は労働日の無制限の延長への衝動に駆られる」と指摘した通り、資本家は労働者に超過労働時間を強いるためにあらゆる手段を駆使するのです。労働者は、長時間労働を余儀なくされる宿命といえるでしょう。
<労働者はお金欲しさに残業せざるをえなくなる>
・残業代と労働力を引き換えにしてしまう。資本家に与える労働量より、受け取る賃金の高さに関心を持ってしまうという労働者の厳しい現実は、今もほとんど変わっていません。
<資本家は児童や女性からも搾取する>
・労働者の増加=賃金の低下。成年男子だけでなく児童や女性までもが賃労働者となったのは、機械装置の普及がきっかけだったといわれています。
<資本は労働者の体の成長や発達までも奪う>
・長時間労働は子どもの発育も妨げる。マルクスが生きた時代の資本家が労働者に要求していた労働時間は、1日24時間のうちからわずかな休息時間を差し引いたものでした。貧しい子どもたちはしばしば過酷な扱いを受けて体の成長と健康がおかしくなり、教育も受けられず、凄まじい無知が労働者階級の子弟に蔓延していました。
<資本家は労働力の消耗と死滅を生産している>
・マルクスは、何でも効率を求め無駄を省こうとする資本家は人間が提供する労働力を無駄遣いすることを指摘しています。
・資本家は労働者に対しては無関心。実際に人間性を破壊してまで利益を追求する時代があり、現代のブラック企業で問題となっている精神疾患の多発や過労死にも、マルクスの指摘は通じるものがあるのです。
<労働時間は闘争の焦点>
・売り手と買い手の想定が衝突する。資本家は、1日の労働価値に見合った労働時間をできるだけ長く想定します。そして労働者はこれをできるだけ短く想定するのです。こうした互いの想定が標準労働日をめぐって衝突します。
<資本家のための「働き方改革」>
・度を越えた長期労働は規制された。マルクスは工場法の制定を、資本家が労働力を搾取し続けるための手段と見ました。マルクスは、資本家がこれからも搾取を続行するために労働者の保護をしたのだと考えました。
<5,資本は労働者だけでなく社会全体と自然からも搾取する>
<「あとは野となれ山となれ!」が資本家の標語>
・資本家は今を乗り切ればそれでいい。マルクスは資本家たちの強欲な姿を見て「彼らは人類の退廃や人口の減少などお構いなしに、今までのやり方を続けるだろう」と指摘しています。資本は増殖することしか目指してないのです。
<資本は使用価値に関して無関心>
・「質より量」が資本主義の本質。とにかく量を増やすことが資本主義、そして資本というものの本質ということになります。つまり、「質より量」の必然性が資本には存在しているのです。資本主義に発展によって、人々が豊かになるとすれば、それは資本にとっては副次的な効果にすぎません。
<資本は消費者も騙す>
・食品偽装で食品の質が低下。資本家は、重労働によって労働者を搾取するだけでなく食品偽装をして、消費者までをも欺きました。
<資本は自然からも搾取する>
・資本主義は環境を破壊する。資本主義社会のなかでは、人類が気候を変動させるほど自然環境を消費し破壊しているという事実に気づいていながらも経済成長や過剰消費をやめようとはしていません。しかし、今日でも加速する経済成長と消費がもたらした環境破壊は、もう見て見ぬふりができる段階ではなくなってきています。
・資本は、人間の労働力だけでなく増殖するために自然も容赦なく搾取します。
<資本は物質代謝を乗っ取り撹乱する>
・SDGs(持続可能な開発目標)の不毛。資本主義社会は、消費が停滞すると経済が回らなくなってしまいます。経済が回らなければ人々の生活も回らなくなるという側面から考えと、資本主義社会は構造的に搾取し続ける必要があるということがわかります。
・まさに資本主義批判に踏み込まなければ、SDGsは画に描いた餅にすぎません。
<6,技術の進歩と資本主義>
<なぜ、資本主義は生産力を飛躍的に増大させたか>
・相対的剰余価値の増加が資本主義社会の鍵。生産力を上げる=剰余価値を増やすには、「絶対的剰余価値」と「相対的剰余価値」を増やす2種類があります。前者は、ひたすら労働時間を長くすることで得られる剰余価値、後者は、必要労働時間の削減から得られる剰余価値です。労働時間の延長には限界があるため、資本主義の発展は絶対的剰余価値よりも相対的剰余価値の追求へと向かっていきました。
<生産力の上昇によって延々に続く値下げ競争>
・特別剰余価値=期限つきの剰余価値。イノベーションによって獲得される特別剰余価値は、値下げ競争が延々と続くことにつながります。
<「協業」が生産力を増やす2つの理由>
・機械はなるべく多くの人と共用。このように生産コストが削減されたり、生産力が向上したりすることにより、資本主義において協業を図ることは、相対的剰余価値を大いに増やすことにつながるといえるのです。
<工場制手工業から機械制大工業への変革>
・機械制大工業になり、さらに生産性アップ。大量生産を可能にする機械により、全体の生産量に対する経費は大幅にカットされ、剰余価値は増えるのです。
<機械は人のためではなく資本のために使われる>
・より低コストの生産手段が選ばれる。機械は必ずしも人間に楽をさせるものではない。資本は、人を守り人の作業を楽にするために機械を導入するわけではないのです。
<機械化によって労働は非人道的に>
・機械は、労働者の労働密度を上げてしまう。資本は、機械の速度を高めることを目指し、そうすることで、機械を監視する労働者の範囲や作業も拡大。限られた時間で、より多くの労働を強いられることになるのです。さらに、機械作業に必要な人数を減らすことで、より多くの剰余価値を搾取しようとします。人という労働力は、機械への従属を余儀なくされたといっていいでしょう。
<機械化は、女性や児童に労働をさせる>
・労働人口の増加で賃金低下。機械によって女性や児童が、労働者になりえることを意味するからです。
<機械は労働価値を下げ、家族総出で働く時代へ>
・労働単価は大幅に変わることに………。成年男子の労働力の価値は機械によって引き下げられ………。家族を養える賃金を父親にのみ支払う必要性をなくしました。
・つまり、機械によって労働力の価値が下がり、「個々」の生存維持のために必要な賃金によって規定されるようになったといえるのです。
<機械は、労働者の立場を弱める>
・機械はストライキを鎮圧する武器に。むなしき労働者は資本家のいいなりに。機械は、労働者の労苦や危険を取り除くことができる可能性を秘めているにもかかわらず、それが資本主義的に利用される限り、労働者に対する資本家の支配力を強め、搾取を強めるように作用します。これに対して労働者がストライキなどの反抗を起こしたとしても、かえって機械の進化が促される可能性があることにマルクスは注意を促しています。
・機械の導入は、労働力の削減を意味し、労働者の仕事を奪い、資本家にとっては労働者の要求を避けるための武器に。
<機械に仕事を奪われた労働者は、慢性的窮乏に>
・機械に人の仕事が奪われる恐怖。19世紀から今日に至るまで、人は多くの仕事を機械に奪われ今後もAIの発展によって多くの仕事を奪われるでしょう。
・マルクスは、資本の有機的構成を2種類に分けました。価値を形成して価値の大きさを変化させることから、労働を「可変資本」、そして、価値が変わらない機械や原材料などを「不変資本」と。資本家は、可変資本において労働時間の延長や協業によって多くの剰余価値を得ようとし、不変資本からは節約によって剰余価値を得ようとします。
・19世紀においても、人の仕事は機械によって奪われ続けてきました。1810年代のイギリスでは、労働者が機械を破壊する「ラッタダイド運動」が勃発するほど、労働者は追い詰められていました。
<科学技術の発展で労働者人口は減少へ>
・AIも、未来の労働を変える。資本主義の発展は、より少ない人間による生産を意味します。コンピューターやAIの進化は、その傾向を顕著にすると同時に、資本主義的生産の目指す道ともいえます。
・現代においても、昨今のAIの発達によって未来の働く現場は大きく変わっていくといわれています。
<失業者が増えるほど資本家はよろこぶ>
・3種類の相対的過剰人口=産業予備軍。流動的過剰人口=産業予備軍、潜在的過剰人口(都市に吸収されるのを待つ農民)、停滞的過剰人口(不規則かつ低賃金で働く労働者)。
・産業予備軍の存在が、賃金引き上げを制止してくれるからです。産業予備軍とは、失業もしくは半失業状態にあって、就業の機会を待つ労働者のことを指します。その存在が労働者の労働条件が低下する原因となっており、景気変動を調整する役割を果たしているのです。生産性が向上しても賃金は上がらない ⁉
<罪は機械そのものになく資本家の使い方にある>
・機械に罪があるわけではない。機械は労働者を支配したともいえますが、その罪は機械自体にはなく、機械を使う資本にあるとマルクスは考えました。益となるか害となるかは使い方による。
<7,資本主義社会の不合理な構造>
<誰もがみんな、資本主義に巻き込まれて行く>
・はじめ、形式的にのみ資本主義社会に参加していた人々は、より実質的にそのしくみに組み込まれていくようになっていきます。
・徐々に労働者自身も価値の増殖に積極的になりはじめます。当初、労働力は資本家の指示に消極的に従っていたにすぎませんでしたが、時が経ち、労働階級の人々は資本家と協調・協力し、剰余価値の生産に積極的に参加するようになります。自らを搾取する相手に積極的に協力するにまで至るのが、「実質的包摂」の「実質的」たる所以です。
<大勢の労働者が一緒に働く協業がはじまった>
・協業によって人々は力を発揮する。資本主義社会では大規模な工場などがつくられて、大勢の人々が同じ場所で働くようになりました。仲間と一緒に働くことでお互いに協力し合ったり、競争心を刺激されたりして、単独で働く以上の力を発揮できるのです。
<協業で利益を得るのは労働者ではなく資本家>
・協業で増えた利益は資本家のもの。合計人数以上の力が発揮できる。
<協業で莫大な余剰価値を手に入れるのは資本家>
・協業で利益を手にするのは資本家。協業で生まれる剰余価値を手に入れる方法にはいくつかの種類がありますが、どの方法でも労働者にはメリットがありません。
<単純作業が増えると労働力の価値が低下する>
・分業化が進むと熟練労働は解体される。作業が効率化されて単純作業が増えると、その仕事に対して支払われる賃金は低下していくのです。
・賃金が高い熟練労働者は仕事を失う。
<資本が蓄積しても労働者の暮らしはよくならない>
・より悪い労働条件でも働きたいと望む労働者との競争を強いられますから、資本家は「安い賃金でも働く労働者はいくらでもいる」と賃金を値上げしません。
<労働者は自分の首を自分で絞めているのと同じ>
・人出不足だと賃金が上昇する。賃金が上昇したとしても、労働者が資本家の資本を増やすために道具であることは変わりません。つまり、資本主義社会の下には、常に資本によって追い立てられる労働者がいるのです。
<労働者同士が競争させられ首を絞め合う>
・賃金には時間賃金と出来高賃金がある。働いた作業量に応じて賃金が支払われる出来高賃金にはメリットもありますが、賃金水準を下げられる危険性もあります。
<頭が資本主義に侵され資本家の代弁者となる>
・資本家の代弁者となる労働者。生まれたときから資本主義社会で育った労働者にとって、こうした資本家の支配は当たり前のものとなっています。資本主義の体制が固まったことで、労働者の社会の見方までもが資本家にとって都合のよい考え方、すなわちブルジョワ・イデオロギーに影響され、搾取される労働者ですら、資本家の代弁者となってしまいます。
<8、資本主義の行く末は革命である>
<資本主義のはじまりと暴力>
・16世紀、囲い込み運動が起こる。莫大な富を蓄積していく資本主義。そのはじまりを紐解くと、痛ましい「暴力」の光景がありました。マルクスは、近代資本主義を生み出した最初の資本蓄積を「本源的蓄積」と名づけました。
・14世紀イギリス農民は、奴隷状態から抜け出して自営農になっていました。本源的蓄積のきっかけとなったのは囲い込み運動でした。囲い込み運動とは、毛織物原料の羊毛を生産するために、農地を牧羊地に転換しようと農民を土地から暴力的に追い出した過程を指します。農民の多くは生産手段を失い、資本家が雇い入れて働かせることが可能な存在になりました。つまり、暴力こそが資本主義の起源といえます。
<追い立てられた人々>
・農地を追われた農民は都市に。都市に大量流入した元農民たちに対し、国家はムチ打って「労働者階級」に仕立て上げました。農地を失った自営農民は没落し、物乞いや盗賊などになりました。
・イギリス国王が行った「血の立法」。さらに国家は賃金の最高限度を決めたり、労働者の団結権を奪ったりして資本家を後押ししたのです。
<資本間競争と資本の集中>
・世界的独占企業。マルクスは「常にひとりの資本家が多くの資本家を滅ぼす」といっていますが、これまで数多くの資本家や企業が誕生しては、競争に敗れて姿を消していきました。
・つねに1人の資本家が多くの資本家を滅ぼす。
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