それ以上に思秋期に注意が必要なのはうつ病です。実際、40歳以降は、うつ病にかかる人が増加します。(5)
<「食事」が本当に始まるのは、食べものを口にした後>
・さまざまな役割を一手に担っているのが、肝臓なのです。
そのため、食事の間隔が狭く、次から次へと食べものが入ってくると、肝臓はふる回転で働かねばならず、どんどん疲弊していきます。
疲れにより肝臓の機能が衰えると、本来肝臓で解毒されるはずの毒素や老廃物が体内に残ったり、作られるエネルギーの量が減ったりするため、体が疲れやすくなります。
また、お酒がおいしく感じられなくなったり、食欲が低下したり、あるいは肝炎や脂肪肝、肝硬変、さらには肝臓がんなど、肝臓自体の病気や障害が引き起こされたりするおそれもあります。
そして、人間に休息が必要であると同様、内臓にもまとまった休息が必要なのです。
<がん、糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞。年齢を重ねるごとに「食べすぎ」のダメージは大きくなる>
<1日3食は、気づかぬうちに「食べすぎ」を招く>
・つまり、ふだんから慢性的に食べすぎている人の場合、「胃が膨らんでいる状態」が当たり前になっていて、「本来、体が必要としている量」以上の食べものも、どんどん受け入れてしまいます。
<食べすぎは、DNAや細胞をも傷つける>
・また、食べすぎは、体内の活性酸素を増やします。
活性酸素には「ものを酸化させる(錆びさせる)力」があり、それによって体内に侵入ウイルスや異物などを殺菌・排除しますが、一方で、活性酸素の攻撃は、身体(体内のDNAや細胞)をも傷つけます。
・そして、活性酸素が必要以上に増えると、細胞が酸化されたり傷つけられたりするため、細胞の老化が進行し、お肌のシワやシミの原因となったり、細胞に障害が生じ、がんなどさまざまな病気が引き起こされたりする可能性があります。
<ご飯や肉の食べすぎが、あなたの命を危険にさらす>
・「食べすぎる人」のほとんどは、ご飯や麺類、パン、甘いものなど、「糖質」の多いものや、肉、油など、「脂質」の多いものを取りすぎています。
糖質や脂質を過剰に摂れば、血液中の中性脂肪や、「悪玉コレステロール」と呼ばれるLDL-コレステロールが増え、それらは血管壁に付着します。それだけ血管は狭くなります。
その結果、血液の流れが悪くなり、
・栄養が体のすみずみまでいきわたらなくなったり、老廃物がきちんと排出されなくなったりするため、疲労や冷え、肌荒れなどが起こりやすくなる。
・血管や心臓に大きな負担がかかって血圧が高くなり、動脈硬化が生じて脳梗塞、心筋梗塞、脳出血、心不全などのリスクも高くなる。
・さらに、糖質の多いものを食べすぎると、血糖値が高くなります。その状態が続くと、糖尿病になるリスクも高くなるのです。
<脂肪細胞は無限に増大していくから怖ろしい>
・食べすぎの弊害として、忘れてはならないのが、「内臓脂肪」です。
・細胞脂肪は柔軟性が高く、中性脂肪を取り込んで、もとの数倍の大きさにまで膨れ上がることができます。
これが「脂肪がつく」「脂肪が増える」といわれる状態ですが、このように、無限に容易を増やすことができるのは、人体の中では脂肪細胞だけなのです。
・肥大化した脂肪細胞からは「TNF-α」や「IL-6」などの「悪玉ホルモン」が分泌されるようになり、糖尿病や高血圧、慢性炎症状態を導いてがんになるリスクも高くなります。
<増えすぎた脂肪が、血液やリンパの流れを悪くする>
・実は脂肪には、
・エネルギーを貯蔵する。
・体温を維持する。
・内臓の位置を保つ。
・クッション代わりとなって、外部の刺激から体を守る。
・ホルモンや胆汁などの原料となる。
・各種ビタミンの吸収を助ける。
といった働きがあります。
つまり、人間にとってなくてはならないものではあるのですが、脂肪が必要以上に増えすぎると、体にはさまざまな影響が生じます。
・ところが、肥大化した脂肪が血管やリンパ管を圧迫すると、血液やリンパの流れが悪くなり、心臓に負担がかかり、高血圧や心不全、むくみの原因となります。
その結果、心臓病のリスクが高くなる、全身の各器官の働きが悪くなるなど、体にさまざまな不調が現れるようになるのです。
<実は皮下脂肪よりもタチが悪い、悪玉ホルモンを分泌しやすい内臓脂肪>
・また、あまり知られていないのですが、脂肪細胞にはさまざまなホルモンなどを分泌し、体の機能を調整するといった働きもあります。
・つまり、食べすぎによって脂肪が過剰に増えると、悪玉ホルモンの作用により、
・血管の傷が修復されない。
・血栓が溶けない。
・腫瘍が増殖する。
・血糖値が高くなる。
といったことが起こりやすくなり、糖尿病、脳出血、脳梗塞や心筋梗塞、がんなどの病気を発症するリスクが高くなるのです。
<年齢を重ねるごとに、食べすぎのダメージは大きくなる>
・このように、1日3食の食生活、そして食べすぎは、体に大小さまざまなダメージを与えます。しかもそのダメージは、年齢を重ねるごとに、どんどん大きくなっていきます。
<アメリカの最新研究が証明。「空腹」こそが長寿と健康のカギだった>
<アメリカの研究で明らかになった、「空腹」の効果>
・食べすぎによる害から体を守り、健康や若さを維持する、シンプルな方法。それは、「ものを食べない時間(空腹の状態)を作ること」です。
近年、アメリカの医学界では、空腹(断食)と健康に関する研究がさかんに進められ、数多くの論文が発表されています。
以前から、「カロリー摂取を控えることが、さまざまな病気を遠ざけ、長生きにつながる」ことはわかっていましたが、これらの論文には、断食をすることが体重や体脂肪の減少につながること、そして、
・糖尿病・悪性腫瘍(がん)、心血管疾患(心筋梗塞や狭心症など)、神経変性疾患(アルツハイマー型認知症やパーキンソン病気など)
などの予防に効果的であることが述べられているのです。
<「空腹」「断食」のハードルは、それほど高くはない>
・できるだけ無理なく空腹の時間を作り、
・胃腸や肝臓などを休ませてあげること
・脂肪を燃焼させ、減らすこと
・血液の状態を改善させること
が大事なのです。
<睡眠時間8時間+8時間=半日断食で、効果を最大限に享受できる!>
・そして、たどりついたのが「16時間以上、空腹の時間を作ると、最大の効果が得られる」という結論でした。つまり、起きている時間の半分、半日の断食でできるのです。
「16時間は長い」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、睡眠時間とうまく組み合わせることで、無理なく実行していただけるはずです。
<「空腹」が人本来の生命力を引き出す。最新研究でわかった「オートファジー」という奇跡>
・さて、私が「16時間」にこだわるのには、理由があります。
まず、最後にものを食べて10時間ほどたつと、肝臓に蓄えられた糖がなくなって脂肪が分解され、エネルギーとして使われるようになります。
そして、16時間たつと、今度は体の中で「オートファジー」が機能し始めるのです。
・私たちの体は、約60兆もの細胞でできており、細胞は主にタンパク質で作られています。
日々の生活の中で、古くなったり壊れたりしたタンパク質の多くは体外に排出されますが、排出しきれなかったものは細胞内にたまっていき、細胞を衰えさせ、さまざまな体の不調や病気の原因となります。
・一方で、私たちはふだん、食べたものから栄養を摂取し、必要なタンパク質を作っています。
ところが、なんらかの原因で栄養が入ってこなくなると、体は生存するために、なんとか「体内にあるもの」でタンパク質を作ろうとします。
そこで、古くなったり壊れたりした、細胞内のタンパク質を集め、分解し、それらをもとに、新しいタンパク質を作るのです。
・新しく元気なミトコンドリアが細胞内にたくさんあればあるほど、たくさんのエネルギーを得られ、人は若々しく、健康でいられるのですが、オートファジーによって、このミトコンドリアも新たに生まれ変わります。
つまり、オートファジーとは、古くなった細胞を、内側から新しく生まれ変わらせる仕組みであるといえます。
細胞が生まれ変われば、体にとって不要なものや老廃物が一掃され、細胞や組織、器官の機能が活性化し、病気になりにくく若々しい体になるのです。
さらにオートファジーには細胞内に侵入した病原菌を分解・浄化する機能もあり、健康であるために欠かすことのできない仕組みなのです。
<空腹が、細胞の生まれ変わりのスイッチになる>
・ただ、オートファジーには、ある特徴があります。
食べるものによって得られた栄養が十分にある状態では、オートファジーはあまり働かないのです。
なぜならオートファジーは、体や細胞が強いストレスを受けた際にも生き残れるよう、体内に組み込まれたシステムであり、細胞が飢餓状態になったときや低酸素状態になったときにこそ、働きが活発化するからです。
具体的には、最後にものを食べてから16時間ほど経過しなければ、オートファジーは活性化しません。
つまり、空腹の時間を作らない限り、オートファジーによって細胞を産まれ変わらせることはできないのです。
・なお、2016年には、東京工業大学の大隅良典栄誉教授が、オートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
オートファジーは今、世界中の注目を集めているといえるでしょう。
「空腹」は、1日3食の習慣や食べすぎが体に与えたダメージをリセットし、体を内側から蘇らせてくれます。
まさに、空腹こそが最強のリスクなのです。
<空腹のとき、体ではどんな奇跡が起こっているのか>
<内臓の働きを復活させ、活性酸素の害から体を守る――空腹の奇跡①>
・まとまった空腹の時間を作ると、まず、内臓の働きがよくなります。
・活性酸素の量が減るともいわれています。
つまり、活性酸素がもたらす細胞の老化や病気を、予防することができるのです。
<脂肪の分解、血流の改善で、生活習慣病をまとめて遠ざける――「空腹」の奇跡②>
・最後にものを食べてから10時間ほど過ぎたあたりから、体内では、脂肪の分解が始まります。
・つまり、空腹の時間が長くなればなるほど、体内の余計な脂肪が分解され、減っていくのです。
・また、脂肪が分解されれば、血液中の資質が減り、圧迫されていた血管が解放されますし、トータルで12~24時間、ものを食べない時間を作ると、血液中の糖質も20%程度低下するともいわれています。
<オートファジーで、若々しく健康な体を手に入れる――「空腹」の奇跡③>
・そのため、オートファジーには、がんや糖尿病をはじめとする生活習慣病、アルツハイマー型認知症、感染症などの予防効果や、肌や筋肉などの老化防止の効果があると考えられています。
・なお、空腹の時間を作ると、「ケトン体」という代謝産物が増加するといわれています。
ケトン体とは、体内の中性脂肪や筋肉が分解されて生み出されるエネルギー源です。ケトン体には活性酸素や炎症から神経細胞を保護してくれる作用があります。
ケトン体も、空腹によって得られるメリットの一つだといえるでしょう。
<空腹力で、がんの原因を取り除く>
<「空腹」は、がんのリスクを遠ざける>
・「空腹の時間を作る」食事法なら、何を食べてもかまわないため、他の方法に比べて継続しやすいといえるのではないでしょうか。
<人間にはもともと、がんを予防するシステムが備わっている>
・私たちの体は、約60兆の細胞からできています。
それらの細胞は日々、分裂を繰り返して生まれ変わっており、細胞が分裂する際には、遺伝子(DNA)が持つ情報にしたがって、正確にコピーされます。
しかし、なんらかの原因でDNAが傷つけられると、細胞のコピーミスが生じて突然変異を起こし、がん細胞が生まれるきっかけとなります。
胃や腸などの臓器の表面部分に傷がつき、その傷が修復される際にミスが発生して、がん細胞が生まれることもあります。
・なおDNAは外部からの刺激や活性酸素などによってさまざまな攻撃を受けており、体内では毎日3000~5000個ものがん細胞が生まれています。
ただ、人間の体にはDNAを修復する酵素があり、傷ついたDNAはすぐに修復されます。
また、DNAが修復不可能な傷を受けた場合、体はすぐその細胞を除去し、がん細胞の発生を防ぎます。これを「アポトーシス」といいます。
もし修復もアポトーシスもきかなかった場合には、全身の血液を駆け巡り、パトロールをしている免疫細胞が、発生したがん細胞をきちんと除去してくれます。
人体は、こうした二重三重の防御システムによって、がんから守られているのですが、DNAへの攻撃回数が増えたり、加齢などにより修復機能やアポトーシス機能、免疫機能が衰えたりすると、生き残るがん細胞が現れます。
<オートファジーによる細胞の修復が発がんリスクを下げる>
・さて、空腹の時間を作ることが、なぜがんの予防につながるかというと、「脂肪を減らし、肥満を解消する」からです。
・特に大腸がん、肝臓がん、胆嚢がん、すい臓がん、子宮がん、腎臓がんなどは影響を受けやすく、肥満が健康に及ぼす害がわかってきました。
同じく日本癌学会の発表では、がんが発生する主要な原因は、たばこ(30%)と肥満(30%)です。
肥満にならないということは、たばこを吸わないことと同じほど重要なのです。
<空腹こそが、がんのさまざまな原因を取り除いてくれる>
・すでにお話ししたように、最後にものを食べてから10時間ほどたつと、脂肪、特に内臓脂肪の分解が始まります。
つまり、まとまった空腹の時間を作ることは、がんの予防にも大きく役立つということになります。
もちろん、空腹は、肝臓がんの原因となる脂肪肝の改善にも効果的です。
・ただ、一つ気をつけなければいけないのが、すでにがん(悪性腫瘍)が体内に発生している場合は、空腹が逆効果になるおそれもある、ということです。
がん細胞には、飢餓状態に陥りやすいという特徴があるため、治療においてはしばしば、がん細胞に栄養が送られないようにする「兵糧攻め」が行われます。
ところが、オートファジーが働くと、自分で栄養を作り出すため、がん細胞が生き残りやすくなってしまうのです。
「空腹の時間を作る」食事法は、あくまでも予防のためであり、すでにがんを発症しているという方は、医師の指示に従うようにしてください。
『病気の9割は歩くだけで治る!』
歩行が人生を変える29の理由
長尾和宏 山と渓谷社 2015/11/21
<「9割治るというエビデンス(根拠)を示せ」>
・「9割治るというエビデンス(根拠)を示せ」と言われれば、示すことはできないので、「大げさだ」と言われても仕方がないのですが、歩くということがすっかり忘れられている時代だからこそ、「病気の9割は歩けば治る」というくらいの気持ちで歩いてほしい。そう思って、あえてこのタイトルをつけさせていただきました。
・私は、兵庫県尼崎市でクリニックを営んでいる町医者です。町医者ですから、外来にはいろいろな患者さんが来られます。
高血圧、糖尿病、高脂血症など生活習慣病の人、胃腸の具合が悪い人、うつ病や不眠症の人、認知症の人、がんの人、膝や腰が痛いという整形外科系の病気の人――。とにかくありとあらゆる病気や、症状でお困りの方がいらっしゃるので、お一人おひとり治療は違いますが、どんな病気であっても、共通してお話しすることがあります。
それが、今回の「歩く」という話です。
・医療というのは、本来、食事療法、運動療法があって、3番目に薬物療法がくるはずなのに、ここ数十年、薬が一番上になっています。それはいかがなものか---
<歩けば歩くほど、生活習慣病は良くなります>
・歩くことで筋肉や骨が丈夫になれば、年を取ってから膝が痛い、腰が痛いといったことも少なくなります。
認知症だって、歩くことで防げますし、たとえボケが始まっても歩けば良くなります。2人に1人がかかり、国民病といわれるがんも、歩くことで良くなります。
不眠や膠原病、脳過敏症といった免疫系の病気も歩くことで良くなります。不眠やうつも、精神科に行って薬をもらわなくても、歩けば良くなります。介護が必要になりつつある「要支援」の人も、歩けば、要支援を卒業できます。
「病気の9割は歩くだけで治る」という本書のタイトルのもとになっているのは、外来で患者さんを診ている町医者としての実感です。一部の病気は別として、日頃診ているよくある病気の多くは、歩くことが治療や予防のカギになっています。
歩くことは本当に良いこと尽くめで、困る人がいるとすれば医者くらいでしょう。(笑い) 病気が減れば、今ほど医者が要らなくなるからです。みんなが歩くようになって病気が減り、要介護の人が減れば、国の医療費や介護費も減ります。今、高齢者が増えて医療費・介護費大変だといわれていますが、みんなが歩けば半分くらいに減らせるはずです。
<現代病の大半は、歩かないことが原因だった>
・糖尿病人口は、950万人に。
高血圧人口は、4千万人に。
高脂血症人口は、2千万人に。
認知症人口は460万人、予備軍も加えると900万人に。
そして、毎年100万人が新たにがんにかかり、年間で37万人が、がんで命を落としている――。
・毎年、毎年、そんなニュースが次から次へと耳に飛び込んできます。「こんなに病気が増えました。10年後にはもっと増えるでしょう。大変です」と、大騒ぎしているものの、なんのことはありません。その大半は、歩かなくなったことが原因だと思います。
<「沖縄クライシス」>
・「沖縄クライシス」という言葉、聞いたことがありますか?
沖縄県といえば、一昔前には、日本一の長寿の県でした。実際、1985年には男女ともに平均寿命第1位という、名実ともにナンバーワンの長寿県だったのです。
ところが、2000年には、沖縄県の男性の平均寿命は全国26位に。2010年調査では30位にまで転落してしまいました。その裏で、65歳未満の死亡率は、なんとワースト1位になっています。
一方、沖縄県の女性のほうは、2005年まで平均寿命全国1位を保ち、2010年調査でも3位とまだ上位のままですが、実は、長寿のおばあちゃんたちが平均寿命を引き上げているだけ。女性のほうも、65歳未満の死亡率は、2010年に全国最下位になっています。
・どうして65歳未満の死亡率が全国でもっとも高いのかというと、まず指摘されるのが、食生活です。昔の沖縄では食物繊維が豊富な煮イモを主食としていたそうですが、戦後、高脂肪・高カロリーの欧米型の食事が広まってしまいました。東京・銀座にマクドナルド1号店がオープンする10年ほど前から、すでに沖縄ではファストフードが入ってきて、すっかりファストフード天国に。その結果、メタボが増えていきました。
・そしてもう一つ、沖縄が長寿ランキングから転落した大きな要因が、車社会になって歩かなくなったことです。暑さが厳しい上に、タクシーが安いため、子どものころから足代わりにタクシーを使う人が多いと聞きます。
結局、すべての問題は、食事と運動です。
・では、食事と運動、どちらが先かといえば、どちらも大事なのですが、体を動かさなければお腹もすきません。いくらバランスの良い食事を摂っても、カロリーを消費しなければ、栄養過多になってしまいます。だから、まずは体を動かす、歩くことが大事だと思っています。
<現代病の大半は、歩かなくなったことに起因しています。>
<江戸時代の庶民は3万歩歩いていた>
・唐突ですが、江戸時代の人たちは、今の人たちよりも6倍くらい歩いていたそうです。
・「サラリーマンは地位が上がるほど歩かなくなる」という研究結果も出ていて、ある調査では、課長・係長クラスは1日平均7千歩、部長クラスは1日平均5千歩、車付きの重役は1日平均3千歩だったそうです。偉くなればなるほど、生活が便利になればなるほど、皮肉にも健康からは遠のいていくのです。
この半世紀というのは、歩くことが失われていった時代であると思います。
現代人は、「歩こう!」と意識しなければ、歩けない。江戸時代の庶民は、現代人の6倍歩いていたから、健康で幸せだった。
<糖尿病、高血圧………生活習慣病は歩くほどに改善する>
・生活習慣病の代表格が、糖尿病、高血圧、糖質異常症です。
糖尿病といえば、まず推奨されるのが、食事療法。最近では、ご飯やパンなどの主食と甘いものを制限する「糖質制限食」に取り組む人が増えています。高血圧はというと減塩食。脂質異常症の場合は、コレステロールの制限でした。
たしかに、“生活”習慣病ですから、病気のもとになった生活を見直さなければいけません。その際、食生活の見直しは避けて通れないでしょう。
ただ、生活をつくるのは食料だけではありません。食以上に大事なのが、やはり歩くということ。
・「メタボ=メタボリックリンドローム(内臓脂肪症候群)」という概念は、私の出身医局である大阪大学第二内科で30年ほど前に誕生したものです。
<痩せればすべてが正常値になる>
・血圧も同じで、降圧剤を3種類も4種類も飲み続けている人がいますが、薬で血圧を抑えている状態というのは「治った」とは言えません。本来は、根本的に治すのが医療です。薬に頼るのではなく、もっと本質に迫るべき。それが、痩せるという単純なことなのです。
そして、痩せるには、体を動かすこと、つまり歩くことが欠かせません。
<「貧困=無知」が子どもたちの肥満をつくっている。>
・親が健康に対して無知だと、子どもたちも同じような生活を引き継いでしまいます。
メタボ健診に足りないのは、歩くこと。歩かないからメタボになり、メタボが心筋梗塞、脳卒中、そしてがんと認知症を引き起こす。
<最大の認知症予防は計算しながら1時間歩くこと>
<糖尿病の人は認知症になりやすい>
・すでに書いたとおり、認知症の人は460万人に上り、予備軍も加えると900万人を超えるといわれています。これは糖尿病の患者数にも匹敵する人数です。特に、80歳以上では、4人に1人が認知症といわれています。
それほど認知症が増えたのは、一つには長生きするようになったことが原因でしょう。
・たばこを吸っていると認知症リスクが3倍になります。
<認知症予防効果があるのは2つだけ>
<認知症の治療でも、実は歩くことが一番の治療です。>
・一つは、「シロスタゾール(商品名:プレタール)」という脳梗塞発症後の再発予防に使われる薬です。
・では、もう一つのエビデンスが知られている認知症予防の方法は何かといえば、実は歩くことなのです。正確にいうと、計算しながら歩くこと。
・あるお寺の住職さんがやっているデイサービスでは、広い境内で認知症の人たちが自由気ままに散歩できます。まるで放し飼い状態。そうすると、認知症の諸症状がどんどん良くなるのです。
認知症の人は迷子になるんじゃないか、外出させたら周りに迷惑をかけるんじゃないかと思われて、病院でも施設でも、あるいは在宅でも、閉じ込められてしまいがちですが、それは間違いです。認知症の人こそ、誰よりも歩かなければいけません。
歩くことは、認知症の最大の予防法であり、最強の治療法。歩かせない、社会との接点を遮断する認知症ケアは完全に間違っている!
<うつ病も薬要らず、歩くだけで改善する>
・うつ病も、近年、患者数が急激に増えている病気です。
厚生労働省の調査によると、1984年には11万人だったのが、93年には20万人に、2002年には55万人になり、2010年には70万人にと、すごい勢いで増えています。躁うつ病などを含めると、100万人を超えているそうです。
・なぜ、こんなにも急激に患者さんが増えているのでしょう?
現代はストレス社会といわれるように、何かとストレスが多いことも一因ですが、それだけではなく、「うつは心の風邪」「眠れないときは、お医者さんへ」といった早期受信を促すキャンペーンによって、うつ病患者が増えている――という指摘もあります。
・それでうつ病が治ればいいのですが、ただ漫然と薬を飲み続けている人もかなり多い。薬から卒業できず、一生薬漬けになってしまっている人もいます。
<歩けば抗うつ薬から卒業できる>
・うつの人は、歩けば治ります。うつ病は、脳内の「セロトニン」や「ノルアドレナリン」というホルモンが不足した状態ですが、歩けばこれらが脳内で増えるからです。だから、1日5分でいいので、とにかく歩いてほしい。
私の外来には、うつ病の患者さんも毎日のようにいらっしゃいます。そのたびに「歩いてくださいね」「歩くと、薬が要らなくなりますよ」と伝えるものの、なかなか歩いてくれません。
セロトニンを増やすなら、薬よりも歩くことで。抗うつ薬は、歩ける状態になるまでの“つなぎ”。
<国民病の不眠症は、歩くだけで解決する>
<睡眠薬よりも午前中の散歩を>
・多くの睡眠薬は依存性があり、転倒・認知症リスクを上げる。子どもも高齢者も、朝日を浴びながら歩けば体内時計が整って、睡眠薬いらずに。
<逆流性食道炎も便秘も一挙に改善、腸内フローラが脳を変える>
・胃腸を正しく動かすには、良い食事に加えて、歩いて自律神経を整えること。歩けば腸内環境が良くなる。腸が変われば脳も変わる。
<線維筋痛症も喘息もリウマチも、痛い病気こそ、頑張って歩け!>
・甘いものばかりを食べて歩かないと、線維筋痛症、片頭痛、リウマチ、喘息、アトピー、パニック障害など“脳過敏症”を引き起こす。
<がんの最大の予防法はこんなにも単純だった>
・がんを予防するには、まず歩くこと。がんになってからも、歩ける限り歩く。歩くことで免疫力が上がり、治療に耐えられる体ができる。
<風邪も歩いて治せ。 ただし体力に余裕のある人は>
・風邪を治せる薬はない。早く治すには、ひたすら休むか。ひき始めに歩くか。風邪を治せるのは、自分が持っている自然治癒力のみ。
<なぜ歩くことは国民運動にならないのか?>
・なぜ、新しい病名が増えるのか?“医療化”で、病気と患者がつくられている。騙しているのは、誰かいな?
<薬で老化は治りません>
・国の医療費のことだけでなく、多剤投与は、患者さんにとっても害でしかありません。飲む薬の数が増えれば増えるほど、余計な副作用が出るからです。お年寄りの場合、転倒しやすくなりますし、認知症にもなりやすくなります。多剤投与は、メリットよりもデメリットのほうが多い。それは間違いありません。
・次から次に出てくる新薬。“エビデンス”は疑ってかかれ。あなたの老化を防げるのは、薬でも医者でもなく、あなた自身の努力のみ。
<ライザップより、ウォーザップ! お金は一銭もいらない>
・もっとお金をかけずにライザップができれば………。それが“ウォーザップ”こと、ウォーキングです。
・ところが、日本では何でもお金を買おうとする人が多い。ちょっと高価なものに憧れがちです。患者さんに話を聞くと、平均で月1万~2万円を健康食品やサプリメントにかけています。
・レストランでの食事や食材は価格と質がある程度一致するかもしれません。しかし、こと健康に関しては、一銭もかからないウォーキングほど価値のあるものはありません。健康はお金では買えないけれど、お金を払わなくても手に入るのです。
・ところで、お金を払ってスポーツジムの会員になって、健康を手にいれようとする人も多いですよね。それもいいのですが、スポーツジムでは、各マシンについているモニターでテレビを見ながら、トレッドミル(ランニングマシン)やエアロバイクをやっている人がほとんど、それはすごくもったいない行為です。
歩くとセロトニンが増えると何度も書きましたが、それは、脳内が空っぽであるほどいいのです。モニターとイヤホンでテレビを見聞きしながらだと、どうしても意識が画面の中の世界に引きずられます。そうすると、セロトニンの分泌は減ってしまうのです。
・今は、自律神経の乱れからくる不満がとても増えています。不眠や立ちくらみ、めまいなど、ストレスや不規則な生活から自律神経が乱れて、さまざまな不満を抱えている人がとても多い。自律神経を鍛えるには、熱めのお湯につかった後に冷たいシャワーを浴びるというのを繰り返す「温冷交代浴」がよく知られています。これも、自宅でお湯代、シャワー代だけでできる手軽な方法ですが、もっと手軽なのは歩くということです。歩くことは、自律神経の機能も整えてくれます。
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