世界の情勢を大いに左右した謎の人々の組織は確かにインドに存在していたと主張した。(3)
<現代の薔薇十字運動>
・ハインデルは1907年にヨーロッパにいた頃、驚くべき人物の指導を受けたと主張しているが、彼によると、この人物は後に秘密の薔薇十字団の上級会員と判明する。数回の訪問のあいだにハインデルに試問を行い、このアデプトは彼をドイツとボヘミアの国境に近いところにある薔薇十字団の神殿に導く。ここに彼は一箇月滞在し、長老会員から個人教育を受ける。その内容をまとめたものが、1909年に薔薇十字教団によってその初版が出たハインデルの『薔薇十字団の宇宙論』である。ハインデルは占星術師でもあり、その著作は彼の占星術への強い関心を反映している。
・ハインデルの「薔薇十字教団」の本部は、ロサンジェルスとサンディエゴの中間に位置するオーシャンサイドにある。そこには迎賓館や、周囲の風景を一望できる立派な12面の白い神殿がある。黄道12宮に対応して12面の構成となっているが、それは「薔薇十字教団」が占星術に力点を置いていることを示している。出版部門も設置されており、マックス・ハインデルの占星術や薔薇十字思想に関する多くの本を刊行している。「古代神秘=薔薇十字教団」とは違って、このグループには宗教的な色彩が強い。
・薔薇十字団という名称を実際に使用したり、薔薇十字団の直系であると主張するさまざまな組織のほかに、漠然とその神話体系に影響を受けたという人々がいる。
そうした人物の中にルドルフ・シュタイナー【1861―—1925年】がいる。人智学の創始者である彼は、人智学が薔薇十字団という土壌から生まれたものと理解していた。シュタイナーの著作と講義には薔薇十字団とクリスティアン・ローゼンクロイツへの言及が随所に見られる。彼は、クリスティアン・ローゼンクロイツがサン・ジェルマン伯爵として現れ、マリ・アントワネットの侍女に差し迫る革命について警告したと信じていた。
『奇人怪人物語』
(黒沼健) (河出書房社)1987/12/1
<年をとらぬ男>
・サンジェルマン伯爵は、イギリスで有名な作家のバルワー・リットンと親友になり、彼に薔薇十字団の主義の真髄を教え、彼と合作で、有名な小説「ザノニ」を書いた。この小説の主人公は、いうまでもなく薔薇十字団のサンジェルマン伯爵であった。彼は木草学者で、不老不死の秘術を心得ていると描かれていた。
<サンジェルマン伯爵は、定期的にヒマラヤへ身を隠す?>
サンジェルマン伯爵が、新しい逃避の場所を考える前に彼の来訪を待っている一団の人々が既にいる。それはインドの地下にある地下王国アガルタである。
私が、この一文を書いている間にも謎の人、サンジェルマン伯爵は、すでに地下王国の賓客に迎えられているかもしれないのである。
サンジェルマン伯爵は、宇宙を自由に動けるサタンの使者の代表かもしれない?
『ピカトリックスの秘密』
(ピーター・コロージモ) (角川春樹事務所)1997/6/1
・彼の頭の中に謎の人物サンジェルマンの姿が現れた。その人物は、彼に「グノーシス教会」の創始者であるJ・S・ダニエルという奇妙な人物の言葉を思い出させたのである。
「伯爵が、サタンの使者の代表の一人に違いないことを証明する証拠がいくつかある。彼は神出鬼没な人であった。姿を消すことができたし、いろいろな場所に一度に出現することもあった。八方に手を尽くしても、彼の歳も出生地も死に場所も明らかにならなった」
「ザノーニ」(1)
ゴシック叢書 (E・ブルワ=リットン) (国書刊行会)1985
・ ザノーニは、一日も歳をとっていないように見えるということです。
・ ザノーニが、一人だけの時間をすごすための部屋に入ろうとすると、祖国の衣服をまとった二人のインド人が、入口で、東洋風の深い礼をして、彼を迎えた。噂によれば、ザノーニが、長らく暮らした遠い国からついてきたのだという!
『想起する帝国』
ナチス・ドイツ「記憶」の文化史
溝井裕一、細川裕史、齋藤公輔 勉誠出版 2016/12/31
・ナチスは、ふたたび「帰ってくる」。第2次世界大戦後も、ヒトラー一党は映画や大衆文学などで執拗に「想起」され、残酷で滑稽ながらも魅力的な存在として活躍しつづけている。
<人間・ヒトラーの登場—―『ヒトラー ―—最後の12日間』>
<「最後の12日間」の衝撃>
・ドイツ映画の中で、近年もっとも注目を浴びた映画のひとつに『ヒトラー最期の12日間』(2004)がある。戦後ドイツでは数多くヒトラー映画が作られてきたが、この映画はそれらとは一線を画すというだけでなく、戦後ドイツのありかたそのものにも関わるとして、映画界を超えて大論争を起こした問題作である。というのも、『最期の12日間』に描かれたヒトラーはユダヤ人絶滅を主導した極悪非道な独裁者という従来のヒトラーイメージではなく、ひとりの人間として描かれたからである。たとえば、子供や女性秘書に優しく接するヒトラーや信頼する部下に裏切られ涙を流すヒトラー、ベルリン陥落を目前に精神崩壊を起こしかけているようなヒトラー、多くの部下や秘書たちの眼前で妻に口づけするヒトラーなど、もはやそこに悪魔的な姿を見つけることはできない。「脱悪魔化」したヒトラー像がドイツから誕生したことに世界が驚き、そしてそれ以上に、ドイツ国内でも人間・ヒトラーに強い衝撃が走ったのである。
たしかに、戦後ドイツにおける戦争責任へのとり組みは一貫して評価されてきた。たとえば、ウィリー・ブラント首相(当時)が、ユダヤ人ゲットー石碑の前で跪いて謝罪の意を表し、リヒャルト・ヴァイツゼッカー大統領(当時)が演説『過ぎ去ろうとしない過去』のなかで、過去を直視しつづける必要があることを訴えたことなど、戦後ドイツ史の重要な1コマは、ナチスの罪への謝罪であったといっても過言でない。
<「最期の12日間」の受容と論争>
・『最期の12日間』は、ドイツ人歴史家ヨアヒム・フェストの同名の著書『ヒトラー —―最期の12日間』と、元ヒトラー秘書トラウデル・ユングの自伝『私はヒトラーの秘書だった』を原作とするものである。
・本映画は、2004年9月16日にドイツで封切られる前からドイツ全土で話題になり、公開から3日後には、およそ45万人の観客が押し寄せ、約3か月後の2004年12月31日までには、およそ450万人がヒトラーの最期の「目撃者」になった。ドイツの人口が約8000万人であることを考えると、たった3か月のあいだに、のべ数ながらじつに20人に1人以上のドイツ人が、映画館に足を運んだことになる。
<月面に蟠踞するドイツ第四帝国のリアリティ —―反ナチス映画としての『アイアン・スカイ』>
<フィンランドのインディーズSF映画>
<『アイアン・スカイ』とは>
・2006年から連載が開始された、大和田秀樹による麻雀マンガ『ムダヅモ無き改革』(竹書房、2006~)は、日本の首相小泉ジョンイチローが世界各国の要人と麻雀で戦うことで国際外交をおこない。北朝鮮の「金将軍」とも干戈をまじえて世界を救うという、荒唐無稽な国際政治パロディの人気麻雀マンガであるが、「勃発!“神々の黄昏”大戦」シリーズ(単行本2~6巻、2009~11)では、地球の首脳たちが月面で第四帝国を築いていたアドルフ・ヒトラーおよびその配下と麻雀で激闘を演じる物語となっている。
おそらく、このシリーズの物語の枠組みに借用されているのが、2012年に日本でも公開されたティモ・ヴオレンソラ監督の『アイアン・スカイ』というフィンランドのインディーズSF映画であるのはまちがいないだろう。
・ときに2018年、黒人モデルが操縦するアメリカの有人探査船が46年ぶりに月面着陸に成功する。これはアメリカの女性大統領による再選のための一大選挙キャンペーンであったが、宇宙飛行士が月の裏側で発見したのは、ハーケンクロイツの形状を模したナチス・ドイツの巨大秘密基地であった。大戦末期に宇宙船を秘密裡に開発していたナチスは月面へ逃れ、第四帝国を建設し、地球侵略の軍備を整えていたのだ。今度こそ世界を手中におさめるために、ナチスの宇宙艦隊が侵攻を開始し、地球に飛来する。
<パロディとアイロニーのあいだ>
・『アイアン・スカイ』が上映された2012年に、ドイツでベストセラーとなったティムール・ヴェルメシュの『帰ってきたヒトラー』は、2011年に突如、ベルリンに出現したヒトラーが従来のナチズムを主張しつづけるうちにコメディアンとなって、現代ドイツ社会の批判者として支持されていくというブラックユーモア満載の長編小説であるが。ヒトラーやナチスをダークな笑いの素材にする点で『アイアン・スカイ』と軌を一にしている。
・反ファシズム映画の古典であるチャップリンの『独裁者』のシーンをさらなるカリカチュアに転用し、物語の重要な展開の契機とする一方で、人間ヒトラーを描くことで賛否を呼んだ『最後の12日間』のMADをパロディとして挿入する『アイアン・スカイ』は反ナチズム映画としての側面を維持しながら、最先端のメディアで拡散されたナチス・サブカルチャーというべき要素も包括した結果、SFコメディとしてのみならず、00年代に誕生したナチス映画としての新味を獲得することに成功している。
すなわち、ナチスやヒトラーをめぐるサブカルチャー全般を硬軟かまわず貪欲に併呑する『アイアン・スカイ』は、ネットワークやMAD動画という21世紀のメディアによって創造されたサブカルチャーコンテンツをも受容して、ひとつのエンターテイメントとして成立させている映画なのである。
<ナチスという話題性>
・また、この映画の話題性のひとつはインターネットによって製作資金を募集したことにある。製作者スタッフたちは2008年に公式サイトを設立し、ティーザー映像を公開することで世界中の映画ファンに寄付を呼びかけた。おそらくこのサイトで公開されたプロットが冒頭で紹介した麻雀マンガのソースになったと思われるのだが、総製作費750万ユーロ(約10億5000万円)のうち、100万ユーロ(約1億4000万円)を個人の出資によって集めることで、4年がかりで完成を見たのだった。
<ザ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン>
<SFとオカルト>
・月面にナチスの残党がUFOや宇宙船を建造しているという物語設定があまりにセンセーショナルに映る『アイアン・スカイ』であるが、このストーリーの枠組みはじつは完全なオリジナルだとはいえない。たとえば、『夏への扉』や『宇宙の戦士』で知られるアメリカSF小説界の巨匠ロバート・A・ハインラインの『宇宙船ガリレオ号』(創元SF文庫、1992)は戦後まもない1947年に出版された最初の長編だが、高校の物理クラブに所属する3人の高校生が原子物理学者とロケットを建造して月へ向かうというジュブナイルである。この物語後半では、到着した月面で秘密基地を建設していたナチスの残党と高校生たちが戦うという驚愕の物語が展開する。第2次世界大戦から2年後にすでにこのような物語がアメリカSFの大家によって書かれていたのである。月面のナチスというテーマでは、『アイアン・スカイ』を先取りしている。
そしてUFOとナチスの関連とともに、そのカルト性に興味をいだく人びとにとっては、『アイアン・スカイ』の世界設定に取りこまれた「都市伝説」やオカルティックな部分も見逃せないはずである。
・というのも、オカルトに強い関心をもつヒトラーやナチスが古代理想郷シャンバラ、聖杯、イエスの血を吸ったロンギヌスの槍などを探求していたという「伝説」や、ドイツ軍が大戦中にジェット戦闘機を実用化していた事実があるからである。現在でもコンビニエンスストアの本棚には、その種のことがらをまことしやかに書き立てた本がワンコインで購入可能なシリーズとして並んでいる。武田知弘の『ナチスの発明—―特別編集版』(彩図社、2008)には、マルティン・ボルマン生存説、ナチスのUFO開発説、ナチス残党の国「エスタンシア」などについて紹介されている。
<ナチスをめぐるスキャンダル>
・とりわけ本章にとって、ナチス関連の事件で興味深いのは、カナダ在住のドイツ人エルンスト・ズンデルがインターネットによってホロコースト否定説を展開した事件である。1995年に開設された『ズンデルサイト』(運営はカリフォルニア在住のイングリッド・リムランドによる)に対して、ドイツ・テレコムは子会社を用いることでこのサイトへのアクセスを禁止したところ、言論の自由を主張し規制に反対する人びとがそのミラーサイトを作成して抵抗するという騒動が発生した。その後、ドイツ政府の要請によって、EUはネオナチ・サイトの検閲強化を通達した。90年代のインターネットの普及とこれによる表現規制の新たな問題の生起を象徴する事件でもあったといえよう。
ネオナチ指定を受けたエルンスト・ズンデルであるが、それ以前からすでに思想的行動をおこなっていた。1939年ドイツ生まれの彼は1951年にカナダに移住、1977年にネオナチ思想普及のための自費出版社を設立した。ヒトラー礼賛やホロコースト否定説をパンフレットの配布によって1984年にカナダ当局に逮捕されたズンデルは、さらに多くの事件によって2005年にドイツへ強制送還されたあと、有罪判決を受けて収監されたが、2014年に出所している。
・このズンデルには、もうひとつの顔があった。UFOはナチスが開発したという説をウェブ上に立ちあげていた人物としてかつて知られていたのである。第2次大戦末期にドイツ軍はUFO開発に成功し、ヒトラーはこれに搭乗して、南極に逃れた(!)と、ズンデルは主張している。ズンデルはナチスによるUFO開発説を巷間に拡散させるのに大きく寄与していたが、それはUFOやヒトラー生存説というセンセーショナルな話題でネオナチ思想を普及させるための寄せ餌でしかなかったようだ。
・ちなみに、このエルンスト・ズンデルの影響が1980年には日本へ波及していたことにも触れておきたい。集英社の『週刊プレイボーイ』1980年8月19日号から11月4日号までの12週にわたる連載終了後まもなく単行本化されたのが、落合信彦の『20世紀最後の真実』(1980)である。南米にある「エスタンシア」というナチス残党が住む町、ナチス残党の逃亡を援助する組織オデッサの暗躍、アウシュヴィッツ虐殺の虚構性、ヒトラーの影武者、ナチスのUFO開発、UFOによるヒトラーの南米逃亡説、ナチス残党の潜伏など、ズンデルがこの書物で語るナチス伝説の数々はすさまじい。
・本書の冒頭、南米の奥深く位置する「エスタンシア」というナチス残党が住む町を捜索するさいに、生粋のナチス党員の生き残りに同行を頼もうとすると、彼の組織の責任者に了解が必要とされて、落合はその責任者「ウィルヘルム・フリードリッヒ」に会うのだが、その影武者として登場したのが「エルンスト・ジーグラー」、すなわちエルンスト・ズンデルなのである。これだけでも、この著作がいかなる内容なのかが看取されるだろう。
一方で、「ノンフィクション」とはひとことも明言してはいない。また、彼は前述の1983年に逮捕されたクラウス・バルビーの評伝の翻訳も出版している。
・ズンデルによって踊らされたマスコミ関係者としては、ほかに日本テレビのディレクター矢追純一がいる。『ナチスがUFOを造っていた』(KAWADE夢文庫、1994)という著作や、日本テレビ系で《矢追純一UFOスぺシャル》などのUFO番組を手がけている。落合信彦とおなじく、ソースはやはりエルンスト・ズンデルである。
いずれにせよ、前世紀の80年代からヨーロッパを騒がせつづけたエルンスト・ズンデルによる「ナチスがUFOを開発、実用化した」という説を、『アイアン・スカイ』は物語設定の要素として流用している。本章冒頭で言及した音楽担当のライバッハも含めて、いかがわしい都市伝説、ナチス報道のセンセーショナリズム、これによる誤情報の拡散などのナチカルチャーともいうべき広範さをもった現象そのものを物語の核として胚胎していることがこのSF映画の特質なのである。
『アメリカ大陸のナチ文学』
ロベルト・ボラーニョ 白水社 2015/6/4
<エデルミラ・トンプソン・デ・メンディルセ 1894年ブエノスアイレス生まれー1993年ブエノスアイレス没>
・15歳のときに処女詩集『パパへ』を出版、これによりブエノスアイレスの上流社会の並み居る女流詩人のなかでささやかな地位を得た。以後、20世紀初頭のラプラタ河両岸において抒情詩と趣味の良さで他の追従を許さなかったヒメナ・サンディエゴとスサナ・レスカノ=ラフィヌールがそれぞれ率いるサロンの常連となった。最初の詩集は、当然予想されるように、親への思い、宗教的省察、庭について詠ったものである。修道女になろうという考えを抱く。乗馬を習う。
・1917年、20歳年上の農場主で実業家のセバスティアン・メンディルセと知り合う。数か月後に結婚したときは誰もが驚いた。当時の証言によれば、メンディルセは文学一般、ことに詩を蔑み、(ときおりオペラに行くことはあったものの)芸術的感性に欠け、会話の内容と言えば自分の雇う農夫や労働者並みだった。長身で精力的だったが、美男というには程遠かった。唯一の取り柄として知られていたのは、無尽蔵の資産である。エデルミラ・トンプソンの友人たちは打算的な結婚だと口々に言ったが、実際は恋愛結婚だった。
・1921年、最初の散文作品『わが生涯のすべて』を出版する。これは起伏がないというのでなければ牧歌的な自伝で、ゴシップは語られず、風景描写や詩的省察に富んではいるが、作者の期待に反し、特に反響を呼ぶでもなく、ブエノスアイレスの書店のウィンドウから姿を消した。落胆したエデルミラは二人の幼い子供と二人の女中とともに、20以上のスーツケースを携え、ヨーロッパに旅立つ。
・1926年は多くの取り巻きを従え、イタリアを旅行して過ごす。1927年、メンディルセが合流。1928年、ベルリンで長女ルス・メンディルセが生まれる。体重4千5百グラムの健康な子供だった。ドイツの哲学者ハウスホーファーが代父となり、洗礼式にはアルゼンチンおよびドイツの名だたる知識人が参列した。パーティーは3日3晩続き、ラーテノーに近い小さな森で終わったが、その折、メンディルセ夫妻はハウスホーファーのために作曲家でティンパニの名手ティト・バスケスが自作の曲を独奏するコンサートを催し、当時大評判となった。
・1929年、世界大恐慌によってセバスティアン・メンディルセはアルゼンチンへの帰国を余儀なくされる一方、エデルミラと子供たちはアドルフ・ヒトラーに紹介され、ヒトラーは幼いルスを抱き上げて、「確かに素晴らしい子である」と述べる。全員で写真に納まる。未来の第三帝国総統はアルゼンチンの女流詩人に強い印象を残す。別れ際、エデルミラが自分の詩集を何冊かと『マルティン・フィエロ』の豪華本を贈ると、ヒトラーは熱烈な謝辞を述べ、その場で詩の一節をドイツ語に翻訳するよう求めたが、エデルミラとカロッツォーネはなんとかその場を切り抜ける。ヒトラーは満足した様子を見せる。きっぱりとした、未来志向の詩だ。エデルミラは喜び、上の二人の子供に最もふさわしい学校はどこかと助言を求める。ヒトラーはスイスの寄宿学校を勧めるが、最良の学校は人生であると付け加える。会見の終わりには、エデルミラもカロッツォーネも心底ヒトラー崇拝者になっている。
・1940年、セバスティアン・メンディルセが亡くなる。エデルミラはヨーロッパ行きを望むが、戦争によって阻まれる。
・1945年~46年にかけては、彼女の敵対者たちによれば、誰もいない海岸や人目につかない入江を頻繁に訪れ、デーニッツ提督の艦隊の残存した潜水艦に乗って到着する密航者をアルゼンチンにようこそと歓迎したという。また、雑誌「アルゼンチン第四帝国」、その後は同名の出版社にエデルミラが出資していたとも言われている。
<雑誌『ムー』(14 9月号)によると>
・「アルゼンチンは戦中・戦後の軍事独裁政権がいずれも親ナチス派だったため、第2次世界大戦にナチスの残党を大量に受け入れて匿った国だ。一説にはアルゼンチンだけで5000人、南米全体では9000人のナチス残党の戦争犯罪者が亡命した」とされている。じつはヒトラーもそのひとりだったという新味はあまりなさそうな新説が、今年1月、証拠写真数枚とともに発表されたばかりだ。
発表者はブラジルの女流ノンフィクション作家シモーニ・ゲレイロ・ディアスで、当人もユダヤ系ブラジル人という。
ほかのヒトラー生存説と同様、自殺したのはやはり替え玉で、ヒトラー本人は南米を転々として最後はブラジル奥地のマットグロッソに落ち着き、アドルフ・ライプツィッヒと名乗って肌の黒い愛人と暮らしていたが、1984年に95歳でひっそりと世を去った。
シモーニはこの調査結果を『ブラジルのヒトラー:その生と死』と題する本にまとめて発表し、「墓を掘り返して、ぜひDNA鑑定にかけてほしい」と自信満々に主張している」
『NASAアポロ疑惑の超真相』
人類史上最大の詐欺に挑む
山口敏太郎&アトランティア編集部 徳間書店 2009/9/9
<グレイの発進母星は「レチクル座ゼータ2」>
・筆者が最近知った事実によると次のようになる。
・私たち銀河系には無数の超文明が存在するが、大別すると哺乳類系と爬虫類系文明とに分けられ、地球に飛来するUFO(ET)の多くは爬虫類系である。
・哺乳類系生命と爬虫類系生命は文明的に交流できず、常に対峙した状況にある。
・爬虫類系生命の感覚器は哺乳類型(人間)とは根本から異質(たとえば聴覚が存在しない)で、善悪の基準さえ逆転しているようだ。
・爬虫類系より哺乳類系(人類)のほうが生物学的に優れており、彼ら(爬虫類系ET)は劣等感を抱いている。
・私たちの銀河系には1000億の恒星(太陽)が存在するが、ある学者の試算では最小限に見積もっても100万の知的文明が存在するという。こうした渦状銀河が宇宙に1500億(ハッブル宇宙望遠鏡で観測される範囲)も存在するというから、宇宙の広大さは想像を絶している。
・問題は、異星人グレイはバイオロボットで、背後の真の生命体は爬虫類系だということだ。
<トールホワイトと呼ばれる異星人>
・編集;今の話をまとめるとアメリカは戦前からグレイと接触をし、今またトールホワイトの力を借りて敵対するグレイ対策に利用して宇宙計画を進めている。つまり宇宙人は完全に実在するものということですね。
竹本;実はアメリカの研究グループにはトールホワイト(Tall White)と呼ばれる者たちがいるんです。文字通り背の高い白人ですが、実はこれが宇宙人なんです。この連中はアメリカ軍部とつきあっています。米軍の大将クラスの者だけですが、自分たちの月面基地まで連れて行くんです。明け方5時、6時ごろに、さあ集まってくださいとみんなを呼んで彼らの宇宙船で月へ行くんです。ひゅーっとね。そして午前中にはもう帰ってくる。そういうことをしているんです。
・トールホワイトは基本的に地球人を馬鹿にしているんです。なので、月に連れて行ったりと協力はするけれど態度はとても冷たいそうです。それでもアメリカは彼らをうまく活用して月面基地を造りたい。グレイに邪魔されるわけですから。かって火星探査のロケットが全部事故に遭ったでしょう。月に基地を持っているし、仲が悪いんです。そこで、基本的に嫌なやつでもトールホワイトにバックアップしてもらえばいい、それで月面基地ができるのなら、というのが今度の計画なんです。
ところで、月に来て地球人と接触している宇宙人は57種類あるんです。人類と接触している宇宙人は57種類いて、アメリカ政府も認知していると暴露しています。57種類というのは、地球人みたいに同じ星でも人種が違う場合もあるし、同じ種類で違う星にいる場合も含めてのようです。いずれにしろ、相当な数の宇宙人がすでに来て、月にいるというわけです。
・グレイとかリトルグレイとか呼んでいる宇宙人は地球を監視したり調査したりしている。そのための基地として一番簡単なのは月なんです。
(2015/1/3)
『パラドックスの科学論』
科学的推論と発見はいかになされるか
井山弘幸 新曜社 2013/3/15
<ミクロメガスのパラドックス――サイズの問題>
・「ミクロメガスのパラドックス」とは聞き慣れない名だと思われるだろう。これまでに編まれたパラドックス集成に一度として収録されたことがないので、少々気が引けるのだが、科学の歴史に手を変え品を変え、たびたび顔をだす難問である。ミクロメガスは18世紀のヴォルテールが書いた哲学的小説の主人公の名前である。第一にこのギリシア風の名前からして矛盾を含んでいる。「小さくて大きい奴(ミクロメガス)」という面倒な名前だ。
・長寿という点ではミクロメガスと共通するが、それでも桁外れに違っている。ミクロメガスはそもそも人間ではなく、シリウス系の惑星人である。身長は約40キロメートルで約1千万年近くも生きるという。M78星雲からやってきたウルトラマンの数百倍の大きさで、しかも想像を絶するほど長生きである。この点からすればマクロ(メガス)ではあっても、ミクロではない。何故にヴォルテールは「ミクロ」メガスとしたのか?ミクロメガスは罪を犯し、やむなく宇宙を遍歴することになる。旅の途次、身の丈2000メートル程度の「矮人」である土星の賢者と話し込む。ミクロメガスから見ると小人にすぎないその賢者と、寿命、感覚の数(シリウス星人の1000感以上に対して土星人は72感、片や人間は五感をもつだけだ)、色彩などの固有性(物質の特質)をめぐって異星間の比較論議をする。その折に身長も寿命も程度の問題であって、大きいとか小さいとか語ることに絶対的な意味などないことが分かる。登場人物中もっとも長寿のミクロメガスでさえ「シリウス星の1000倍も長生きする人々」がいると嘆き、そして1000倍の長寿をもってしても当人たちは短いと不平を鳴らしている。
・ミクロメガスと土星人の賢者のコンビはさらに宇宙旅行を続け、ふとしたことから地球にやってくる。すくい上げた海水を即製の顕微鏡で観察すると、そこにモーペルテュイ率いる観測船団がいることに気づく。ミクロメガスは、肉眼では確認できない極微小物である人間との対話を楽しむ。ミクロメガスによる人間の発見は「レーウェンフックとハルトスケルが初めて人間の素となる種を見つけた時」の驚きをはるかに上回っていた、とヴォルテールは書く。レーウェンフックが微生物を発見したときの報告は『王立協会哲学紀要』に掲載されていて、神の祝福を受けずに分裂によって子孫をもうける「気の毒な生物」は小動物と呼ばれていた。ミクロメガスは観測船団の科学者に対して、レーウェンフックと同じことをしているのだ。微生物を極微のものとして眺める人間、そして掌の上でその人間をレンズで観察するミクロメガス。彼とてさらに極大な存在にとっては卑小な存在にしかすぎない。この物語を一読するとわれわれのサイズの感覚は麻痺してしまう。
<万物の尺度をもとめて>
・してみると「ほどよい加減」とか「中庸の徳」とか、適度の量について語ることさえ意味を失うだろうし、われわれ人間が棲息する地球の天文学的特性にもとづく「地球的基準」は数ある基準の一つにすぎなくなるだろう。ミクロメガスによれば土星人は寿命を土星の公転周期によって算定する。土星人の1歳は換算すると地球人の30歳に相当する。だとしても土星人にとってこの換算は意味をなさない。地球のことは知らないのだから。
・地球を中心として秩序づけられた万古不易の世界空間、最高天に神が住まう唯一無二であるはずの宇宙がブルーノによって相対化され、「諸世界」の一つに降格されたわけだ。地球の他にも似たような生物が棲息する惑星が無数にあって、そこにはおそらく「その生物にとっての神がいる」とまでは言わなかったにしても、そう感じさせる過激な主張であった。地球を中心とする旧体系が二千年の長きにわたって君臨できたのも、キリスト教神学が被造物である人間と人間の居住する地球に対して特権的地位を与えたからである。ブルーノのように世界の複数性をミクロメガスの観点から訴えることは、無神論につながる不敬虔な行ないであり、それゆえ彼は1600年に火刑に処せられた。
・だが世界の複数化への思想的趨勢はとどまるところを知らず、フォントネルを経て、やがてヴォルテールの時代になると天文学は世俗化し、神や天使が住まう永久世界の殿堂はいつしか天体図に書き込まれぬようになってゆく。そのような時代にヴォルテールは海峡を隔てた隣国のスウィフトの書いた『ガリヴァー旅行記』を知り、「小人の国」と「巨人の国」へ相次いで渡航した旅行物語から着想を得て、地球基準、人間的基準を無化するシリウス系惑星人の宇宙旅行譚を書いたのである。さて、ミクロメガスの言うように宇宙の大きさについて厳然たる基準は存在しないのだろうか。
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