日銀は、消費者物価上昇率2%を目標として異次元金融緩和を開始したが、実現できなかった。それは、日銀が行った政策に、物価を上昇させる効果が元々なかったからだ。(2)

<支出面から見たGDP>

・生産されたもののうち、それ以上加工が加えられないものを「最終財・サービス」という。これには、家計消費、住宅投資、設備投資、政府消費、政府投資がある。公務員のサービスは、政府消費に含まれる。

・この点を調整するために、GDP統計では、「在庫投資」が最終需要の一項目として設けられている。在庫投資まで含めて考えれば、最終需要の合計は、生産面から見たGDPに等しくなることが分かる。そこで、以上で述べたものを「支出面から見たGDP」という。

<分配面から見たGDP>

・企業の生産活動によって生み出された付加価値は、さまざまな生産要素に分配される。それらを経済全体で合計し、雇用者報酬、財産所得、企業所得に分類する。これに固定資本減耗を加えたものが、分配面から見たGDPだ。

・ところで、一企業におけるこれらの合計額が付加価値であり、経済全体の付加価値が「生産面から見たGDP」だ。そのため、分配面から見たGDPは、生産面から見たGDPに等しいことが分かる。そして、すでに述べたことにより、支出面から見たGDPとも等しい。これを「三面等価の原則」という。

<政府も付加価値を生産する>

・「生産面からのGDP」の説明では、付加価値の生産主体として、民間企業を想定した。しかし、付加価値の生産主体としては、国や地方公共団体などの公共部門も含まれる。そして、公務員が「公共サービス」を生産していると考えている。

<固定資本減耗は巨額>

・GDPの計算でこれに対応するのが、「固定資本減耗」だ。分配GDPの一項目として計上されているが、誰の所得にもならない。

<なぜ三面等価の原則は重要なのか?>

・例えば賃金を増加させたいとしよう。もし他の分配項目を減少させたいのであれば、分配面のGDPが増加する。したがって、三面等価の原則から、生産面で付加価値の合計も増加しなければならない。

・デジタル化もそうだ。デジタル化を進めるとは、付加価値生産の構造を改革することだが、分配面や支出面の変化を伴わなければ実現できない。これまでの賃上げ政策やデジタル化政策に有効性がなかったのは、このような観点を欠いているからだ。

<第2章のまとめ>

1、 1990年代の始めに、製造業が人減らしを始めた。これは、中国工業化の影響だ。それによって従業員1人当たりの売り上げは増えたが、ビジネスモデルの改革が行われなかったため、賃金は上昇しなかった。非製造業では、人員を増やしたため資本装備率が低下し、賃金を上げることができなかった。

2、 賃金は労使交渉によって決まるものだと考えている人が多い。しかし、その考えは間違っている。賃金の水準を決めるのは付加価値であり、それを決める資本装備率と技術水準だ。これらが改善されない限り、長期的に賃金水準が上がることはない。

3、 賃金は、企業規模や産業によってかなり大きな差がある。しかし、これは賃金への分配率の違いによってもたらされるものではない。分配率は、むしろ賃金の低い部門で高い。賃金の差は、資本装備率の差によってもたらされる。

4、 90年代に起きたIT革命に対応できなかったため、日本はアメリカに抜かれた。一方、韓国は成長を続けている。

5、 韓国は、平均賃金水準で日本を抜いた。しかし、1人当たりGDPで見ると、日本のほうが高い。では、どちらが豊かな国なのだろうか? この問題を考えるにあたって、パートタイム労働者の比率が、重要な意味を持つ。「フルタイム当量」で測る必要がある。

6、 製造業は高度成長期の日本の中心産業であったが、70年代後半以降、中国工業化の影響で比重を落とした。それにもかかわらず、社会体制も政策も変わらなかったので、新しい産業が成長できなかった。アメリカで大きな構造変化が起きたのと対照的だ。

7、 GDPは、生産面、支出面、分配面のどれから見ても同額になる。そのため、ある面で変化が生じれば、他の面にも影響が及ぶ。これまでの経済政策は、この点を無視しているので、有効打になり得なかった。

<今後の日本経済はどうなる?>

<第3章のまとめ>

1、 日本の成長率が低い理由として、出生率の低下という人口要因が強調されることが多い。確かにこれは重要な要因だ。一般に、人口高齢化が進むと、経済成長率が下がる傾向がある。しかしこれは、さまざまな施策によって克服できないものではない。とりわけ重要なのは、女性の労働力率の向上、移民の受け入れ、高等教育の充実だ。

2、 少子高齢化によって、日本の労働力は将来減少する。高齢者や女性の労働力率を引き上げる必要があるが、それで生産性が高まるかどうかは疑問だ。一方、日本の経済的地位の低下により、外国人労働者に見放される可能性もある。労働力不足に対処するための強力な施策は、デジタル化の推進だ。ChatGPTなどのAI技術は、救世主として大きな役割を果たすことができるだろうか?

3、 2022年に貿易赤字が拡大したのは、資源価格の高騰と円安によるものだ。しかし、それだけでなく、長期にわたって継続している構造的要因の影響もある。特に問題なのは、電気機械輸出の減少だ。日本の経常収支が赤字になり、対外資産の取り崩しを余儀なくされる事態は、杞憂とは言えない。

4、 日本の経常収支はこれまで黒字を続けていたが、最近時点で急速に悪化している。これは、何らかの構造変化の結果だろうか? ただ、経常収支の赤字化は、絶対に阻止すべきものであるかは、疑問だ。こうした視点だけでなく、国際分業の利益を重視する必要がある。

<日本が直面するスタグフレーションの恐れ>

<第4章のまとめ>

1、 輸入物価の上昇が止まったにもかかわらず、消費者物価の上昇が止まらない。これは、飲食業での賃金上昇によるホームメイド・インフレと解釈することができる。

2、 宿泊・飲食サービス業では、賃金が大幅に上昇し、食料品価格や宿泊料を上昇させている。他方、経済全体では実質賃金が下落しているので、購買力は増加せず、物価上昇は買い控えをもたらす。このままでは、経済がスタグフレーションに陥る危険がある。

3、 コロナ対策として各国とも財政拡大と金融緩和を行った。アメリカでは、それによってインフレが生じたが、日本では生じなかった。

4、 日本はいま、さまざまな財政需要の増加に直面している。そのための税制改革が喫緊の課題だ。特に重要なのは、法人税と消費税の増税である。しかし、そうした議論は、まったく行われていない。

<金融政策の誤り>

<失敗に終わった大規模金融緩和政策>

<異次元金融緩和は物価上昇を目標にしたが……>

・2013年4月、日本銀行は大規模な金融緩和政策を開始し、消費者物価の対前年上昇率を2%にすることを目指した。これは、「異次元金融緩和政策」と呼ばれた。

<マネーストックは増えず>

・2010年からのマネタリーベースの推移を見ると、日銀当座預金は2013年から急増し、2022年6月末には548.9兆円に達した。これは、日銀が国債を購入したためだ。

・「マネーストック」は、日銀券と銀行預金の合計であるが、異次元金融緩和によって顕著な増加は見られなかった。

・金融政策が経済に影響を与えるのは、マネーストックの変化による。しかし、実際には、日銀当座預金が増加してマネタリーベースが増えただけで、マネーストックの大きな増加はなかった。このため、異次元金融緩和政策は効果を持たなかったのだ。

<金融緩和は株価を引き上げた>

・実は、大規模金融緩和の真の目的は、市場金利を下げ、為替レートを円安にし、企業の利益を増大させて株価を上昇させることだったと考えられる。

 実際、金融緩和は、企業の利益を増大させ、株価を上昇させる効果があった。

・企業の利益増加が最終的に労働者にも利益をもたらすとされたが、実際には、そうした効果(トリクルダウン効果)は生じなかった。

<イールドカーブコントロールに転換>

・2016年に、日銀は量的緩和政策の転換を行った。大量の国債購入で、さまざまな問題が生じたからだ。

「総括的検証」を実施し、金利操作への転換を決定。マイナス0.1%の政策金利を導入し、さらに「イールドカーブコントロール政策(YCC)」を開始した。

<イールドカーブはなぜ右上がりか?>

・「イールドカーブ」とは、異なる期間の金利を、期間に応じて示したもので、通常は長期金利が短期金利より高く、右上がりの形状をしている。

<2022年になぜ急激な円安が進んだのか?>

<アメリカの金利引き下げと引き上げ>

・2020年、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の減速を受け、アメリカのFRBは、大規模な金融緩和策を実施。

・しかし、2021年秋に景気が回復し、インフレ率の上昇が顕著となったため、緩和政策の脱却を決定。

<日銀が金利上昇を認めないため円安が進行>

・FRBに追随して、各国の中央銀行も競って利上げを行った。

 ところが日本銀行は、2022年3月18日の政策決定会議で金融緩和を継続すると決定した。

・FRBの利上げにより日米の金利差が拡大し、円安が進行したからだ。これが原因で、日本の物価が急上昇した。

<円キャリー取引で円安が進む>

・円安が進む原因は、極めて明白だ。円で資金を調達してドル資産で運用する「円キャリー取引」が活発になったからだ。

・ところが、主要国の中で日本だけが金融緩和を維持してきた。そして、大規模緩和を継続すると明言している。このため、投機家は安心して円キャリー取引を行うことができる。

<9月に介入するも再び円安になり、1ドル=150円を超える>

・日本が介入に踏み切ったことで、円安の動きはいったんは収まった。

<2022年12月に長期金利上限を引き上げ>

・日銀は2022年12月19~20日に開いた金融政策決定会合で、大規模緩和を修正した。

<2023年の異常な円安はなぜ止まらないのか?>

<再び介入か?>

・2023年3月にアメリカで金融不安が発生し、アメリカの長期金利が低下したために、円高への動きが生じた。

 しかし、それも収まって、再び円キャリー投機が復活した。

<円安は構造的な原因によるものか?>

・日本円は、長期的なトレンドで見ても、減価を続けている。

・ところが、2022年に急激に円安が進んだ後、元に戻る気配がない。何か異常なことが起きているとしか考えられない。

・円安が輸出を増加させていないことは事実だ。しかし、これはいまに始まったことではない。

・円安で輸出が増えるというのは、円ベースの輸出額のことである。

<円安への安易な依存が企業の活力を奪い、円安政策から脱却できなくなった>

・日本経済が円安から脱却できないのは、日本が円安に安易に依存するようになったからだ。

<円安の弊害は明白だが、政策は動かない>

・円安が続けば、日本人は海外の製品をより高い価格で買うことを余儀なくされる。したがって、日本人の生活は貧しくなる。

・このように円安の弊害は明白にもかかわらず、円安が国益であるかのごとき錯覚にとらわれていた。

<長期金利上昇を認めると、経済に悪影響が及ぶのか?>

<金利を上げると不況になるか?>

・2022年には、日本の長期金利に強い上昇圧力が加わった。世界のヘッジファンドが、日銀の金利抑制策は維持不可能と読んで、国債先物の売り攻撃を仕掛けたからだ。

<名目金利が上昇しても、経済に悪影響が及ぶわけではない>

・つまり、金利が上昇しても、経済に悪影響があるとは限らない。むしろ、実質金利を一定に保つように名目金利が上昇するのが自然な姿だ。

<金利が上昇すると、国債費負担は増加するか?>

・では、金利を上げると、将来の国債費負担は増加するのだろうか?

・すでに述べたように、2032年度における長期金利は、「成長実現」で3.2%、ベースラインで0.9%と、前者のほうが1.6ポイントも高い。それにもかかわらず、財政収支は改善するのだ。

 このことから見ても、「財政収支改善のために、無理やり長期金利を抑圧する」というのがナンセンスであることが分かる。

<「物価高騰は一時的なものだから、対応しなくてよい」と言えるか?>

・以上をまとめれば、次のようになる。

消費者物価上昇率が2%になったとき、長期金利が2%を超える値になるのは、経済の自然な姿であり、これによって経済活動や財政運営が困難な状態に陥ることはない。

 ところで、現在は消費者物価上昇率が2%を超えている。そのため、名目金利もそれに合わせて上昇するのを認めるべきだ。

<長期金利は市場の実勢に任せるべき>

・そもそも、長期金利について、中央銀行が目標値を定め、それを実現するために巨額の国債購入をするという形は、不自然だ。

<長期金利が1%でも過剰な金融緩和>

<分かりにくい「柔軟化措置」>

・また、「修正」という言葉を使わずに「柔軟化」という表現を用いたのは、金融緩和の縮小ではないという意図を伝え、市場の動揺を和らげようとしたのだろうと言われている。

<イールドカーブは上方にシフト>

・決定が発表された直後には、株式市場や為替相場は方向感のない展開となった。

<為替レートはターゲットでないというが……>

・なぜ金利が上がったのに円安になったのか? それは、アメリカの金融引き締めが長期化するという見方を背景に、アメリカの長期金利が上昇したからだ。

・日銀のこうしたスタンスは従来どおりのものだが、私はこれも理解できない。日銀は、消費者物価を金融政策のターゲットにしている。そして、為替レートは、物価に重要な影響を与える。それなのに、なぜ為替レートは金融政策のターゲットではないのか?

<物価上昇率は短期的には上がるが、持続的でない>

・消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の対前年上昇率は、2%を上回る状況が1年3カ月続いている。6月には3.3%となった。

・ところが、2024年度の物価見通しは+1.9%と、前回見通しの+2.0%から下方修正された。また、25年度の見通しは、+1.6%と据え置かれた。

<自然利子率の概念を用いて金利の目標値を決めよ>

・私が最も問題だと思うのは、「長期金利の目標値がどこなのか? 1%なのか?それとも、別の値なのか?」という類の問題が、腰だめでしか議論されていないように見えることだ。

・こうした状況下で名目利子率の目標値を1%とするのは、過剰な金融緩和だと言わざるを得ない。

・いまの日本では、物価上昇率が約3%で、名目金利が約0.6%だ。そのため、実質金利はマイナス2.4%だ。これは、明らかに実質潜在成長率より低い。つまり、過剰な金融緩和が行われていると判断せざるを得ない。

<過剰な金融緩和の是正が日銀新体制の課題>

・今回の政策見直しは、金融政策正常化への第一歩との見方もある、欧米諸国が利上げを続ける中で金融緩和を維持し続ける日本は、確かに特異な存在だ。

 ただし、金融政策の見直しは、外国との比較で日本が特異だからというだけでの理由で必要とされるのではない。先に述べたように、自然利子率との比較で現実の金利が低すぎることが、基本的な問題だ。このような状態を是正し、正常化することこそが、日銀新体制に課された課題であるはずだ。

<第5章のまとめ>

1、 日銀は、消費者物価上昇率2%を目標として異次元金融緩和を開始したが、実現できなかった。それは、日銀が行った政策に、物価を上昇させる効果が元々なかったからだ。国債を購入しても日銀当座預金が積み上がるだけで、マネーストックが増えることはない。また、仮に物価が上昇したとしても、それが経済を活性化させることはなかっただろう。

2、 2022年、アメリカが金利を引き上げた。日銀は金利上昇を認めなかったので、異常ともいえる円安が進行した。

3、 2022年以来の円安は、異次元金融緩和以後の期間でも異常なものだ。しかも、元に戻る気配が見えない。これは、日本企業の体力が弱ったために、金利を引き上げられないことによって生じている。

4、 政府の財政収支試算を見ると、金利上昇が経済活動を抑制したり、予算編成を困難にしたりするような効果は認められない。

5、 日銀の「政策柔軟化」で長期金利が上昇したものの、円安が進んだ。物価上昇率見通しは短期的に引き上げられたが、持続的でないとされる。日銀は、金利目標値を腰だめで決めるのでなく、「自然利子率」の概念を用いて決めるべきだ。そして、過剰な飽和状態から脱却すべきだ。

<マイナンバーカード「迷走」曲>

<第6章のまとめ>

1、 政府は、健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに切り替える方針だ。しかし、これによって重大な問題に直面する人たちがいる。切り替えより、現在のシステムで可能なことを実行すべきだ。マイナンバーカードは、余計な事務負担を増やし、効率化を阻害している。

2、 マイナ保険証でトラブルが続出している。こうした技術的問題を解決すべきは当然だが、それで健康保険証廃止が正当化されるわけではない。なぜなら、マイナス保険証制度の基本に大問題があるからだ。

3、 政府はマイナ保険証を保有していない人に「資格確認書」を交付する。これは、現在の保険証と実質的に同じものだ。しかし、それを発行する事務量は大変なものになる。なぜこのように面倒なことが必要なのだろうか?

4、 マイナンバーと銀行口座との紐付けなど、マイナンバーの利用範囲拡大は、一定の条件の下でなら望ましいことだ。この究極の形は、すべての口座との強制的紐付けだが、そのためには、国が国民の絶対的な信頼を獲得する必要がある。

5、 コロナの感染拡大防止と経済活動再開を両立させる国内ワクチンパスポートは、日本では紙のシステムでは実現できない。本人確認手段が不完全だからだ。マイナンバーカードを用いたデジタルな仕組みの構築は、原理的には可能だ。しかし、実際にはさまざまな問題がある。本人確認の問題はもっと真剣に考えられるべきだ。

<生成AIという大変化に対応できるか?>

<第7章のまとめ>

1. デジタル化の遅れが、日本経済の生産性低迷の基本的な原因だ。これを取り戻すことこそ、日本再生の最も重要な手段である。

2. 日本のデジタル化の遅れは、コロナ禍で明白になった。これを打破するため、デジタル庁が設立された。しかし、日本政府は20年以上前に行政手続きのオンライン化を約束し、失敗している。

デジタル化が進まないのは、日本の組織のあり方に原因がある。また、

政府が国民の信頼を獲得していないことも大きな要因である。デジタ

ル庁がまずなすべきは、過去の失敗を検証することだ。

3. ビデオ会議は、やむを得ず使うもので、対面の代替物だと考えられることが多い。しかし、会える機会を拡大するという積極的な面に注目すべきだ。これは、国際的な場において顕著だ。専門家の国際的な集まりは、ビデオ会議によって飛躍的に容易になった。専門家間の国際的共同作業は、コロナが終息しても残るニューノーマルとなるだろう。距離が消滅した後、最後に残るのは言葉の壁だが、それが克服されれば、国際間の在宅勤務が行われるようになる。ビザは必要としない「デジタル移民」の登場だ。それは、日本社会を根底から変えるだろう。

4. ChatGPTなどの生成AIの登場という大きな変化が生じている。これは社会のあり方を根底から覆すだろう。その影響は望ましいことだけとは限らない。日本の組織や社会がこれに対応できるかどうかが問われている。

5. ChatGPTなどの基礎になっている「トランスフォーマー」という技術は、Googleで発明されたが、自社はそれを活用することが遅れた。ただし、スタートアップ企業がそれを活用して、見事に開花させた。こうした経済構造が、アメリカ経済の強さだ。

<おわりに 日本経済再生の第一歩は、国民の自覚>

<超高齢化社会に向かう日本>

・日本はこれから超高齢化社会に突入する。それは、世界のどの国もこれまで経験したことがないものだ。医療や介護の需要が激増することは、目に見えている。

<対外収支が悪化すれば、国際的な生活保護申請?>

・世界経済が大きく発展する中で、日本は古い産業構造から脱却できず、国際的な地位が低下している。

・日本企業の生産性が低下するため、日本の対外収支は悪化していく。

<金融政策は低金利政策から脱却できない>

・日本の衰退を加速させる原因は、経済政策の誤りだ。私はこうした問題をこれまで多くの機会に指摘してきた。しかし、いくら指摘しても十分ではない。

日本の金利は日本銀行の低金利政策によって、非常に低い水準に抑えられている。

・長く続いた低金利政策の結果、日本企業は低金利でないと生き延びられない状態になってしまった。

<バラマキ政治家の怠慢>

・こうした深刻な問題があるにもかかわらず、政治家は次の選挙のことしか頭にない。そして、人々の目先の歓心を買うための政策しか行われない。

 「産業政策」と称するものの実態は、特定企業への補助金だ。

・戦後の日本の政治は、特定の集団の利害に大きく影響されてきたものの、長期的な視野に立っての政策も忘れられなかった。

<沈没が確実なかつての豪華客船>

・誰もがおかしいと思いながら、この状態をどうすることもできない。

<経済政策を大転換し、新しい技術を取り入れる>

・問題は、自然には解決しない。日本が衰退から復活しようと思えば、経済政策の基本を変えなければならない。

・まず、「金融緩和を続けていれば、そのうち何とかなる」などという幻想を捨て去ることが必要だ。低金利と円安を続け、その上補助金をばらまいているだけでは、日本企業の体力はますます弱まる。

 

・仮にこの新しい技術を使いこなすことができれば、日本経済の様相は一変するだろう。

・それにもかかわらず、さまざまな国際ランキングで日本人の資質が低い評価を受けている。こうなるのは、日本人は大学に入った途端に勉強しなくなってしまうからだ。この状況を変える必要がある。

<国民が現状を許してはならない>

・何より重要なのは、国民がこうした状態に対して声を上げることだ。

・声を挙げるにしても、「私にも補助金を」というのでは、事態は悪化するばかりだ。まずは、日本衰退の原因をはっきり把握する必要がある。経済政策の誤りが基本的な問題原因だと私は考えている。しかし、そうではないという意見もあるだろう。

0コメント

  • 1000 / 1000