世界の大学ランキングを見ると、日本の立ち後れが目立つ。とくに、コンピュータサイエンス分野では、アメリカはもちろん、韓国に比べても著しい差がある。(2)

<4 低い賃金で、必要な介護人材を確保できるか>

<医療・福祉分野で96万人不足する>

・2040年に医療・福祉分野で1070万人の就業者が必要になるが、確保できる人材は974万人にとどまり、96万人が不足するとした。

<今後は外国人労働力に頼れない可能性も>

・しかし、将来を見た場合、必要な人数の外国人労働者が日本に来るかどうかは、定かでない。日本の平均賃金が海外に比べて相対的に低下しているので、将来を楽観することはできない。

 

<5 こんな経済が成り立つのか>

<医療・介護需要の増大で経済を維持できるのか>

・医療・福祉産業が成長したところで、われわれが普通イメージするような消費や投資が増えるわけではない。それによって日本の輸出が増えるわけでもないし、日常生活が豊かになるわけでもない。こうした意味で、他の産業とは性質が大きく異なるのだ。

<市場を通じない経済活動が拡大する>

・さらに、医療・福祉制度を機能させ続けるには、医療・介護保険の財源を確保することが重要だ。

<第3章のまとめ>

1、 政府は、2018年に作成した資料で、社会保障給付と負担の長期見通しを示した。ゼロ成長経済を想定すると、一人当たりの負担は4割も増加する。それにもかかわらず、社会保障負担引き上げの具体策に関する議論は、ほとんど行なわれていない。

2、 超高齢化社会では、誰もが介護の問題から逃れることができない。

3、 超高齢化社会では、要介護人口が増加する。医療・福祉分野で必要な就業者は、2040年で約1000万人。他の産業が縮小するため、日本の経済構造は大きく変わる。

4、 人材を確保できるかどうかが大問題だ。外国人労働者に期待することはできないかもしれない。

5、 高齢者の増加に伴って、医療・福祉分野の就業者数が増加する。その他の分野の就業者が減少するため、医療・福祉以外の財やサービスの生産は、国民一人当たりで見て減少する。その意味で、日本人は貧しくなる。

<医療・介護技術は、ここまで進歩する>

<第4章のまとめ>

1、2050年頃までに、医療技術は大きく進歩する。いまでは不治の病とされているものが、治癒できるようになる。ナノマシーンの利用、PSCを使う「細胞療法」での再生医療、ゲノム編集によるさまざまな遺伝性疾患の治療、AIの応用などが期待される。

 未来の医療では、治療だけでなく、事前に予知する技術が発達する。

2、介護技術も進歩する。とくに介護ロボットなどの進歩がめざましいだろう。

3、医療はメタバースが重要な役割を果たしうる分野となるだろう。ここでの基本技術は、テレプレゼンス、デジタルツイン、ブロックチェーンの3つだ。医療のオンライン化は遅々として進まない日本でも、メタバース医療が実現することを期待したい。

<メタバースと無人企業はどこまで広がるか>

<第5章のまとめ>

1、 メタバース=VRではない。テレプレゼンス、デジタルツインやブロックチェーンの技術を用いることによって、可能性が大きく広がる。

2、 企業がメタバースに大きな関心を寄せる理由は、メタバースでの経済取引が可能になるとの期待があるからだ。想像もつかないことが実現する可能性があるが、契約違反への対処や課税など、難しい問題が多数ある。

3、 メタバースの利用は、エンターテインメント関係だけではない。買い物の品選びでも重要な役割を果たす。実際の契約を現実世界で行なえば、契約違反への対処などの面倒な問題を回避できる。官公庁の窓口業務をメタバースでできるようにしてほしい。

4、 NFT(非代替性トークン)というブロックチェーンの新しい技術を用いると、メタバース内のデジタル創作物を売買することができる。ただし、NFTの意義は強調されすぎているように思われる。

5、 ブロックチェーンとスマートコントラクトによって、無人企業DAOが可能になる。金融サービスではすでに稼働しているが、今後、多くの分野に登場するだろう。これによって、人間の働き方が大きく変わる可能性がある。

<自動運転とEVで生活は大きく変わる>

<第6章のまとめ>

1、 自動車の自動運転技術が急速に進歩しつつある。「レベル5」と言われる完全自動運転の実現も、遠い将来のことではない。レベル5では人間が運転する必要はまったくないので、それが一般道路でも可能になれば、社会に大きな変化が生じ、仕事や生活がいまとは異なるものになる。

2、 自動運転の時代になれば、自動車を巡る環境は一変する。自動車は保有するものから利用するものに変わるだろう。そうなれば、生産量が激減する可能性がある。物価にも多大の影響を与え、生活のスタイルも大きく変わる。

3、 地球温暖化を防ぐために、脱炭素社会の実現が必要だ。そのために、各国が内燃機関自動車からEVへの転換を図っている。しかし、雇用に与える影響など、さまざまな問題がある。

<再生可能エネルギーで脱炭素を実現できるか>

<第7章のまとめ>

1、 脱炭素に向けての日本の取り組みは、第6次エネルギー基本計画に示されている。火力発電への依存度が高いこと、原発に対する依存度が高いことが問題だ。

2、 将来の経済成長率として現実的な値を想定すると、原子力に対する依存度をかなり引き下げることができる。

<核融合発電、量子コンピュータの未来>

<第8章のまとめ>

1、 核融合発電が実用化されれば、人類はエネルギー問題から解放されるが、その実現は容易ではない。地球温暖化問題を革新的な技術で一挙に解決することは難しいようだ。

2、 AIによる自動翻訳技術が発達することが期待される。リアルタイムの自動翻訳が実用化されれば、国境を越えた在宅勤務が可能になる。それは、これまでの言葉の壁で守られてきた日本社会に大きな変化をもたらすだろう。

3、 現在のインターネットの通信は、公開鍵暗号によって安全が守られている。しかし、量子コンピュータが発達して計算速度が飛躍的に向上すると、このシステムが破綻する危険がある。また、ブロックチェーンに記録されたデータが改ざんされる危険もある。ただし、量子コンピュータでも解くことができない暗号が開発されつつある。

<未来に向けて、人材育成が急務>

<1 日本のデジタル化は「バック・トゥ・ザ・パースト」>

<プリンタを使わなくなって20年経つが……>

・「後退している」と考えるのは、この数カ月間に私の身辺に起った事情による。これまで20年近く使っていなかったプリンタを、購入せざるをえなくなったのだ。

<相手に「オンラインでよいか」と頼めない>

・デジタル技術が進歩したため、われわれはいまや、必要とする情報の大部分をデジタル化し、それをオンラインで交換することが可能になっている。

<中途半端な「デジタル化」を排除しよう>

・例えば、すべてを紙に手書きし、それを持参、あるいは郵送という方式は認める。これを認めなければ、いわゆるデジタル難民の問題に対処できないだろう。

<私は「紙」を多用している>

・誤解のないようにつけ加えたいが、私は、日常の仕事で、紙を多用している。メモを紙片やノートに書いている場合がきわめて多い。

<2 世界ランキングで分かる、日本の大学の立ち遅れ>

<上位100校中の日本のシェアは5%。GDPシェアより低い>

・GDPでは、日本は世界の5.9%のシェアを占める。これと比べると、トップ100校の中での日本のシェア(5%)は低い。

 日本の経済力が低下し、世界におけるシェアが低下していると言われる。しかし、それよりも、大学における国際的な地位のほうが低いことになる。日本はその経済力にふさわしい「大学力」を持っていないのだ。

<韓国やアメリカでは、上位100校中のシェアがGDPシェアより高い>

・アメリカでは、100位以内に入る大学は27校もある。

<コンピュータサイエンスで、日本の立ち後れは著しい>

・この分野で世界の100位以内に入る大学は、日本には2校しかない。

・日本は、デジタル化で立ち後れが目立つと言われる。それは、政府や企業の活動でデジタル技術の利用が進んでいないということだ。そうした実務面だけでなく、教育・研究においても、日本がデジタル化に著しく立ち後れていることが分かる。

 アメリカは、この分野で世界100位以内に入る大学が30校もある。

<先端分野で、上位100校に入る大学数を現在の3倍にする必要がある>

・日本が目指すべき目標として、コンピュータサイエンスの分野で世界ランキング上位100校に入る大学数の日本シェアを、日本のGDPシェア(5.9%)と同程度にすることが考えられる。そのためには、上位100校に入る日本の大学数を6校にする必要がある。いまの2校に比べて3倍にする必要がある。

<新しい資本主義には「大学改革」が不可欠>

・しかし、大学教育が右に見たような状況では、人材面で世界水準になることは望めない。日本では、とりわけデジタル人材が不足していると言われるが、十分な教育を大学がしていなければ、人材が育つはずがない。

<3 デジタル人材育成の遅れが日本の遅れの基本原因>

<日本のデジタル競争力は、63カ国・地域中29位>

・ところが、日本のデジタル競争力はきわめて弱い。スイスの国際経営開発研究所IMDが作成する「デジタル競争力ランキング2022」で、日本は、63カ国・地域中29位と、過去最低順位を更新した。

<高度成長を支えた日本式OJT>

・日本の経済パフォーマンスが望ましくなく、経済成長率などの指標で世界各国に後れをとる根本的な理由は、デジタル技術に日本がうまく対応できないことにある。その基本にあるのは、デジタル人材の不足だ。

<OJTからリスキリングへの移行が必要>

・これまで日本企業で支配的だったOJT方式では、このような変化に対応することができない。このため、新しい技術を身につける「リスキリング(学び直し)」の重要性が高まってきているのだ。

<日本の人材投資は、異常と言えるほど不十分>

・このように、日本社会でのリスキリング教育の水準は非常に低い。OJTになれた日本企業では、大学教育での専門性を評価してこなかった。大学の側でも、社会の要請に応える専門教育をするという意識が弱かった。それが、このような結果をもたらしているのだ。

<日本は「人材競争力」でサウジアラビアに抜かれた>

・日本の大学におけるコンピュータサイエンスやデータサイエンスの教育はきわめて不満足な状態だ。それに加えて企業の研修がこのような状況では、IT人材が育つことは、絶望的と考えざるをえない。

<デジタル田園都市国家構想は機能するのか>

・政府は、「デジタル田園都市国家構想」で、230万人のデジタル人材を育成するとしている。

・そうした中で現実を変えていくためには、政府がよほど強い指導力を発揮する必要がある。それが実際にできるのだろうか?

<4 勉強しない日本の学生と、死に物狂いで勉強するアメリカの学生>

<日本では初任給が一律なので、大学生が勉強しない>

・大学で学んだ専門知識を評価しているのではない。その証拠に、大学卒新入社員の初任給は、一律同額であるのが普通だ。

・日本人が勉強するのは大学受験までの期間だというのは、日本の賃金制度の下では、合理的な行動なのである。

<アメリカでは成績で賃金が違うので、学生は「死に物狂い」で勉強する>

・アメリカの学生は、大学に入学してから、あるいは大学院に入学してから、あるいは大学院に入学してから「死に物狂いで」勉強する。なぜなら、そこでの成績で初任給が大きく違うからだ。

<大学を中退して成功した人びと>

・このように、世界をリードするIT企業の創業者の多くが、大学を中退している。つまり、大学を卒業していなくとも大成功した人はたくさんいる、それは事実だ。

<「大学を中退すれば成功する」ということではない>

・前記の成功者に共通しているのは、IT関係の企業の創業者であることだ。そして、中退するときには、すでに成功のきっかけを摑んでいた。何のあてもなく中退したわけではない。

<第9章のまとめ>

1、 日本のデジタル化は、一向に進展しない。とくに問題なのは、プリンタなどの機器を使わないと完了できない「中途半端なデジタル化」を相手から求められることだ。デジタル庁は、こうした事態を改善するために動くべきだ。

2、 世界の大学ランキングを見ると、日本の立ち後れが目立つ。とくに、コンピュータサイエンス分野では、アメリカはもちろん、韓国に比べても著しい差がある。日本の未来を切り開くには、補助金をばらまくことではなく、大学を改革することが急務だ。

3、 日本の人材は、世界ランキングで評価が低い。日本企業は、人材育成としてOJT方式を採ってきた。しかし、デジタル技術に関しては、この方式はうまく機能していない。このため、日本ではデジタル人材の育成が遅れ、それが日本経済の停滞につながった。

    政府はデジタル田園都市国家構想でこの遅れを取り戻すとしているが、うまくいくかどうか、大いに疑問だ。

4、 日本人は大学入試までは必死に勉強するが、それ以降は勉強しない。それは、日本企業が専門能力を評価しないからだ。アメリカでは、大学や大学院での成績で年収が決まるため、学生は必死に勉強する。

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<おわりに:われわれは、未来に対する責任を果たしているか?>

<かつての日本で、「黄金時代」は未来を意味した>

・私は1968年に『21世紀の日本』という本を書いた。これは私の最初の著作だ。この本が刊行された頃、日本で未来学ブームが起こっていた。

・『21世紀の日本』も、サブタイトルを「十倍経済社会と人間」としたように、日本の経済規模が21世紀には10倍になることを基本的な骨組みとしたものだった。

・いま日本は、先進国の座から滑り落ちようとしている。

・本書も、残念ながら、日本の未来を黄金時代として構想することはできなかった。経済規模が10倍になるという壮大な話ではなく、成長率が1%なのか2%なのかという類の「虫めがねレベル」の議論しかできなかった。

<未来は選択するもので、与えられるものではない>

・ところで、未来は与えられるものではなく、選択し、主体的に作っていくものだ。もちろん、自由に動かせない部分もある。その代表が人口構成だ。

・実際、一度衰退しかけて、復活した国がある。1980年代に衰退したアメリカが、何よりの実例だ。

<政治と行政の「近視眼的バイアス」をどう克服する?>

・未来は積極的に作るものであり、変えることができると信じながら、しかし、本書においては、日本が復活するイメージを明確な形で提案できなかった。これは誠に残念なことだ。

・多くの政治家にとって、つぎの選挙で当選するかどうかが最大の関心事だ。20年後の日本がどうなっていようが、まったく関心がない。

・こうした事情によって、政治や行政は、今後2、3年のことしか考えていない。

・社会保障については、きわめて深刻な財源問題が予想される。

<われわれは、未来の世代に対する責任を果たしているか?>

・残念ながら、失敗した。それは、日本円の実質的な価値が、1995年からの約30年間でほぼ3分の1に下落したという事実が、何よりも雄弁に物語っている。世界における日本の地位は、いまや、1970年代にまで逆戻りしてしまった。

2023/5/21

『2040  2040年の未来予測』

成毛眞  日経BP 2021/1/8

<あらゆるもののコンピュータ―化>

<破綻しつつある社会制度や減る一方の人口、起こるだろう天災>

・「今日」には、これから起こることの萌芽がある。現在を見つめれば、未来の形をつかむことは誰にでもできる。

・新しいテクノロジーは、ありがたみがわかったときにはすでに陳腐化している。テクノロジーだけではなく、他のさまざまなことも、気づいたときには手遅れになっているのが人間の性でもある。東日本大震災があり、そのリスクをわかっていながらも、被災するまで手を打つ人は少ないし、明らかに破綻しつつある社会制度にも、本当に破綻するまでしがみつこうとする。日本の国内総生産は増えないし、人口は増えず、老人ばかりの国になるだろう。

・そして、これまでの10年よりこれからの10年の方が世界は大きく、早く変わるだろう。

<たった100年前から信じられないほど世界は変わっている>

・おそらく当時の人は信じないだろう。100年後には、フランスから日本までの40日の船旅が、飛行機で12時間ほどになっていることを。

・この100年間で、まったく信じられないほど、テクノロジーは進歩した。

<新しいテクノロジーが登場したとき、人間はその普及に反対する>

・新しいテクノロジーが登場したとき、多くの人はそれに反対する。

 たとえば、19世紀末にカメラが、20世紀初頭に映画が、20世紀終わりにテレビゲームが登場した際、いずれも当初は受け入れられなかった。

・新しいテクノロジーに対して、ふつう、人は懐疑的になる。そういうものなのだ。だからこそ、いち早くその可能性に思いを巡らせられる人にはチャンスがある。

<新しい技術は組み合わせで現れる>

<技術革新は、加速度的に早くなっている>

・新しい技術は突然現れない。すでにある技術の改良や組み合わせで登場することがほとんどだ。

・何がいいたいかというと、現代を見渡せば、未来は見えるということだ。

<5Gとはそもそも何で未来の何を変えるのか>

・ポイントは、通信速度が速くなり、情報伝達量が増えるということだ。これが世界を変える。

・通信の規格は、ほぼ10年ごとに次の世代に進む。ここまでの30年で最大通信速度は約10万倍である。

・その5Gがさらに進化するのが5Gだ。これまでの歴史を振り返ると、2030年頃に実用化される。

<6Gのすごさは「早く」「大量の情報のやりとりができる」こと>

・6Gは、通信速度が5Gの10~100倍の速さになるといわれている。

・5Gと同じく6Gの通信環境も急に整うわけではないが、2030年頃から登場するはずなので、2040年にはあたりまえになっている可能性が高い。

<「低遅延」により、すべてのモノがインタ―ネットに常時接続される>

・5G、6Gのすごさは高速化だけではない。「低遅延」が実現するともいわれている。

・それはパソコンやスマートフォンだけではない。身の回りのものがすべて、コンピューター並みの処理能力を持つようになる。

<6Gで自動運転が可能になる>

・公共のバスや電車などは、ネットワークに接続された自動運転になり、輸送や物流なども効率的になるはずだ。

・上空はドローンが行き交い、どこにでも欲しいものを配達してくれるはずだ。

・クラウド経由で、リアルタイムに翻訳することも可能だ。あなたが日本語しか話せなくても、遅延なく、世界の人と会話できるようになるはずだ。

・あたかも目の前に人がいるかのような3Dのホログラムによる会話も可能になる。

<バーチャルが日常になる>

・スマホの代わりに、欠かせなくなるアイテムはAR(拡張現実)用のメガネかもしれない。つまり、メガネにすべての情報が映し出される。

<瞬時にデータを把握するのも低遅延だから可能>

・人手不足はもう待ったなしだ。物流や生産、販売といった生活維持に欠かせないエッセンシャルワークの人手不足を解消するのは、もうテクノロジーしかない。

<家中が便利な家電でいっぱいになる>

・これをひとりあたりの機器数で考えると、2010年はインタ―ネットにつながった機器はひとりにつき2台である。パソコンと携帯電話くらいだ。それが、2040年には1000台になる。

<現在は自動運転のちょうど過渡期>

・「自動運転技術」は、産業界のみならず多くの人が関心を寄せる。自動運転も、もちろん低遅延で可能になる。

<すでに未来を変える技術はチラホラ実用化されている――ライダー>

<「新しいテクノロジーは突然現れない」>

・その肝となりそうなのが、レーザーの反射で距離を測定する「LiDAR(ライダー)」だ。

・ミリ波レーダーに比べて、小さな物体でも検知できるのが特徴といわれている。

<空飛ぶクルマも2040年には可能になる>

・「空飛ぶクルマ」は日本では少子高齢化という確実に迫り来る課題を解決する大きなツールになるはずだ。

<コンビニやスーパーは無人店舗になる>

・街の景色は一変する。慢性的な人手不足だ。その象徴が小売りの店舗だ。コンビニやスーパーも無人店舗がスタンダードになるはずだ。

<無人舗の研究をするならキオスク>

・単純に人数の比較ならば、キオスクの方が無人度が高い。

<無人店舗のメリットは、万引きが防止できること>

・2040年、有人店舗の形態も大きく変わるだろう。これもアマゾンのテクノロジーが大きく変える可能性が高い。

・おそらく日本も監視カメラの設置やデータの活用は進むだろうが、人権や個人情報保護が壁になる。

<日本の過疎化を救うのは5Gでの診療>

・過疎化がオンライン診療を後押しするのは間違いないのだ。

・社会のデジタル化の整備が、オンライン診療を前倒しで実現することになる。

<医療技術はAIのおかげで格段に進歩する>

・わかりやすい症例や典型的な経過をたどる患者については、最新のデータに基づき、AIが素早くかつ見逃しなく診断してくれるはずだ。

・医師法は1948年に制定されたもので、AIどころかコンピューターの登場すら織り込まれていない。こうした改正も当然必要になるだろう。

<薬もAIで効率よく処方できる>

・医療データベースが蓄積され、AIが全面的に運用されれば薬の処方もより適切な形になるはずだ。薬の出し方も、その医者の経験値から導かれるものだ。

・もしかしたら、未来の人間の医者は、今以上に経験が重要になるかもしれない。人間の医師は、前提などに不確定要素の多い患者の診察を中心に担うことになる。

<ゲノム編集技術で難病の治療に光が見える>

・2040年は所見の診察や応急処置の誤りが劇的に減るだけでなく、これまでなら重篤化していた疾患や、手の施しようがなかった疾患も治る可能性が飛躍的に高まっているはずだ。まずは、遺伝子治療だ。

・このゲノム編集技術は、2012年に「クリスパー・キャス9」という代表的な手法が登場したことにより、可能性が一気に広がる。

・遠い未来の願望ではなく、がんは治る病気の時代がすぐそこまできているといっていいだろう。

・いまだに「がんになったらおしまいかも」と思う人は多いかもしれないが、今、紹介した2つの薬は2020年代のがん治療を大きく変えることは間違いない。2035年にはほとんどのがんが治るのではとの楽観的な見方もある。

<再生医療がパーキンソン病やアルツハイマー病を治すかも>

・すでに脊髄損傷で手足が麻痺したサルに細胞を移植し、一定の成果を出している。この再生医療により、難病の原因解明も飛躍的に進んでいる。

 パーキンソン病やアルツハイマー病などは発生の原因がよくわかっていない。原因を調べるためには生きた神経細胞が必要だが、患者の脳から取り出すのは難しく、原因解明が進まなかったのが実態だ。

 しかし、ここでiPS細胞があれば、その患者の別の部位の細胞から神経の細胞をつくることができる。

・なお、この項で紹介した医療の未来は『未来の医療年表』(講談社現代新書)に依拠している。詳しく知りたい方はそちらを手に取って欲しい。

<2040年はワクチンの開発スピ―ドが飛躍的にあがる>

・ワクチンをつくるには、通常2年以上かかる。

・それでも、あらゆる症例を記録し最適な治療法をはじきだす「データベース」という名の優秀な医師の登場と、新たなワクチン開発体制は世界を変える。ひとりひとりにあったオーダーメイド医療も実現することで、あなたの余命は間違いなく延びることになるだろう。

<原発後のエネルギーのカギは「電池」>

・日本は石油や天然ガスなどのエネルギー資源が少ない。2011年の福島第一原発事故までは、原発が主軸だったがそれも立ちいかなくなり、日本ではエネルギー政策が隘路に陥っている。

 2040年、こうした状況を救う存在になりうるのが「全固体電池」だ。

<電池は日本のお家芸>

・現在、全固体電池に熱い視線を送るのは自動車業界である。

・現在のリチウムイオン電池に代わって固体電池を使えば、安全で、なおかつ航続距離を現行の2倍程の700~800キロメートルと、飛躍的に伸ばせる試算がある。

<ハードの「テレビ」自体はなくなる>

・映像視聴のスタイルとして、ヘッドマウントディスプレイや顔をおおうようなドーム型ディスプレイでVR映像を楽しむようになることも予想されている。

 果たしてそれを「テレビ」と呼ぶのか。「テレビ」が絶滅する世界になっている可能性があるとはそういうことだ。

<新聞は絶滅危惧種>

・新聞が消滅するといわれて久しい。2040年、我々が思い浮かべる新聞もテレビと同じくなくなっているだろう。2020年の今ですら、新聞は加速度的に消えている。

・とはいえ、2040年を見れば、新聞販売店がインタ―ネット通販業者の委託業者として生き残っている可能性はほぼゼロだろう。

<あなたの不幸に直結する未来の経済――年金、税金、医療費>

<2040年の日本は老人ばかり>

・私たちが変わらない間に、他の国々は所得が増え、リッチになり、自国での物価が上昇し、日本に行ってでも買い物した方が得なのだ。つまり、日本は世界でみると、「安い国」になったということである。

 こうした状況は今後も変わらない。

 日本は経済成長がこれからほとんど見込めない。GDPの成長率も2030年以降はマイナス成長やほぼゼロとの予測が支配的だ。

・いちばんの理由は、高齢化だ。いくら頑張ろうと、高齢者が増えることは避けられず、たとえば、医療・介護費用などの増大は不可避だ。

<老人が増え、それを支える若者が減る>

・少子高齢化が進んだ2040年の世界は想像するだけでも恐ろしい。団塊世代が90歳、団塊ジュニア世代が65歳になる。そして、団塊ジュニアの4割が集中するのが首都圏だ。膨大な数の都民が高齢化を迎える。見渡す限り老人だ。過疎地ではすでに現実になっている老老介護が現実のものになる。

<国の財源は、私たちの社会保険料からまかなうしかない>

・10年前に比べて社会保険料の負担率は、ひとりあたり26%増えているが、賃金は3%しか伸びていない。これでは、勤労意欲を失う人も多いだろう。先進国の中で、ただでさえ低い生産性がさらに下がる可能性がある。負の循環に陥れば経済成長は落ち込み、さらに国の財政は厳しくなる。

<すべての問題は高齢者が増えること>

・なぜかというと、もちろん高齢者が増え続けたからだ。一昔前は医療や栄養問題から子どもがたくさん死んだが、これからは増え続けた高齢者が多く亡くなる社会になる。当然、医療の発達もあり、なかなか簡単には亡くならず、慢性的な病気を抱える人も増える。

<老人ホームは高い>

・現役世代が、今の枠組みのまま高齢者の医療サービスを果たして支えられるだろうか。

 介護も同じだ。そして介護の場合、現状の枠組みだと、介護費用が働く人全体に重くのしかかるだけでなく、介護される側も路頭に迷いかねない。

・特別養護老人ホームの利用料でも、年金で入れるような月15万円くらいの施設は都市部にはない。特養であっても、経済的余裕がなければ入れないのが実情だ。

<将来の医療費を減らすのは、テクノロジー>

・多くの経済予測が見落としているのは、技術の進歩だ。医療や介護の暗い見通しも、あくまでも既存の技術の延長線上で数字をはじき出している。 

 国全体の医療費や介護費を下げるには、受診回数や利用回数を下げるか、提供するサービスにかかるマンパワーを減らすしかない。前者はともかく、後者はテクノロジーを使えば難しくはない。

<70歳まで働くなら、今と同じ額の年金はもらえる>

・問題は年金だ。はたして、夫婦ふたりで月20万円程度の年金が今後も見込めるかだ。

 若い人の中には、「年金は本当にもらえるのだろうか」と悲観している人もいるかもしれない。「年金はもらえないから、払わない」と考える人もいるだろう。

 こうした人たちに強調しておきたいのは、極論だが「年金がもらえないことはない」ということだ。

 年金がゼロになるのは考えにくい。年金がもらえなくなるということは、日本が滅亡することを意味するも同然だ。もしそのような事態となっていたら、もはや年金を心配している場合でもない。生きるか死ぬかだ。

結論から述べると、現状の延長だともらえるだろう。ただ、厳しい額が待っているというのが正直なところだ。

・「人生100年時代とよく聞くけど、本当に働かなければならないの」と嘆く声が聞こえそうだが、そもそも国も70歳近くまで働くことを前提にしている。

<日本ですばやい経済対策ができないのはなぜか>

・つまり、国税庁は「税金を取るところ」、市町村は「個人所得や財産などの情報を収集し、税を課し、必要に応じて給付も行うところ」という役割分担となっている。そのため、緊急時でも、全国共通基準による迅速な対応が難しくなっているわけだ。

・アメリカで、細かい基準を設けながらも迅速に対応できたのも、歳入庁がすべてを取り仕切り、個人情報までを把握しているからだ。これがあれば、危機時の対応も早く、申告漏れもなくなる。日本も税や社会保険の窓口を一本化すべきだし、個人の所得の捕捉をより細かく進めるべきだろう。

<会社員が最も税金を払っている>

・「トーゴーサン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。税金の捕捉率を示す言葉だ。給与所得者10割、自営業者5割、農林水産業3割という意味で使われる。

 サラリーマンなどの給与所得者は源泉徴収で引かれるため、捕捉率はほぼ100%だ。

・マイナンバーが銀行口座と紐づけられれば、お金の流れが見える化され、所得の捕捉率は高まる。数兆円規模の増収につながる可能性が高い。

<ベーシックインカムは実現するか>

・今の社会は、非正規雇用が拡大するなど就労環境が不安定な人が増えた。日本の場合、非正規雇用者は正規雇用者に比べて、法的にも解雇されやすい。景気が悪くなれば、簡単にクビを切られてしまう存在だ。社会全体で、ほんのはずみで、あっという間に困窮しかねない層が分厚くなっている。

・だが今回のコロナ危機で、政府も、さまざまなタイプの困っている人が多いことに気づいたはずだ。

・ベーシックインカムを実行するとなると、財源の問題がどこにあるのかという議論になるだろう。10万円給付に二の足を踏んだのも、給付に必要な約12兆円が重くのしかかったからだ。

 もちろん詳細な検討は必要だが、現在の社会福祉や助成金をベーシックインカムに回せば、財源は足りるとの指摘もある。

 全員に一律給付するため、行政コストがかからなくなる。助成のために家庭や個人をわざわざ調べる必要もなくなるし、支払いの窓口も一本化できるはずだ。

<救世主になるかもしれない経済学理論 MMT>

・MMT(現代貨幣理論)を知っているだろうか。最近、注目を集めている理論だ。

 このMMTは簡単にいえば、自国での通貨を発行できる国は財政赤字により破綻することはないという理論だ。これを導入すれば、ベーシックインカムの財源すら心配する必要がないかもしれない。

・MMTに則れば、日本のように通貨を自分で発行できる国は、財政のことは気にせず、経済対策をすべきだということになる。極論では、無制限にお金を刷っても問題ないということになる。

 当然、無制限にお金を刷れば、ハイパーインフレになってしまうという反論がある。

・つまり、異常な状態に陥らない限り、財政赤字が膨らもうが、自国通貨を発行している限りインフレはコントロール可能というのだ。

・財政赤字が拡大すれば国債価格が暴落し、通貨安が進み、インフレになるとの見方が経済学のセオリーだ。

 だが、日本はどうだろうか。財政赤字は拡大する一方だが、金利は低く、物価も安定し、インフレよりもデフレを懸念しなければならない。まったくもってインフレにならない。

 再度いうが、デフレから脱却しようとするために、政府は国債を大量に刷り資金を供給しているが、インフレが起きる気配はない。海外では「日本がMMTの成功例」という評価すらある。MMTを意図せずして実践しているとする識者がいるのだ。それだけに、本格的にMMTが受け入れられる土壌は揃ってもいる。

<日本のGDPはお先まっくらなのか>

・人口が増えない国は、お先が真っ暗なのはもうわかったと思う。日本の人口は2008年がピークだったことはもう述べた。

・そして、2100年には現在の半分以下の6000万人規模になると予想される。

・日本は今後40年でGDPが25%以上減少するという分析もある。数字だけ聞くと驚くだろうが、不思議な話ではない。GDPとは、いうなれば、日本全体の給料の総和だ。人口が減ればGDPは減少する。あたりまえだ。

・ただ、この前提は大きな欠点がある。賢い読者はもうお気づきだろう。医療費の項でも指摘したが、日本の技術の進展が一切加味されていないのだ。

・しかしながら、マクロでは日本全体の少子高齢化をテクノロジーでカバーできても、ミクロでは、少子高齢化により立ちゆかなくなる分野は、産業をはじめ多岐にわたって出てくることもまた疑いようがない。

 たとえば、AIにより、人間の仕事を奪われるとはよくいわれるが、AIによらなくても、人口減少はあなたの仕事を奪ってしまうかもしれない。特に地方への打撃が大きい。

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