むしろ、私は、高齢になればなるほど、怖いのは認知症より老人性のうつ病だと思っています。だからまず、70代80代の時期に大切なのは意欲を失わないことになります。(2)
<生きる力をくれる、ささやかなもの>
<天気の悪い日ほど、微笑んでみる>
【心を整え、前向きに立て直していくには口角を上げ、微笑んでみることです。】
・年をとると、若いころより、よくも悪くも「感覚が鋭敏になった」と感じることがしばしばあります。100歳を超え、からだが言うことを聞かなくなってくると、なおさらです。
・血圧と同じで、精神面についても、急激な乱高下はよくありません。
・溜め息をつきたくなったときは、「恵みの雨」という言葉を思い出し、鏡を見て口角を上げ、笑顔をつくってみてください。
<明るい色から力をもらう>
【「カラーセラピー」という癒しの手段もあるくらい、色には大きな力があります。】
・年齢を重ねたら、今までより一層意識したいのが、洋服の「色」です。
・だから、あなた自身が好きな色を着ればよいのです。
・さらに言うと「黒っぽい洋服」は、あまりおすすめできません。
・とくに自分の視界に入りやすい上半身は、明るい色がよいでしょう。
<掃除とは、実益を兼ねた最高の“気晴らし”>
【掃除は、そんな「義務」の代表格ではないでしょうか。】
・100歳を超え、最近はからだもだんだんと言うことを聞かなくなり、以前のように勤勉な毎日を送るということはむずかしくなりました。
・けれども振り返ると、60代、70代のころはこまめに掃除をしていたものでした。
・もともと私は、掃除が大好き。ひとつの運動、レクリエーションととらえて、よく掃除をしていました。
・最近はメディアの方からの取材で「気持ちよく老いていくコツ」をよく聞かれるのですが、「たまには掃除を楽しんでみること」を挙げたいと思います。
<身近な花が、支えてくれる>
【花は、どんなときも無条件に、心を癒してくれます。】
・遠くの地にまで足を運び、旬の花を見に出かけることは、人生の大きな楽しみのひとつでしょう。けれども年齢を重ねるにつれ、だんだんとそれが億劫になることもあります。
・花の癒しの力を、あなたの暮らしにうまく取り入れてみてください。
<守るべき小さな命が、大きな慰めをくれる>
【金魚や虫など、手間のかからないペットを飼うことは、よいことです。】
・ひとり暮らしになってから。ペットなどの生きものと暮らすことは、とうとうなくなりました。
・それも、ある年代を超えると、あらゆる力が急激にガクンと低下します。
・もし、お世話さえきちんとできるのであれば、「ほかの命と共に暮らす人生は、暮らしに喜びや楽しみを与えてくれる」精神科医の立場から、そう申し上げたいと思います。
<布団から飛び出したくなる楽しみを用意する>
【「はじめよければ、すべてよし」お楽しみを、あえて朝に準備しておくことも、おすすめです。】
・そんな葛藤を経て、「布団から出る勇気」を出して、ようやく起き上がる。
・現役でバリバリと働いていた90代半ばまで、「とにかく身支度をして外に出れば、病院に出勤できる」。そんなサイクルが出来上がっていました。
・これからの私の課題は、わざわざ勇気を発動させなくても「布団から出たくなる」。そんな仕組みをつくることかもしれません。
<酔狂なことでも、書いてみる>
【けれども人に愚痴るばかりではなく、小説仕立てで書き出してみると、創作活動へと昇華します。】
・私はときどき、自分自身のことを「目まぐるしい情報についてゆけなくなった老女」だと痛感することがあります。あなたは、そうではありませんか。「パソコンがよくわからない」
・そんなとき、自分の心を立て直すため、私はよくSF小説を書いています。SF小説といっても、原稿用紙に何十枚も書けるわけではないのですが……。
・こんな調子で、近未来のことを空想してはノートに書き綴っています。オチは、ないことがほとんど。
・昔から多くの専門家が指摘してきた事実ですが、「書く」という作業は、大きな癒しをもたらしてくれます。心の中のモヤモヤがスッキリと晴れたり、まったく新しい見方やアイデアに恵まれることもあります。
・文章の巧拙は問いません。また、SF小説に限らず、詩歌や川柳、はたまた最近流行のブログやツイッターなどでもかまいません。「書く」ことで、心を立て直す。そんな人が増えたり、互いの文章を鑑賞し合うような関係が、あちこちに築かれていったとしたら、それはとても素晴らしいことではないでしょうか。
<からだと心の声にゆっくり耳を傾ける>
<からだと話をしていますか?>
【私が今まで大病をひとつせず生きてこられたのは、自分のからだとの対話を徹底して繰り返してきたから。】
・からだの声を聞いて従うことほど、生きていくうえで大切なことはありません。そのためにはまず「直感」を磨く必要があります。
・私たちの心の中では、このような欲求が無意識のうちに絶えず湧き起こっています。人間のからだはとてもよくできていますから、欲求を察知したからだがそれをかなえようと迅速に働いています。
・自分の欲求を押し殺すことが続くと、不調や病気が引き起こされると肝に銘じておいてください。
・元気で長生きをしたいなら。むずかしいことを考えたり、さまざまな情報収集に奔走することはありません。あなた自身のからだの声に、まず耳を傾けてください。何十年も生き抜いてきたからだには、優れたセンサーが備わっています。
<からだはこまめに使う>
【健康長寿を願うなら、からだを「適度に」動かすこと。これ以上の黄金則はありません。怠けすぎず、頑張りすぎず。そんな“塩梅”を見極める眼力こそ、大人に必須の力です。】
・「寝たきりにならず、病気ひとつせず、穏やかなままで長生きをしたい」それは多くの方に共通する思いでしょう。もちろん私自身、そう願いながら日々を過ごしています。ですから健康法についても、できる範囲でアンテナを張って、情報を集めて実践しています。以前のことですが、「貧乏ゆすりで血流を改善する」という健康法が、テレビ番組で紹介されていました。直感的に「これはよい方法だ!」と、ピンときました。
・このごろつくづく思いますが、年代によって、「したほうがよい運動」と「してはいけない運動」との境界線が目まぐるしく移り変わります。
・そして90代にさしかかるころから、「歩くこと」自体に注意を払う必要が出てきました。
・気分が若いままでいるのはよいことなのですが、うかつにからだを動かすことはけがのもとになりかねません。皆様にもお気をつけていただきたいと思います。
・ですから廃用性症候群を遠ざけるためには、たとえ入院中などであっても、からだを無理のない範囲で動かすことが大事だと、医療関係者たちが警鐘を鳴らしてくれています。
・まして、入院中の身ではないのなら、なるべくからだを「使う」という気持ちで、ご近所をゆっくり散歩したり、軽い体操を行ったり、積極的に階段を上り下りするようにしてみましょう。
途中で「疲れた」と感じたら、無理せずに椅子に腰かけて休んでください。
<危険信号は早めに出す>
【いざ始めてみるとむずかしいことがあります。そんなときは、気負いすぎず周りに助けを求めること。】
・ですが、周囲に対して「厳しくなる」「高圧的になる」「悲観的になる」などマイナスの変化である場合。ちょっと注意が必要です。
あなた自身もそうですが、あなたの周りにもそんな変化が見られる人がいたら。早目に、なんらかの対応をとったほうがよいでしょう。お近くの精神科の受診をおすすめします。
・職業柄、昔から私のところには、多くの方々からさまざまな種類の“危険信号”が集ってきたものでした。
・ただ私の心には「世の中には、お困りの方が数多くいる」という事実が、くっきり刻み込まれています。
・危険信号をうまく発信することも、老いを充実させていくひとつの技術です。
<長寿の秘訣は、挑戦、節制、適度な負荷>
【健康情報があふれ返る今、「どうすればからだによいか」は、皆さんだいたいご承知のはず。頭でわかってはいても、自制するのはむずかしいもの。】
・世の中は健康ブームで、さまざまな商品が出回っているようです。「からだによい」とされる健康食品を買ったり、サプリメントを常飲していたり。家の中での体操を補助するような健康器具も、さまざまな種類があるようです。
でも考えてみると、私は特段「健康のため」「長生きのため」と思ってお金を使ったことは一度もありません。
・医療関係者の知り合いも多いのですが、彼らが「健康のために何かを常用したり、常飲している」などと耳にしたことは皆無です。
・私が心がけているのは、次の三大原則です。
① 「挑戦」の要素を大切にする(数字合わせのパズル「数独」や水彩画を趣味にするなど)
② ほんと少し節制する(食事や酒量の節制)
③ からだにとって、よい負荷になることを選ぶ(自宅の階段の上り下りなど)
・そんなときには「やる」か「やらないか」。10秒間立ち止まって、考えるようにしています。
・私の場合は「150ミリリットル」という1日の上限量を決めていて、いかなるときもそれを超えないように気持ちをコントロールしています。150ミリリットルというとおちょこで3杯程度です。
・こういった10秒間の問答を自分自身と積み重ねていくことも、心身を穏やかな方向へ導いてくれる大事な習慣のひとつです。
<自炊にしがみつかなくていい>
【今まできちんと台所に立ってきた人ほど、自炊ができなくなることに罪悪感を持たれるようです。】
・101歳ともなると、70代や80代の方とはからだの自由度がまったく違ってきます。
・大きな変化のひとつは「食事の買い出しに、頻繁に行かなくなった」ということでしょう。
・ではいったい、食糧をどのように調達するのかというと、周りの方々のご厚意に支えていただいています。
・病院の職員さんたちやご近所の皆さん、身内などが、ひっきりなしにわが家を訪れ、手作りの惣菜や、さまざまなおいしいものを差し入れてくださるのです。
・たとえば、一度でも骨折をした場合、入院に至ったり、歩行がむずかしくなるなど、生活に予想以上のダメージを受けます。また小さな骨折がきっかけで、寝たきりになってしまっては大変です。
・100歳という節目も無事に越せたわけですから、自然の流れにさからわず、できる範囲で、ゆるりゆるりと過ごしていきたいと願っています。
<食事は「おいしくいただける量」が適量>
【「たくさん食べることこそ、元気な証拠」そう思い込んでいる方が、なんと多いことでしょうか。あらゆる生命維持活動は、縮小していくものです。】
・人は年代で体重が増減します。あくまで一般論ですが、40代以降は「メタボ体型」という言葉に象徴されるように、「やせていく」より、「太り始める」人が増えます。
・そして、70代や80代以降ともなると、今度は「やせ始める」人が目立つようになります。それにともない、食事量も自ずと減少します。かくいう私の体重は、現在35~36キログラムの間を推移しています。30キロ台というと驚かれることもあるのですが、昔からやせているほうだったので、とくに問題があるわけではありません。ただ、食べる量は70代、80代のころよりも確実に減ったという実感があります。
・健康診断などで、なんの異常もなければ、少食気味になったことを心配しすぎることはありません。
・今では、お饅頭などの甘いものは、朝にいいただくようにしています。小さなお饅頭1個と、小さなヨーグルト1個と、お茶1杯。それで私の朝食は十分です。「おいしい」と思いながらいただける限界量です。
・「食べたくないときは、無理して食べる必要はない」「少食は、気にしなくてよい」「おいしく食べられる量こそ、その人の適量」こんな言葉を、皆さんに贈りたいと思います。
<寒い場所に、身を置かない>
【「寒い」と自分で気づいて、移動できる。調節を試みることができる。そんな姿勢を身につけておきましょう。】
・年齢を重ねると、気を遣うことのひとつに「寒さ対策」があります。
・100歳を超えた今ではとてもむずかしいのですが、60代のころは電車の窓を独力で開閉することができたものでした。
・体温は高めのほうが、あらゆる病気にかかりにくいという説があります。体温を下げないためには、周囲の気温を下げないことが、まず重要です。また、あなたのからだの自由がそろそろ利かなくなっているのであれば、周りの人にうまく声をかけて、快適な室温を保つことを習慣化していくことができれば、理想的です。
<両手を使えば、脳に刺激を与えられる>
【利き手でないほうの手も、お遊びでよいので、ときに活用してみましょう。認知症を遠ざけられるかもしれません。】
・実は私は、生まれつきの左利きです。皆さんご存じのように、昔は「左利き」というと大変な「悪」とされ、周りの大人たちに厳しく矯正されるというのが一般的な流れでした。
・利き手ではないほうの手も、積極的に使うことは、よい脳トレになるでしょう。今の私は「認知症が遠ざかりますように」という期待を込めて、両手を同様に使うようにしています。
<家の中でも運動はできる>
【自宅でもできる簡単な運動を、いくつか考えて習慣化しましょう。】
・健やかに長生きしたいと願うとき。欠かせない「運動」について、お話ししておきましょう。運動といっても、80代、90代を超えると外での活動はなかなかむずかしくなるものです。
・そんな方は、自宅の中で活動量を増やせるよう、工夫をしてほしいと思います。運動量を増やしたり、運動の強度を上げたり。日常生活を通してからだによい効果を及ぼすことは、意識次第で十分可能です。
・同じ姿勢でいることの弊害として、エコノミークラス症候群や糖尿病など、さまざまな病気の発症リスクが指摘されています。ですから私は、座ったままの姿勢でいても、ときどきからだを動かすように気をつけています。
・とはいえ、激しい動きではまったくありません。ラジオ体操よりもっと簡単な動きのもの。たとえば、椅子に腰かけたまま両手を上に気持ちよく伸ばす、といった程度のストレッチです。単なる背伸び、といってもいいかもしれません。でもその程度の運動でも、やるのと、やらないのとでは大違いなのです。
・「何も動かないよりは、動くほうがいい」心理的なハードルをそれくらいに下げて、楽しくからだを動かしてみましょう。100歳を超えた私でも、えっちらおっちらからだを動かせているわけですから、皆さんならもっと効率よく、運動量をかせげるはずです。
<がんとも一緒に仲良く生きる>
【ふたりにひとりが、がんになると言われる時代。たとえがんになったとしても、その病名に負けない心が大切です。治療の手を尽くしたあとは、がんを自分の分身ととらえてみましょう。】
・年齢を重ねると、心身に不調が生じることは珍しくありません。また、それにはっきりとした病名がつくことも多いものです。
・がんになったことがきっかけで、心の治療が必要なほど落ち込んだり、前を向く気力を奪われたりする方は珍しくありません。
・積極的な治療に挑戦するにせよ、経過を看察するにせよ、「がんとだって、共に生きていく」。そんな心の持ち方を、習慣にしてみてはいかがでしょうか。
<おわりに>
・この年齢になると、正直なところ、楽しみの選択肢は自動的に狭くなってしまいます。
・水彩画を趣味にしてから、「何を描こうか」と被写体を探す視点で周りを眺めるようになりました。
・たとえ、自由に動き回れる身ではなくても。「幸せの種」を増やすことを習慣にする。
(2025/3/11)
『100年長生き』
予防医学で健康不安は消せる!
健康本ベストセラー100冊がたった1650円で読める本
森勇磨 ワニブックス 2024/5/27
<いくつになっても若くて元気な人 そうでない人の違いはどこにある?>
・認知症や病気を遠ざけ、人生の質を底上げしてくれるのは、小さな健康習慣の積み重ねと「老い」を怖がらない心構えです。
本書は健康不安を抱えるすべての人のために、ベストセラー100冊から不老長寿の智恵を1冊に凝縮!
<はじめに>
<「幸せな長生き」とはいつまでも自分らしく生きられること>
・この本は、100年でも、それ以上でも、心も体も健康に生きるためには何が大切なのか、100冊のベストセラー健康書をひも解き、健康長寿の秘訣をまとめようというものです。
・一般的に「歳のせい」と思われているような不調でも、実は何歳からでも改善できるものは少なくありません。
わかりやすいのが、筋肉です。歳をとると筋肉が衰え、足腰が弱まりやすいのは真実ですが、筋肉はいくつになっても鍛えられます。
・ちなみに、健康法にはヒットとホームランがあります。エビデンスは“平均値”であって、エビデンスのある健康法はいわば“ヒットを打てる確率が高いもの”です。一方で、ホームランが打てるものは、実はエビデンスのないもののなかに隠れていることがあります。
・特に、体の健康を保ち、病気を防ぐ健康習慣は、豊富なエビデンスをもとに正解がだいたい決まっています(加工肉の食べすぎが一部のがんを増やすのは確実など)。なおかつ、「これさえやれば大丈夫」というものはないのでヒットを積み重ねる意識が大事です。
・一方、メンタルケアや睡眠改善法などはそもそも正解が一つではなく、相性が大きい分野です。
<健康寿命を延ばす「メンタルケア」>
<長寿の真実 心の不調は体の不調を引き寄せる>
<ストレスは体と心のバランスを崩す>
・ストレスは体の不調も引き寄せ、この本のテーマである、「100年長生き」にもかかわるのです。
・私たちの体は、交感神経と副交感神経からなる「自律神経系」、ホルモン分泌にかかわる「内分泌系」、体内に侵入する異物を排除する「免疫系」の3つがある程度自律的に働き、ちょうどよい状態を保っています。
ところが、ストレスがたまった状態が続くと、この微妙なバランスが崩れてしまい、自動的には立て直せない状態になってしまう。
・このようにストレスが一定の閾値を超えると体の症状として出てくることは「心身症」と呼ばれ、よくあることなのです。
<ストレスを「悪」と考える人ほど死亡リスクが高いと証明されている>
・疲れているのになかなか寝つけない「入眠困難」や、何も異常はないのになぜか喉が詰まっているような感じがする「ストレスボール」、腸の病気がないのにお腹の不調が続く「過敏性腸症候群」などが、ストレスで起こりやすい症状として紹介されています。
・一定以上のストレスがかかったときにどういう症状が起こりやすいのか、自分のストレスのサインを知っておくと、「あ、頑張りすぎているな」「体に負荷がかかっているな」と早めに気づくことができます。
・その上で、「ストレス=悪」と考えることでストレスレベルが高まる、「ストレス=学び」というマインドセットを持つことでストレスレベルが低下するという研究結果が出ていることを紹介します。
<長寿の真実 対人ストレスは自分を変えて対処する>
<ストレスの多くは人間関係のなかで生まれる>
・日常生活のなかでストレスがたまる一番の原因が、人間関係のモヤモヤではないでしょうか。
・「人生の喜怒哀楽の多くは、人間関係の中で生まれます」
・人の心は、目に見えません。そのため、人の心の内が理解できず、人を傷つけたり、相手の言葉に傷ついたりすることも数多くあります。心は見えないために誤解が生じやすい、ということですね。
<「いい人」「悪い人」は自分にとって都合のいい人・悪い人>
・「僕たちは、人間関係を無意識に加工している」と、人がやってしまいがちな“加工”として次の4つを紹介します。
① 投影:相手も自分と同じ感情を抱いていると考えること
② 転移:自分の過去の体験を相手に重ね合わせてしまうこと
③ 逆転移:相手の感情を自分の感情だと勘違いしてしまうこと
④ 投影同一視:自分の感情を他人に押しつけること
・投影、転移、逆転移、投影同一視の4つに共通するのは、自分が無意識に感じていることによって周りが歪んで見えるということ。シンプルにいえば、自分の捉えかた次第ということです。
・他人を変えるのは膨大なエネルギーが要りますから、自分の捉えかたを変えるほうが得策だと思います。ただ、その方法論には合う合わないがあります。
<長寿の真実 自分の価値を自分で認める>
<感情はコントロールできない でも、行動はコントロールできる>
・人生は長さだけでなく、質も大事にしたいもの。その意味では「自分の人生、悪くないな」と肯定的に捉えられるかどうかは大事なポイントです。
・同じように、他人の言動、過去の出来事、それにともなうつらい記憶も自分でコントロールすることはできません。でも、「それにどう反応するか」はコントロールでき、「感情的な行動を抑えることはできる」と。
・心理療法ACTは、絶えず湧いてくる感情や思考から距離を取り、それらを受け止めた上で、心の声に惑わされずに、自分が大切だと思うことを実行できるような“しなやかな心”を育てていくための心理療法です。
<「私なんてダメだ」と不安になったときのとっておきの方法>
・また、「自己肯定感が高い=ポジティブ」と思うかもしれませんが、「ネガティブな自分も、弱い自分も、受け入れられるのが自己肯定感」「ダメな自分もOK!」と気楽に認められると、心はしなやかに、強くなります。
・自尊心は、自分の信念をもとに自分の生き方を選択、行動し、責任を負うという一連の流れのなかで手にする「内面の力」だ。
<長寿の真実 人に話を聴いてもらうにもコツがいる>
<パッと浮かんだ解決策は自分になじみのある方法>
・いずれにしても、夜は頭のなかで不安感が増幅されやすい時間帯と心得て、早く寝ることをおすすめします。
・自分一人ではどうすることもできないときには、
(1) 他の人の力を借りて、一緒に取り組めば解決できるかもしれない
(2) 他の人に相談すれば新しいアイディアが出てくる可能性があるかもしれない
と考えると、気持ちが楽になります。
・従来の方法だけではなく、多くの方法を検討したほうが当然解決の可能性は上がるので、そのためにも人に相談することは有益なのです。
・「話をさえぎらずに、じっくりと耳を傾けてくれる人に聞き役をお願いしましょう」
<アドバイスは明確でわかりやすいが合う合わないがある>
・「自分の余計な思考をなくして相手の現在に集中して話を聴く」「何か思考が浮かんできたら気づく。その思考を脇に置く」
・聴いたことをすべて受け入れたり、肯定したりする必要はなく、いったん聴いてみる。いろいろな考えかたを聴いてみて、そこから何を選ぶかは自分次第です。
<長寿の真実 「その場しのぎ」が長生きのコツ>
<その場で心の落ち着きを取り戻す方法 「セルフ・スージング(自己鎮静)」を身につけよう>
・でも、一度にいくつもの問題を解決しようとせず、解決可能で自分にとって重要なものから取り組むことが大事。
・人には、できることとできないことがあります。できないことまでいっぺんに片づけようとすると、無理が出てきます。できないことを受け入れる勇気をもつことも大切です。
・「嫌なことやストレスがたまっているときには、ジョギングをすると気持ちが向上していく」
・でも、気分の向上に体を動かすことが役立つのは確かです。
・つらい感情を経験しているときに安全に感じ、気持ちをなだめる「セルフ・スージング(自己鎮静)」の方法の一つとして、体を動かすことをすすめています。
・体を動かす以外にも、温浴、安らぎを感じる香り、温かな飲み物、信頼できる人とのおしゃべり、心を落ち着かせる音楽などもセルフ・スージングになるとすすめます。
問題や心配事自体は解決しなくても、心を落ち着かせるにはその場でできることがたくさんあるということです。そして、心が落ち着いたら解決できるものから取り組むといいでしょう。
・不確実なことの多い時代だからこそ、「その場しのぎで毎日をつないでいく」ような感覚でいい、と提言します。そして「今日一日を乗り越えれば、明日は勝手に来る」とも、いい言葉ですね。
<長寿の真実 ストレスを意識の外に出せば勝手にラクになる>
<ストレスのもとに気づき、書き出す それだけで心は回復する>
・やるべきことをいつも書き出しています。脳のなかにため込んでいくと、どんどんキャパオーバーになっていくので、意識的に外に移しているのです。これは、ストレスケアにもおすすめです。
・ちなみに、ストレッサーとは、“ストレスのもと”のことです。
「ストレッサーを日々観察し、書き留めるだけでセルフケアの効果がある」ことが心理学で確かめられているからです。
・その上で、「すべてのストレス反応は自分を守るための正常な反応」であり、「そういう反応が自分に起きているのだ」とまずは認めて受け入れることが大事、と言います。 次に、自分にとってのストレッサーや心身のストレス反応に気づき、受け止める練習となるのが「マインドフルネス」です。
・マインドフルネスは、「今、ここ」に100%の意識を向ける心のありかたです。そうしたマインドフルネスの状態に達する手段の一つが、瞑想です。
目を閉じて座って「吸う」「吐く」という呼吸に集中する方法が最もポピュラーです。
・マインドフルネスは、ストレス緩和だけでなく、腰痛改善や高血圧対策に効果があるとのエビデンスもありますので、試してほしいと思います。
<長続きしない幸せに惑わされない>
・脳内でドーパミン、セロトニン、オキシトシンが十分に分泌されている状態が「幸せ」であり、これらの幸福物質を出す条件が「幸せになる方法である」と定義しています。
・「起床瞑想」。朝起きたときに1分でもいいので、今の自分の心と体の状態に向き合うこと。毎日続けるうちに「自分の好調、不調に『気付く能力』がトレーニングされる」
・また、寝る直前に「今日あった楽しい出来事」を3つ書くという「3行ポジティブ日記」も、セロトニン的幸福を手に入れる方法の一つとのこと。被験者に1週間毎日「3つのよいこと」を書いてもらったところ、幸福感が上がり、うつ傾向も改善したなど、効果が多数報告されているそうです。ところで、幸福そのものを研究する「幸福学」という分野もあります。
・健康であることが幸福に強く影響する以上に、「自分は健康だと思っていること」がより強く影響する。
・幸せな人は健康であるのみならず長寿である傾向が高い。
本書のテーマである「健やかな心」は人生の質だけではなく、長さにもかかわる可能性があるということですね。
<COLUMN 腸とストレスの意外な関係>
・脳と腸はお互いに作用し合っていて、腸を整えれば脳にもよい影響があるのではないか、と期待されています。腸活といえば人気なのがヨーグルトです。ヨーグルトには善玉菌の乳酸菌は含まれていますが、実は大腸菌で圧倒的に多い善玉菌はビフィズス菌のほう。ビフィズス菌は乳酸に加え、
腸内によい働きをする短鎖脂肪酸の酢酸をつくります。腸活のためにヨーグルトを食べるなら、ビフィズス菌入り、かつ糖分の少ないものを選びましょう。
<100歳まで自力で歩く! 『動ける体』のつくりかた>
<長寿の真実 50歳を境に増える「足の不具合」に備える>
<年1%ずつ筋肉は減っていく だから、太りやすくなる>
・いくつになっても自分の足で自由に歩きたい。これぞ万人共通の願いではないでしょうか。
・歳を重ねるにつれて、太りやすくなったと感じていませんか?それは、「中年になると基礎代謝が低下して、必要な栄養素をエネルギーとして燃焼する能力が次第に衰えてくる」からであり、「加齢によって生じる基礎代謝低下の大きな原因は、筋肉の衰えによるもの」
・30代からすでに筋肉は減り始めるものの、40代になるとさらに加速するのです。その先、60歳以降になると、運動習慣のない人は1年で1%の割合で筋肉量が減っていくと言われています。高齢者が入院すると、たった2週間ベッドで横になっていただけで足の筋肉は2割減少すると言われるほどです。
加齢とともに筋肉量が減り、筋力が著しく低下することを「サルコペニア」といい、サルコペニアになると死亡リスク、介護リスクが上がり、がんになったときの生存率は下がり、手術時の死亡率は上がることがわかっています。
・このように動ける体を保つことは長生きに直結しているので、40歳になったら老後の貯金だけでなく、“筋肉貯金”を心がける必要があるのです。
・「目安の一つが、簡単に確認できる握力。握力が低下してきたら要注意」
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